
「行かないで(彼と彼女のソネット)T'en va pas」はジャック・ブレルJacques Brelが歌う「行かないでNe me quitte pas」とは別の曲です。当時13歳のエルザ・ランギーニElsa Lunghiniが、映画「悲しみのヴァイオリンLa Femme de ma vie」(監督:レジス・ヴァルニエRegis Wargnier。ジェーン・バーキンJane Birkin主演。)に出演し、そのなかで歌った曲。作詞:Catherine Cohen&Régis Wargnier、作曲:Romano Musrmarra。「哀しみのアダージョ(副題:彼と彼女のソネット)」という邦題がつけられ、ピエール・ポルトPierre Porteによる演奏でも知られています。
歌詞はちょっと複雑な映画の内容と一致して、出て行こうとする父親(というより母親の恋人)に「行かないで」と言う、娘の言葉です。原田知世の日本語のカバーもYouTubeで見られますが、男と女の話に変えられています。
また、レーモン・ルフェーヴルRaymond Lefèvreにも「哀しみのアダージョ」という同名の曲があり、こちらは、映画「寄宿舎(副題:悲しみの天使)」の主題曲で、もともと、スペインのPop Topsが歌っていた曲で、そのまた原曲はスペインのミカエル・ヴァケスMichael Vacquezによるアダージョ・カルディナルAdajio Cardinal。
そして、マルティーヌ・クレマンソーMartine Clémenceauが、そのアダージョ・カルディナルをフランス語で歌っています。このブログですでに取り上げた「アダージョ・カルディナル(哀愁のアダージョ)Adajo cardinal」です。
このように、「哀しみのアダージョ」には別曲があることですし、ここでは、原名の直訳に副題を添えて表記しました。
エルザは、史上最年少でパリのオランピア劇場でのコンサートを開き、また、フランスのヒット・チャート第1位を史上最年少で獲得した歌手ですが、日本ではあまり知られていません。デヴュー当時、ヴァネッサ・パラディVanessa Paradisとよく比較されたようですが、その後はヴァネッサのほうがよく知られるようになりました。
T'en va pas 行かないで(彼と彼女のソネット)
Elsa Lunghini エルザ・ランギーニ
T'en va pas 注1
Si tu l'aimes, t'en va pas 注2
Papa si tu l'aimes dis-lui
Qu'elle est la femme de ta vie vie vie
Papa ne t'en va pas
On peut pas vivre sans toi 注3
T'en va pas au bout d'la nuit
行かないで
彼女を愛してるなら、行かないで
パパ、彼女を愛してるなら、言って
生涯かけて愛した女性だと
パパ、行かないで
あなたなしには生きていけないわ
行かないで、夜の終わりに

Nuit tu me fais peur 注4
Nuit tu n'en finis pas
Comme un voleur
Il est parti sans moi
On ira plus au ciné tous les trois
夜 あなたはわたしを怖がらせる
夜 あなたは怖がらせ続ける
泥棒みたいに
彼はわたしを置いて行ってしまった
もう三人で映画館に行くことはないのね
Nuit tu me fais peur
Nuit tu n'en finis pas
Comme un voleur
Il est parti sans moi
Papa si tu pensais un peu a moi 注5
夜 あなたはわたしを怖がらせる
夜 あなたは怖がらせ続ける
泥棒みたいに
彼はわたしを置いて行ってしまった
パパ、ちょっとはわたしのことも考えてほしいわ
{instrumental}
Où tu vas, quand tu t'en va d'ici?
J'arrive pas a vivre sans toi
Avec la femme de ta vie vie vie
Papa fais pas d'connerie
Quand on s'aime on s'en va pas 注6
On ne part pas en pleine nuit
あなたはここから立ち去って、どこへ行くの?
あなたなしで生きていけないわ
あなたが命懸けで愛した女性とともに
パパ、ばかなことをしないで
お互い愛し合ってるのなら、行かないわ
真夜中に立ち去ったりしないわ

Nuit tu me fais peur
Nuit tu n'en finis pas
Comme un voleur
Il est parti sans moi
Tu m'emmeneras jamais aux USA 注7
夜 あなたはわたしを怖がらせる
夜 あなたは怖がらせ続ける
泥棒みたいに
彼はわたしを置いて行ってしまった
もうわたしをアメリカへ連れて行ってくれない
Nuit tu me fais peur
Nuit tu n'en finis pas
Comme un voleur
Il est parti sans moi
Papa j't'assure arrête ton cinéma 注8
夜 あなたはわたしを怖がらせる
夜 あなたは怖がらせ続ける
泥棒みたいに
彼はわたしを置いて行ってしまった
パパ、芝居がかったことはやめてくれるわね
Nuit tu me fais peur
Nuit tu n'en finis pas
Comme un voleur
Il est parti sans moi
Papa j'suis sure qu'un jour tu reviendras
夜 あなたはわたしを怖がらせる
夜 あなたは怖がらせ続ける
泥棒みたいに
彼はわたしを置いて行ってしまった
パパ、いつか帰って来ると信じてるわ
{instrumental}
Nuit, nuit tu me fais peur
Nuit tu n'en finis pas
Comme un voleur
夜、夜 あなたはわたしを怖がらせる
夜 あなたは怖がらせ続ける
泥棒みたいに
Papa j't'assure arrête ton cinéma
Nuit tu me fais peur
Nuit tu n'en finis pas
Comme un voleur
パパ、芝居がかったことはやめてくれるわね
夜 あなたはわたしを怖がらせる
夜 あなたは怖がらせ続ける
泥棒みたいに
Papa j'suis sure qu'un jour tu reviendras
パパ、いつか帰って来ると信じてるわ
[注]
1 否定の命令形。neの省略は、口語ではよくおこなわれる。t'en va pas「行かないで」と引き止める言葉は、この最初の段落だけで、あとは、引き止めてももう無理な状況を示すような歌詞になっている。ジャック・ブレルの歌では、「行かないで」と言い続けるが…。
2 la, lui, elle すなわちpapaが愛する彼女とは、彼の妻、本人の母親。
3 onが何度もでてくるが、nous「私たち」と同義の場合が多い。ただし、それは、父・母・娘全員の場合に限らない、ここでは母と娘だけを指す。
4 この段落では、それまでのpapa への語りかけから、nuit「夜」に対しての語りかけに変わり、papaをil「彼」と表現する。最後の行のonは書かれているとおり、3人全員。
5 この段落では、nuit「夜」に対しての語りかけが、最後の行でpapa への語りかけに戻る。
6 ここの2行は、私たちというより、不特定な人の普遍的な事実という形で述べている。on s'aime のs'aimerは、複数者間での相互的な意味だが、on s'en va pasと後のon ne part pasでは、相互的な意味は含まれず、立ち去るのは一人。
7 aux USAは、xとU間のリエゾンのみならず、SとAもアルファベットのフランス語読みでアンシェヌマンするので、「オズューエサー」のような発音になる。
8 j’t’assure の、jeのeの発音が飛ばされている部分は、ジュではなくシュを更に子音だけのように短く発音する。cinemaは、「はったり、芝居、人騒がせなまね」。前にあった、On ira plus au cine「もう映画館に行かない」というのとは無関係。
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ピンク・マルティーニPink Martiniは、1994年にピアニストのトーマス・ローダーデールThomas Lauderdaleを中心にアメリカで結成された13人のジャズ・オーケストラ。その名前はジンとベルモットのカクテルから。
彼らの大ヒット曲「働きたくないのJe ne veux pas travailler」は1997年に出したアルバム Sympathiqueに収録されています。女性歌手はチャイナ・フォーブスChina Forbes。
この曲の歌詞はギヨーム・アポリネールGuillaume Apollinaireの詩にインスピレーションを得て作られたそうです。それは「ホテルHôtel」という1913.年に書かれた詩。
フランシス・プーランクFrancis Poulenc が先に、この詩を元にした曲を作っています。1940年のソプラノとピアノによるアンサンブル:Banalitésの5曲のうちの1曲です。
Hôtel ホテル
Guillaume Apollinaire ギヨーム・アポリネール
Ma chambre a la forme d’une cage
Le soleil passe son bras par la fenêtre
Mais moi qui veux fumer pour faire des mirages
J’allume au feu du jour ma cigarette
Je ne veux pas travailler je veux fumer
僕の部屋は鳥かごの形だ
太陽が窓から腕を差し伸べる
だが僕は煙草を吸いたい、まぼろしを描くために
僕は陽光で煙草に火をつける
僕は働きたくない、煙草を吸いたい
Je ne veux pas travailler 働きたくないの
Pink Martini ピンク・マルティーニ
Ma chambre a la forme d'une cage
Le soleil passe son bras par la fenêtre
Les chasseurs à ma porte
Comme les p'tits soldats
Qui veulent me prendre
私の部屋は鳥かごの形
太陽が窓から腕を差し伸べ
戸口には
私を捕まえようとする
小さな兵隊みたいな
ハンターたち

Je ne veux pas travailler
Je ne veux pas déjeuner
Je veux seulement l'oublier
Et puis je fume
働きたくない
朝食もいらない
ただ彼を忘れたい
だからタバコを吸う
Déjà j'ai connu le parfum de l'amour
Un million de roses
N'embaumeraient pas autant
Maintenant une seule fleur
Dans mes entourages
Me rend malade
私はすでに愛の香りを知った
百万本のバラだって
あれほどはかぐわしくない
取り巻きたちのなかで
今はたった一輪の花が
私をさいなむ
Je ne veux pas travailler
Je ne veux pas déjeuner
Je veux seulement l'oublier
Et puis je fume
働きたくない
朝食もいらない
ただ彼を忘れたい
だからタバコを吸う

Je ne suis pas fière de ça 注
Vie qui veut me tuer
C'est magnifique
Être sympathique
Mais je ne le connais jamais
私をつぶそうとする人生なんて
うんざりよ
情のある人は
すばらしいわ
でも私はまるで縁がないの
{Refrain }
Je ne suis pas fière de ça
Vie qui veut me tuer
C'est magnifique
Être sympathique
Mais je ne le connais jamais
私をつぶそうとする人生なんて
うんざりよ
情のある人は
すばらしいわ
でも私はまるで縁がないの
{Refrain }
[注] être fière de n.「…を誇らしく思う」。Je ne suis pas fière de ça(=vie)「自分の人生を誇らしく思わない」ということだが意訳した。
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前回に引き続きエディット・ピアフÉdith Piafです。1960年に、ミッシェル・ヴォケールMichel Vaucaireが作詞し、シャルル・デュモンCharles Dumontが作曲し、ピアフが歌うNon, je ne regrette rienを、今回取り上げます。「いいえ、私は何も悔やまない」という直訳の題名を新たに付け、「水に流して」という既成の邦題を添えます。
その前年、ピアフはニューヨーク・ツアーの最中に舞台で倒れ、消化器の潰瘍のため複数の手術を受けたのち、パリに戻りました。またこの時は、「ミロールMilord」を作詞したジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiと別れたことによる心の痛手も抱えていました。過去を一掃し再出発する決意を示すこの曲の背景には、そうしたピアフ自身の状況があったのです。
この曲をフランス語で歌うには、日本人には難しいフランス語の<r>の発音をマスターする必要があります。というより、この曲はその練習材料にぴったりです。
<r>の前にまず<l>から。<l>は舌先を上の前歯の後ろの硬口蓋に、日本語の<ラリルレロ>の場合より鋭く押し付けます。
<r>は母音の発音と同様、舌先は下の前歯の後ろに残します。そして舌の奥のほうを持ち上げるのです。
つまり、<la>と言うためには、舌先は上から下に瞬時に移動しますが、<ra>の場合は舌先は上下しません。
日本語の<ガギグゲゴ>の場合は舌の奥を軟口蓋にくっつけ、<ハヒフヘホ>はくっつけません。<r>はその中間をねらうといいようです。ちょうど「うがい」をするような感じ。
Non, je ne regrette rien いいえ、私は何も悔やまない(水に流して)
Édith Piaf エディット・ピアフ
Non! Rien de rien
Non! Je ne regrette rien
Ni le bien qu’on m’a fait
Ni le mal tout ça m’est bien égal!
いいえ!まるで何も
いいえ!私は何も悔やんではいない
ひとが私にした良いことも
悪いこともみな私にとっては同じこと

Non! Rien de rien
Non! Je ne regrette rien
C’est payé, balayé, oublié 注1
Je me fous du passé!
いいえ!まるで何も
いいえ!私は何も悔やんではいない
贖い、一掃し、忘れた
過去なんかどうでもいい
Avec mes souvenirs
J’ai allumé le feu
Mes chagrins, mes plaisirs
Je n’ai plus besoin d’eux!
過去の思い出をくべて
私は火を起こす
悲しかったこと、うれしかったこと
そんなものはもう要らない

Balayées les amours 注2
Avec leurs trémolos
Balayés pour toujours
Je repars à zéro
過去の恋は
心の震えが永遠に消し去られるとともに
一掃され
私はゼロから再出発する
Non! Rien de rien
Non! Je ne regrette rien
Ni le bien, qu’on m’a fait
Ni le mal, tout ça m’est bien égal!
いいえ!まるで何も
いいえ!私は何も悔やんではいない
ひとが私にした良いことも
悪いこともみな私にとっては同じこと

Non! Rien de rien
Non! Je ne regrette rien
Car ma vie, car mes joies
Aujourd’hui, ça commence avec toi!
いいえ!まるで何も
いいえ!私は何も悔やんではいない
だって私の人生は、だって私の喜びは
いま、あなたとともに始まるのよ!
[注]
1 balayerは「掃除する、追い払う」という意味で、過去の恋をbalayerするというのを、「清算する」と訳すことが多いが、どうも形のうえでケリをつけるようなニュアンスになってしまう。邦題の「水に流して」を当てはめることを考えたが、考え直して、「消し去る、一掃する」に変更した。
2 この4行はles amours sont balayées avec leurs trémolos (qui sont) balayés pour toujours と書き換えると分かりやすい。訳語をより正確に書き換えた。なお、amourは男性名詞だが、複数形では女性名詞扱いとなる。
Comment:3

「愛の讃歌Hymne à l'amour」は1949年に、エディット・ピアフÉdith Piafが作詞し、ピアフおよびマルグリット・モノーMargrite Monnot が作曲し、本来は、イヴェット・ジローYvette Giraudが歌うことになっていました。当時ピアフと恋仲だったマルセル・セルダンMarcel Cerdanというミドル級の世界チャンピオンのボクサーへの想いを込めて、ピアフはこの曲を書いたそうです。同年、彼は、リベンジ試合のため(ピアフに会うためともいわれます)ニューヨークに向かう途中、飛行機事故で帰らぬ人となります。10月28日のことでした。その日のステージで、ピアフは「マルセル・セルダンのために歌います。」と言って、この歌を歌い、ステージの上で倒れてしまいます。ピアフは恋多き女性で、口の悪いフランス人はhomme mangeuse(意味はご想像ください)と呼ぶそうですが、セルダンとの恋は特別だったようで、クロード・ルルーシュClaude Lelouchの映画「恋に生きた女ピアフ Édith et Marcel」(1983年)でも、2007年に封切りされた「エディット・ピアフ~愛の讃歌~La Môme」でも、この恋は中心テーマになっています。ピアフは歌詞の内容通りに後追いすることはありませんでしたが、この歌は彼女の一番の代表作となりました。
原詞は、岩谷時子が翻案した歌詞とはまるで違って、あなたのためだったらどんな背徳的なことだってなんだってやるという、かなり毒気のあるものです。永田文夫や長谷川きよしの作った歌詞はその内容に忠実なものです。(下の動画の美輪明宏の歌の前半の語りの部分を永田文夫の歌詞だと思い込んでいましたが、コメントいただき、間違いに気づきましたので訂正いたします。)
私も今回、邦訳の代わりに、原詞の意味に即して日本語で歌える歌詞を作ってみました。そのなかで気づいたんですが、原詞には「あなたを愛しているje t’aime」という表現は一度も出てきません。「あなたがわたしを愛しているtu m’aimes」のみ繰り返します。愛されているという確信ほど強いものはなく、それさえあれば何でもできるというのです。セルダンには妻子があり、彼の愛を確信することは彼女にとって一番重要なことだったんでしょう。分かる気がします。そして最後に、あの世で「わたしたちは愛し合うon s'aime」というのです。
エディット・ピアフの渾身の歌唱。
美輪明宏は、自ら訳した日本語詞を語り、その後、フランス語で歌っています。たしかに迫力があります。相手は逃げたくなるかも。
Hymne à l'amour 愛の讃歌
Édith Piaf エディット・ピアフ
Le ciel bleu sur nous peut s'effondrer
Et la terre peut bien s'écrouler
Peu m'importe si tu m'aimes
Je me fous du monde entier
Tant qu'l'amour inond'ra mes matins
Tant que mon corps frémira sous tes mains
Peu m'importe les problèmes
Mon amour puisque tu m'aimes
青い空が崩れ
大地が張り裂けても
平気よ あなたに
愛されていれば
愛に満たされた朝
抱かれて震えるからだ
なにも怖くはないわ
あなたの愛があれば

J'irais jusqu'au bout du monde
Je me ferais teindre en blonde
Si tu me le demandais
J'irais décrocher la lune
J'irais voler la fortune
Si tu me le demandais
地の果てまでも行くわ
髪だって染めるわ
あなたが望めば
月だって 財宝だって
盗みに行くわ
あなたが望めば
Je renierais ma patrie
Je renierais mes amis
Si tu me le demandais
On peut bien rire de moi
Je ferais n'importe quoi
Si tu me le demandais
国を裏切り
友を裏切るわ
あなたが望めば
笑われたってかまわない
何だってするわ
あなたが望めば

Si un jour la vie t'arrache à moi
Si tu meurs que tu sois loin de moi
Peu m'importe si tu m'aimes
Car moi je mourrais aussi
Nous aurons pour nous l'éternité
Dans le bleu de toute l'immensité
Dans le ciel plus de problèmes
Mon amour crois-tu qu'on s'aime
いつか別れの日が来て
あなたが死んでしまっても
つらくはないわ
私もついて行く
永遠のいのちを得て
広い空のかなたの
悩みのない世界で
二人は愛し合うわ
Dieu réunit ceux qui s'aiment
神に結ばれるのよ
Comment:8

今日、10月27日は満月ですから月に因む曲を。
「ルナ・ロッサLuna rossa」は、もとはカンツォーネ・ナポリターナ。1950年にヴィンチェンツィオ・デ・クレシェンゾVincenzo De Crescenzoが作詞、アントニオ・ヴィアンAntonio Vianが作曲、ジョルジオ・コンソリーニGiorgio Consoliniなどが歌いました。1952年にフェルナン・ボニファイFernand Bonifayが「月への祈りPrière à la lune」というタイトルでフランス語歌詞を作り、リュシエンヌ・ドリールLucienne Delyleが歌いました。でも、Luna rossaという原名で呼ばれ、Prière à la luneが副題とされることが多いようです。その後、さまざまな言語に翻案され、フランク・シナトラFrank Sinatraはじめ世界中の多くの歌手に歌われています。
「ルナ・ロッサ」とは赤い月のことですが、月が地球の影に入る皆既月食のとき、月は赤黒く見えます。今年は4月4日の21時頃でした(YouTubeに複数の動画あり)。また、地平線や水平線の近くに月があるときは、月からの光が厚い大気の中を通過することになり、青い光は届きにくく赤い光だけが私達の目に届くので、月が赤っぽく見えるそうです。この歌詞ではそうした実際の自然現象とは関係なく自分の恋を見守ってくれるもののイメージとして選んだようです。
なお、リュシエンヌ・ドリールの曲はすでに複数取り上げ、「サン=ジャンの私の恋人Mon amant de Saint-Jean」のページでプロフィールをご紹介しています。
Claudio Villa(イタリア語)
フランク・シナトラ(英語)
リュシエンヌ・ドリール
Luna rossa (Prière à la lune) ルナ・ロッサ(月への祈り)
Lucienne Delyle リュシエンヌ・ドリール
Dans la ville endormie
Le vent frissonne
A tous mes souvenirs
Je m'abandonne
寝しずまった街のなかで
風がふるえ
もろもろの想い出に
わたしは浸り込む
Pour me parler de toi
Dans la nuit brune 注1
Je n'ai plus qu'une amie
Et c'est la lune
暗い夜のなかで
あなたのことを話してくれるのは
ひとりの友だけ
それは月

Ô Luna rossa, reine des nuits
Du haut des cieux, toi qui me souris
Veux-tu porter cette mélodie
A celui que j'adore ?
おお赤い月よ、夜の女王よ
空の高みから、あなたはわたしに微笑みかける
この調べを運んでくれないかしら
わが想うひとへ?
Puisque toi seule en as le pouvoir
Luna rossa, je voudrais savoir
Si son amour m'est resté ce soir 注2
Toujours aussi fidèle
だってそれができるのはあなただけ
赤い月よ、わたしは知りたいの
あのひとの愛が今夜まだわたしに
ひたすら向けられているのか
Luna Rossa
Est-il encore sincère ?
Luna Rossa
Ne mens pas, tant pis pour moi 注3
Si je dois en pleurer
赤い月よ
あのひとはまだ真摯な気持ちなの?
赤い月よ
嘘はつかないでね、わたしとしてはしかたないわ
もしもそれで泣くことになっても

On m'a déjà menti tant de fois
On m'a déjà volé tant de joies
わたしはもう何度も騙されてきた
もう何度もよろこびを奪われてきた
Ô Luna Rossa, je ne veux pas
Qu'à ton tour tu me trompes
おお赤い月よ、それはいやよ
今度はあなたがわたしを欺くなんて
Ô Luna Rossa, reine des nuits
Tu as connu toutes nos folies
Et tu savais quand sonnait minuit
Te couvrir d'un nuage
おお赤い月よ、夜の女王よ
あなたはわたしたちの熱愛をすべて知っている
そして真夜中の時が告げられると
あなたは雲で身を隠すのを心得ていてくれた
Ô Luna Rossa, les soirs d'été
Tu nous guidais parmi les sentiers
Où nos deux ombres semblaient flâner
Ne formant qu'une image
おお赤い月よ、夏の夕べには
あなたはわたしたちを小径にいざなってくれた
そこではわたしたちの二つの影は
一つに合わさって歩いているみたいだった

Luna Rossa
Tu sais combien je l'aime
Luna Rossa
Promets-moi que, loin de moi,
Tu le protègeras
赤い月よ
わたしがどれだけあのひとを愛しているかご存じね
赤い月よ
約束して、わたしから遠いところで、
あのひとを守ってくれると
Et quand bientôt il me reviendra
Luna Rossa, nous prierons tout bas
Car tous les deux nous croyons en toi
Autant qu'en la Madone
まもなく あのひとがわたしのところに戻ってきたら
赤い月よ、わたしたちは静かに祈るわ
わたしたちは二人ともあなたを信じているから
聖母さまを信じるように
Luna Rossa
Luna Rossa
赤い月よ
赤い月よ
[注]
1 brune「褐色の」。古くは「暗い、陰鬱な」の意味もあった。
2 son amour m'est resté ce soir toujours aussi fidèle直訳すると、「彼の愛が今夜も相変わらず誠実なまま私に残されているか」。
3 tant pis「しかたがない、残念だ」。pisはmalの優等比較級「より悪く」。
Comment:1

セルジュ・ゲンズブール Serge Gainsbourgがフランス・ギャルFrance Gallのために作った曲は、1965年のユーロビジョン・ソング・コンテストConcours Eurovision de la Chansonの優勝曲「夢見るシャンソン人形Poupée de cire, Poupée de son」と、同年の「待って、さもなきゃ行って(涙のシャンソン日記)Attends ou va t'en」をすでに取り上げています。今回はその1年前の1964年の曲、Laisse tomber les fillesです。「娘たちにかまわないで」という一般的な邦題は完全な誤訳で、laisser tomberは、「恋人を振るとか捨てるとか」いった意味。命令形ながら条件を表し、「…してごらんなさい、そうしたら…という結果になるから」といったニュアンスですから、「女の子たちを振ってごらん」という題にあたらしく付け直しました。そういえば、セルジュ自身、自堕落のすえに、妻のジェーン・バーキンJane Birkinに見限られてしまいましたね。
フランス語で歌う口の練習に最適の曲です。調子よく歌えるとスカッとします。
サリュ・レ・コパンSalut Les CopainsというグループのClip Officiel
イントロが「ドリフのズンドコ節」と似ているといわれますが、これは本当!興味のある方は聴いてみてください。
France Gall フランス・ギャル
Laisse tomber les filles 注1 女の子たちを振ってごらん
Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Un jour c'est toi qu'on laissera いつか振られるのはあんたのほうよ
Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Un jour c'est toi qui pleureras いつか泣くのはあんたのほうよ
Oui j'ai pleuré mais ce jour-là ええ私は泣いたけど 今度は
Non je ne pleurerai pas いいえ私は泣かないわ
Non je ne pleurerai pas いいえ私は泣かないわ
Je dirai c'est bien fait pour toi 注2 あんたにざまぁみろって言うわ
Je dirai ça t'apprendra 注3 思い知っただろうって言うわ
Je dirai ça t'apprendra 思い知っただろうって言うわ

Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Ça te jouera un mauvais tour 注4 あんたひどい目にあうわよ
Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Tu le paieras un de ces jours 注5 あんたいつか付けを返す羽目になるわ
On ne joue pas impunément お咎めなしじゃ遊べないのよ
Avec un cœur innocent うぶな子とね
Avec un cœur innocent うぶな子とね
Tu verras ce que je ressens 私の気持ちきっと分かるわ
Avant qu'il ne soit longtemps 注6 近いうちにね
Avant qu'il ne soit longtemps 近いうちにね

La chance abandonne 運命は見捨てるのよ
Celui qui ne sait ↓人を傷つけることしか
Que laisser les cœurs blessés ↑能のない人をね
Tu n'auras personne あんたには誰もいないわ
Pour te consoler なぐさめてくれる人が
Tu ne l'auras pas volé 注7 当然の報いよ

Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Un jour c'est toi qu'on laissera いつか振られるのはあんたのほうよ
Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Laisse tomber les filles 女の子たちを振ってごらん
Un jour c'est toi qui pleureras いつか泣くのはあんたのほうよ
Non pour te plaindre il n'y aura 同情してくれる人なんていないのよ
Personne d'autre que toi あんた自身以外に誰もね
Personne d'autre que toi あんた自身以外に誰もね
Alors tu te rappelleras そのとき思い出すわよ
Tout ce que je te dis là 私があんたに言ったことをぜんぶ
Tout ce que je te dis là 私があんたに言ったことをぜんぶ
[注]
1 laisser tomber「(恋人を)振る、棄てる」
2 (C’est) bien fait (pour qn).「(…には)当然の報いだ、いい気味だ」
3 Cela(Ça) vous(t') apprendra (à qc/inf.)「これで(…がどういうことか)分かるだろう」
4 jouer un mauvais tour à qn「…に一杯食わせる、をだます」
5 payer「(過ちなどを)購う」。 un de ces jours「そのうち、近いうちに」
6 avant que (ne) +subj.「…する前に」avant qu'il ne soit longtemps=avant longtemps「間もなく、近いうちに」
7 ne pas l’avoir volé「当然の報いである、自業自得だ」
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ミッシェル・エメールMichel Emerが作ったエディット・ピアフÉdith Piafの曲で、もっと知られているのは「アコーデオン弾きL'accordéoniste」です。エメールは1939年に戦地に赴く前にピアフにこの曲を渡したそうです。翌40年に創唱し、大戦前のピアフの最大のヒット(一説には85万枚)となりました。今回はこれを取り上げましょう。Arrêtez!という最後の絶叫は、何度聴いても背筋を凍らせます。
ちなみに、晩年に結婚したテオ・サラポThéo Sarapoとのデュエット「恋は何のためにÀ quoi ça sert l'amour?」もエメールの作品です。
1954年の録画。
シメーヌ・バディChimène Badiもなかなか聴かせてくれます。
L'accordéoniste アコーデオン弾き
Édith Piaf エディット・ピアフ
La fille de joie est belle 注1
Au coin de la rue Labas
Elle a une clientèle 注2
Qui lui remplit son bas 注3
Quand son boulot s'achève
Elle s'en va à son tour 注4
Chercher un peu de rêve
Dans un bal du faubourg
Son homme est un artiste
C'est un drôle de petit gars
Un accordéoniste
Qui sait jouer la java
ラバ通りの街角にいる
その娼婦は綺麗で
彼女は貢いでくれる
顧客を持っている
仕事が終わると
今度は彼女が楽しむ番で
ささやかな夢を求め
町外れのダンスホールに向かう
彼氏はミュージシャン
小柄な変わった男で
アコーデオン弾き
ジャヴァを弾くのがうまい

Elle écoute la java
Mais elle ne la danse pas
Elle ne regarde même pas la piste
Et ses yeux amoureux
Suivent le jeu nerveux
Et les doigts secs et longs de l'artiste
Ça lui rentre dans la peau
Par le bas, par le haut
Elle a envie de chanter
C'est physique 注5
Tout son être est tendu
Son souffle est suspendu
C'est une vraie tordue de la musique 注6
彼女はジャヴァを聴く
でもジャヴァを踊らない
ホールのフロアには目を向けず
愛のこもった目で
活き活きとした演奏を
演奏者の細く長い指を追う
音楽は頭のてっぺんからつま先まで
彼女の皮膚に入り込み
彼女は歌いたくなる
どうしようもないことで
全身がこわばり
呼吸は止まり
音楽に翻弄されてしまっている
La fille de joie est triste
Au coin de la rue Labas
Son accordéoniste
Il est parti soldat
Quand y reviendra de la guerre 注7
Ils prendront une maison
Elle sera la caissière
Et lui, sera le patron
Que la vie sera belle
Ils seront de vrais pachas 注8
Et tous les soirs pour elle
Il jouera la java
ラバ通りの街角にいる
その娼婦は悲しんでいる
彼女のアコーデオン弾き
彼は兵隊になって行ってしまった
戦争から帰ってきたら
二人で店を持ち
私はレジ係
彼のほうは店主
なんて人生は素晴らしいことでしょう
二人は本当の王侯になるわ
そして彼は夜ごと、私のために
アコーデオンを弾くわ
Elle écoute la java 注9
Qu'elle fredonne tout bas
Elle revoit son accordéoniste
Et ses yeux amoureux
Suivent le jeu nerveux
Et les doigts secs et longs de l'artiste
Ça lui rentre dans la peau
Par le bas, par le haut
Elle a envie de pleurer
C'est physique
Tout son être est tendu
Son souffle est suspendu
C'est une vraie tordue de la musique
彼女はジャヴァを小さな声で口ずさみ
それを聴く
愛しいアコーデオン弾きが目に浮かぶ
愛のこもった目で
活き活きとした演奏を
アコーデオン弾きの細く長い指を追う
音楽は頭のてっぺんからつま先まで
彼女の皮膚に入り込み
彼女は泣きたくなる
どうしようもないことで
全身がこわばり
呼吸は止まり
音楽に翻弄されてしまっている
La fille de joie est seule
Au coin de la rue Labas
Les filles qui font la gueule 注10
Les hommes n'en veulent pas 注11
Et tant pis si elle crève 注12
Son homme ne reviendra plus
Adieux tous les beaux rêves
Sa vie, elle est foutue 注13
Pourtant ses jambes tristes
L'emmènent au boui-boui 注14
Où y a un autre artiste
Qui joue toute la nuit
ラバ通りの街角にいる
その娼婦は1人ぼっち
女たちは嫌な顔をする
男たちは寄り付かない
彼女がくたばったならおあいにくさまさ
愛しい男はもう戻って来ない
すべての美しい夢よさようなら
彼女の人生はうち棄てられた
それでも悲しみを引きずる足は
彼女を安キャバレーへと運ぶ
そこでは別のミュージシャンが
夜通し演奏している

Elle écoute la java...
... elle entend la java
... elle a fermé les yeux
... et les doigts secs et nerveux ...
Ça lui rentre dans la peau
Par le bas, par le haut
Elle a envie de gueuler
C'est physique
Alors pour oublier
Elle s'est mise à danser, à tourner
Au son de la musique...
彼女はジャヴァに耳を傾ける…
…あのジャヴァが聴こえる
…目を閉じる…
…あの細く繊細な指…
音楽は頭のてっぺんからつま先まで
彼女の皮膚に入り込み
彼女はがなりたくなる
それはどうしようもないこと
そしてすべてを忘れるために
踊り始め、回り始める
音楽に合わせて…
Arrêtez!
Arrêtez la musique...
ヤメテ!
音楽を止めて…
[注]
1 fille de joie「娼婦」
2 clientèle集合名詞で「顧客(層)」、「ひいき」。女性名詞だが、娼婦の客なので実際は男性。
3 bas「へそくりの隠し場所」
4 à son tour「今度は…の番で」。客を楽しませた彼女だが、今度は自分が楽しむ番だということ。
5 physique「身体的な、生理的な」。身体の生理的な反応としてそうなってしまう。
6 tordu「頭のおかしい人」女性形は稀だとされる。C'estのceはde la musiqueを予告するとはとらえず、彼女がその音楽で頭が変になってしまったととらえた。
7 ここからの未来形の部分は彼女のひとりごとのような内容なので、elleを「私」と訳した。
8 pachaは、オスマン・トルコ帝国の軍司令官の称号で、安逸で豪奢な生活を送る人の譬えとして用いられる。
9 この節は、実際はいないアコーデオン弾きを思い浮かべている内容。
10 faire la gueule「嫌な顔をする」
11 Les hommes n'en veulent pas彼女を買おうとはしないことを言っている。
12 tant pis「しかたない、残念だ」。crever「くたばる」。女たち男たちの態度を代弁している。
13 elleはsa vie。foutre「ほうる、うっちゃる」。ここでは受動態。
14 boui-boui「いかがわしい場所」、特に「低俗な演芸場、キャバレー」。
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セルジュ・レジアーニSerge Reggianiの「ベルヴィルの理髪師Le barbier de Belleville」(1977年、作詞:クロード・ルメルClaude Lemesle、作曲:アリス・ドナAlice Dona)は、フランスの劇作家ボーマルシェBeaumarchaisの書いた戯曲「セビリアの理髪師Le barbier de Séville」および、それを元にしたジョアキーノ・ロッシーニGioachino Rossiniのオペラ「セビリアの理髪師Il barbiere di Siviglia」をもじった曲。そしてまた、レジアーニが最初は親の後をついで理髪師になろうとしたことも背景にあるようです。
Le barbier de Belleville ベルヴィルの理髪師
Serge Reggiani セルジュ・レジアーニ
Je suis le roi du ciseau,
De la barbiche en biseau,
Je suis le barbier de Belleville,
Des petits poils jusqu'aux cheveux
Je fais vraiment ce que je veux.
J'ai toujours été hanté
Par le désir de chanter
Manon, Carmen ou Corneville, 注1
Alors, avouez que c'est râlant
D'avoir la vocation sans le talent!...
僕は鋏の王だ、
縁取りした顎鬚の、
僕はベルヴィルの理髪師だ、
小さな体毛から髪の毛まで
僕はほんとに思いどおりにする。
僕はいつもつきまとわれる
歌いたいという欲望に
マノン、カルメンもしくはコルヌヴィルを、
さて、正直におっしゃい、けしからんことだと
才能なくして傾倒するものを持つなんて!…

Je n'ai pas de voix,
J'essaye quelquefois,
Mais ça ne vient pas,
Je ne suis pas doué pour l'opéra!...
僕はいい声を持っていない、
何度も試みた、
だがうまくいかない、
僕はオペラに向いていない!…
Les clients me comparent au
Fameux raseur Figaro, 注2
Je ne suis que le barbier de Belleville,
Je peux vous passer un shampooing,
Mais vous faire un cours de chant, point... , 注3
Je suis, je prends les paris
Le meilleur de tout Paris,
Pour tous les goûts, dans tous les styles,
Je fais un métier que j'adore,
Mais je voudrais chanter ''Toréador''... 注4
客たちは僕を比較する
かの有名な剃り屋フィガロと、
僕はベルヴィルの理髪師にすぎないんだ、
僕は皆さん方にシャンプーを施したい、
だがあなた方に歌を講義することは、なしだ…
僕は賭けるよ、僕はね
パリ全体で一番なんだ、
すべての好みに合わせ、すべてのスタイルで、
僕は自分の大好きな仕事をしている、
だが、「闘牛士の歌」を歌いたいんだよ…
Je n'ai pas de voix,
J'essaye quelquefois,
Mais ça ne vient pas,
Je ne suis pas doué pour l'opéra!...
僕はいい声を持っていない、
何度も試みた、
だがうまくいかない、
僕はオペラに向いていない!…
C'est comme ça, je ne suis ni
Caruso, ni Rossini,
Je suis le barbier de Belleville,
Je ne serai jamais, hélas,
Le partenaire de la Callas... 注5
Alors, de mon bistouri
Je taille les favoris 注6
Des bonnes gens de la grande ville,
En rêvant que je suis à la
Salle Garnier ou bien à La Scala... 注7
こういうことさ、僕は
カルーソでも、ロッシーニでもない
僕はベルヴィルの理髪師なんだ
僕はけっしてならないだろう、ああ、
カラスの相手役には…
だから、剃刀で
僕は大都会の善良市民の
頬髯を剃るのさ、
ガルニエのホールかスカラ座に
いることを夢見ながら

Je n'ai pas de voix,
J'essaye quelquefois,
Mais ça ne vient pas,
Je ne suis pas doué pour l'opéra!...
僕はいい声を持っていない、
何度も試みた、
だがうまくいかない、
僕はオペラに向いていない!…
[注] Belleville「ベルヴィル」パリ20区にある街
1 Manon Lescaut「マノン・レスコー」はジャコモ・プッチーニGiacomo Pucciniのオペラ。Carmen「カルメン」はジョルジュ・ビゼーGeorges Bizetのオペラ。Corneville→Cloches de Corneville「コルヌヴィルの鐘」ロベール・プランケットRobert Planquetteのオペラ。
2 Figaroは「フィガロ三部作」すなわち「セビリアの理髪師Le barbier de Séville」「フィガロの結婚Les noces de Figaro」「罪ある母La Mère coupable」の主人公。
3 chant, point は前行のshampooingと同じ発音。次行のpari「賭け」もその次の行のParis「パリ」に合わせている。
4 Toréador「闘牛士の歌」はオペラCarmen「カルメン」で歌われるアリア。
5 Maria Callas「マリア・カラス」は20世紀最高のソプラノ歌手とまで言われたギリシャ系アメリカ人の歌手。
6 favori複数形で「長い頬髯」
7 Salle Garnier「サル・ガルニエ」モナコのモンテカルロにあるオペラハウス。bien à La Scala「スカラ座」イタリアのミラノにあるオペラハウス
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今回は、パトリシア・カースPatricia Kaas の「通り過ぎる男たちLes hommes qui passent」。1990年の2枚目のアルバムScène de vieに収録されています。作詞はディディエ・バルブリヴィアンDidier Barbelivien、作曲はフランソワ・ベルンハイムFrançois Bernheim。バルブリヴィアンは、カースの「マドモアゼルはブルースを歌うMademoiselle chante le blues」も作詞しています。
ちなみに、バルブリヴィアン自身も歌手で、「もしもあなたに会えずにいたらQue serais-je sans toi」を取り上げ、そのページに彼について詳しく紹介していますので参照ください。
Les hommes qui passent 通り過ぎる男たち
Patricia Kaas パトリシア・カース
Les hommes qui passent Maman
M'envoient toujours des cartes postales
Des Bahamas Maman
Les hommes qui passent tout le temps
Sont musiciens artistes peintres
Ou comédiens
Souvent
通り過ぎる男たちは ママン
絵葉書をいつだって送ってくるわ
バハマのね、ママン
絶え間なく通り過ぎる男たちは
ミュージシャン、芸術家、画家、
あるいは俳優よ
時にはね

Les hommes qui passent Maman
M'offrent toujours une jolie chambre
Avec terrasse Maman
Les hommes qui passent je sens
Qu'ils ont le cœur à marée basse des
Envies d'océan
通り過ぎる男たちは ママン
いつだってきれいな部屋を与えてくれるわ
テラス付きのねママン
通り過ぎる男たちはね まるで
大洋を求める
干上がった心を持っているみたいなの
{Refrain:}
Les hommes qui passent pourtant
Qu'est-ce que j'aimerai en voler un
Pour un mois pour un an
Les hommes qui passent Maman
Ne me donnent jamais rien que de l'argent
通り過ぎる男たちを だけど
どれだけ手に入れたいことか
1ヶ月か1年にひとりでも
通り過ぎる男たちは ママン
お金しかくれやしない

Les hommes qui passent Maman
Leurs nuits d'amour sont des étoiles
Qui laissent des traces Maman
Les hommes qui passent violents
Sont toujours ceux qui ont gardé
Un cœur d'enfant perdant 注
通り過ぎる男たちの ママン
愛の夜は流れ星
軌跡を残すわ ママン
荒々しく通り過ぎる男たちは
いつだって迷い子の心を
持ち続けている男たちよ
{Refrain}
Les hommes qui passent Maman
Ont des sourires qui sont un peu
Comme des grimaces Maman
Les hommes qui passent troublants
Me laissent toujours avec mes rêves
Et mes angoisses d'avant
通り過ぎる男たちの ママン
微笑みはね ちょっと
見せかけみたいなものよママン
ひとの心をかき乱して
通り過ぎる男たちは
いつだって夢を抱かせたまま
まずは不安を抱かせたまま私を残して行った

{Refrain}
Les hommes qui passent Maman
…la la la la la la
通り過ぎる男たちは ママン
…ララララララ
Les hommes qui passent Maman
…la la la la la la
通り過ぎる男たちは ママン
…ララララララ
Les hommes qui passent pourtant
…la la la la la la
通り過ぎる男たちを だけど
…ララララララ
[注] perdantは「敗者の、勝ち目のない」「(くじなどが)外れた」の意味だが、韻を踏むために、enfant perdu「迷子」をenfant perdantとしている。
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アラン・スーションAlain Souchonを続けます。かつてのパリ左岸にアーティスト達が息づいていた時代を懐かしむ「リヴ・ゴーシュRive Gauche」(1999年、arbum:Au ras des pâquerettes)です。言葉遊びや、固有名詞が複数組み込まれた歌詞なので、訳はちょっとてこずりました。
Rive Gauche リヴ・ゴーシュ

Alain Souchon アラン・スーション
Les chansons de Prévert me reviennent 注1
De tous les souffleurs de vers...laine 注2
Du vieux Ferré les cris la tempête 注3
Boris Vian ça s’écrit à la trompette 注4
プレヴェールのいくつもの歌が僕の心によみがえる
(ヴェルレーヌの)詩句をささやく人たち(ガラス吹き職人たち)すべてによって、
老いたフェレの叫びはまるでタンペット(嵐)だ
ボリス・ヴィアンの場合はトランペットで曲が書かれる
Rive Gauche à Paris
Adieu mon pays
De musique et de poésie

Les marchands malappris
Qui ailleurs ont déjà tout pris
Viennent vendre leurs habits en librairie 注5
En librairie
パリのリヴ・ゴーシュよ
音楽と詩の
ふるさとよさらば
よそですべての店を手に入れた
粗野な商人どもが
本屋で服を売りにやって来る
本屋で

Si tendre soit la nuit 注6
Elle passe
Ô ma Zelda c’est fini Montparnasse 注7
Miles Davis qui sonne sa Gréco 注8
Tous les morts y sonnent leur Nico 注9
夜がいくら甘美だとしても
過ぎてしまうものだ
おおわがゼルダよモンパルナスは終わってしまった
愛人のグレコのために演奏するマイルス・デイビス
モリソン(死者)たちはすべて愛するニコのために演奏する
Ô mon île

Rive Gauche à Paris
Ô mon pays
De musique et de poésie
D’art et de liberté éprise
Elle s’est fait prendre, elle est prise
Elle va mourir quoi qu’on en dise 注10
Et ma chanson la mélancolise
パリのリヴ・ゴーシュよ
おおわが島よ
おお音楽と詩と
芸術と魅せられた自由の ふるさとよ
その自由は囚われ、束縛され
なにはともあれ死に瀕している

そして僕の歌はそれを憂鬱に歌う
La vie c’est du théâtre et des souvenirs
Et nous sommes opiniâtres à ne pas mourir
A traîner sur les berges venez voir
On dirait Jane et Serge sur le pont des Arts 注11
人生、それは劇場であり追憶である
そして僕たちは死ぬまいと頑なになる
土手をぶらついて見に来てごらん
ポン・デ・ザールの橋の上にジェーンとセルジュ
がいるようだよ
Rive Gauche à Paris

Adieu mon pays
Adieu le jazz adieu la nuit
Un état dans l’état d’esprit 注12
Traité par le mépris
Comme le Québec par les États-Unis
Comme nous aussi
Ah! le mépris
Ah! le mépris
パリのリヴ・ゴーシュよ
ふるさとよさらば
ジャズよさらば 夜よさらば
精神性の豊かな状態の国は
軽蔑を受ける
ケベックがアメリカに軽蔑されるのと同じように
僕たちと同じように
ああ軽蔑だ
ああ軽蔑だ
[注]
1 ジャック・プレヴェールJacque Prévertの詩を歌詞にした曲は数多く、「美しい星でÀ la belle étoile」のページにリストアップしてあるので参照されたい。
2 三重の言葉遊び。les souffleurs de vers「詩句をささやく人々」という表向きの表現のなかに、les souffleurs de verre「ガラスを吹き職人」が重ねられ、laine「羊毛」を意味なく加えることで、Verlaine「詩人ヴェルレーヌ」の名に重ねている。
3 les cris du vieux Ferréが倒置されている。レオ・フェレLéo Ferréは「ミラボー橋Le Pont Mirabeau」「春が来たC'est le printemps」「ジョリ・モームJolie môme」を取り上げたが、「幸せな愛はないIl n'y a pas d'amour heureux」「時の流れにAvec le temps」ほかもろもろ旧ブログから移すあるいはあらたに取り上げる予定。
4 ボリス・ヴィアンBoris Vianは、「僕はスノッブだJ'suis snob」「脱走兵Le déserteur」をすでに取り上げた。
5 本屋が服屋に取って代わられる。
6 Même si la nuit est très tendreの意味。
7ゼルダ・フィッツジェラルド Zelda Fitzgeraldは、「グレート・ギャツビーThe Great Gatsby」で知られるアメリカの小説家フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルドFrancis Scott Key Fitzgeraldの妻で作家。統合失調症を患い、48歳で死ぬまで二十代の若さを保ち続けたといわれる。
8 マイルス・デイビスMiles DavisはGréco と恋仲だった。sonnerは他動詞として複数の意味がある。「(管楽器を)吹く」「(ベルを鳴らして人を)呼ぶ」「ガッカリさせる、(顔などに)パンチを食らわす」「検査する」など。彼はトランペッターなので、目的語sa Grécoに対する愛をトランペットで歌い上げたととらえよう。
9 les morts y sonnent:1965年に結成されたアメリカのロックバンド、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドThe Velvet Undergroundの歌手スターリング・モリソンSterling Morrisonの名前の複数形にかけていて、les Morrison(ファミリーの名前なので単数形)と表記した歌詞もある。Nico:同グループに途中から参加したドイツ生まれの女性歌手ニコNico。ニコを推薦したアンディ―・ウォーホルによるバナナのジャケットで有名なアルバム「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコThe Velvet Underground and Nico」を出した後、ニコは脱退した。
10 quoi qu’on en dise=on peut tout dire,mais「ひとが何を言おうと」
11 On dirait…「…のようだ」。ジェーン・バーキンJane Birkinとセルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourg。二人の曲はそれぞれすでに多数取り上げた。
12 最初のétatは「国」、2番めは「状態」と、使い分けられている。
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今回取り上げるのは、アラン・スーションAlain Souchonの最大のヒット曲。1993年のアルバム:C'est déjà çaに収録されているFoule sentimentaleです。この曲の邦訳名としては、「センチメンタルな大衆」が一般的なようで、原名の読み風に「フール・センチメンタル」としているのも見かけます。それではまるでバゲット・サンドイッチみたいですから、「フール・サンティマンタル」にすべきじゃないでしょうか。歌詞のなかでのこの言葉の意味合いなどを考えた上で、このページでは、新規の名称「センチメンタル族」を用いることにしました。
シャンソンには、何らかのメッセージが込められた歌がたくさんあります。この曲は、消費社会に対して疑問をなげかける内容。ですが、この曲が流行りCDが売れたことは、消費を促進することになったかも…。
アラン・スーションに関しては、先に取り上げた「ボクは10才J'ai dix ans」で簡単にご紹介しています。「女の子のスカートの下 Sous les jupes des filles」も取り上げました。ほかにも「インチキ野郎Bidon」などおもしろい曲が多数あり、個人的には「ジムのバラードLa ballade de Jim」が好きです。これらもいずれ取り上げましょう。
Foule sentimentale センチメンタル族
Alain Souchon アラン・スーション
Oh la la la vie en rose 注1
Le rose qu'on nous propose 注2
D'avoir les quantités d'choses
Qui donnent envie d'autre chose
Aïe, on nous fait croire
Que le bonheur c'est d'avoir
De l'avoir plein nos armoires
Dérisions de nous dérisoires car
オー・ラ・ラ・バラ色の生活
僕らが勧められるバラ色ってのは
たくさん物を持つことさ
他の物をさらに欲しくなる物をね
やれやれ、僕らは信じさせられる
幸せって持つことだって
タンスいっぱい持つことだって
ちんけな僕らに見合ったちんけなものをね なにせ

Foule sentimentale 注3
On a soif d'idéal
Attirée par les étoiles, les voiles
Que des choses pas commerciales
Foule sentimentale
Il faut voir comme on nous parle 注4
Comme on nous parle
センチメンタル族なのさ
理想を渇望するんだ
商業的ではない物
星々や船の帆に引きつけられる
センチメンタル族なのさ
彼らがどんな風に僕らに語るか知るべきだよ
どんな風に語るか
Il se dégage
De ces cartons d'emballage
Des gens lavés, hors d'usage
Et tristes et sans aucun avantage
On nous inflige
Des désirs qui nous affligent
On nous prend faut pas déconner dès qu'on est né 注5
Pour des cons alors qu'on est 注6
Des
洗脳された人々用の、不要の
そしてくだらなくてなんら有用でない
これらの段ボール箱から
彼は自分を解放する
僕らに苦しみを与える欲望を
ひとは僕らに押し付ける
ひとは僕らをまぬけ扱いするが
のっけから馬鹿を言うんじゃない
だって僕らも

Foules sentimentales 注7
Avec soif d'idéal
Attirées par les étoiles, les voiles
Que des choses pas commerciales
Foule sentimentale
Il faut voir comme on nous parle
Comme on nous parle
センチメンタル族の仲間なのさ
理想への渇望を抱き
星々や船の帆に
商業的ではない物だけに引きつけられる
センチメンタル族なのさ
彼らが僕らにどんな風に語るか知るべきだよ
どんな風に語るか

On nous Claudia Schieffer 注8
On nous Paul-Loup Sulitzer
Oh le mal qu'on peut nous faire
Et qui ravagea la moukère 注9
Du ciel dévale
Un désir qui nous emballe 注10
Pour demain nos enfants pâles
Un mieux, un rêve, un cheval
ひとは僕らにクラウディア・シーファーを押し付ける
ひとは僕らにポール=ルー・シュリッツェルを押し付ける
おー、ひとが僕らになしうる悪
そしてかつて女性を苛んだ悪のなんたるや
僕らを熱狂させるひとつの願望が
空から降ってくる
明日 僕らのひ弱な子供たちが
マシなことを、夢を、馬を、という
Foule sentimentale
On a soif d'idéal
Attirée par les étoiles, les voiles
Que des choses pas commerciales
Foule sentimentale
Il faut voir comme on nous parle
Comme on nous parle
センチメンタル族なのさ
彼らは理想を渇望するんだ
星々や船の帆に
商業的ではない物だけに引きつけられるんだ
センチメンタル族なのさ
彼らが僕らにどんな風に語るか知るべきだよ
どんな風に語るか

[注]
1 la vie en roseはご存じ、エディット・ピアフのシャンソンのタイトルに掛けた表現。2行目のroseは男性名詞なので「バラ色」。「花のバラ」のroseは女性名詞。今回の歌詞では、バラ色は否定的なニュアンスで用いられている。
2 onは、人間一般、不特定の人、私たち、あなたがた、彼らなど複数の意味でもちいられる語で、この歌詞では、商業的価値を押し付ける側を示す場合と、foule sentimentaleの側すなわち自分の側を示す場合とがあり、読み分ける必要がある。
3 foule sentimentaleは、直訳すれば「感じやすい大衆」で、sentimentalは、「おセンチな」という意味ではない。また、fouleは「民衆、大衆」という集合名詞で、主語として用いられた場合、動詞は単数形・複数形いずれも可能。
4 onはここではfoule sentimentaleを指し、すなわち自分も含まれるわけだが、「彼ら」と訳した。間接目的語のnousは「ひとに」くらいの意味。
5 il ne faut pas déconner「馬鹿言うんじゃない」のil neが省略されている。dès qu'on est néは、déconnerとの語呂を合わせで、ここのonも次行のonもnousの側。直訳すれば、「生まれるやいなや」。
6 conは「馬鹿」。alors que…は「…なのに」。
7 注3で示したfoule sentimentaleがここでは複数形にされている。前節のqu'on est des foules sentimentalesとつながり、des=de+lesで、on「僕たち」がles foules sentimentalesの一部であるということ。
8 Claudia Schiefferはスーパーモデルで女優、Paul-Loup Sulitzerは実業家で、マネーゲームを題材にした小説で知られるベストセラー作家。ともに大消費化社会の象徴ということで、その名前が動詞的に用いられている。
9 moukèreは「女性」を示す単語で、もとはイスラム系の語だったらしい。
10 emballerは話し言葉で「熱中させる」の意味。un désir qui nous emballeと単数で示されており、前出のdes désirs qui nous affligentという悪しき諸願望と対比的に、ひとつのよき願望を示している。具体的には、後続の内容で、子供たちがいい夢を持つようになること。
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シャルル・トレネCharles Trenetの「太陽と月Le soleil et la lune」というメルヘンティックな曲です。1939年、作詞:トレネ自身、作曲:トレネとラズリーLasry。アルバム:Le Fou Chantant!に収録されています。太陽と月がランデヴーしようとするお話。以前取り上げた、アンリ・サルヴァドールHenri Salvadorの「ミツバチとチョウチョL'abeille et le papillon」もジュリエット・グレコJuliette Grécoの「小さな魚と小さな鳥Un petit poisson,un petit oiseau」もハッピーエンドでしたが、太陽と月はすれ違いのまま?
Le soleil et la lune 太陽と月
Charles Trenet シャルル・トレネ
Sur le toit de l'hôtel où je vis avec toi
Quand j'attends ta venue mon amie
Quand la nuit fait chanter plus fort et mieux que moi
Tous les chats tous les chats tous les chats
Que sur les toits que répètent les voix 注1
De ces chats de ces chats qui s'ennuient
Des chansons que je sais que je traduis pour toi
Les voici les voici les voilà
僕が君と泊まっているホテルの屋根の上に
いとしい人、僕が君が来るのを待っているとき
そのとき、ネコたちみんなネコたちみんなネコたちみんなを
夜が、僕よりも大声でそしてもっとうまく歌わせる
退屈しているネコたちのネコたちの声は
どうやら屋根の上で反響しているんだ
その歌を君のために訳してあげることができるよ
こんな歌こんな歌だよほら

{Refrain :}
Le soleil a rendez-vous avec la lune
Mais la lune n'est pas là et le soleil l'attend
Ici-bas souvent chacun pour sa chacune 注2
Chacun doit en faire autant
La lune est là, la lune est là
La lune est là, mais le soleil ne la voit pas
Pour la trouver il faut la nuit
Il faut la nuit mais le soleil ne le sait pas et toujours luit
Le soleil a rendez-vous avec la lune
Mais la lune n'est pas là et le soleil l'attend
Papa dit qu'il a vu ça lui… 注3
太陽が月とデートの約束をしたよ
でも月は来なくて太陽は待ってる
地上でもしょちゅうオスはメスを待つ
オスはそうしなきゃならないの
月がやって来た、月がやって来た
月がやって来た、でも太陽は会えないの
月に会うには夜にならなきゃ
夜にならなきゃいけないのに、太陽はそれがわからず輝きっぱなし
太陽が月とデートの約束をしたの
でも月は来なくて太陽は待ってる
パパはねそういう光景を見たって言ってるよ…
Des savants avertis par la pluie et le vent
Annonçaient un jour la fin du monde
Les journaux commentaient en termes émouvants
Les avis les aveux des savants
Bien des gens affolés demandaient aux agents
Si le monde était pris dans la ronde 注4
C'est alors que docteurs savants et professeurs
Entonnèrent subito tous en chœur 注5
雨や風によって気づいた知恵者たちは
ある日、地球の終わりを知らせる
新聞は煽るような言葉遣いで
知恵者たちの意見や証言を解説する
取り乱した多くの人々が官吏たちに尋ねる
地球が止まっちゃったんじゃないかと
その時、先生たち知恵者たちや学者たちは
突然、みんな声をそろえて歌いだす
{Refrain}
Philosophes écoutez cette phrase est pour vous 注6
Le bonheur est un astre volage
Qui s'enfuit à l'appel de bien des rendez-vous
Il s'efface il se meurt devant nous
Quand on croit qu'il est loin il est là tout près de vous
Il voyage il voyage il voyage
Puis il part il revient il s'en va n'importe où
Cherchez-le il est un peu partout…
哲学者たちお聞きなさい、このフレーズはあなたたちのためのもの
幸福は移り気な星で
ランデヴーしょうと呼びかけると逃げ出す
幸福は姿を消し僕たちの前で死んでしまう
幸福が遠くにいると思っているときにはあなた方のすぐ近くにいる
幸福は旅をする旅をする旅をする
そして出て行っては戻って来てどこにだって行ってしまう
幸福を探しなさい それはきっとあちこちにいるよ…

[注]
1 この行が分かりにくかったが、les voix「声」がsur les toits「屋根の上に」répèter「反響する」ということで、たくさんの猫が大きな声で上手に歌っているように聴こえたということだろう。
2 chacun「各人、各々」は男性でchacuneは女性形でその恋人。猫の場合として「オス」「メス」と訳した。
3 papaが見たのは、太陽が輝きっぱなしで月を待っている状況。つまり夜にならないので、次の節の、この世の終わりじゃないかという内容につながる。
4 pris(prendreの過去分詞)は「つかまった、固まった」の意味。rondeは「輪舞、ロンド」あるいは「(警備員・兵士などの)巡回、見回り」。地球が回転を止めたんじゃないかと言っている。
5 subitoはラテン語
5 un peuは反語的な強調
6 cette phraseこのフレーズとはルフランの部分、すなわち猫たちの歌のこと。
7 le bonheur「幸福」とは「月」のことを言う、というより、「月」 とは「幸福」のことを言っていたわけだ。
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日本語でよく歌われる「別離」の原曲は、ニノ・フェレールNino Ferrerが作り歌ったC'est irréparableで、1963年に出した最初のアルバム(45回転のEP)に入っていました。1965年に、ミーナMinaがUn anno d'amoreの曲名でイタリア語で(日本語でも)歌い、それがヒットしたことで、フェレールの元の歌が注目されるようになったそうです。フランス語ではダリダDalidaも歌っています。日本語の歌と比べて勢いがあり、印象がまったく異なりますので、本語の歌のイメージから分離させたいということで、原題を直訳した「もう取り返せない」という題名を用いることにし、「別離」という邦題は副題としました。フェレールに関しては、先に取り上げた「泉の傍の家La maison près de la fontaine」のページで解説していますので参照ください。
ミーナのUn anno d'amore
C'est irréparable もう取り返せない(別離)
Nino Ferrer ニノ・フェレール
Je sais que c'est fini
Je sais mais je t'en prie
Écoute-moi quand même
Écoute-moi car je t'aime
Depuis qu'on s'est quitté
Je suis seul étonné
Mes jours sont tellement lents
Et vides et obsédants
Je suis seul, la nuit vient
Et je me souviens
終ったことだと分かってるさ
分かってる だがお願いだ
それでも聞いてくれ
聞いてくれ 君を愛しているのだから
別れてこのかた
僕はひとり困惑している
日々はこんなにも遅々として過ぎ
空虚で執拗だ
僕はひとり、夜になると
想い出す
D'un an d'amour
Les matins indolents
Les soirs de pluie
Les vacances et le vent
Et ton corps blond
De soleil et de sable
Un an d'amour
C'est irréparable
Un an d'amour
C'est irréparable
恋の1年を
けだるい朝
雨の夜
ヴァカンスと風
そして太陽と砂に染まった
君の黄金色の体
恋の1年間
それはもう取り返せない
恋の1年間
それはもう取り返せない

Maintenant ce n'est plus moi
Un autre est avec toi
Et toi, tu lui souris
Comme tu m'avais souri
Et ce sourire, tu vois
Je te hais pour cela
Je te hais mais je t'aime
Au fond ça revient au même 注1
Je t'aime, le comprends-tu ?
T'ai-je vraiment perdue ?
今ではもう僕ではなく
ほかの男が君といっしょにいる
そして君は、彼に微笑みかける
かつて僕に微笑みかけたように
その微笑み、そうさ
僕はそのせいで君が憎い
君が憎いけれど君を愛している
つまり結局はあい変わらず
君を愛している、分かってくれるか?
僕は本当に君を失ってしまったのか?
Un an d'amour
Des années de regrets
Des feuilles mortes 注2
Et le temps passé
L'automne emporte
Les rêves et les fables
Un an d'amour
C'est irréparable
L'automne emporte
Les rêves et les fables
Un an d'amour
C'est irréparable
恋の1年間
悔恨の数年間
枯葉
過ぎ去った時
秋は運んでくる
夢と寓話を
恋の1年間
それはもう取り返せない
秋は運んでくる
夢と寓話を
恋の1年間
それはもう取り返せない

[注]
1 au fond「実は、結局は」。ça revient au même「(いずれにせよ結局は)同じことだ」。
2 シャンソンの名曲「枯葉Les feuilles mortes」に歌われるように、夏の恋が秋には去っていくということをdes feuilles mortesは象徴し、1年間の恋と言いながら、恋の経過と季節の移り変わりを重ねた表現になっている。
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「釣りができますIci l'on pêche」という曲は、1934年にジャン・トランシャンJean Tranchantが作り歌いました。彼は1904年にパリで生まれました。たいへん多才な人で、シンガー・ソングライターの走りで、ピアノも弾く美貌の歌手だっただけではなく、絵画や造形にも才能を発揮しました。恋の歌を作るのが得意で、30年代にはリュシエンヌ・ボワイエLucienne Boyerやジョゼフィン・ベーカー Joséphine Baker、マリアンヌ・オズワルド、Marianne Oswald、リス・ゴーティLys Gauty、マルレーネ・ディートリッヒMarlène Dietrichなどに、そしてのちにはジュリエット・グレコJuliette Grécoに曲を提供しました。スィング調のルフランの使用はシャルル・トレネCharles Trenetなどにインスピレーションを与えました。ホモセクシュアルであることを隠していましたが、男女の恋を歌うかに見える歌詞には、秘められたもう一つの意味を読み取ることができるとも言われます。後年、スイスやベルギー、南アメリカなどに移り住んだのちにフランスに戻り、さほどの栄光を勝ち取ることなく1972年に世を去りました。
ジャン・トランシャンJean Tranchantが、ステファン・グラッペリStéphane Grappelliのヴァイオリンとジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardtのギターと共に自身もピアノを弾いて歌っています。
ジェルメーヌ・サブロンGermaine Sablonがジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardt のギター+オーケストラの伴奏で歌っています。
ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの歌は先の二人よりずっと新しく、歌唱、録音ともに素晴らしいです。
Ici l'on pêche 釣りができます
Jean Tranchant ジャン・トランシャン
Près du grand chemin de halage
Où les bateaux vont doucement
Dans un berceau de verts feuillages
Se cache un petit restaurant
L'air embaume les pommes frites
Les gaufres et les lilas blancs
Les bleuets et les marguerites
Prennent rendez-vous sous les bancs
Oui, sous les bancs
船が静かに通っていく
大きな引き船道の近く
緑の葉むらのトンネルのなかに
小さなレストランが隠れている
空気はフライドポテト
ゴーフルや白いリラの匂いがし
ヤグルマギクやマーガレットが
ベンチの下でランデヴーしてる
そうさ、ベンチの下で

Allez-y donc, qui vous empêche ?
C'est à côté, pas loin d'ici
Ça porte un nom : "Ici l'on pêche"
Vous y pêcherez aussi
行こうよ、誰が君の邪魔をするというんだい?
すぐ近くだよ、ここから遠くないよ
こんな名前がついている「ここは釣り場」と
君もそこで釣りをしようよ
La patronne est une amoureuse
Le patron est un amoureux
Le vin est bon, l'auberge heureuse
Et les repas sont plantureux
Dans les massifs partout fredonnent
Des mots d'amour et des chansons
Et tous les baisers qu'on se donne
Ne sont pas mis sur l'addition
Sur l'addition
女店主は恋する女で
店主は恋する男
ワインは美味しくて、いい宿屋
そして食事はたっぷり
植え込みのなかでは、あちこちで
愛の言葉や歌が聞こえる
そして交わすくちづけはすべて
勘定書には記載されない
勘定書には

Allez-y donc, qui vous empêche ?
C'est à côté, pas loin d'ici
Ça porte un nom : "Ici l'on pêche"
Vous y pêcherez aussi
行こうよ、誰が君の邪魔をするというんだい?
すぐ近くだよ、ここから遠くないよ
こんな名前がついている「ここは釣り場」と
君もそこで釣りをしようよ
C'est là qu'un grand jour de ma vie
J'ai rencontré sur mon chemin
Celle qui devint ma folie
Et je l'ai prise par la main
Elle avait de belles manières
Je l'ai suivie sans sourciller
Et si elle est ma prisonnière
Je suis aussi son prisonnier
僕の人生の大切な日はこの日
僕は道すがら出会ったんだ
その彼女は僕を夢中にさせたのさ
そして僕は彼女の手を取った
彼女は優美な物腰だった
僕は案じることなく彼女について行った
そして彼女は僕のとりこになり
僕もまた彼女のとりこになった
Allez-y donc, qui vous empêche ?
Je suis bien sûre que vous irez
Ça porte un nom : "Ici l'on pêche"
m m m m m m
Comme moi, vous pêcherez
行こうよ、誰が君の邪魔をするというんだい?
きっと君は行くと思うよ
こんな名前がついている「ここは釣り場」と
ム ム ム ム ム ム
僕のように、君も釣りをするんだよ

ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの歌う女性ヴァージョンを、語句の異なる5節目のみ示します。
C'est là qu'un grand jour de ma vie
J'ai rencontré sur mon chemin
C’est lui qui devint ma folie
Et qu'il m'a prise par la main
Il avait de belles manières
Je l'ai suivi sans sourciller
Et je suis sa prisonnière
Il est aussi mon prisonnier
Ah ah ah ah
私の人生の大切な日はこの日
私は道すがら出会った
それは彼、私を夢中にさせた人
そして彼は私の手を取った
彼は優美な物腰だった
私は怖じることなく彼について行った
そして私は彼のとりこになり
彼もまた私のとりこになった
ア ア ア ア
[注] "Ici l'on pêche"は、邦題としては一般的な「釣りができます」としたが、正確に訳すと「ここで人は釣りをする」となる。そして、auberge(レストランを兼ねた宿屋)にそういう名前が付いているということなので、「釣りをするところ」としたほうがよかろう。だが、単に「魚を釣る」ということだろうか?歌詞の中に、ここが恋人たちのための場所であることを意味する内容が含まれているので、「女(男)を釣る」といった暗喩かもしれない。さらには、pêcherと類似した動詞のpécherは、「(宗教上の)罪を犯す」という意味であり(エディット・ピアフÉdith Piafの「メア・キュルパ(夜は恋人) Mea culpa」を参照されたい)、これをかけているのではないかとも思う。
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今回は、アリスティード・ブリュアンAristide Bruantが1887年に作った「サン=ラザールにてÀ Saint-Lazare」。1892 年に創唱したユージェニー・ビュッフェEugénie Buffetの歌はこちらで聴けます。
サン=ラザールSaint-Lazareとは、パリ第10区のサン=ラザール刑務所Prison Saint-Lazareのこと。もともと12世紀にハンセン病の病院として建造され、17世紀に刑務所として使用されるようになり、1789年のフランス革命時にはロベスピエールを中心とするジャコバン派が行った恐怖政治では多くの人々が投獄されました。1857年頃からは、刑務所、売春婦の収容更生施設、親が娘たちを託す感化院という3つのセクションで警視庁が管轄するようになりました。この曲はこの時代に刑務所に投獄された女性の立場の歌詞でしょうが、著名な女囚の誰かではなく、一人の売春婦のように思われます。
その後、1927年に閉鎖された後、1955年にはサン=ラザール病院となりました。病院は1998年に閉鎖され、2005年には歴史的建造物に指定されました。(以上、Wikipédiaフランス語の記事より)
パタシューPatachou
バルバラBarbara
ほかには、ジェルメーヌ・モンテロGermaine Montero、リナ・マルジーLina Margy、ヴェロニク・サンソンVéronique Sansonなどが歌い、ムルージMouloudjiは朗読しています。
À Saint-Lazare サン=ラザールにて
Barbara バルバラ
C'est de la prison que j't'écris
Mon pauvr' Polyte 注1
Hier je n'sais pas c'qui m'a pris
À la visite
C'est des maladies qui s'voient pas
Quand ça s'déclare
N'empêche qu'aujourd'hui j'suis dans l'tas 注2
À Saint-Lazare
牢獄のことをあんたに書くわ
いとしいポリット
昨日、やって来て
私を捕らえたのが誰なのか分からない
襲ってきたときに
姿を見せないものそれはまるで病気よ
ともかくも、現に私は
サン=ラザールの集団のなかにいるのよ

Mais pendant c'temps-là, toi, vieux chien,
Qué'tu vas faire ?
Je n'peux t'envoyer rien de rien,
C'est la misère.
Ici tout l'monde est décavé,
La braise est rare ; 注3
Faut trois mois pour faire un linvé 注4
À Saint-Lazare.
だがこの間、おいぼれ犬のあんたは、
何をしようとしているの?
私はあんたに何も届けられない、
ひどいことだわ。
ここでは皆すべて巻き上げられ
お金はわずかしかない;
1リーブル作るのに3ヶ月かかるわ
サン=ラザールでは。
Vrai d't'savoir comme' ça sans l'sou
Je m'fais une bile
T'es capabl' de faire un sal' coup
J'suis pas tranquille.
T'as trop d'fierté pour ramasser
Des bouts d'cigare
Pendant tout l'temps que j'vas passer
À Saint Lazare
一文無しでいることがどんなことか
私は気が気じゃないの
あんたは裏の手を使えるわ
私は心穏やかじゃない。
あんたはたばこの吸殻を集めるには
あまりにも自尊心がありすぎる
サン=ラザールで
私が時を過ごしている間に

Va t'en trouver la grand' Nana
Dis que j'la prie
D'casquer pour moi, j'y rendrai ça
À ma sortie
Surtout n'y fais pas d'boniments
Pendant qu'je m'marre
Et que j'bois des médicaments
À Saint-Lazare
偉大なるナナを探して来て
私がお願いしていると言って
私にお金を出して、あとで返すからと
出所するためにね
ふざけたり
薬を飲んだりして
出まかせを言っているんじゃないわ
サン=ラザールで
Et puis mon gros loup, bois pas trop 注5
Tu sais qu't'es teigne
Et quand t'as un petit coup d'sirop 注6
Tu fous la beigne
Si tu t'faisais coffrer un soir
Dans un' bagarre
Y'a pus personn' qui viendrait m'voir
À Saint-Lazare
それからねお前さん、飲みすぎないでよ
あんたは根性が悪い
あんたがシロップをちょっぴり飲むと
あんたは一発殴る
もしあんたがある晩
けんかなんかして牢屋に入ったら
私に会いに来る人はいなくなるわ
サン=ラザールに
J'finis ma lettre en t'embrassant
Adieu mon homme
Malgré qu'tu sois pas caressant
Ah j't'ador' comme
J'adorais l'bon Dieu comm' papa
Quand j'étais p'tite
Et qu'j'allais communier à
Sainte-Marguerite.
あんたにキスを送りながら手紙を終えるわ
さよなら私のいい人
あんたが優しくしてくれなくても
ああ私はあんたを愛している
私が小さかったときに
聖マルグリット教会に
聖体拝領に行ったときに
神さまをパパとして愛したみたいに
[注]
1 Polyte「ポリット」は男性の名前Hippolyte「イポリット」の愛称。
2 N'empêche que(ou Il n'empêche que)+ind.「それにもかかわらず、…であることに変わりはない」。dans le tas「多くの物(人)の中に」。
3 braise「赤くおこった炭火」が本義だが、「金銭」の意味もある。
4 linvé=pièce de un franc「中世から17世紀に用いられた金貨(銀貨)、リーヴルlivreに等しい貨幣単位」
5 mon gros loupは、子供や親しい者に対する愛称。
6 sirop「シロップ」はここでは酒のことを言う。1行目のtropと韻を踏むため。

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ミレイユ・マチューMireille Mathieuが1970年に歌ってヒットした「気まぐれを許してPardonne-moi ce caprice d'enfant」は、イタリア生まれのシンガー・ソングライターであるパトリシア・カルリPatricia Carliが作った曲で、ポール・モーリアPaul Mauriatの演奏でも知られています。
Pardonne-moi ce caprice d'enfant 気まぐれを許して
Mireille Mathieu ミレイユ・マチュー
{Refrain:}
Pardonne-moi ce caprice d'enfant
Pardonne-moi, reviens moi comme avant
Je t'aime trop et je ne peux pas vivre sans toi
Pardonne-moi ce caprice d'enfant
Pardonne-moi, reviens moi comme avant
Je t'aime trop et je ne peux pas vivre sans toi
私の子どもじみた気まぐれを許して
許して、以前のように私のところに戻って来て
あなたをあまりにも愛していて あなたなしじゃ生きていけない
私の子どもじみた気まぐれを許して
許して、以前のように私のところに戻って来て
あなたをあまりにも愛していて あなたなしじゃ生きていけない
C'était le temps des "je t'aime"
Nous deux on vivait heureux dans nos rêves
C'était le temps des "je t'aime"
Et puis j'ai voulu voler de mes ailes
Je voulais vivre d'autres amours
D'autres "je t'aime", d'autres "toujours"
Mais c'est de toi que je rêvais la nuit
Mon amour
「愛してる」という言葉を交わし合っていたあの頃
私たちはともにふたりの夢のなかに生きていた
「愛してる」という言葉を交わし合っていたあの頃
そして私は自分の翼で飛び立ちたくなった
別の恋を生きたくなったの
別の「愛してる」、別の「いつまでも」を
でも私が夜、夢に見たのはあなただったわ
愛するひと

{au Refrain}
C'était vouloir et connaître
Tout de la vie, trop vite peut-être
C'était découvrir la vie
Avec ses peines, ses joies, ses folies
Je voulais vivre comme le temps
Suivre mes heures, vivre au présent
Plus je vivais, plus encore je t'aimais
Tendrement
それは望むことであり知ることだったわ、たぶん
人生のすべてを、駆け足で
それは人生を目のあたりに見ることだった
その苦しみ、その喜び、その熱情を
時が私の時間についてくるように生きること、
今を生きることを私は望んでいた
生きれば生きるだけ、ますます私はあなたが
心底いとおしくなったわ
{au Refrain}

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シャルル・アズナヴールCharles Aznavourの「いや、僕は何も忘れてはいない(遠い想い出)Non, je n'ai rien oublié」は、前回のニコレッタNicolettaの「再会Je n'pourrai jamais t'oublier」の男性版のような曲です。でもこちらは再会を機に昔の恋が蘇る敗者復活戦。1971年に作られ、作詞はシャルル・アズナヴール自身、作曲はジョルジュ・ガルヴァレンツGeorges Garvarentz。邦題は、原題を直訳した「いや、僕は何も忘れてはいない」を用いることにしました。一般に知られている「遠い想い出」は、歌詞内容とちょっとずれている気がしますが、添えることにしました。
ニコレッタの曲では、女性側の一方的な語りかけであり、男性にはもう新しい彼女がいるという状況でしたが、アズナヴールの曲では、饒舌すぎる(!)男性側の言葉しか出てきませんが、女性の受け答えが伺え、互いに新しい相手はまだいなくて、また二人でやり直そうじゃないかという提案で終わります。
Non, je n'ai rien oublié いや、僕は何も忘れてはいない(遠い想い出)
Charles Aznavour シャルル・アズナヴール
Je n´aurais jamais cru qu´on se rencontrerait
Le hasard est curieux, il provoque les choses
Et le destin pressé un instant prend la pause
Non je n´ai rien oublié
僕たちがまた会うなんてまったく思いもしていなかった
偶然というものは奇妙なもので、いろんな事態を引き起こす
そして急ぎ足の運命は一時中断する
いや、僕は何も忘れてはいない
Je souris malgré moi, rien qu´à te regarder
Si les mois, les années marquent souvent les êtres
Toi, tu n´as pas changé, la coiffure peut-être
Non je n´ai rien oublié
僕は心ならずも微笑んだ、ただ君を見つめるために
もしも歳月が人の心に痕跡を留めることがしばしばあるとすれば
君、君は変えていない、髪型をたぶん
いや、僕は何も忘れてはいない

Marié, moi? allons donc, je n´en ai nulle envie 注1
J´aime ma liberté, et puis, de toi à moi 注2
Je n´ai pas rencontré la femme de ma vie
Mais allons prendre un verre, et parle-moi de toi
結婚、僕が?まさか、まったくそんな気はないよ
僕は自由がいいのさ、そして、君と僕だけの話だが
生涯連れ添うような女性に巡り会わなかった
だが乾杯しよう、それから君のことを話してくれ
Qu´as-tu fait de tes jours? es-tu riche et comblée?
Tu vis seule à Paris? mais alors ce mariage?
Entre nous, tes parents ont dû crever de rage
Non je n´ai rien oublié
君は何をやっているの?裕福で満足しているのかい?
パリにひとりで住んでいるの?だがさてこの結婚は?
僕たちのことに関し、君の両親は怒りに狂うしかなかった
いや、僕は何も忘れてはいない
Qui m´aurait dit qu´un jour sans l´avoir provoqué
Le destin tout à coup nous mettrait face à face
Je croyais que tout meurt avec le temps qui passe
Non je n´ai rien oublié
彼らは僕に言ったようだ いつか、ことさら引き起こすまでもなく
運命に僕たちが直面する事態が突然起こるだろうと
僕は時が過ぎゆくにつれすべて消え去ると信じていた
いや、僕は何も忘れてはいない
Je ne sais trop que dire, ni par où commencer 注3
Les souvenirs foisonnent, envahissent ma tête
Mon passé revient du fond de sa défaite
Non je n´ai rien oublié, rien oublié
どれだけ言えばいいのか、どこから始めたらいいのかも分からない
想い出は溢れるほどで、僕の脳裏を満たしている
僕の過去は敗北の底から立ち戻って来る
いや、僕は何も忘れてはいない、何も忘れてはいない
A l´age où je portais mon cœur pour toute arme
Ton père ayant pour toi bien d´autres ambitions
A brisé notre amour et fait jaillir nos larmes
Pour un mari choisi sur sa situation
僕が自分の心を唯一の拠り所としていた時期に
君の父親は君のためにまた別のもくろみを抱いて
僕たちの愛を壊し僕たちの涙を溢れ出させた
彼の立場上の理由で選んだ夫のために
J´ai voulu te revoir mais tu étais cloîtrée
Je t´ai écrit cent fois, mais toujours sans réponse
Cela m´a pris longtemps avant que je renonce
Non je n´ai rien oublié
君にまた会いたかったが君は監禁されていた
僕は何度も君に手紙を書いた、だがいつも返事は返って来なかった
諦めるまでには長い間かかった
いや、僕は何も忘れてはいない
L´heure court et déjà le café va fermer
Viens je te raccompagne à travers les rues mortes
Comme au temps des baisers qu´on volait sous ta porte
Non je n´ai rien oublié
時は短くもうカフェは閉まるところだ
さぁ静まり返った通りを横切って君を送って行こう
君の家の戸口で口づけを交わした時代のように
いや、僕は何も忘れてはいない

Chaque saison était notre saison d´aimer
Et nous ne redoutions ni l´hiver ni l´automne
C´est toujours le printemps quand nos vingt ans résonnent
Non je n´ai rien oublié, rien oublié
どの季節も僕たちの愛の季節だった
そして僕たちは冬も秋も恐れはしなかった
僕たちの青春が鳴り響いていた頃はいつだって春だった
いや、僕は何も忘れてはいない、何も忘れてはいない
Cela m´a fait du bien de sentir ta présence
Je me sens différent, comme un peu plus léger
On a souvent besoin d´un bain d´adolescence 注4
C´est doux de revenir aux sources du passé
君の存在を感じることは僕を元気にさせてくれる
自分が変わった気がする、少し気分が軽くなったようだ
時々は青春の気分に浸ることが必要だ
過去の源泉に立ち戻ることは素敵なことだ
Je voudrais, si tu veux, sans vouloir te forcer
Te revoir à nouveau, enfin... si c´est possible
Si tu en as envie, si tu es disponible
Si tu n´as rien oublié
Comme moi qui n´ai rien oublié
どうだろう、もしよかったら、強いる気はないが
もう一度、つまり…もし可能なら
もし君がそれを望み、もし君が自由だったら
もし君が何も忘れていないのなら
何も忘れていない僕と同じように
[注]
1 allons donc「まさか、ばかな」
2 de vous(toi) à moi「あなた(君)と私の間だけのこと」
3 ne savoir trop+inf「いくら…してもしすぎることはない」。ni以下もJe ne saisにつながる。
4 prendre un bain de Jouvence「青春の泉につかる、若さを取り戻す」と類似した表現。
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金子由香利ほか、日本人歌手が好んで歌う「再会」の原曲は、ニコレッタNicolettaのJe n'pourrai jamais t'oublier(1969年。作詞:パトリシア・カルリPatricia Carli、作曲:エミル・ディミトロフEmil Dimitrov)です。ニコレッタにしては珍しく、おとなしい歌い方で、フランスではあまりヒットせず、歌詞を検索しても、フランス系のサイトにはほとんど出ていませんでした。日本語の「再会」はあらかた同じ内容。ひとりで語っているような曲想が日本人好みだったようですね。原題を直訳すると「私はあなたをけっして忘れられないわ」となって長すぎるし、内容的には合致しているので、この邦題を使いましょう。別れた男女が偶然再会し、女性のほうが相手への想いを語ります。結局、男性は一言もしゃべらなかったのかな?とヤボな私は思ってしまいます。
Paul Mauriatの1981年の演奏。このまま、カラオケに使えます。
Je n'pourrai jamais t'oublier 再会
Nicoletta ニコレッタ
Tiens, bonjour, comment vas-tu, dis-moi
Dis, te souviens-tu encore de moi?
Moi, il m'arrive souvent de penser à toi 注
Mais à part ça, comment ça va?
あら、こんにちは、どう、ご機嫌いかが
ねえ、あなた私をまだ覚えてらして?
私、あなたのことを考えてしまうことがよくあるわ
まあそれはともかく、あなたお元気?
Toi, vraiment tu n’as pas trop changé
Moi, tu sais, j’ai beaucoup voyagé
Oui, en effet j’ai découvert d’autres pays
Et toi, qu’as-tu fait de ta vie?
あなた、ほんとにあまりお変わりないわね
私は、ほら、たくさん旅をしたわ
ええ、つまりよその国々を見てきたの
であなたは、今何をしてらっしゃるの?

Je parle trop, tu es pressé
Je ne voudrais pas te déranger
Si j’en dis trop, c’est pour t’aider
À retrouver le temps passé
私しゃべりすぎね、お急ぎでしょう
あなたの邪魔をしたくはないのよ
私の口数が多いのは、それはあなたが
昔を思い出してくださるようになの
Est-il vrai qu’elle me ressemble un peu?
On dit qu’elle a aussi les yeux bleus
Es-tu certain d’être plus heureux maintenant?
Moi, je t’aime, je t’aime toujours autant
私と似てらっしゃるってほんと?
あの方も青い目なんですってね
あなたは今、以前よりも幸せだと感じてらっしゃるの?
私、私はあなたを愛してる、変わらずずっと愛しているわ
C’est la vie, on n’y peut rien changer
Nous sommes aujourd’hui deux étrangers
Je vois très bien dans tes yeux
Qu’il n’en reste rien de notre amour
Que tu es loin
これが人生ね、何も変えられやしない
私たちは今ではもう他人同士
あなたの目に見てとれるわ
かつての愛はもう残っていないこと
あなたがもう遠くなってしまったことが
Je parle trop, tu es pressé, je sais
Je ne veux plus te retarder
Encore un mot et je m’en vais, tu sais
Je n'pourrai jamais t’oublier
Encore un mot et je m’en vais, tu sais
Je n'pourrai jamais t’oublier
私しゃべりすぎね、お急ぎでしょ、きっと
もうこれ以上あなたを引き止めないわ
もう一言だけ言わせて、そしたら行くわ、ね
「私あなたをけっして忘れることはできないわ」
もう一言だけ言わせて、そしたら行くわ、ね
「私あなたをけっして忘れることはできないわ」
[注] この行は、Oui, dans ma vie souvent j'ai pensé à toiとなっている歌詞があるが、ニコレッタの歌に合わせた。
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エディット・ピアフÉdith Piafが歌う「いつかの二人Les amants d'un jour」を、私は、ジュリエット・グレコJuliette Grécoの数年前の来日公演で初めて聴きました。とても心に引っかかるような曲です。1956年に、クロード・ドレクルーズClaude Delécluseとミッシェル・サンリスMichèle Senlisが作詞し、マルグリット・モノーMarguerite Monnotが作曲しました。
ジュリエット・グレコJuliette Grécoの歌が、私は気に入っています。
エディット・ピアフÉdith Piaf
アラン・バシュングAlain Bashungも歌っています。
Les amants d'un jour いつかの二人
Édith Piaf エディット・ピアフ
Moi, j'essuie les verres
Au fond du café
J'ai bien trop à faire
Pour pouvoir rêver
Et dans ce décor
Banal à pleurer 注
Il me semble encore
Les voir arriver...
私はグラスを拭く
カフェの奥で
やることが多すぎて
夢なんか見ていられないのよ
けれど、ひどくありふれた
この場所に
彼らが来るのを見るような
そんな気がまだする…
Ils sont arrivés
Se tenant par la main
L'air émerveillé
De deux chérubins
Portant le soleil
Ils ont demandé
D'une voix tranquille
Un toit pour s'aimer
Au cœur de la ville
Et je me rappelle
Qu'ils ont regardé
D'un air attendri
La chambre d'hôtel
Au papier jauni
Et quand j'ai fermé
La porte sur eux
Y avait tant de soleil
Au fond de leurs yeux
Que ça m'a fait mal,
Que ça m'a fait mal...
彼らはやって来た
手をとりあって
二人の天使たちの
うっとりした様子は
太陽を運んできたわ
静かな声で
彼らは求めた
街の真ん中で
愛し合うための部屋を
私は思い出す
彼らが感動した様子で
壁紙の色あせた
ホテルの部屋を眺めたのを
そして私が彼らの部屋の
ドアを閉めたとき
彼らの目の奥には
太陽がいっぱい輝いていた
思い出すと辛いわ、
思い出すと辛いわ…

Moi, j'essuie les verres
Au fond du café
J'ai bien trop à faire
Pour pouvoir rêver
Et dans ce décor
Banal à pleurer
C'est corps contre corps
Qu'on les a trouvés...
私はグラスを拭く
カフェの奥で
やることが多すぎて
夢なんか見ていられないのよ
そして、ひどくありふれた
この場所で
彼らは見つかった
体と体を寄せ合った姿で
On les a trouvés
Se tenant par la main
Les yeux refermés
Vers d'autres matins
Remplis de soleil
On les a couchés
Unis et tranquilles
Dans un lit creusé
Au cœur de la ville
Et je me rappelle
Avoir refermé
Dans le petit jour
La chambre d'hôtel
Des amants d'un jour
彼らは見つかった
手を取り合い
太陽に満ち溢れた
新たな朝には
目を閉ざしたままで
彼らを寝かせたわ
いっしょに静かに
街の真ん中の
窪んだベッドに
私は思い出すわ
早朝に
ある日の恋人たちの
ホテルの部屋のドアを
また再び閉めたことを
Mais ils m'ont planté
Tout au fond du cœur
Un goût de leur soleil
Et tant de couleurs
Que ça me fait mal,
Que ça me fait mal...
けれど彼らは
私の心の奥に
彼らの太陽の味を
そして豊かな色彩を
植えつけてくれた
思い出すと辛いわ、
思い出すと辛いわ…

Moi, j'essuie les verres
Au fond du café
J'ai bien trop à faire
Pour pouvoir rêver
Et dans ce décor
Banal à pleurer
Y a toujours dehors...
La chambre à louer...
私はグラスを拭く
カフェの奥で
やることが多すぎて
夢なんか見ていられないのよ
そして、ひどくありふれた
この場所には
いつも看板が出てる…
貸し部屋ありと…
[注] à pleurer「泣きたいほど、ひどく」
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10月12日(月祝)に、原宿アコスタディオにて、《ポルナレフ・ルグラン・サルヴァドールを歌う》と題して、ミッシェル・ポルナレフMichel Polnareff、ミッシェル・ルグランMichel Legrand、アンリ・サルヴァドールHenri Salvadorの曲を歌うプティ・コンセールをおこないます。フランス語そして英語です。出演者は、井上葉子、寺島寧環、上村良子、北島はるか、野村幸子、橋本裕子、スブリーム、宇藤カザンそして私。ピアノ伴奏は上里知巳さんです。

曲目をご紹介しましょう。ブログですでに取り上げている曲はクリックするとそのページが開きます(※の曲は宇藤カザンのブログです。)
*ミシェル・ポルナレフMichel Polnareff
Le bal des Lazeラーズ家の舞踏会
Holidaysホリディ
Lettre à Franceフランスへの手紙(哀しみのエトランゼ)
Ça n'arrive qu'aux autres哀しみの終るとき
Tout, tout pour ma chérieシェーリーに口づけ※
Qui a tué grand-maman? 誰がおばあさんを殺したの※
*ミッシェル・ルグランMichel Legrand
La chanson de Delphineデルフィーヌの歌
Les Parapluies de Cherbourgシェルブールの雨傘
L'été 42おもいでの夏
What are you doing the rest of your life
Les moulins de mon cœurわが心の風車(風の囁き)
La chanson des jumelles 双子姉妹の歌&La chanson d'un jour d'été夏の日の歌 メドレー
Quand on s'aime愛し合っていれば
La valse des lilasリラのワルツ
Love me please love me愛の願い※
*アンリ・サルヴァドールHenri Salvador
Dans mon île僕の島で
Quand je monte chez toi君の部屋へと登るとき
Jardin d'hiver冬の庭(温室)
Syracuseシラキューズ
Petite fleur小さな花
L'abeille et le papillonミツバチとチョウチョ

曲目をご紹介しましょう。ブログですでに取り上げている曲はクリックするとそのページが開きます(※の曲は宇藤カザンのブログです。)
*ミシェル・ポルナレフMichel Polnareff
Le bal des Lazeラーズ家の舞踏会
Holidaysホリディ
Lettre à Franceフランスへの手紙(哀しみのエトランゼ)
Ça n'arrive qu'aux autres哀しみの終るとき
Tout, tout pour ma chérieシェーリーに口づけ※
Qui a tué grand-maman? 誰がおばあさんを殺したの※
*ミッシェル・ルグランMichel Legrand
La chanson de Delphineデルフィーヌの歌
Les Parapluies de Cherbourgシェルブールの雨傘
L'été 42おもいでの夏
What are you doing the rest of your life
Les moulins de mon cœurわが心の風車(風の囁き)
La chanson des jumelles 双子姉妹の歌&La chanson d'un jour d'été夏の日の歌 メドレー
Quand on s'aime愛し合っていれば
La valse des lilasリラのワルツ
Love me please love me愛の願い※
*アンリ・サルヴァドールHenri Salvador
Dans mon île僕の島で
Quand je monte chez toi君の部屋へと登るとき
Jardin d'hiver冬の庭(温室)
Syracuseシラキューズ
Petite fleur小さな花
L'abeille et le papillonミツバチとチョウチョ
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甘い声と口ひげがトレードマークのジャン・フェラJean Ferratは、1930年パリ近郊でユダヤ系ロシア人として生まれました。1964年、「ふるさとの山La montagne 」がヒットしスターに。「いつの日かUn jour un jour 」あたりから反政府的な歌を歌い始め、「自由の空気Un air de liberté」はベトナム戦争の矛盾を告発し、「ちびっ子のための子守唄Berceuse pour un petit loupiot」では消費社会を揶揄し、ルイ・アラゴンLouis Aragonの詩も好んで歌いました。代表曲「夜と霧Nuit et brouillard」は、父親をナチスの強制収容所で失った経験から生み出されたユダヤ人犠牲者の追悼曲ですが、当初は放送禁止になっていました。2010年に死去、79歳でした。
今回取り上げるのは、ルイ・アラゴンの詩を歌詞にした「エルザの瞳Les yeux d'Elsa」。
詩人ルイ・アラゴンはシュールレアリスム運動の中心人物で、のちに共産党員となり、対独レジスタンスに参加し、抵抗詩を書き続け、戦後はコミュニスト知識人の代表格とされました。
膨大な量の詩、小説、評論を執筆し、恋人エルザに多くの詩集を捧げています。この詩はそのうちの一つ「エルザの瞳Les yeux d'Elsa」(1942)に含まれた同名の詩で、1956年にフェラによって作曲され、アンドレ・クラヴォーAndré Claveauの持ち歌ともなりました。レオ・フェレLéo Férréも、アラゴンの詩を好んで歌っています。
歌詞はちょっと難しい(私にはすごく難しかった)ですが、歌っている彼の目元・口元からいろんなものが伝わってくる気がしてうれしいです。
アンドレ・クラヴォー
Les yeux d'Elsa エルザの瞳
Jean Ferrat ジャン・フェラ
Tes yeux sont si profonds qu'en me penchant pour boire
J'ai vu tous les soleils y venir se mirer
S'y jeter à mourir tous les désespérés
Tes yeux sont si profonds que j'y perds la mémoire
きみの瞳はあまりに奥深くて 飲もうとして身を屈めつつ
ぼくには見えた すべての太陽が姿を映しに
絶望したすべての者が身を投げに訪れるのが
きみの瞳はあまりに奥深くて ぼくはそこで記憶を失う
À l'ombre des oiseaux c'est l'océan troublé
Puis le beau temps soudain se lève et tes yeux changent
L'été taille la nue au tablier des anges
Le ciel n'est jamais bleu comme il l'est sur les blés 注1
鳥たちの陰にあっては それは荒れ狂う海だ
また 突如晴れわたり きみの瞳はさま変わりする
夏は雲を 天使の白衣に裁断する
空は小麦の上にあるとき この上なく青い

Les vents chassent en vain les chagrins de l'azur
Tes yeux plus clairs que lui lorsqu'une larme y luit
Tes yeux rendent jaloux le ciel d'après la pluie
Le verre n'est jamais si bleu qu'à sa brisure
風は碧空の悲しみを 吹き払い得ない
きみの瞳は 涙が一粒輝くとき 碧空よりもっと澄み渡る
きみの瞳は 雨上がりの空に 妬み心を抱かせる
ガラスの器も その割れ口ほどに青くはない
Mère des Sept douleurs ô lumière mouillée 注2
Sept glaives ont percé le prisme des couleurs
Le jour est plus poignant qui point entre les pleurs
L'iris troué de noir plus bleu d'être endeuillé
7つの苦しみの聖母 おお 濡れた光よ
7つの剣が七色のプリズムを貫いた
涙を刺し通すとき 太陽は辛辣さを増し
深い悲しみにあって 黒くえぐられた虹彩は青みを増す

Tes yeux dans le malheur ouvrent la double brèche
Par où se reproduit le miracle des Rois
Lorsque le cœur battant ils virent tous les trois
Le manteau de Marie accroché dans la crèche
きみの瞳は 不幸のさなか ふたえの裂け目を開き
そこに 東方の三博士の奇蹟がよみがえる
イエスのまぐさに掛けられたマリアのマントを
胸ときめかせ 3人そろって見まもったときの(奇蹟が)
Une bouche suffit au mois de Mai des mots
Pour toutes les chansons et pour tous les hélas
Trop peu d'un firmament pour des millions d'astres
Il leur fallait tes yeux et leurs secrets gémeaux
言葉あふれる5月 あらゆる唄 あらゆる嘆息には
ひとつの口でこと足りるが
数百万の星々には ひとつの空は あまりにもちっぽけで
きみの瞳とその双子の秘密とが必要なのだ
L'enfant accaparé par les belles images
Écarquille les siens moins démesurément
Quand tu fais les grands yeux je ne sais si tu mens
On dirait que l'averse ouvre des fleurs sauvages 注3
美しい絵に夢中になった子供が
瞳をめいっぱい開いても とてもおよばない
きみが瞳を見ひらくとき きみは欺いているにせよ
にわか雨が野の花々を開かせるようだ
Cachent-ils des éclairs dans cette lavande où
Des insectes défont leurs amours violentes
Je suis pris au filet des étoiles filantes
Comme un marin qui meurt en mer en plein mois d'août
きみの瞳はいなずまを秘めているのか
昆虫たちが荒々しい愛の営みを解く このラヴェンダーの花の中に
ぼくは 流星たちの網に囚われた
8月のさなかに海で死ぬ水夫のように

J'ai retiré ce radium de la pechblende
Et j'ai brûlé mes doigts à ce feu défendu
Ô paradis cent fois retrouvé reperdu
Tes yeux sont mon Pérou ma Golconde mes Indes 注4
ぼくはウラン鉱からラディウムを取りだし
この禁断の炎で指を焼いた
おお 幾度となく見出され 見失われた楽園よ
きみの瞳は ぼくのペルー ぼくのゴルコンド ぼくのインド諸島
Il advint qu'un beau soir l'univers se brisa 注5
Sur des récifs que les naufrageurs enflammèrent
Moi je voyais briller au-dessus de la mer
Les yeux d'Elsa les yeux d'Elsa les yeux d'Elsa
ある夕べ 世界は砕け散った
略奪者たちが火を放った暗礁に乗り上げて
ぼく自身は 海の上(の空)に輝くのを見ていた
エルザの瞳 エルザの瞳 エルザの瞳が

[注]ジャン・フェラ、アンドレ・クラヴォーともに、この詩を全節は歌っていない。ジャン・フェラの歌っていない節はグレーの字で表記した。
この詩集は、ドイツ軍の検閲を免れるべく、隠喩という手段を用いて、エルザへの愛を語りつつ、その裏に占領下の状況と祖国への愛を織り込んでいる。この詩では、空飛ぶ鳥たちは、爆撃機。les naufrageursは船を難破させて略奪する者、すなわちナチス軍だろうということはわかるが、全体的に、多くの比喩で構成されているため、厳密な解釈は不能である。
1 n'être jamais…comme~「~ほど…ではない」すなわち、「~がもっとも…である」
2 ここからの2節はキリスト誕生に関わる話。
Mère des Sept douleursは聖母マリア。七つの苦しみとは、シメオンの予言の時、エジプトヘの脱出の時、イエスの死の時、カルヴォリオの丘への途上イエスと会った時、十字架の下に立った時、十字架からイエスのおろされた時、イエス埋葬の時にマリアの威じた苦しみをいう。
sept glaives七つの剣は、七つの苦しみに同じで、苦しみを剣にたとえた。
le prismeはエルザの瞳。
le prisme des couleursは、プリズムの光の七色を、七つの剣・七つの苦しみと重ねている。
le jourは太陽。l'irisは虹彩で、プリズムの七色、虹をもあらわす。
3 On dirait que…「…のようだ」
4 Golcondeは古代ヒンドゥスタンの首都で、財宝の都とされている。Indesは複数であり、インド諸島。ペルーも含め、財宝の眠る場所である。
5 Il advenir que+直説法/接続法 「…になる」 実際に起こったことは直説法、起こり得ることは接続法で示す。
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今回は、ザジZazieの「わたしは要らないJ'envoie valser」を取り上げましょう。1964年にパリ近郊のブーローニュ・ビィヤンクールで生まれたシンガー・ソングライターZazie。その名前は、映画にもなったレイモン・クノーRaymond Queneauの小説「地下鉄のザジZazie dans le métro」からとったものだそうです。今までに出した8枚のアルバムのうち7枚がプラチナ・ディスクを獲得しています。Wikipédiaを見ますと、かなり変わった経歴。16歳で文学の学士号を取ったのち、3年間、運動療法の勉強をし、またその後、英語、スペイン語、日本語という外国語の勉強もしました。また、その間、シンセサイザーの練習に空いた時間を宛てていました。続いて10年くらい、1,76 mの身長を活かし、イヴ・サンローランYves Saint-Laurentやケンゾーなどのマネキンを務めました。ファッションの世界に嫌気がさしていた時、コーラスに加わる機会を得て1986年に初めてテレビ出演をします。また、ラジオやテレビのコマーシャルで声の出演をし、Les Nulsというグループに誘われて広報のコマーシャルソングも歌います。そして、1990年になって初めて、本格的な歌手活動を始めます。1992年にファースト・アルバムを出し、翌年以降、ヴィクトワール賞を5回、NRJミュージック賞を1回受賞しています。また、フローラン・パニーFlorent Pagny、パトリシア・カースPatricia Kaas、ジョニー・アリディー Johnny Hallyday、ジェーン・バーキンJane Birkin、イザベル・ブーレィIsabelle Boulay、カロジェロCalogeroなどなど多くの歌手に曲を提供し、複数の歌手とデュオで歌い、コーラスの参加も多く、オリジナルなバンドを結成したりと多面的な活動を続けています。
今月30日にはEncore heureuxというニューアルバムが出る予定です。
J'envoie valserという原題の意味は、「私はワルツをしに行かせる」ではなく、目的語を伴って「わたしは放り出す」という意味ですが、「わたしは要らない」という題名にしました。1995年に出た彼女の2枚目のアルバムZenに収録されています。
これをフランス語で歌えるようになったら本物でしょうね。挑戦したいです。
オリヴィア ルイスOlivia Ruiz。こちらのほうがメロディーが分かりやすいかも。
J'envoie valser わたしは要らない
Zazie ザジ
J'en vois des qui s'donnent 注1
Donnent des bijoux dans le cou 注2
C'est beau mais quand même
Ce ne sont que des cailloux
Des pierres qui vous roulent 注3
Roulent et qui vous coulent sur les joues
J'aime mieux que tu m'aimes
Sans dépenser des sous...
わたしはみかける
相手の首に宝石をかけ合っている人たちを
それは美しいけれど だけど
それは小石にすぎないわ
肌を転がる石に
転がり 頬を滑る石に
わたしはあなたがお金なんか使わないで
愛してくれるほうがいいわ…

Moi je m'en moque
J'envoie valser 注4
Les trucs en toc 注5
Les cages dorées 注6
Toi quand tu m'serres très fort
C'est comme un trésor
Et ça, et ça vaut de l'or...
わたしは気にしない
わたしは放り出すわ
そうしたまがい物を
金メッキの檻を
放り出すわ
あなたが私を強く抱きしめるとき
それは宝物みたい
そしてそれはね、それは黄金にも値するものよ…
J'en vois des qui s'lancent
Des regards et des fleurs
Puis qui s'laissent
Quelque part ou ailleurs
Entre les roses et les choux 注7
J'en connais des tas
Qui feraient mieux de s'aimer un peu
Un peu comme nous
Qui nous aimons beaucoup...
たがいに視線を交わし、花々を捧げ合う人たちをみかける
その後、たがいに相手をどこかに
締め出し追い払う人たちを
わたしはこんな人たちをたくさん知っている
わたしたちみたいに愛し合ったらいいような人たちを
ちょっとわたしたちをまねて
とっても愛しあっているわたしたちを…
Et d'envoyer
Ailleurs valser
Les bagues et les cœurs en collier
Car quand on s'aime très fort
C'est comme un trésor
Et ça, et ça vaut de l'or...
そして放り出すわ
どこかへ
指輪や首飾りのハート型を
なぜなら人がとても強く愛し合っているとき
そのことはまるで宝物みたいだから
そしてそれはね、それは黄金にも値するものよ…

Et pour toujours
J'envoie valser
Les preuves d'amour
En or plaqué
Puisque tu m'serres très fort
C'est là mon trésor
C'est toi, toi qui vaut de l'or
だから永遠に
放り出すわ
金メッキした
愛の証しの品々を
だってあなたがわたしをとても強く抱きしめるから
それはここよ わたしの宝物があるのは
それはあなた、あなたよ 黄金に値するのは
[注]
1 des「ある人々、数人、数個」
2 dans le couは、首飾りを首にかける場合、dansを用いるのは異例だろう。
3 vousは不特定の人々を示している。
4 envoyer valser「…を投げ出す、破棄する」。
5 truc「あれ、それ」 en toc「まがい物の」
6 cage「籠、檻」小鳥や動物を閉じ込めるもの、たとえば結婚指輪など、相手を所有することを示す宝飾品を象徴した表現。「あなたがわたしを強く抱きしめる」ということがいちばん素晴らしいcageになるのだという。
7 好意を示しあっていたのが、その後は背反する状態になるという文脈である。envoyer qn.sur les rosesは、バラには棘があることから、「…をこっぴどくはねつける、追っ払う」。être dans le chou「窮地に陥る」。したがって、se laisser les roses et les chouxは、「たがいに相手を締め出し追い払う」ことを示すと解釈する。
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今回もデュオの曲を。「永遠の愛Une vie d'amour」は、1981年のソ連・フランス・スイス合作の映画「テヘラン43 Téhéran 43」のなかで、シャルル・アズナヴールCharles Aznavourが歌った曲。この第二次大戦秘話的スパイスリラー映画は3時間強の大作で、モスクワ国際映画祭金賞を受賞しました。日本では劇場公開されず、それを大幅にカットして、刑事役として出演したアラン・ドロンAlain Delonの主演作品のように見せかけたビデオが「テヘラン」というタイトルで発売されただけだそうです。
この曲の内容は、映画に描かれているソ連工作員アンドレイとマリーという女性との恋(→歌詞中の画像の二人)に関連するようですが、Georges Garvarentzの曲に、Natalia Konchalovsky がロシア語で作詞し、アズナヴールがフランス語で作詞しました。映画が封切りされた年にフランスで、Téhéran 43と Une vie d'amourの2つのアルバムに収録されました。2004年のAutobiographieというアズナヴールのアルバムにも、アズナヴールがフランス語で歌っているもの、ロシア語で歌っているもの、ミレイユ・マチューMireille Mathieu とデュオでフランス語で歌っているものの3曲が収録されています。ロシア語の題名はВічне коханняで「永遠の愛」という意味。フランス語の題名は「愛の生活」という意味ですが、ロシア語の題名に合わせて邦題を選びました。そしてミレイユ・マチューとのデュオとしてご紹介します。
Une vie d'amour 永遠の愛
Charles Aznavour&Mireille Mathieu
シャルル・アズナヴール&ミレイユ・マチュー
Une vie d'amour
Que l'on s'était jurée
Et que le temps a désarticulée
Jour après jour 注1
Blesse mes pensées
Tant de mots d'amour
En nos cœurs étouffés
Dans un sanglot l'espace d'un baiser 注2
Sont restés sourds 注3
À tout, mais n'ont rien changé
誓い合っていたのに
時が崩してしまった
愛の生活が
来る日も来る日も
僕の心を傷つける
僕たちの心のなかで押し殺された
多くの愛の言葉は
嗚咽のなか 接吻のあいだ
耳を閉ざしたままだった
すべてに、だがなにも変えることはなかった
Car un au revoir 注4
Ne peut être un adieu
Et fou d' espoir
Je m'en remets à Dieu
Pour te revoir
Et te parler encore
Et te jurer encore
なぜなら「また会おう」は
「永遠にさようなら」になるはずもなく
希望に我を忘れ
僕は神に託す
君にまた会い
君にまた話し
君にまた誓うために

Une vie d'amour
Remplie de rires clairs
Un seul chemin
Déchirant nos enfers
Allant plus loin
Que la nuit
La nuit des nuits
明るい笑いに満たされた
愛の生活
ただひとつの道
それは僕たちの地獄をうち破り
夜よりも
もっと先に向かう
夜の中の夜に
Une vie d'amour
Que l'on s'était jurée
Et que le temps a désarticulée
Jour après jour
Blesse mes pensées
Tant de mots d'amour
Que nos cœurs ont criés
De mots tremblés, de larmes soulignées
Dernier recours
De joies désharmonisées 注5
誓い合っていたのに
時が崩してしまった
ひとつの愛の生活が
来る日も来る日も
僕の心を傷つける
震える言葉で、大袈裟な涙で
僕たちの心が叫ぶ
多くの愛の言葉は
調和しない喜びの
最後の手段なのだ
Des aubes en fleurs
Aux crépuscules gris
Tout va, tout meurt
Mais la flamme survit
Dans la chaleur
D'un immortel été
D'un éternel été
花々の咲きそめる夜明けから
灰色のたそがれまでのあいだに
すべては去り、すべては死ぬ
だが炎は生き残る
夏の
永遠の夏の
不滅の夏の 熱をもって

Une vie d'amour
Une vie pour s'aimer
Aveuglément
Jusqu'au souffle dernier 注6
Bon an mal an
Mon amour
T'aimer encore
愛の生活
息を引き取るときまで
盲目的に
愛し合うための生活
いい年も悪い年も
愛する人よ
ふたたび君を愛するために
Et toujours
そしていつまでも
[注] ミレイユ・マチューのパートは赤、アズナヴールのパートは青、二人で歌う部分は黒と色分けしたが、アズナヴールが一人で歌うヴァージョンもあるので、訳語は男性の言葉で表現した。
1 jour après jour「毎日毎日、来る日も来る日も」
2 l'espace de (時間的に)「…の間」
3 sourd à qn.(…を)「聞き入れようとしない」
4 au revoirは、もう会うことがない場合のadieu「さようなら」に対して、また会える場合の「じゃ、またね」という挨拶だが、4行後のPour te revoirに合わせて、「また会おう」とした。
5 désharmonisé=dés+harmonisé
6 dernierは通常は名詞の前に置かれる形容詞だが、例外的に名詞の後に置かれている。この部分は意訳した。
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前回に引き続き、映画「ロシュフォールの恋人たちLes Demoiselles de Rochefort」のデルフィーヌDelphineとソランジュSolangeの歌を取り上げます。「夏の日の歌La chanson d'un jour d'été」(作詞:ジャック・ドゥミーJacques Demy、作曲:ミシェル・ルグランMichel Legrand)です。映画では、お祭りの野外ステージで二人は歌います。
La chanson d'un jour d'été 夏の日の歌
Quand l'été a disparu
Quand le temps s'en est allé est allé
Du côté des saisons, ma saison
On ne peut que soupirer
Regretter l'été
Mais pour revivre un jour d'été
Lorsque l'hiver s'est installé
Et que votre cœur s'est glacé
Il faut aimer
夏が消え去ったとき
時が過ぎ去ったとき
季節としては、私の季節だもの
ため息をつくしか
夏を惜しむことしかできないわ
でも夏の日を再び生きるために
冬が居座ったとき
あなたの心が凍りついたときには
愛さなくっちゃ
{Refrain :}
Aimer la vie, aimer les fleurs
Aimer les rires et les pleurs
Aimer le jour, aimer la nuit
Aimer le soleil et la pluie
Aimer l'hiver, aimer le vent
Aimer les villes et les champs
Aimer la mer, aimer le feu
Aimer la terre pour être heureux
いのちを愛し、花を愛し
笑いと涙を愛し
昼を愛し、夜を愛し
太陽と雨を愛し
冬を愛し、風を愛し
町を野原を愛し
海を愛し、炎を愛し
大地を愛すことよ、幸せになるために

Quand l'amour a disparu
Quand le cœur s'en est allé est allé
Du côté des jamais, plus jamais
On ne peut que regretter
L'amour envolé
Mais pour ressusciter l'amour
Si votre cœur vide est trop lourd
Si l'ennui menace vos jours
Il faut aimer
恋が消え去ったとき
心が消沈したとき
けっして、もうけっしてと思う際には
悔やむことしかできない
去ってしまった恋を
でも恋をよみがえらせるために
もしもあなたのうつろな心があまりに重苦しかったり
憂うつがあなたの日々を脅かしたりするのなら
愛さなくっちゃ
{Refrain }
Devant la joie retrouvée la joie
Quand le cœur s'est installé
Du côté du grand amour
Chaque jour est un été
Plus bel été
Et devant la joie retrouvée
Devant l'été recommencé
Devant l'amour émerveillé
Il faut chanter
再び見いだした喜びを前に
心が偉大なる恋のかたわらに
身を落ち着かせたとき
毎日が夏に
もっと美しい夏になる
そして再び見いだした喜びを前に
再び始まった夏を前に
驚異的な恋を前にして
歌わなくっちゃ

{Refrain }
Chanter la vie, chanter les fleurs
Chanter les rires et les pleurs
Chanter le jour, chanter la nuit
Chanter le soleil et la pluie
Chanter l'hiver, chanter le vent
Chanter les villes et les champs
Chanter la mer, chanter le feu
Chanter la vie, chanter les fleurs
Chanter les rires, chanter les pleurs
Chanter la mer, chanter le feu
Chanter la terre pour être heureux!
いのちを愛し、花を愛し
笑いと涙を愛し
昼を愛し、夜を愛し
太陽と雨を愛し
冬を愛し、風を愛し
町を野原を愛し
海を愛し、炎を愛し
いのちを愛し、花を愛し
笑いと涙を愛し
海を愛し、炎を愛し
大地を愛すことよ、幸せになるために
※二人のパート分けは省いているが、後日加える予定。
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1967年に封切られた、ジャック・ドゥミJacques Demy監督の「ロシュフォールの恋人たちLes Demoiselles de Rochefort」には、ミッシェル・ルグランMichel Legrandが作曲しジャック・ドゥミーが作詞した素敵な曲がいっぱいです。「デルフィーヌの歌La chanson de Delphine」を先に取り上げましたが、今回は、デルフィーヌDelphine役のカトリーヌ・ドヌーブCatherine Deneuve(吹き替え:アンヌ・ジェルマンAnne Germain)とソランジュSolange役のドヌーヴの実の姉フランソワーズ・ドルレアックFrançoise Dorléac(吹き替え:クロード・パランClaude Parent)のデュオの曲「双子姉妹の歌Chanson des jumelles」です。フランソワーズは、この映画のクランクイン前に自動車事故で25歳で亡くなりました。映画のなかの生き生きとした姿を見ると、複雑な気持ちになります。
Chanson des jumelles 双子姉妹の歌
※デルフィーヌDelphineのパートは■色で、二人で歌う部分は太文字。
Nous sommes deux sœurs jumelles
Nées sous le signe des gémeaux
Mi fa sol la mi ré, ré mi fa sol sol sol ré do
Toutes deux demoiselles 注1
Ayant eu des amants très tôt
Mi fa sol la mi ré, ré mi fa sol sol sol ré do
私たちは双子の姉妹
双子座の星の下に生まれたの
ミファソラミレ、レミファソソソレド
ニ人の娘はそれぞれ
とっくに何人かのボーイフレンドをもったわ
ミファソラミレ、レミファソソソレド

Nous fûmes toutes deux élevées par Maman
Qui pour nous se priva, travailla vaillamment 注2
私たちはニ人ともママンに育てられたの
ママンは、私たちのために生活を切り詰め、がんばって働いてくれたのよ
Elle voulait de nous faire des érudites
Et pour cela vendit toute sa vie des frites.
ママンは、私たちを教養のある人間にしたくて
そのために一生、フライドポテトを売ってきたの。
Nous sommes toutes deux nées de père inconnu
Cela ne se voit pas, mais quand nous sommes nues
Nous avons toutes deux au creux des reins
C'est fou...
私たちはニ人とも、誰だか分からない父親から生まれた
それは分からないの、でも裸になると
私たちはニ人とも腰のくぼみに
おかしなことに…
... là un grain de beauté...
そこに、ほくろがあるの…
... qu'il avait sur la joue
…パパの頬にあったと同じのが
Nous sommes deux sœurs jumelles
Nées sous le signe des gémeaux
Mi fa sol la mi ré, ré mi fa sol sol sol ré do
Aimant la ritournelle, les calembours et les bons mots
Mi fa sol la mi ré, ré mi fa sol sol sol rédo.
私たちは双子の姉妹
双子座の星の下に生まれたの
ミファソラミレ レミファソソソレド
繰り返し文句や、言葉遊びやしゃれた言葉が好きよ
ミファソラミレ レミファソソソレド

Nous sommes toutes deux joyeuses et ingénues...
私たちは二人とも陽気でうぶなの…
... attendant de l'amour ce qu'il est convenu... 注3
…愛を待っていて、それはこう呼ばれるもの…
... d'appeler coup de foudre... 注4
…一目ぼれとか…
... ou sauvage passion...
…あるいは野性的な情熱とか…
... nous sommes toutes deux prêtes à perdre raison
Nous avons toutes deux une âme délicate
…私たちは二人とも、理性を失う覚悟はあるわ
私たちは二人とも繊細な魂を持っていて
Artistes passionnées...
情熱的なアーティスト…
... musiciennes...
…ミュージシャン…
... acrobates...
…アクロバットダンサー…
... cherchant un homme bon...
…探しているわ、いい男を…
... cherchant un homme beau...
…探しているわ、すてきな男を…
... bref un homme idéal, avec ou sans défauts
Nous sommes deux sœurs jumelles
Nées sous le signe des gémeaux
Mi fa sol la mi ré, ré mi fa sol sol sol ré do
Du plomb dans la cervelle, de la fantaisie à gogo 注5
Mi fa sol la mi ré, ré mi fa sol sol sol ré do
…つまり理想的な男を、欠点があってもなくてもね
私たちは双子の姉妹
双子座の星の下に生まれたの
ミファソラミレ レミファソソソレド
思慮深さも、空想力もたっぷりあるわ
ミファソラミレ、レミファソソソレド
Je n'enseignerai pas toujours l'art de l'arpège
J'ai vécu jusqu'ici de leçons de solfège
Mais j'en ai jusque-là, la province m'ennuit
Je veux vivre à présent de mon art à Paris.
私はいつまでもアルペッジョの技法を教えてはいないわ。
いままではソルフェージュのレッスンで生きてきたの。
でもそれもここまでよ、田舎暮らしにはうんざりだわ
今は、私の技術でパリで生きていきたいの。
Je n'enseignerai pas toute ma vie la danse
A Paris moi aussi je tenterai ma chance
Pourquoi passer mon temps à enseigner des pas
Alors que j'ai envie d'aller à l'opéra
私は一生、ダンスを教えてはいない
私はねパリで運を試してみるわ
どうしてステップを教えて時間を費やすの
私はオペラに行きたいというのに
Nous sommes deux sœurs jumelles
Nées sous le signe des gémeaux
Mi fa sol la mi ré, ré mi fa sol sol sol ré do
Deux cœurs, quatre prunelles, à embarquer allegreto 注6
Mi fa sol la mi ré, ré mi fa sol sol sol ré do
私たちは双子の姉妹
双子座の星の下に生まれたの
ミファソラミレ レミファソソソレド
二つの心、四つの瞳、速やかにさらわれることになってるの
ミファソラミレ レミファソソソレド
[注]
1 tous,toutes les +数詞+無冠詞名詞「…ごとに」
2 se priver de…「…を自分に禁じる、断つ」。目的語無しでは「生活を切り詰める」。
3 ce il est convenu d’appler …「…と命名されているもの、と呼ばれているもの」
4 coup de foudre「一目ぼれ」
5 du plomb dans la cervelle「慎重さ、思慮深さ」。 à gogo「ふんだんに、ありあまるほど」
6 à+inf.は必要・予定・適応などを示す。embarquer「(乗物に)…を乗せる、積み込む」 が本義だが、「かっぱらう」「連行する」「(女を)たらし込む」などの意味でも用いられる。allegreto音楽用語の「アレグレット」で「やや速く」の意味。
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ミシェル・ポルナレフMichel Polnareffの「ラーズ家の舞踏会Le bal des Laze」は非常に美しい曲です。作詞:ピエール・ドラノエPiere Delanoë、作曲:ポルナレフ自身。1968年の同名のアルバムに収められています。
Wikipédiaの記事によると、5千本のろうそくが灯されたスタジオで録音したと、彼の自伝には述べられているけれど、実際はもうちょっと少なかったとか。ポルナレフはパリのサン・トゥスターシュ教会l'église Saint-Eustacheのオルガンを借りることも考えたけれど録音上の問題があり実現しなかったとか。
歌詞内容はフィクションであり、何世紀ごろでしょうか、王朝時代の英国を舞台にした身分違いの悲しい恋をあらわしたもののようですが、エロトマニアErotomania (別名:クレランボー症候群Clérambault's syndrome)、すなわち自分が相手に愛されているものだと曲解する妄想癖を持った精神病をあらわしたものだともいわれます。
Je serai pendu demain matin「明朝、僕は吊るし首になるだろう」から始まるこの曲は、発売当時、ヒットしながらもラジオ放送は控えられていたそうです。
映画「ヴィクトリア女王 世紀の愛The Young Victoria」(2009年)の映像を用いた動画
ライブ
Le bal des Laze ラーズ家の舞踏会
Michel Polnareff ミシェル・ポルナレフ
※挿入した画像はThe Young Victoriaより
Je serai pendu demain matin
Ma vie n'était pas faite
Pour les châteaux.
Tout est arrivé ce soir de juin
On donnait une fête
Dans le château.
明朝、僕は吊るし首になるだろう
僕の存在は城の世界には
そぐわない。
すべては6月の今夜に起こった
城では
盛大な祭典が行われた。
Dans le château de Laze
Le plus grand bal de Londres
Lord et Lady de Laze
Recevaient le grand monde
Diamants, rubis, topazes
Et blanches robes longues
Caché dans le jardin
Moi je serrais les poings 注1
Je regardais danser
Jane et son fiancé. 注2
ラーズ城では
ロンドンで最も大きな舞踏会が催され
ラーズ卿と奥方は
たくさんの賓客を迎えた
ダイヤモンド、ルビー、トパーズ
そして純白のロングドレス
庭に潜んで
こぶしを握り締めながら
僕は見ていた
ジェーンとフィアンセが踊るのを

Je serai pendu demain au jour
Dommage pour la fille
De ce château.
Car je crois qu'elle aimait bien l'amour
Que l'on faisait tranquille
Loin du château.
明朝、僕は吊るし首になるだろう
この城の
娘にとっては悲しいことなんだ。
なぜなら僕には分かっているから、
城から遠く離れたところで
こっそりと逢引きするのが彼女は好きだったって。

Dans le château de Laze
Pour les vingt ans de Jane
Lord et Lady de Laze
Avaient reçu la Reine
Moi le fou que l'on toise
Moi je crevais de haine
Caché dans le jardin
Moi je serrais les poings
Je regardais danser
Jane et son fiancé.
ラーズ城では
ジェーンの成人を祝い
ラーズ卿と奥方は
女王陛下をお迎えした
みなにじろじろ見られる愚か者の僕
僕は憎しみで死にそうだった
庭に潜んで
僕はこぶしを握り締めながら
ジェーンとフィアンセが
踊るのを見ていた。

Je serai pendu demain matin
Ça fera quatre lignes
Dans les journaux.
Je ne suis qu'un vulgaire assassin
Un vagabond indigne
De ce château.
明朝、僕は吊るし首になるだろう
でも新聞には
ほんの数行の記事だけだろう。
僕は取るに足らない殺人者に
この城には
ふさわしくない浮浪者にすぎない.
Dans le château de Laze
Peut-être bien que Jane
A l'heure où l'on m'écrase
Aura un peu de peine
Mais ma dernière phrase
Sera pour qu'on me plaigne
Puisqu'on va lui donner
Un autre fiancé
Et que je n' pourrai pas
Supprimer celui-là
ラーズ城で
たぶんジェーンは
僕が処刑される時に
ほんのちょっぴり心の痛みを感じるだろう
けれど僕の辞世に
みなは僕を哀れんでくれることだろう
なぜなら彼らはジェーンに
また別のフィアンセを与えるだろうが
そいつを抹殺することは
僕にはできないから
[注] タイトルのLe bal des Lazeに関してだが、Laze「ラーズ」という名称は実在の家柄ではなく架空の名称。ちなみに英語のlazeは「怠けて過ごす」の意味の動詞および名詞である。また、王朝以外の一家族をあらわす場合に複数形をとらないためLazesとはならない。
1 serrer les poings「怒りをこらえる」「力を振り絞る」の両義があり、ここでは前者だが、「こぶしを握り締める」と文字通りに訳した。
2 Jane「ジェーン」は英国女性の一般的な名前だが、英語で「名無しの権兵衛」に相当するジョン・ドウJohn Doeの女性形はジェーン・ドウJane Doeであり、架空であることを匂わせる。
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今回はセルジュ・ラマSerge Lamaの「ピガールの娘たちLes petites femmes de Pigalle」を取り上げましょう。「僕は病んでいるJe suis malade 」が収録された同名のアルバム(1973年) に入っていた曲で、2005年に出たライブアルバムにも入っています。
ピガールはモンマルトルの西南麓、第9区と第18区のあいだ、ピガール広場の周辺のことで、彫刻家のジャン=バティスト・ピガールJean-Baptiste Pigalleのアトリエが近くにあったので彼の名前が付けられたそうです。ジョルジュ・ユルメールGeorges Ulmerが1946年に歌った「ピガールPigalle」によってこの地域は知られるようになりましたが、ここはいわゆる歓楽街で、キャバレ-、ナイトクラブ、風俗店、ビデオ店、アダルトショップなどが立ち並んでいます。最も有名な観光スポットはムーランルージュ。ジャック・プレヴェールJacques Prévertやボリス・ヴィアンBoris Vianも住んでいましたし、エロティシズム博物館もあり、危ない場所であると同時に魅力的な場所でもあります。
「ピガールの娘たち」は妻を寝取られた男のお話。ちょっとコミカルな内容の軽快な曲です。ちなみにジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensにも「寝取られ男Le cocu」と題した曲があり、こちらもコミカルで軽快。こんなテーマで沈痛な歌なら聴きたくありませんものね。
Les petites femmes de Pigalle ピガールの娘たち
Serge Lama セルジュ・ラマ
Un voyou m'a volé la femme de ma vie 注1
Il m'a déshonoré, me disent mes amis
Mais j'm'en fous pas mal aujourd'hui 注2
Mais j'm'en fous pas mal car depuis
Chaque nuit
あるヤローが僕の大事な女房を寝取った
そいつはお前の名誉を傷つけたぜと、友達は僕に言った
だがまぁどうだっていいことさ 今となっちゃ
だがまぁどうだっていいことさ なぜってその後は
毎晩
Je m'en vais voir les p'tites femmes de Pigalle
Toutes les nuits j'effeuille les fleurs du mal
Je mets mes mains partout, je suis comme un bambin
J'm'aperçois qu'en amour je n'y connaissais rien 注3
僕はピガールのカワイ子ちゃんたちに会いに行くから
夜ごと 僕は悪の花々を摘み取る
僕は手当たり次第に手をつける、小さなガキみたいに
僕は愛に関しちゃまるで勝手が分かっていなかったことに気づいた

Je m'en vais voir les p'tites femmes de Pigalle
J'étais fourmi et je deviens cigale 注4
Et j'suis content, j'suis content, j'suis content 注5
J'suis content, j'suis cocu mais content
僕はピガールのカワイ子ちゃんたちに会いに行くのさ
僕は働き者のアリだった だが能天気なセミになった
それで僕は満足さ、満足さ、満足さ
満足さ、寝取られ男ながらも満足さ
Un voyou s'est vautré dans mon lit conjugal
Il m'a couvert de boue, d'opprobre et de scandale
Mais j'm'en fous pas mal aujourd'hui
Mais j'm'en fous pas mal car depuis
Grâce à lui
あるヤローが僕ら夫婦のベッドに寝転がっていた
そいつは僕の顔に泥を塗り、恥をかかせ、ひんしゅくを買わせた
だがまぁどうだっていいことさ 今となっちゃ
だがまぁどうだっていいことさ なぜってその後は
そいつのお蔭で
Je m'en vais voir les p'tites femmes de Pigalle
Tous les maquereaux du coin me rincent la dalle 注6
J'm'aperçois qu'en amour je n'valais pas un sou
Mais grâce à leurs p'tits cours je vais apprendre tout
僕はピガールのカワイ子ちゃんたちに会いに行くのさ
街角のヒモたちはみな僕に一杯おごってくれる
僕は恋に関しちゃ1文の値打ちもなかったことに気づいた
だが彼らのちょっとした教えのお蔭で僕はすべて学んでいる
Je m'en vais voir les p'tites femmes de Pigalle
Tous les marins m'appellent "l'amiral"
Et j'suis content, j'suis content, j'suis content
J'suis content, j'suis cocu mais content
僕はピガールのカワイ子ちゃんたちに会いに行く
船乗りたちはみな僕を「提督」と呼ぶ
それで僕は満足さ、満足さ、満足さ
満足さ、寝取られ男ながらも満足さ
Je m'en vais voir les p'tites femmes de Pigalle
Dans toutes les gares j'attends les filles de salle 注7
Je fais tous les endroits que l'Eglise condamne 注8
Même qu'un soir par hasard j'y ai r'trouvé ma femme 注9
僕はピガールのカワイ子ちゃんたちに会いに行く
いろんな駅で僕はホステスたちを待つ
僕は教会が非難するどんな場所にだって行く
またあろうことに、ある晩たまたまそこで僕の女房に出会った
Je m'en vais voir les p'tites femmes de Pigalle
C'est mon péché, ma drogue, mon gardénal
Et j'suis content, j'suis content, j'suis content
J'suis content, j'suis cocu mais content
僕はピガールのカワイ子ちゃんたちに会いに行く
それは僕の罪だ、僕の麻薬だ、僕の睡眠薬だ
それで僕は満足さ、満足さ、満足さ
満足さ、寝取られ男ながらも満足さ

{Chœurs}
Il s'en va voir les p'tites femmes de Pigalle
Dans toutes les gares il guette les filles de salle
Il fait tous les endroits que l'Eglise condamne
Même qu'un soir par hasard il y a r'trouvé sa femme
彼はピガールのカワイ子ちゃんたちに会いに行くわ
いろんな駅で彼はホステスたちをつけ狙う
彼は教会が非難するどんな場所にだって行くわ
またあろうことに、ある晩たまたまそこで彼の妻に出会ったの
Il s'en va voir les p'tites femmes de Pigalle
C'est son péché, sa drogue, son gardénal
Il est content, il est content, il est content
Il est content, il est cocu mais content
彼はピガールのカワイ子ちゃんたちに会いに行くわ
それは彼の罪よ、彼の麻薬よ、彼の睡眠薬よ
それで彼は満足よ、満足よ、満足よ
満足よ、寝取られ男ながらも満足よ
[注] les p'tites femmes は、題名では「娘たち」と、歌詞中は「カワイ子ちゃんたち」と訳した。
1 la femme de ma vie「生涯にかかわる女性」
2 Je m'en fous.「そんなことどうだっていい」。pas mal (neを伴わずに)「かなり」。
3 je n'y connais rien「勝手(わけ)がわからない」
4 fourmi「アリ」は「勤勉な人、倹約家」、 cigale「セミ」は「のんきな浪費家、先見の明のない人間」。ラ・フォンテーヌの寓話La cigale et la fourmiから。
5 cocu, battu et content「全くおめでたい」という成句がある。
6 se rincer la dalleが「一杯やる」だから、「一杯おごる」。
7 fille de salle「ウエイトレス、(病院の)雑役婦」。実際は娼婦を指すということが分かりやすいように「ホステス」と訳した。
8 faireは「行く、訪れる」の意味。
9 Même que「しかも…だ」
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ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisは1922年、パリ郊外で生まれました。第2次大戦直後の1945年に23歳のとき、パリの放送局の素人のど自慢コンテストで優勝したのをきっかけにデヴューし、1948年には、アメリカ映画の主題曲「春なのにC'est le printemps」でディスク大賞を受賞。同年に、映画「パリのスキャンダル」のなかで影歌としてすでに吹き込んであった「パリのお嬢さんMadmoiselle de Paris」(後日取り上げます)が、翌年の映画封切り時には受賞がすでに知れ渡っていたこともあって大ヒットし、この曲名が彼女の代名詞ともなりました。彼女は2009年に亡くなっています。
ほかのヒット曲としては「ラ・セーヌLa Seine」「ポルトガルの洗濯女Les lavandières du Portugal」などがあります。シャンソンのスタンダード曲のほか、英語の曲をフランス語にアレンジしたものもとてもいい出来で、「ネイチャー・ボーイEtrange garçon (Nature boy)」など、私は好きです。
今回取り上げる「メランコリーMélancolie」は少しマイナーな曲で、1947年の映画「ジブラルタルの鮫Requins De Gibraltar」の主題歌。作詞はピエール・デュダンPierre Dudan、作曲はアラン・ロマンAlain Romansで、デュダン自身が歌っていました。
ジャクリーヌ・フランソワの代表曲は大体がのびやかで明るいワルツ調なのに、これは暗くけだるい感じの曲です。お聴きになって、越路吹雪が歌っていた曲だと思いだされる方もあるでしょう。
動画は私が作成しました。
ピエール・デュダン
Mélancolie メランコリー
Jacqueline François ジャクリーヌ・フランソワ
C'est une chanson nostalgique
Que l'on chantait dans les bars
Les bars de n'importe où
Bars de hasard, bars du cafard 注1
これは懐かしい唄
ひとはこの唄を酒場で唄っていた
どこの酒場だっていい
通りすがりの酒場、陰気な酒場で

Mélancolie un jour s'achève
Mélancolie on n'y peut rien 注2
Chaque jour dans la fumée et dans l'alcool, on noie ses rêves 注3
Seul jusqu'au matin...
メランコリー 日が暮れて
メランコリー 為すすべもなく
日ごと 煙と酒に、
ひとは自分の夢を紛らわせる
ひとり 夜明けまで…
Et chaque nuit, ça recommence
Pour torturer le cœur trop lourd 注4
Le cafard dans la fumée et dans l'alcool, mène la danse
Jusqu'au jour
夜ごと、それは繰り返し
心をひどく苛む
煙と酒にまみれた陰気な気分が、
ダンスをリードする
日が昇るまで
Demain, y aura de l'amour et de la lumière 注5
Peut-être bien, ça m'est égal... 注6
Barman jusqu'au matin, remplis mon verre
Je veux rêver que j'ai moins mal 注7
明日は、愛がそして光が見えるわ
たぶんね、でもわたしにはどうでもいいこと
バーテンは朝まで、わたしのグラスを満たし続けてよ
苦しみがましになった気になりたいから
Mélancolie... tu nous enchaînes
Plus fortement qu'un grand amour
Un beau soir dans la fumée et dans l'alcool, on noie ses peines 注8
Pour toujours.
メランコリーよ… おまえはわたしたちを
おおきな愛よりも強くつなぎ止める
ある夜 煙と酒に、ひとは自分の苦痛を紛らす
永遠に。

Le rire est bien trop près des larmes
Et ton cœur trop loin du mien
Ton oublie me fait mal
A moi qui n'ai presque plus rien.
笑いは涙のすぐ近くにあり
あなたの心はわたしの心からとても遠い
あなたの忘却はわたしを苦しめる
ほとんどもう何も持たないわたしを。
[注] 最初と最後の、色を変えた部分は歌っていない。間奏のあと、Mélancolie... tu nous enchaînesの節を繰り返して歌っている。
1 cafardは憂鬱。つまりはmélancolieと同義。
2 n'y pouvoir rien「手の施しようがない、どうにもできない」
3 noyer son (désespoir ou chagrin) dans l’alcool「やけ酒を飲む」ここはdans la fuméeも加えてses rêvesをnoyer「溺れさせる」、すなわち「やけ煙草とやけ酒で自分の夢を紛れさせる」。
4 lourdは、形容詞ではなく副詞。
5 Il y auraのIlが省略されている。
6 ça est égal à qn.「それは…にとってどうでもいい」
この辺から、訳語は女性の口調にしたが、元の歌詞は男性がそのまま歌っても問題ない。
7 avoir mal( à…)は「(…が)痛い」で、ここでは胸の痛み、心の苦しみをいう。あとに出てくるfair mal à qn.は「…を(精神的に)痛めつける、苦しめる」
8 un beau jourが「ある日」という意味であるのと同様、un beau soirは「ある夜」すなわち不特定な夜。そのあと、注4で示したのと相似の表現(ses rêvesとses peinesの違い)が続く。 注4の行では、chaque jourとなっていて、chaque nuit,ça recommence「それが繰り返される」ことが示されていた。ここでは、 un beau soirで始まり、あとにpour toujoursがつながる。一時的なごまかしに過ぎない一夜の行為がなぜ「永遠に」という表現とつながるのだろうか。同じことが永遠に繰り返されるのか?あるいは「永遠に苦痛が紛れる」ということを望んでのことだというのか?
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ミッシェル・ローランMichel Laurentが1967年に自分で作詞・作曲して歌った「サバの女王Ma reine de Saba」は、私はグラシェラ・スサーナの日本語の歌で知りました。Reine de Sabaは、アラビア語ではMalikat Sabaで、旧約聖書に登場する女王。ヘブライ語Malkat Shvaの読みから「シバの女王」とも呼ばれます。相手の女性をその女王に譬えて、戻って来てくれと歌っています。
ローランは、スサーナの歌っている日本語歌詞(訳詩:なかにし礼)も歌っています。→こちらをクリック。
シルヴィー・ヴァルタンSylvie Vartanも歌っています。
Ma reine de Saba サバの女王
Michel Laurent ミッシェル・ローラン
Ah ! Qu'elle revienne 注1
Ah ! Qu'elle m'entraîne
Cette folie
Qui avait bouleversé ma vie
ああ!戻って来て欲しい
ああ!私を連れ去って欲しい
私の人生をめちゃめちゃにした
あの熱愛に
Je le questionne 注2
Mais il déraisonne
Ce cœur perdu
Dans l'infini du souvenir
私は問うた
果てしない記憶のなかでさ迷う
この心に
だが心は屁理屈を返すばかりだった
Viens reprendre ton royaume
Toi, ma reine de Saba
Reviens me faire l'aumône
D'un petit peu de toi
J'ai essayé de comprendre
Un autre regard déjà
Mais je n'ai pas pu attendre
Un autre bruit de pas
君の王国を奪還しに来てくれ
君、私のサバの女王
私に情けを掛けに戻って来てくれ
ほんの少しばかり
私はほかに目を向ける術を得んと
すでに試みてみた
だが待つことなどできなかった
他の人の足音など

Dis, tu m'écoutes ?
Tu es sans doute
Déjà partie
Si loin de tous nos souvenirs
ねぇ、君は私の言葉を聴いているの?
君はたぶん
もう行ってしまったのだろう
私たちの思い出から遠く離れたところに
Est-ce ma faute ?
Est-ce ta faute ?
Si, malgré moi,
Je ne peux plus vivre sans toi
それは私の過ちなのか?
君の過ちなのか?
いや、心ならずも、
私は君なしでは生きていけない
Viens reprendre ton royaume
Toi, ma reine de Saba
Reviens me faire l'aumône
D'un petit peu de toi
Viens reprendre ton royaume
Il attend que tu sois là
Pour revivre, ce royaume,
Ma reine de Saba !
君の王国を取り戻しに来ておくれ
君、私のサバの女王
私に情けを掛けに戻って来ておくれ
ほんの少しばかり
君の王国を奪還しに来てくれ
この王国は、蘇えるために
君が君臨するのを待っている
わがサバの女王よ!

[注]
1 elleは3行目のcette folie「熱愛」だが、女性を指すようなニュアンスも含ませている。
2 leは3行目のce cœur。
3 ilは前行のton royaume。
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セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgが作りジェーン・バーキンJane Birkinが歌った「シックな下着Les dessous chics」は、ゲンズブール特有の言葉遊びを用いて、「女性の下着、それは…だ」と多様に表現しています。「シック」という邦題で呼ばれますが、原題どおり「シックな下着」としました。この曲は1983 年に作られ、同年リリースされたアルバムBaby alone in Babyloneに収録されました。
セルジュ・ゲンズブールのステージ
ガドゥーGadouも歌っています。
Les dessous chics シックな下着
Jane Birkin ジェーン・バーキン
Les dessous chics 注1
C´est ne rien dévoiler du tout
se dire que lorsqu´on est à bout 注2
c´est tabou
シックな下着
それはまったく何も露わにしないもの
ぎりぎりのところでつぶやくもの
それはタブーよと

les dessous chics
c´est une jarretelle qui claque
dans la tête comme une paire de claques 注3
シックな下着
それは頭のなかでパチンという靴下止め
往復ビンタみたいに
les dessous chics
ce sont des contrats résiliés
qui comme des bas résillés 注4
ont filé 注5
シックな下着
それは解約された契約書
網ストッキングが伝線するみたいに
ほどけてしまったわ
les dessous chics
c´est la pudeur des sentiments
maquillés outrageusement
rouge sang
シックな下着
それは恥じらう気持ち
血のような赤で
ひどく厚化粧してるから
les dessous chics
c´est se garder au fond de soi
fragile comme un bas de soie
シックな下着
それは心の奥に
絹のストッキングのような弱さを保つこと
les dessous chics
c´est des dentelles et des rubans
d´amertume sur un paravent 注6
désolant
シックな下着
それは嫌な
目隠しに付いた
刺々しいレースやリボン

{Instremental}
les dessous chics
c´est des dentelles et des rubans
d´amertume sur un paravent
désolant
シックな下着
それは嫌な
目隠しに付いた
刺々しいレースやリボン
les dessous chics
ce serait comme un talon aiguille
qui transpercerait le cœur des filles... 注7
シックな下着
それは娘たちの心をさいなむ
尖ったヒールのようなものかしら…
[注]
1 dessousは複数で「(女性の)下着」。chic「粋な、垢抜けた」。日本でも「シック」は外来語として定着している。
2 se dire que「(…だと(自分自身に)言う、思う」。à bout「疲れ果てている、いらいらを募らせている」あるいは「(体力、忍耐などが)限界に来ている」。
3 une paire de claques「往復びんた」
4 résilléは辞書にないが、「網状のもの」を指すrésilleという語があり、bas résilléは「網ストッキング」のこと。
5 filer「(ストッキングなどが)伝線する」
6 paravent「風よけ」のことだが、「屏風、ついたて」のほか「遮蔽物」「口実」をも意味する。
7 transpercer le cœurは「心をさいなむ」あるいは「心臓を貫く」、いずれでも解釈できるが、前者を採った。
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今回は、フランソワーズ・アルディーFrançoise Hardyとジャック・デュトロンJacques Dutronc夫婦のデュオの曲として、「あなたが旅発つというのでPuisque vous partez en voyage」に続いて2曲目で、「霧のコルヴィザール通りBrouillard dans la rue Corvisart」というタイトルのおしゃれな曲(1978年、作詞:ミッシェル・ジョナスMichel Jonasz作曲:アラン・ゴールドシュタインAlain Goldstein)。原題を直訳すると「コルヴィザール通りの霧」ですが、邦題はこれにしました。まさに霧のたち込めるごとくに、歌詞の内容はちょっと不明瞭ですが、二人の息の合った掛け合いが楽しめることは必定。
ナポレオンの侍医だったコルヴィザールの名を冠したコルヴィザール通りはパリの第13区にあり、地下鉄6番線のコルヴィザール駅を起点に西北に走っています。
Brouillard dans la rue Corvisart コルヴィザール通りの霧
Françoise Hardy & Jacques Dutronc
フランソワーズ・アルディとジャック・デュトロン
Toutes ces choses-là, on s'les murmure tout bas
Le soir dans la rue Corvisart
Le bar-tabac a éteint ses billards
Brouillard dans la rue Corvisart
Toujours les mêmes
こうしたことをみな、人はひとり小さな声でつぶやくのさ
コルヴィザール通りで夕べに
タバコ・バーはビリヤード台の灯りを消す
コルヴィザール通りには霧
いつも同じさ
Mêmes pavés, mêmes paumés
同じ舗道、同じ文無したち
Toujours les mêmes
いつも同じさ
Mêmes soupirs, mêmes souv'nirs, même détresse, même adresse
同じため息、同じ想い出、同じ窮状、同じ住所
Mêmes saisons, mêmes maisons
同じ四季、同じ家々
Toujours les mêmes
いつも同じね
Mêmes chansons, même plus d'bar
同じ歌、バーはもう無くて
Brouillard dans la rue Corvisart
コルヴィザール通りには霧

Toutes ces choses-là, on s'les murmure tout bas
Le soir dans la rue Corvisart
こうしたことをみな、人はひとり小さな声でつぶやくのさ
コルヴィザール通りで夕べに
Si seul'ment une seule fois
もしもたった一度だけ
Brouillard
霧
Un homme
ひとりの男
Dans la rue Corvisart
コルヴィザール通りで
Toujours les mêmes
いつも同じよ
Mêmes pavés, mêmes paumés
同じ舗道、同じ文無したち
Toujours les mêmes
いつも同じよ
Mêmes trottoirs, même histoire, mêmes blessures, mêmes chaussures
同じ歩道、同じ話、同じ怪我、同じ靴
Même migraine, même rengaine
同じ頭痛、同じ口癖
Toujours les mêmes
いつも同じさ
Même cafard, même mouchoir
同じ憂鬱、同じハンカチ
Brouillard dans la rue Corvisart
コルヴィザール通りには霧

Toutes ces choses-là, on s'les murmure tout bas
Le soir dans la rue Corvisart
こうしたことをみな、人はひとり小さな声でつぶやくのよ
コルヴィザール通りで夕べに
Si seulement une seule fois
もしもたった一度だけ
Brouillard
霧
Une femme
ひとりの女
Dans la rue Corvisart, si seulement une seule fois
Quelqu'un dans la rue Corvisart
コルヴィザール通りで、もしもたった一度だけ
コルヴィザール通りで誰か
Un homme
ひとりの男
Une femme
ひとりの女
Juste une seule fois, brouillard dans la rue Corvisart.
たったの一度、コルヴィザール通りには霧。

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