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2015
05.31

リラの季節Le temps du lilas

Barbara Le temps du lilas


今回は、バルバラBarbaraの曲で、あまり知られていない「リラの季節Le temps du lilas」(1962年)です。



Le temps du lilas                  リラの季節
Barbara                         バルバラ


Il a foutu le camp, le temps du lilas, 注1
Le temps de la rose offerte,
Le temps des serments d´amour,
Le temps des toujours, toujours.
Il m´a plantée là, sans me laisser d´adresse 注2
Il est parti, adieu Berthe. 注3
Si tu le vois, ramène-le moi,
Le joli temps du lilas.

  去って行った、リラの季節は、
  バラを捧げられる季節は、
  愛の誓いの季節は、
  いつまでも、いつまでもと誓う季節は。
  私をここに置き去りにして、行き先も告げずに
  それは行ってしまった、さようならベルトと言って。
  あなたがもしも見かけたら、私のもとに連れ戻して、
  リラの美しい季節を

Le temps du lilas3


On en sourit du coin de l´œil
Mais on en rêve, du grand amour.
Je l´ai connu, j´en porte le deuil. 注4
Ça ne peut durer toujours.
Je l´ai valsé au grand soleil,
La valse qui vous fait la peau douce. 注5
Je l´ai croqué, le fruit vermeil,
A belle dents, à belle bouche.

  私たちは目の隅であざ笑う
  だけど夢見る、大恋愛を。
  私はそれを知った、そして喪失の苦を纏う。
  そんなものはずっと続きっこない。
  私は輝く太陽のもとで踊った、
  肌を柔らげるワルツを。
  私はかじった、真っ赤な果実を、
  美しい歯で、美しい唇で。

J´en ai profité, du temps du lilas,
Du temps de la rose offerte,
Du temps des serments d´amour,
Du temps des toujours, toujours.
Avant qu´il me quitte, pour me planter là
Qu´il me salue, adieu Berthe,
J´en ai profité, t´en fais pas pour moi, 注6
Du joli temps du lilas.

  私は満喫した、リラの季節を、
  バラを捧げられる季節を、
  愛の誓いの季節を、
  いつまでも、いつまでもと誓う季節を。
  それが、私のもとを去り、私を置き去りにするまでのあいだ、
  さようならベルトと、私に挨拶するまでのあいだ、
  私は満喫したわ、あなたが私を気にかけなくても、
  リラの美しい季節を

Le temps du lilas1


Il nous arrive par un dimanche,
Un lundi, un beau jour comme ça.
Alors, chaque nuit qui se penche
S´allume dans un feu de joie
Et puis un jour, c´est la bataille.
Meurent la rose et le lilas.
Fini le temps des épousailles.
C´est la guerre entre toi et moi

  それは日曜日とか、
  月曜日、そんなある日に私たちにやって来る。
  そして、更けゆく毎夜は
  喜びの炎のなかで燃え上がる。
  そしてある日、戦いが起こる。
  バラとリラは死ぬ。
  結婚の季節は終わる。
  それはあなたと私との戦争

Et le voilà qui fout le camp sans nous crier gare. 注7
La rose s´est trop ouverte.
On veut le rattraper mais il est trop tard,
Le joli temps du lilas.
Il vous plante là, sans laisser d´adresse
Salue et adieu Berthe.
Il vous file entre les doigts, 注8
Le joli temps du lilas

  そしてそれは予告もなく去って行く。
  バラは開きすぎた。
  呼び戻したいが遅きに失した、
  リラの美しい季節は。
  それはひとを置き去りにする、行き先も告げずに
  ごきげんようさようならベルトと。
  それは指の間をすり抜けて行く、
  リラの美しい季節は。

Le temps du lilas2


Mais va t´en balancer à ses branches,
Va t´en rêver dans ses jardins,
Va t´en traîner, hanche contre hanche,
Du soir jusqu´au petit matin,
Mais va t´en profiter du temps du lilas,
Du temps de la rose offerte,
Du temps des serments d´amour,
Du temps des toujours, toujours.

  でもあなた、その枝でゆらゆらしに行きなさい、
  その園で夢を見に行きなさい、
  行きなさいよ、腰と腰をくっつけ
  夕べから夜明けまでぐだぐだしに、
  でも、リラの季節を、
  バラを捧げられる季節を、
  愛の誓いの季節を、
  いつまでも、いつまでもと誓う季節を満喫しに行くことよ。

Ne reste pas là, va t´en le cueillir.
Il passe et puis adieu Berthe.
T´en fais pas pour moi : j´ai mes souvenirs
Du joli temps du lilas...

  そこにとどまらないで、それを摘みに行きなさい。
  それは過ぎてしまい、ベルトさようならというわけ。
  あなたは私を気にかけないけど:私には想い出があるわ
  リラの美しい季節の…。

[注]
1 foutre(ou ficher) le camp「立ち去る、ずらかる」。ilはle temps du lilas「リラの季節」。「私の青春は逃げて行く(もう森へなんか行かない)Ma jeunesse fout l'camp」では「青春」が去って行った。
2 planter là…「…を置き去りにする」
3 Berthe「ベルト」は女性の名で、adieu Bertheは挨拶の内容。
4 porter le deuil「喪服を着る」。porter le deuil de…(比喩的に)「(心の中で大事にしていた)…を失う」
5 faire la peau à qn.は「…を殺す、バラす」だが、このfaire la peau douceはla peau 「肌」(→さらには「生命、人柄」の意味も含む)をdouce「柔らか」くする意味ととらえた。vousは「不特定な人、人間一般」。
6 s´en faire pour…「…のことを心配する、気にする」
7 sans crier gare「警告(予告)なしに、突然に」
8 filer entre les doigts「指の間をすり抜ける、捉え損ねる、たちまちなくなる」



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2015
05.30

モナミ・ラ・ローズMon amie la rose

Mon amie la rose


シャンソンのなかでは、バラは、愛や夢や美やステキな生活の象徴として歌われています。「モナミ・ラ・ローズMon amie la rose」では、バラは「はかなさ」の象徴。この曲は、セシル・コーリエ Cécile Caulierの作詞、Cécile Caulierとジャック・ラコンブJacques Lacombeの作曲で、フランソワーズ・アルディーFrançoise Hardy が1964年に歌って彼女の代表曲となり、同名のアルバムに収録されています。「バラのほほえみ」という邦題でも知られています。



また、1999年に、アラビア系のポップスにアレンジしたものを、ナターシャ・アトラスNatacha Atlasが歌い、彼女の3枚目のアルバムGedidaに収録されています。ナターシャは、モロッコ人の父と、イスラム教徒のイギリス人の母の間にベルギーで生まれた歌手。
ナターシャの歌っている動画を選びましたが、音量が小さいので加減してお聴きください。非常におもしろいアレンジです。



Mon amie la rose                 モナミ・ラ・ローズ
Françoise Hardy                  フランソワーズ・アルディー


On est bien peu de chose 注1
Et mon amie la rose me l'a dit ce matin 注2
A l'aurore je suis née, baptisée de rosée 注3
Je me suis épanouie
Heureuse et amoureuse
Au rayon du soleil

  はかないものよ
  私の友だちのバラは今朝私にこう言った
  夜明けに私は生まれ、露の洗礼を受け
  私は咲いたわ
  しあわせな気持ちで 恋していたの
  太陽の光に

Mon amie la rose2


Je me suis fermée la nuit
Me suis reveillée vieillie
Pourtant j'etais très belle
Oui j'etais la plus belle
Des fleurs de ton jardin

  夜になると私は閉じて
  目覚めたら年老いていたわ
  でも私はとても美しかった
  ええ一番美しかったのよ
  あなたの庭の花々のうちで

On est bien peu de chose
Et mon amie la rose me l'a dit ce matin
Vois le dieu qui m'a faite
M'a fait courber la tête

  はかないものよ
  私の友だちのバラは今朝私にこう言った
  見てよ 私を作った神さまが
  私のこうべを垂れさせるの

Et je sens que je tombe
Et je sens que je tombe
Mon coeur est presque nu
J'ai le pied dans la tombe
Déjà je ne suis plus 注4
Tu m'admirais que hier et je serais poussière 注5
Pour toujours demain.

  私は倒れそうよ
  私は倒れそうよ
  心臓はほとんどむき出しだし
  片足はお墓のなか
  もう私は生きていないわ
  あなたは昨日だけ私に見とれてくれた でも私は塵になるのよ
  明日は永遠に。

Mon amie la rose3


On est bien peu de chose
Et mon amie la rose est morte ce matin
La lune cette nuit, a veillé mon amie
Moi en rêve j'ai vu 注6
Eblouissante et nue 注7
Son âme qui dansait
Bien au délà des nues 注8
Et qui me souriait

  はかないものよ
  私の友だちのバラは今朝死んだ
  今夜は月が、私の友だちの通夜をしてくれたわ
  私は夢のなかで見た
  まばゆく輝き裸で
  彼女の魂が
  雲の彼方で
  踊っているのを
  そして私に微笑みかけているのを 

Croit celui qui peut croire 注9
Moi j'ai besoin d'espoir
Sinon je ne suis rien
Ou bien si peu de chose
C'est mon amie la rose
Qui l'a dit hier matin.

  信じられる人は信じるわ
  私 私には希望が必要よ
  さもなきゃ 私はなんでもないもの
  もしくはとてもはかないもの
  わたしの友だちのバラよ
  昨日の朝そう言ったのは。

[注]
1 choseは不定代名詞として「わずかなもの、取るに足りないもの」。peu de chose全体でも同様の意味。onは、不特定な存在。「私」ととらえてもいいが、あえて主語をつけずに訳した。
2 la roseはmon amieと同格のため、定冠詞がついている。me l'a ditのleは前行の内容であることが、最後の節で明瞭になる。
3 roséeここでは名詞で「露」だが、「バラ色の」という意味の形容詞の女性形と同じ綴り。
4 êtreは、「存在する、生きている」の意味。
5 qu’hierとしないのは、queを強調するためか。
6 j'ai vuの目的語は、2行あとのson âme。
7 éblouissante et nueは挿入され、son âmeを形容している。
8 au délà de「…の向こうに」。nue=nuage「雲」、常に複数形で用いられる。
9 croitの主語はcelui



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2015
05.29

ミロールMilord

Édith Piaf Milord


「ミロールMilord」はエディット・ピアフÉdith Piafが1959年に創唱しました。彼女の父親は大道芸人で、母親はカフェで歌う歌手。幼いころは祖母の経営する娼婦宿で育ち、十代半ばから、ストリート・シンガーとして歌い始めます。小さな体で歌う姿から「小さなスズメ」と呼ばれたことから、ピアフ(スズメ)という芸名がつけられたそうです。
大歌手となってからは、シャルル・アズナヴールCharles Aznavour、イブ・モンタンYves Montand、ジルベール・ベコーGilbert Bécaud・ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiなどの歌手の才能を見出しデヴューを助けました。そうした育成と重なる部分も大いにあるようですが、関係のあった男性は多かったといわれます。
30代半ばからモルヒネ中毒で苦しみ、47歳で癌で亡くなりましたが、訃報を知ったジャン・コクトーJean Cocteauが後を追うようにして同じ日に亡くなったことは有名な話です。

2007年に封切りされた映画「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」は、きちんと実話に即して作られ、演じている女優さんも彼女が乗り移ったのではないかと思えるほどの迫真の演技をしていて、観る価値ありです。

ミロールmilordとはもともとは英国の貴族などに対する敬称でしたが、金持ちの紳士を指す、客への呼びかけの言葉として使われます。いわば「だんな」とといった意味ですが、歌詞では大文字を用いて個人名のような扱いになっていますし、日本でもこの読みのままの邦題で知られています。作詞はムスタキ。作曲はマルグリット・モノーMarguerite Monnot。心温まるいい歌で、娼婦宿で育ったピアフならでこそ出せる持ち味だと思いますが、哀しい娼婦の身の上やミロールの失恋のいきさつなどを、聴く側がふと想像したくなることも、この歌の奥行きとなっているようです。



Milord               ミロール
Édith Piaf             エディット・ピアフ


{Refrain:}
Allez venez! Milord 注1
Vous asseoir à ma table
Il fait si froid dehors
Ici, c'est confortable
Laissez-vous faire, Milord 注2
Et prenez bien vos aises
Vos peines sur mon cœur
Et vos pieds sur une chaise
Je vous connais, Milord
Vous ne m'avez jamais vue
Je ne suis qu'une fille du port
Une ombre de la rue...

  さぁさぁ!ミロール
  あたしのテーブルに座りにおいでよ
  外はとても寒いけど
  ここは快適だよ
  まかせてよ、ミロール
  気楽にしてね
  苦しいことはあたしに
  足は椅子にお預けなさい
  あたし、あんたを知ってるわ、ミロール
  あんたはあたしを見たことないだろうね
  あたしは港の女
  日陰暮らしの身…

Pourtant, je vous ai frôlé
Quand vous passiez hier
Vous n'étiez pas peu fier
Dame! le ciel vous comblait
Votre foulard de soie
Flottant sur vos épaules
Vous aviez le beau rôle
On aurait dit le roi
Vous marchiez en vainqueur
Au bras d'une demoiselle
Mon Dieu! qu' elle était belle
J'en ai froid dans le cœur...

  けど、あたしあんたにすれ違ったわ
  あんたが昨日通りかかったとき
  ずいぶん偉そうにしてた
  おー!神様はあんたの望みを叶えてくれたんだ
  絹のスカーフを
  肩のうえではためかせて
  すてきな役割を演じてたあんたは
  王様みたいだった
  あのお嬢さんと腕組んで
  勝利者然として歩いてた
  おーなんと!この人きれいなんだろうと
  あたし、もうぞっとしたわ…

Milord1.jpg


{Refrain}
Dire qu'il suffit parfois 注3
Qu'il y ait un navire
Pour que tout se déchire
Quand le navire s'en va
Il emmenait avec lui
La douce aux yeux si tendres
Qui n'a pas su comprendre
Qu'elle brisait votre vie
L'amour, ça fait pleurer
Comme quoi l'existence 注5
Ça vous donne toutes les chances
Pour les reprendre aprés...

  なにもかもぶち壊しになるのに
  船一艘あれば十分だってことがちょくちょくあるとはね
  船は出港するとき
  優しい目をしたあの娘を連れてっちまった
  彼女のほうは、あんたの人生を壊しちゃったことに
  気づくよしもなかった
  愛って泣かせるよね
  けどどんな人生だって
  あとで取り返すためのチャンスをぜんぶ与えてくれるもんだよ

Milord8.jpg


Allez venez! Milord
Vous avez l'air d'un môme
Laissez-vous faire, Milord
Venez dans mon royaume
Je soigne les remords
Je chante la romance
Je chante les milords
Qui n'ont pas eu de chance
Regardez-moi, Milord
Vous ne m'avez jamais vue...
Mais vous pleurez, Milord
Ça, j'l'aurais jamais cru.  注4

  さぁおいでよ!ミロール
  まるで子供みたいだね
  まかせてよ
  あたしの王国においでよ
  愚痴を聞いたげる
  愛の歌を歌ったげる
  ツイてなかったミロールたちの歌を歌ったげるわ
  あたしを見てよ、ミロール
  あんたはあたしを見たことないだろうね…
  けど泣いてるのね、ミロール
  まぁ、信じられないわ

Milord7.jpg


{parlé:}
Eh! bien voyons, Milord
Souriez-moi, Milord
Mieux que ça, un p'tit effort...
Voilà, c'est ça!
Allez riez! Milord
Allez chantez! Milord
Ta da da da...
Mais oui, dansez, Milord
Ta da da da...
Bravo! Milord...
Ta da da da..
Encore, Milord...
Ta da da da...

  さぁさ!ほら、ミロール
  あたしに微笑んでごらんよ、ミロール
  もっとよ、ちょっとがんばってさ…
  あぁ、そうだよ!
  笑って!ミロール
  歌って!ミロール
  タラララ…
  ほら、踊って、ミロール
  タラララ…
  ブラボー!ミロール…
  タラララ…
  もう一度、ミロール…
  タラララ…

[注]
1 milordは原語の読みで表記した。
2 se laisser faireは、「人の言うなりになる」「なりゆきに任せる」という意味。
3 Dire que+直説法は、驚きや憤慨を表して「…とはね」という意味。
次行のQue+接続法Bは、前行のilの内容を説明する部分。
また次のPour que+接続法Aは、「Aするためには」という意味。したがって、「AするためにはBするだけで十分だとはね」、
4 条件法過去形で、思いもしなかったことをあらわしている。「そんなこともあるんだ!」と訳してもいいような内容。




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2015
05.28

兵隊が戦争に行くときQuand un soldat

Francis Lemarque Quand un soldat


「兵隊が戦争に行くときQuand un soldat」をフランシス・ルマルクFrancis Lemarqueが作詞・作曲したのは第2次大戦後の1952年で、ちょうど第1次インドシナ戦争のさなか。
ウィキペディアによると、手榴弾や小型地雷や罠で手足を切断され、ゲリラ容疑の村民を殺傷する掃討作戦によって身体と精神に障害を負い帰国した若い兵士の姿に、フランス本国は大きな衝撃を受けて、1949年に本国軍徴集兵の海外派遣を禁止する法律が制定され、その後は、フランス人志願兵と外人部隊兵が戦地に赴くこととなったそうです。8年間の戦争で、フランス軍は7万5000人、フランス軍以外のフランス連合軍は1万9000人が戦死し、7万8000人が負傷。ベトミン側は兵士50万人の死傷者と25万人の民間人戦死者を出したとのこと。
あきらかに戦争を批判する意図をもったこの歌は、士気にかかわるということで放送が禁止されました。1954年のボリス・ヴィアンBoris Vianの「脱走兵Le déserteur」と同様のお話。フランシス・ルマルクは本来、「小さな靴屋さんLe petit cordonnier」や、「カエルLa grenouille」「パリのバラードBallade de Paris」「ア・パリÀ Paris」などのように庶民の心を歌う詩人。この歌は、創唱したイブ・モンタンの代表作の一つともなりました。

その後、フランシス・ルマルクは1981年にアカデミー・シャルル=クロL'Académie Charles-Crosのシャンソン・フランセーズのグランプリを受賞。また、1992年には、レジョン・ドヌール勲章Chevalier de la Légion d'honneurを授けられました。



イヴ・モンタン



シャンソン・プリュ・ビフリュオレChanson Plus Bifluoréeという4人組のグループの歌。4人とも歌うし楽器も演奏します。この曲は、1991年に出した彼らの最初のアルバムChanson plus bifluorée À l'Européenに収録されています。



Quand un soldat             兵隊が戦争に行くとき
Francis Lemarque            フランシス・ルマルク


Fleur au fusil tambour battant il va 注1
Il a vingt ans un cœur d'amant qui bat
Un adjudant pour surveiller ses pas
Et son barda contre ses flancs qui bat
Quand un soldat s'en va-t-en guerre il a
Dans sa musette son bâton d'maréchal 注2
Quand un soldat revient de guerre il a
Dans sa musette un peu de linge sale

  銃口に花挿し太鼓の音に合わせ彼は行く
  彼は二十歳 恋する胸はときめき
  ひとりの曹長が彼の歩みを見守り
  装具は横っ腹にバタバタ当たる
  兵隊が戦争に行くとき 彼は持っている
  鞄のなかに 昇進の希望を
  兵隊が戦争から帰るとき 彼は持っている
  鞄のなかに 汚れた下着をちょっとばかり

Quand un soldat1


Partir pour mourir un peu 注3
A la guerre à la guerre
C'est un drôle de petit jeu 注4
Qui n'va guère aux amoureux
Pourtant c'est presque toujours 注5
Quand revient l'été
Qu'il faut s'en aller
Le ciel regarde partir
Ceux qui vont mourir
Au pas cadencé 注6
Des hommes il en faut toujours 注7
Car la guerre car la guerre
Se fout des serments d'amour 注8
Elle n'aime que l'son du tambour

  ちょっとばかり死んだ気分になりに行く
  戦いに 戦いに
  それは 恋に陥ったりまではしない
  軽いお遊びさ
  だけど たいてい
  また夏が来たら
  行かなきゃならない
  歩調を合わせて
  死にに行くやつらの
  出発を 空が見守る
  男たちには常に定めなんだ
  なぜなら戦争は なぜなら戦争は
  愛の誓いなんて馬鹿にするから
  戦争は太鼓の音しか愛さない

Quand un soldat2


Quand un soldat s'en va-t-en guerre il a
Des tas de chansons et des fleurs sous ses pas 注9
Quand un soldat revient de guerre il a
Simplement eu d'la veine et puis voilà... 注10

  兵隊が戦争に行くとき
  たくさんの歌や花を踏みつけて行く
  兵隊が戦争から帰るとき
  ただ運がよかったってだけ それだけさ

[注] この曲は特に脚韻の効果に注目したい。
1 tambour battant「太鼓を鳴らして、てきぱきと、ぴしぴしと」
2 bâton d'maréchal「元帥杖、(到達)しうる最高の位」。avoir son bâton d'maréchal dans sa giberne「一兵卒でも(努力次第では)高い位に就くことができる」という成句からの表現。
3 mourir un peutと次行のla guerreは、3,4行目にある「恋に陥ったりまではしない軽いお遊び」、すなわち休暇中の女性関係のことを、実際の戦争で死ぬことに近づけて表現している。
4 un drôle de=bizarre「滑稽な、奇妙な」
5 c'estは2行あとのqu'il faut…を予示。
6 (marcher) au pas cadencé「歩調を合わせて(歩く)」
7 il (me,te,…) faut…「(…には)…が必要だ」の表現で、en =des hommes。この節の7行目のil fautを引き継いでいる。
8 se foutre de「…を馬鹿にする」
9 des tas de=beaucoup de「たくさんの」
10 avoir de la veine= être en veine「運がいい」という俗語。veine「静脈」は、心臓への血液の戻りを象徴し、verser son sang pour la patrie「祖国のために血を流す」という表現に対抗してこの歌詞を用いていることが重要である。et puis voilà=et puis c’est tout「ただそれだけである」。




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2015
05.27

桜んぼの実る頃Le temps des cerises

Cora Vaucaire Le temps des cerises


桜んぼは旬の時期が短い果物です。そして、恋もまた旬の時期が短い…。
「桜んぼの実る頃Le temps des cerises」は、現役シャンソン、すなわち今なお歌い続けられているシャンソンのなかで一番古い曲だといわれます。1866年にジャン=バティスト・クレマンJean-Baptiste Clémentが歌詞を書き、2年後にオペラ歌手だったアントワーヌ・ルナールAntoine Renardが曲をつけました。もともとは感傷的な恋の歌で、3番までしかありませんでした。クレマンはコート一枚と引き換えにこの曲をルナールにあげてしまったといわれます。
その後、1871年3月に労働者政権のパリ・コミューンが政権を取ったあと、5月には国民議会が政権を奪い、市街戦ののちに27日に、コミューン連盟兵たちをペール・ラシェーズ墓地の北東の壁の前で銃殺します。上記の写真がその壁で、「連盟兵の壁」とよばれています。その事件が起こったのがちょうど桜んぼの季節でしたし、「血のしずくのように滴る」という、歌詞のなかの桜んぼの形容もあって、1875年前後から、第三共和政に批判的なパリ市民たちは、連盟兵たちへの追悼の気持ちをこの歌に託して歌うようになりました。
ルイーズという女性革命家がパリ・コミューンの蜂起にかかわり、その後7年間ニュー・カレドニアに流され、釈放後も労働運動やドレフュス事件などで活躍しました。
1885年、作詞から20年も経って、コミューン評議員でもあったクレマンは、この曲に4番目の歌詞を書き加えてルイーズに捧げました。恋の歌は完全に意味合いを変えたわけですが、もとのとおりの恋の歌として歌ったり聴いたりすることももちろん可能です。
これも多くの歌手が歌っています。Wikipediaのフランス語のページによると、40人以上。
日本では、1992年にスタジオジブリのアニメ映画「紅の豚」で、加藤登紀子が「ジーナ」の声を演じてフランス語で歌っているのが印象的です。

一番代表的なのはコラ・ヴォケールCora Vaucaireの歌でしょう。



ジャン・リュミエールJean Lumièreという人の古い録音



変わったところで、若手グループのノワール・デジールNoir Désirを出しておきましょう。パリ・コミューン時代をテーマとしたGerminalとLa communeを使ったモンタージュ・ビデオをバックにしています。



Le temps des cerises   桜んぼの実る頃
Cora Vaucaire       コラ・ヴォケール


Quand nous chanterons le temps des cerises
Et gai rossignol et merle moqueur
Seront tous en fête 注1
Les belles auront la folie en tête
Et les amoureux du soleil au cœur 注2
Quand nous chanterons le temps des cerises
Sifflera bien mieux le merle moqueur

  僕たちが桜んぼの季節を歌い
  陽気なナイチンゲールやマネシツグミが
  浮かれ騒ぐとき
  きれいな娘たちはのぼせあがり
  恋人たちは胸を熱く焦がすだろう
  僕たちが桜んぼの季節を歌うとき
  マネシツグミはもっとじょうずにさえずるだろう

Le temps des cerises2


Mais il est bien court le temps des cerises
Où l'on s'en va deux cueillir en rêvant
Des pendants d'oreilles 注3
Cerises d'amour aux robes pareilles
Tombant sous la feuille en gouttes de sang
Mais il est bien court le temps des cerises
Pendants de corail qu'on cueille en rêvant

  でも 桜んぼの季節はとても短い
  耳飾りを二人して夢みごこちで摘みに行く季節は
  血のしずくのように葉陰に滴り落ちる
  おそろいの衣装の愛のさくらんぼ
  夢みごこちで摘む珊瑚の耳飾り
  桜んぼの季節はとても短い

Quand vous en serez au temps des cerises
Si vous avez peur des chagrins d'amour
Evitez les belles
Moi qui ne crains pas les peines cruelles
Je ne vivrai pas sans souffrir un jour
Quand vous en serez au temps des cerises
Vous aurez aussi des peines d'amour

  桜んぼの季節には
  恋の辛さを恐れるのなら
  きれいな娘たちを避けることだ
  耐え難い苦しみに怖じない僕は
  一日たりとて苦しまずに生きることはないだろう
  桜んぼの季節には
  君たちもまた恋の苦しみを味わうだろう

Le temps des cerises3


J'aimerai toujours le temps des cerises
C'est de ce temps-là que je garde au cœur
Une plaie ouverte
Et Dame Fortune, en m'étant offerte 注4
Ne saura jamais calmer ma douleur
J'aimerai toujours le temps des cerises
Et le souvenir que je garde au cœur

  僕はずっと桜んぼの季節を愛し続ける
  僕が癒えることのない傷口をこころの奥に持ったのは
  この季節だから
  運命の女神は、たとえ僕に微笑みかけても
  僕の苦しみを鎮めることなどできやしない
  僕はずっと桜んぼの季節を
  心の奥の想い出もともに愛し続ける

[注]女性のコラ・ヴォケールも歌っている歌詞だが、クレマンがルイーズに捧げたものであり、「きれいな娘たちを避ける」などの表現も入っているので、「僕は」と男性の立場の訳語にした。
1 tousのsは発音する。en fête「浮き浮きした」
2 前行に準じた表現なので、du soleilの前にaurontが省略されている。 duは唯一物名詞につく部分冠詞。太陽の光、熱などの要素を示す。
3 桜んぼは二股に分かれていて、それを耳の上に掛けるようにして耳飾りにする。次行のcerises d'amourはdes pendants d'oreillesの言い換えで同格。
4 Dame Fortune「運命の女神」。en m'étant offerteは、受動態のジェロンディフで、意味的には譲歩をあらわす。


Le temps des cerises1

「連盟兵の壁」:AUX MORT DE LA COMUNE 21-28 Mai 1871と書かれています。


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2015
05.26

バラ色の人生La vie en rose

Edith Piaf La vie en rose


前回はイヴ・モンタンYves Montandの「バラを探せCherche la rose」でしたので、今回はモンタンとバラというつながりで、エディット・ピアフÉdith Piafの「バラ色の人生La vie en rose」を。上の画像は、2011年にAmazonで予約販売された12インチのアナログLPレコードです。

1944年パリ解放の直後、ピアフ自身がイヴ・モンタンとの恋の喜びを込めて歌詞を書き、即興でメロディーの下地も作ったそうです。彼女はSACEM(仏音楽著作権協会)に登録された作曲家ではなかったため、友人のルイギイLouiguyの名を借りて登録したのですが、評判が悪く、楽譜はそのまま放置されていました。それを45年に無名歌手のマリアンヌ・ミッシェルMarianne Michelが自分が経営するキャバレーで歌い、ラジオでも流されました。それを知ったピアフ自身も46年に後追いで録音したそうです。「日曜日はきらいJe hais les dimanches」の時と似た話。あなたとの生活は幸せいっぱいよと言っているだけのどうってことのない歌詞、「今宵ただひとりJe suis seule ce soir」と同じスロー・フォックスのメロディーは、ピアフには珍しいものながら、彼女の代表的なレパートリーとなりました。



創唱したマリアンヌ・ミッシェル



マレーネ・ディートリッヒMarlene Dietrich



La vie en rose     バラ色の人生
Édith Piaf      エディット・ピアフ


Des yeux qui font baisser les miens
Un rire qui se perd sur sa bouche
Voilà le portrait sans retouche
De l'homme auquel j'appartiens

  私の目を伏せさせてしまうその瞳
  口元に消える笑み
  これが修正なしのポートレート
  私が身も心も捧げる男性の

La vie en rose2


Quand il me prend dans ses bras,
Q’il me parle tout bas 注1
Je vois la vie en rose,

  あの人が私を抱きしめて、
  そっと囁くとき
  私には人生がバラ色に見えるの、

Il me dit des mots d'amour
Des mots de tous les jours, 注2
Et ça me fait quelque chose

  私に愛の言葉を言ってくれると
  毎日の言葉だけれど、
  私になにかの作用をするの

Il est entré dans mon cœur, 注3
Une part de bonheur
Dont je connais la cause,

  私の心に入って来たのは、
  幸せといわれるもので
  そのわけはわかっているの、

C'est lui pour moi, 注4
Moi pour lui dans la vie 
Il me l'a dit, l'a juré
Pour la vie.

  私のための彼で、
  彼のための私 この人生で
  そう言って、誓ってくれた
  命ある限りと。

Et dès que je l'aperçois 注5
Alors je sens en moi
Mon cœur qui bat.

  あの人を見かけるとすぐ
  私のなかに感じるの
  胸がときめくのを。

Des nuits d'amour à plus finir 注6
Un grand bonheur qui prend sa place
Des ennuis, des chagrins s'effacent
Heureux, heureux à en mourir

  もう終わることのない愛の夜
  大きな幸せが満ちあふれ
  悩みも、悲しみも消え
  幸せよ、死んでしまうくらい幸せよ

La vie en rose1


Quand il me prend dans ses bras,
Q’il me parle tout bas
Je vois la vie en rose,

  あの人が私を抱きしめて、
  そっと囁くとき
  私には人生がバラ色に見えるの、

Il me dit des mots d'amour
Des mots de tous les jours,
Et ça me fait quelque chose

  私に愛の言葉を言ってくれると
  毎日の言葉だけれど、
  私になにかの作用をするの

Il est entré dans mon cœur,
Une part de bonheur
Dont je connais la cause,

  私の心に入って来たのは、
  幸せといわれるもので
  そのわけはわかっているの、

C'est toi pour moi,
Moi pour toi dans la vie
Tu me l'a dit, l'a juré
Pour la vie.

  私のためのあなたで
  あなたのための私 この人生で
  そう言って、誓ってくれた
  命ある限りと。

Et dès que je t'aperçois
Alors je sens en moi
Mon cœur qui bat.

  あなたを見かけるとすぐ
  私のなかに感じるの
  胸がときめくのを。

La la la la la la
la la la la la la
la la la la

[注] 題名のroseは色の名前(男性名詞)。ここでは性の区別は関係ないが、花の名前の場合は女性名詞。
1 行頭のqueは前行と同じquandの代用。これが無くてIl me parle…となっている歌詞もあるが、ピアフはQ'il me parle…と歌っている。
2 tous les jours「毎日、普段」
3 このilは「彼」ではなく、仮主語で、意味上の主語である次行のune part de bonheurの代理。
4 ここから後のlui とmoiで示されているのと同じ内容を、最後の節ではtoiとmoi で示されている。ともに、「君のための僕、僕のための君」と相手が言った内容を間接話法で表現している。
5 dès que「…するやいなや」
6 à plus finir「いつまでたっても終わらない」



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2015
05.25

バラを探せCherche la rose

Yves Montand Cherche la rose


以前に取り上げたジルベール・ベコーの「バラはあこがれL'important, c'est la rose」では、バラは、憧れ求める対象、心にとどめたい大切なものを象徴していましたが、イヴ・モンタンYves Montandが歌った「バラを探せCherche la rose」という曲でも同様です。1962年にアンリ・サルヴァドールHenri Salvadorとルネ・ルゾーRené Rouzaudが作った曲で、マレーネ・ディートリッヒMarlene Dietrichも歌っています。そういえば、モンタンはもうひとつ、バラの歌「ピカルディーのバラDansons la rose (Roses de Picardie)」を歌っていますね。どちらもすてきです。

マルレーネ・ディートリッヒ



アンリ・サルヴァドールがカエターノ・ヴェローソCaetano Velosoとデュオで歌っています。



イヴ・モンタン



Cherche la rose           バラを探せ
Yves Montand            イヴ・モンタン


Dans le sable du désert
Sur les dunes de la mer
Et tant pis si tu te perds,
Cherche la rose

  砂漠の砂のなかに
  海辺の砂丘の上に
  そこで道に迷ったらあいにくだが、
  バラを探せ

Aux lucarnes des prisons
Où l´on rêve de pardon
Où se meurt une chanson
Cherche la rose

  ひとが許しを願い
  ひとつの歌が消えゆく
  監獄の小窓で
  バラを探せ

Cherche la rose1


Sous les mousses, les orties
Dans les flaques de la pluie
Sur les tombes qu´on oublie
Cherche la rose

  苔の下に、イラクサの下に
  雨降りの水たまりの中に
  忘れられた墓の上に
  バラを探せ

Où s´attristent les faubourgs 注1
Chez l´aveugle, chez le sourd
Où la nuit rêve du jour
Cherche la rose, la rose toujours

  下町の人々が悲しむところで
  盲目の人の家で、唖の人の家で
  夜が昼を夢みるところで
  バラを探せ、バラをいつも

Cherche la rose2


Au fond de ton cœur meurtri
Où la source se tarit
Où dans l´ombre monte un cri
Cherche la rose

  泉が涸れ
  闇のなかに叫び声の上がる
  傷ついた君の心に奥に
  バラを探せ

Et battant tous les pavés 注2
Si tu n´ l´a point trouvée
Tu l´auras au moins rêvée
Cherche la rose toujours

  そしてあらゆる街をうろついても
  もしもそれをまるで見つけられなくても
  君はすくなくともそれを夢見たわけさ
  バラを探せいつも

La rose
La rose
La rose ...

  バラを
  バラを
  バラを

[注]
1 faubourgは(主に複数形で)「町外れ、下町、場末」の意味だが、(複数形で)そうした地域に住む人のことも意味する。
2 battre le pavé「街をぶらつく、うろつき回る」




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2015
05.24

ポルトガルの洗濯女Les lavandières du Portugal

Les lavandières du Portugal


「ポルトガルの洗濯女Les lavandières du Portugal」は、洗濯棒で叩くタップタップという擬音語が入ったとてもユニークな曲です。まず、独特のリズム。ブラジル産のバイオーンというリズムを用いた疑似ラテンで、シャンソンらしさがほとんどないシャンソンだといわれます。うまく歌えれば気持ちいいだろうな。

1955年に、ジャクリーヌ・フランソワJacqueline François が歌い、「パリのお嬢さんMademoiselle de Paris」を上回るヒットとなりました。作曲は、「ただ愛に生きるだけUn jour l'amour」「恋はみずいろL’amour est bleu」の作曲者のアンドレ・ポップAndré Popp。作詞はRoger Lucchesi。この曲は、フランスで初めてマイクログルーヴ用に制作された録音だったといわれます。音質の向上したメディアへの進歩の一歩がこの曲とともに記されたということです。のちに、イヴェット・ジローYvette Giraudも歌っています。1957年に、アンドレ・ポップが音楽を担当して同名のフランス映画が作られています。この曲、日本語では「お転婆キキ」なる邦題で発売されたとか、もう忘れられている話でしょう。



イヴェット・ジローの歌。音は悪いですが、画像が楽しめます。



Les lavandières du Portugal         ポルトガルの洗濯女
Jacqueline François             ジャクリーヌ・フランソワ


Connaissez-vous des lavandières
Comme il y en a au Portugal
Surtout celles de la rivière
De la ville de Setubal
Ce n'est vraiment pas des lavoirs
Où elles lavent mais des volières
Il faut les entendre et les voir
Rythmer leurs chants de leurs battoirs

  あんた方はご存じ?
  ポルトガルの なかでも
  セトゥバルの町を流れる川の
  洗濯女たちを
  彼女たちが洗濯しているところは
  ほんとうは洗濯場じゃなくて おしゃべりのたまり場
  彼女たちが洗濯棒で歌の拍子をとっているのを
  聞いてまた見てごらん

lavandière3


{Refrain:}
Tant qu'y aura du linge à laver
On boira de la manzanilla
Tant qu'y aura du linge à laver
Des hommes on pourra se passer 注1
Et tape et tape et tape avec ton battoir
Et tape et tape tu dormiras mieux ce soir

  洗い物があればあるほど
  マンザニーリャを飲み
  洗い物があればあるほど
  男なしで過ごせるのよ
  洗濯棒で タップ タップ タップ
  タップ タップ あんたは今晩よく眠れるよ

Quand un homme s'approche d'elles
Surtout s'il est jeune et bien fait
Aussitôt elles glissent leurs bretelles
De leurs épaules au teint frais
Oui mais si c'est un va-nu-pieds
Ou bien même quelque vieil hidalgo
Elles s'amusent à le mouiller
En chantant d'une voix égayée :

  男が彼女たちに近づいたなら
  とくにそれが若くて男前なら
  すぐさまエプロンの紐を
  若々しい肌色の肩から滑らせるのさ
  でもそれが浮浪者だったり
  あるいは年寄りのスペイン貴族だったなら
  陽気な声で歌いながら
  水を浴びせてからかうんだよ

lavandière2


{au Refrain}

Le soir venu les lavandières
S'en vont avec leur linge blanc
Il faut voir leur silhouette fière
Se détacher dans le couchant
Sur leur tête leur panier posé
Telles des déesses antiques
On entend doucement s'éloigner
Leur refrain et leurs pas feutrés :

  夜になると洗濯女たちは
  真っ白な布を持って立ち去っていく
  古代の女神たちのように
  頭に籠を載せた
  彼女たちの堂々たるシルエットが
  夕陽の中にくっきりと浮かび上がるのを見てごらんよ
  彼女たちの歌のルフランと忍ばせた足音が
  そおっと遠ざかって行くのが聞こえる

{au Refrain}

Oui mais souvent les lavandières
Trouvent le mari de leur choix
Toutes les autres lavandières
Le grand jour partagent leur joie
Au repas de noces invitées 注2
Elles mettent une ambiance folle
Le xérès faisant son effet 注3
Elles commencent à chantonner :

  でも洗濯女たちはときどき
  自分の好みで夫を見つけるのさ
  ほかの洗濯女たちは
  晴れの日には 結婚披露宴に招待されて
  彼らの喜びをともにする
  彼女たちは浮かれた雰囲気を醸し出すよ
  シェリー酒が効いて
  鼻歌を歌い始めるのさ

lavandière1


{au Refrain}

[注] ジャクリーヌ・フランソワは最後の節は歌っていない。
1 se passer de「…なしで済ませる」
2 repas de noces「結婚披露宴」
3 xérè「シェリー酒」スペインのへレス地方産の白ワイン




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2015
05.23

リラのワルツLa valse des lilas

Michel Legrand La valse des lilas


フランスの作曲・編曲家、ピアニストのミッシェル・ルグランMichel Legrandは1932年生まれ。「シェルブールの雨傘Les parapluies de Cherbourg」「ロシュフォールの恋人たちLes Demoiselles de Rochefort」「華麗なる賭けThe Thomas Crown affair」「おもいでの夏Summer of '42」など数々の映画の音楽を担当し、それぞれの映画で用いられた数々の曲を作曲しました。
今回はミッシェル・ルグラン自身が創唱した「リラのワルツLa valse des lilas」(1956年、作詞:エディ・マルネイEddy Marnay、作曲Michel Legrand&Eddy Marnay)を取り上げます。


ルネ・ルバRenée Lebasの歌も素晴らしいです。


英語ヴァージョンのOnce upon a summertimeはバーブラ・ストライザンドBarbra Streisandが大ヒットさせました。



La valse des lilas            リラのワルツ
Michel Legrand             ミッシェル・ルグラン


On ne peut pas vivre ainsi que tu le fais
D'un souvenir qui n'est plus qu'un regret
Sans un ami et sans autre secret
Qu'un peu de larmes.
Pour ces quelques pages de mélancolie
Tu as fermé le livre de ta vie
Et tu as cru que tout était fini...

  友だちもなく 少しばかりの涙のほかに
  秘密ももたず
  もはや後悔にすぎない想い出に生きる
  そんな君のような生き方はできない。
  こんな数ページの憂鬱のために
  君は人生の本を閉じ、
  そしてなにもかも終わってしまったと思ったんだ…

{Refrain:}
... Mais tous les lilas
Tous les lilas de mai
N'en finiront 注1
N'en finiront jamais
De fair' la fête au cœur des gens qui s'aiment, s'aiment. 注2

  …だがリラの花はみな
  5月のリラの花はみな
  愛し合う、愛し合う人々の心をもてなすことを
  やめない
  けしてやめない。

Lilas2.jpg


Tant que tournera 注3
Que tournera le temps
Jusqu'au dernier
Jusqu'au dernier printemps
Le ciel aura
Le ciel aura vingt ans
Les amoureux en auront tout autant...(×2)

  巡るかぎり
  季節が巡るかぎり
  最後の
  最後の春まで
  空は
  空は青春を迎える
  恋人たちもまったく同様だ…

Si tu vois les jours se perdre au fond des nuits
Les souvenirs abandonner ta vie
C'est qu'ils ne peuvent rien contre l'oubli...

  毎日が夜の底に沈み
  想い出が君の人生を蔑ろにしていると感じても
  忘却には手出しはできないさ…

[注] ルグランは最後の節は歌っていない。
1 n’en finir pas de+inf.「なかなか…し終えない、いつまでも…する」。ここではjamaisを用いている。
2 faire la fête à qn.「…を歓迎する」
3 tant que…「…ほど、…だけ」。次行はtantが省略されている。




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2015
05.22

ああ!パリの美しき5月!Ah!le joli mois de mai a Paris!

Ah! Le joli mois de mai à Paris2


1968年5月のパリ。自由と平等と自治を掲げた約1千万人の労働者・学生がパリでゼネストをおこない、これに対する機動隊の武力的抑圧に抗議する民衆によって工場はストライキに突入し、フランスの交通システムはすべて麻痺状態に陥り、各大学もストライキに突入しました。当時のドゴール大統領は、軍隊を出動させて鎮圧しましたが、労働者の団結権、大学の学生による自治権が認められる結果となりました。
「ああ!パリの美しき5月!Ah!le joli mois de mai a Paris!」(1968年、作詞・作曲:ジャン=フレデリック・ブロサールJean-Frédéric Brossard別名Evgen Kirjuhel )は、この「五月革命Mai 68」の中で生まれた歌で、ヴァニア・アドリアン=サンスVania Adrien-Sensが歌い、「五月革命の歌Chansons de mai 68(副題:Comme nous les chantions ce printemps-là)」と題したCDに収録されています。

その後、日本のいくつもの大学でも、この「五月革命」に倣って学生たちが大学紛争を引き起こしました。加藤登紀子は、東大在学中から学生運動に積極的に参加していて、72年にブント系の「反帝学連」委員長の藤本敏夫と獄中結婚をしました。71年にこの歌を「美しき5月のパリ」という題名で日本語で歌っていますが、この曲に対する彼女の思い入れは深いものだったろうと推察します。
この曲は「俺たちの道は」という題名の日本語の歌詞でも歌われているようです。
私は69年に全共闘が占拠していた京都の大学を去り東京に出てきました。これは遠い昔の傷を思い起こさせる歌です。

フランス語の歌の動画は削除されてしまい、日本語のものしか無かったので、今回自分で作りました。(この音源は、歌詞の最初の1行が欠けています。)



Ah! Le joli mois de mai à Paris ! ああ!パリの美しき五月!
Vania Adrien-Sens           ヴァニア・アドリアン=サンス


J'ai vu les hommes matraqués
J'ai vu des femmes bousculées
J'ai vu des grenades claquées
J'ai entendu la foule hurler

  私は男たちが棍棒で殴られるのを見た
  私は女たちが突き飛ばされるのを見た
  私は手榴弾が炸裂するのを見た
  私は群集がわめくのを聞いた

{refrain :}
Ah! le joli mois de mai à Paris!
Ah! le joli mois de mai à Paris!

  ああ!パリの美しき五月よ!
  ああ!パリの美しき五月よ!

Ah! Le joli mois de mai à Paris ! 1


J'ai vu des rêves s'eveiller
J'ai vu la révolte gronder
J'ai vu les codes piétinés
Les drapeaux de la liberté

  私は理想が目覚めるのを見た
  私は反乱が拡大するのを見た
  私は法が踏みつけられるのを
  自由の旗を見た

{refrain}

J'ai vu le printemps nouveau-né
Se répandre dans les quartiers
J'ai vu partout le vent tourner
J'ai senti l'espoir se lever

  私は新しく生まれた春が
  街々に広がるのを見た
  私は風がいたるところを回るのを見た
  私は希望が湧き上るのを感じた

Ah! Le joli mois de mai à Paris ! 3


{refrain}

J'ai vu que la vie allait changer
J'ai vu la vérité bafouillée
La honte est là pour refluer
La sénilité s'en est allée

  私は人生が変わろうとしているのを見た
  私は真実がもごもごと語られるのを見た
  恥は存在し蘇えってくる
  古臭さは潰え去った

{refrain}

Et ientôt le jour va se lever
Sur les chantiers et ateliers
La révolte ressuscitée
Enterre le vieux monde décedé

  まもなく日が昇ろうとしている
  現場と仕事場に
  蘇った反乱が
  くたばった古い世界を葬る

{refrain}

Nous batirons une societé
Ou chacun libre et entier
Responsable de sa destinée
Et du sort de l'humanité

  おのおのが自由で完全に
  自分の運命と
  人類の運命に責任を持ち得る
  社会を僕たちは築きあげるだろう

Ah! Le joli mois de mai à Paris ! 2


Ah! le prochain mois de mai à Paris!
Ah! le prochain mois de mai à Paris!
Ah! le prochain mois de mai à Paris!
Ah! le prochain mois de mai à Paris!

  ああ!来たるべきパリの五月
  ああ!来たるべきパリの五月
  ああ!来たるべきパリの五月
  ああ!来たるべきパリの五月



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2015
05.21

《東京シャンソンコンクール》入賞者コンサート

今月21日(木夜)に、コンクールと同じ「杉並公会堂小ホール」にて、第1回・第2回の入賞者たちが勢ぞろいするコンサートが開かれます。
ハイレベルのコンクールでみごと入賞を果たされた方々が、コンクールとはまた違ったリラックスした空間でそれぞれの歌唱を披露してくれます。 ちょうど、フィギュアスケートのエキシビションのようなイヴェントです。

5212.jpg


出演者はこの13名の方々です。(アイウエオ順)

一條荘子 (岩手、第2回日本語部門歌唱賞)
井上葉子 (埼玉、第1回・第2回フランス語部門プルミエプリ)
入江珠子 (福岡、第2回フランス語部門グランプリ)
大木実 (宮城、第1回日本語部門グランプリ)
おぐら恵子 (千葉、第2回日本語部門歌唱賞)
金子史央 (東京、第1回・第2回日本語部門歌唱賞)
北島はるか (埼玉、第2回フランス語部門準グランプリ)
小関美央 (千葉、第2回フランス語部門プルミエプリ)
島田えまり (東京、第1回日本語部門歌唱賞)
島袋力夫 (沖縄、第1回フランス語部門準グランプリ)
日栄照美 (東京、第1回・第2回フランス語部門プルミエプリ)
堀江順子 (宮城、第1回・第2回日本語部門歌唱賞)
八木章夫 (神奈川、第2回日本語部門グランプリ)

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2015
05.21

なおも夢見るJe rêve encore

Paris Combo


パリス・コンボParis Comboという5人組の曲「セニョ-ル(カタツムリの歌)Señor(Colimasong) 」を以前ご紹介し、その記事に彼らのことを少し解説しています。今回は「なおも夢見るJe rêve encore」を取り上げます。1997年の彼らの最初のアルバム:Paris Comboに収録されています。



Je rêve encore  なおも夢見る
Paris Combo   パリス・コンボ


Oh, mon amour, il ne faut pas me laisser
Sombrer toute seule, quand vient la nuit,
Dans les bas-fonds les plus retirés 注1
De ces rêves, où je t'oublie.
Oh, mon amour, ne me laisse pas
Rêver de toi, quand je m'ennuie
Car un autre vient m'arracher à tes bras
Et me jeter sur un lit de perles.
Mais je n'veux pas de cet homme -là,
Ni de ce lit qui me sourit
Et toutes ces perles qui tombent à terre
Ca me fait peur, j'ai peur, oui,
Mais je rêve encore.

  おお、愛しい人、夜がおとずれる時に
  私を一人っきりで沈みこませておかないで、
  こんな夢のなかのいちばん奥の底の底に、
  そこで私はあなたを忘れてしまうわ。
  おお、愛しい人、私が倦んでいる時に
  あなたを夢見させておかないで
  だってほかの男があなたの腕から私をもぎ取って
  私を真珠のベッドの上に投げるわ。
  でも私は好きじゃないわ、そんな男も、
  私に微笑みかけるそんなベッドも、
  そしてその真珠玉はみんな地に落ちる
  それは私を怯えさせる、私は怖い、そうよ、
  でも私はなおも夢見る。

Je rêve encore4


Il ne faut pas me laisser
Sombrer toute seule, quand je m'ennuie,
Dans les bas-fonds, les plus secrets,
De ces rêves où je t'oublie.
Oh, mon amour, ne me laisse pas
Me faire exécuter par ce soldat
Qui s'apprête à percer ma poitrine
De trois toutes petites balles en fer blanc.
Mais il s'approche lentement de moi
Et il décroche un grand coutelas
Qu'il plante en moi, dans mon cœur qui bat,
Ca me fait peur, je meurs, oui,
Mais je rêve encore...

  おお、愛しい人、夜がおとずれる時に、
  私を一人っきりで沈みこませておかないで、
  こんな夢のなかのいちばん奥の底の底に、
  そこで私はあなたを忘れてしまうわ。
  おお、愛しい人、
  私を兵士たちに処刑させないで
  彼らは私の心臓を
  3個の鉛のとっても小さい玉でぶち抜こうとするわ。
  でも彼はゆっくりと私に近づき
  大きなナイフを抜いて
  私の鼓動している心臓に突き刺す
  それは私を怯えさせる、私は死ぬ、そうよ、
  でも私はなおも夢見る…

Je rêve encore2


Il ne faut pas me laisser
Sombrer toute seule, quand vient la nuit,
Dans les bas-fonds les plus retirés
De ces rêves, où je t'oublie.
Oh, mon amour, viens avec moi
Dans mon sommeil, je t'ouvre les bras
Pour que tu m'y rejoignes enfin,
Au creux de mes songes de petit matin.
Et même si tu te noies dans la mer,
Un éléphant volant, fendant l'air,
T'apporte à moi, quand les chiens aboient,
Te voilà dans mes bras, te voilà
Mais je rêve encore...

  夜がおとずれる時に、
  私を一人っきりで沈みこませておかないで
  こんな夢のなかのいちばん奥の底の底に
  そこで私はあなたを忘れてしまうわ。
  おお、愛しい人、私といっしょに来て
  私の眠りのなかに、私はあなたに腕を広げる
  あなたがついには私と一つになるように、
  明け方の夢想のなかで。
  そしてもしあなたが海で溺れても、
  空飛ぶゾウが、空中をとおって、
  あなたを私のもとに運んでくれるわ、犬たちが吠えた時に、
  あなたはもう私の腕のなかにいるわ、あなたはもう
  でも私はなおも夢見る…

Je rêve encore1


Oh, mon amour, il ne faut pas me laisser
Sombrer toute seule, quand vient la nuit,
Dans les bas-fonds les plus secrets
De ces rêves, où je t'oublie.
Oh, mon amour, toi, n'oublies pas
Oh, non, n'oublies pas de veiller sur moi. 注1
Car à force de rêver toute éveillée,  注2
Il faudra bien me rêver, oui, me rêver
Oui, me réveiller.

  おお、愛しい人、夜がおとずれる時に、
  私を一人っきりで沈みこませておかないで
  こんな夢のなかのいちばん奥の底の底に
  そこで私はあなたを忘れてしまうわ。
  おお、愛しい人、あなた、忘れちゃだめ
  おお、だめよ、私を夜通し見守ることを忘れちゃだめ。
  だって私は目覚めたまま夢を見すぎたから、
  私は眠って夢を見なきゃならないわ、
  そうよ、私は目覚めなきゃならないわ。

[注]
1 veiller は「徹夜する、寝ずの番をする」が本義。veiller sur「…の世話をする」。
2 rêver éveillé「白昼夢を見る」。éveilléeと女性形になっているので、「私」が目覚めたまま夢を見たことをあらわす。続くme rêverは同じ文の中なので動作主はやはり「私」で、代名動詞の形をとっているがme réveiller「目覚める」と語呂を合わせ眠って夢を見ることを表現しているのであろう。 空想、願望であったものが得られたのちは、恋人に見守られたやすらかな睡眠が待つ、ということか…。



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2015
05.20

女の子のスカートの下 Sous les jupes des filles

Alain Souchon Défoule sentimentale


「パリの屋根の下Sous les toits de Paris」「パリの橋の下Sous les ponts de paris」「パリの空の下Sous le ciel de Paris」に続き、「女の子のスカートの下 Sous les jupes des filles」という、以前に、「ボクは10才J'ai dix ans」をご紹介したアラン・スーションAlain Souchonの曲を取り上げます。1995年のライヴアルバムDéfoule sentimentale(Foule sentimentaleをもじったタイトル)に収録され、アルバムは1996年にヴィクトワール賞を受賞し、この曲も同年、SACEMのヴァンサン・スコット賞を受賞しました。この原題あるいは邦題で検索すると、なにやらいかがわしいページまで拾ってしまいます。また、逆に間違えてここに来るお客さんもいらっしゃるかもしれませんが、さすが、もう一人のゲンズブールと呼ばれる(ただ私が言ってる?)だけあって、歌詞の内容は「ちょっと覗いてみる」価値はありますよ。



Sous les jupes des filles        女の子のスカートの下
Alain Souchon            アラン・スーション


Rétines et pupilles,
Les garçons ont les yeux qui brillent
Pour un jeu de dupes : 注1
Voir sous les jupes des filles,
Et la vie toute entière,
Absorbés par cette affaire,
Par ce jeu de dupes :
Voir sous les jupes des filles.

  網膜と瞳孔、
  男の子たちは目を輝かせる
  ある誘惑に:
  女の子のスカートの下を覗くという、
  そしてまるごと一生、
  そのことに没頭する、
  この誘惑に:
  女の子のスカートの下を覗くという

Sous les jupes des filles2


Elles, très fières,
Sur leurs escabeaux en l'air, 注2
Regard méprisant et laissant le vent tout faire,
Elles, dans l'suave, 注3
La faiblesse des hommes, elles savent
Que la seule chose qui tourne sur terre,
C'est leurs robes légères.

  女の子たちは、たいへん高慢で、
  高いところの腰掛に座って、
  横柄な目つきをして吹く風のなすがまま、
  彼女たちは、甘美さに浸り、
  男どもの弱みを、彼女たちは知っているのさ
  それはね、地上で動いているものは、
  彼女たちの軽いドレスだけだってこと。

On en fait beaucoup,
Se pencher, tordre son cou
Pour voir l'infortune,
À quoi nos vies se résument, 注4
Pour voir tout l'orgueil,
Toutes les guerres avec les deuils,
La mort, la beauté,
Les chansons d'été,
Les rêves.

  よくやるのさ、
  身をかがめ、首をひねって
  僕らの人生がそれに帰結することになる
  不幸を見ようと、
  すべての傲慢さを、
  喪の悲しみを伴うあらゆる戦いを、
  死を、美を、
  真夏の歌を、
  夢を見ようと。

Si parfois, ça les gène et qu'elles veulent pas
Qu'on regarde leurs guiboles, les garçons s'affolent de ça.

  往々にして、それが彼女たちを不快にし、脚を見られることを
  彼女たちが望まないとなりゃ、男の子たちはそれで動転してしまう。

Sous les jupes des filles1


Alors faut qu'ça tombe : 注5
Les hommes ou bien les palombes,
Les bières, les khmers rouges, 注6
Le moindre chevreuil qui bouge.
Fanfare bleu blanc rage,
Verres de rouge et vert de rage,
L'honneur des milices,
Tu seras un homme, mon fils.

  そこでくつがえす必要があるんだ:
  男どもあるいは鳩たちも、
  ビールたちも赤い肌のクメール人たちも、
  揺れるわずかの髪の毛も。
  青いファンファーレ白い怒り、
  赤ワインのグラスと怒りの緑、
  兵隊の名誉、
  男になれ、息子よ。

Elles, pas fières,
Sur leurs escabeaux en l'air,
Regard implorant, et ne comprenant pas tout,
Elles, dans l'grave, 注7
La faiblesse des hommes, elles savent
Que la seule chose qui tourne sur cette terre,
C'est leurs robes légères.

  女の子たちは、高慢じゃなくなり、
  高いところの腰掛に座って、
  哀願する目つきで、さっぱり訳が分からないまま、
  彼女たちは、神妙な気持ちでいる、
  男どもの弱みは、彼女たちは知っている
  それはね、地上で動いているものは、
  彼女たちの軽いドレスだけだってこと。

Rétines et pupilles,
Les garçons ont les yeux qui brillent
Pour un jeu de dupes :
Voir sous les jupes des filles,
Et la vie toute entière,
Absorbés par cette affaire,
Par ce jeu de dupes :
Voir sous les jupes des filles,
La, la, la, la, la...

  網膜と瞳孔、
  男の子たちは目を輝かせる
  ある誘惑に:
  女の子のスカートの下を覗くという、
  そしてまるごと一生、
  そのことに没頭する、
  この誘惑に:
  女の子のスカートの下を覗くという

Sous les jupes des filles3

ここも「スカートの下」


[注]
1 dupe は「だまされやすい人」で、un jeu de dupesは「落とし穴」の意味。ここでは文脈から「誘惑」と訳した。
2 en l'air「空中に」。上の方に位置する意味。
3 suave「甘美な」は形容詞で、ここでは名詞に転用されている。
4 se résumer à「…に帰する」
5 Il faut que…「…しなければならない」のIlが省略されている。
6 bièreをblereとしている歌詞が多いが、どの辞書にもない語。bière「ビール」も妙だが、ここに出てくる語はすべて意外性を狙っているし、あきらかにスーションはそう歌っている。
7 graveは注3と同様、形容詞の名詞転用。



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2015
05.19

パリの空の下Sous le ciel de Paris

Jean Bretonnière Sous le ciel de paris


「パリの空の下Sous le ciel de Paris」は、ジュリアン・デュヴィヴィエJulien Duvivier監督の1951年の映画「パリの空の下セーヌは流れるSous le ciel de Paris」で用いられた曲。作詞はジャン・ドレジャックJean Dréjac、作曲はユベール・ジローHubert Giraudです。

映画ではジャン・ブルトニエールJean Bretonnièreが歌い、その後、エディット・ピアフÉdith Piaf、イヴ・モンタンYves Montand 、ジュリエット・グレコJuliette Grécoほか多くの歌手に歌われました。

ジャン・ブルトニエールが歌っている映画のシーン。コメントに書いていただいた「画面上に凄い迷訳のある動画」は非公開になりましたので、差し替えましたが、韓国語の表記がどうなのか分かりません。



新しいところで、フロランス・コストFlorence Costeとジュリアン・ダッサンJulien Dassinのデュオ



Sous le ciel de paris  パリの空の下
Jean Bretonnière    ジャン・ブルトニエール


Sous le ciel de Paris
S´envole une chanson
Hum Hum
Elle est née d´aujourd´hui
Dans le cœur d´un garçon

  パリの空の下で
  ひとつの歌が空にわき上がった
  フム フム
  その歌は今日
  ひとりの少年の心のなかに生まれた

Sous le ciel de Paris
Marchent des amoureux
Hum Hum
Leur bonheur se construit
Sur un air fait pour eux

  パリの空の下で
  恋人たちが歩いている
  フム フム
  彼らの幸せは育まれる
  彼らのために作られた調べに乗って

Sous le pont de Bercy
Un philosophe assis
Deux musiciens quelques badauds
Puis les gens par milliers

  ベルシー橋の下に
  ひとりの哲学者が座り込み
  二人のミュージシャン、何人かの野次馬
  そのうち、たくさんの人が

Sous le ciel de Paris1


Sous le ciel de Paris
Jusqu´au soir vont chanter
Hum Hum
L´hymne d´un peuple épris
De sa vieille cité

  パリの空の下で
  夜まで歌うことになる
  フム フム
  自分たちの古い都に魅せられた人々の
  讃歌を

Près de Notre Dame
Parfois couve un drame
Oui mais à Paname 注1
Tout peut s´arranger

  ノートルダム寺院の近くでは
  しばしば厄介なことが企てられる
  そうさ でもねパリじゃあ
  すべてまるく収まるのさ

Quelques rayons
Du ciel d´été
L´accordéon
D´un marinier
L´espoir fleurit
Au ciel de Paris

  夏空の
  陽の光
  船乗りの奏でる
  アコーデオン
  希望が花開く
  パリの空に

Sous le ciel de paris 2


Sous le ciel de Paris
Coule un fleuve joyeux
Hum Hum
Il endort dans la nuit
Les clochards et les gueux

  パリの空の下で
  陽気な河は流れる
  フム フム
  川は夜になると
  乞食や浮浪者を眠らせてくれるのさ

Sous le ciel de Paris
Les oiseaux du Bon Dieu
Hum Hum
Viennent du monde entier
Pour bavarder entre eux

  パリの空の下では
  神様に遣わされた鳥たちが
  フム フム
  たがいにおしゃべりしようと
  世界中からやって来る

Et le ciel de Paris
A son secret pour lui 注2
Depuis vingt siècles il est épris
De notre Ile Saint Louis

  そしてね パリの空は
  自分だけの秘密を持っている
  20世紀も前から首っ丈なのさ
  僕たちのサン・ルイ島にね

Quand elle lui sourit
Il met son habit bleu
Hum Hum
Quand il pleut sur Paris
C´est qu´il est malheureux

  サン・ルイ島が微笑めば
  パリは青い衣を着るよ
  フム フム
  パリに雨が降れば
  パリが悲しんでいるということさ

Quand il est trop jaloux
De ses millions d´amants
Hum Hum
Il fait gronder sur nous
Son tonnerr´ éclatant


  パリがたくさんの恋人たちに
  あまりにもヤキモチを焼いた時は
  フム フム
  私たちの上に
  鳴り響く雷鳴をとどろかせるんだ

Mais le ciel de Paris
N´est pas longtemps cruel
Hum Hum
Pour se fair´ pardonner
Il offre un arc en ciel

  でもパリの空は
  ずっと邪険なわけじゃない
  フム フム
  お詫びの印に
  虹をかけてくれるんだ

Sous le ciel de paris 3


[注]
1 Paname「パナム」とは、パリの愛称。
2 secret pour…が「…に対して隠しておく事柄」とすると、luiは前節のle Bon Dieu(あるいは2節前のun fleuve)ともとれるが、pourを「…にとって」の意味で、luiがParis自身だとして訳した。




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2015
05.18

パリの橋の下Sous les ponts de paris

Georgel Sous les ponts de paris


前回は「パリの屋根の下Sous les toits de Paris」だったので、今回は「パリの橋の下Sous les ponts de paris」を取り上げます。作詞ジャン・ロドールJean Rodor、作曲ヴァンサン・スコットVincent Scotto、1913年にジョルジェルGeorgelが創唱し、続いて1932年に、アルベール・プレジャンAlbert Préjeanが歌いました。後年、リュシエンヌ・ドリールLucienne Delyle、モーリス・シュヴァリエMaurice Chevalier、アンドレ・クラヴォーAndre Claveauなども歌っています。新しいところでは、ジュリエット・グレコJuliette Grécoが2012年に出したアルバムCa se traverse et c'est beauに収録されています。

創唱者のジョルジェル



リュシエンヌ・ドリール



Sous les ponts de paris      パリの橋の下
Georgel               ジョルジェル


Pour aller à Suresnes ou bien à Charenton
Tout le long de la Seine on passe sous les ponts
Pendant le jour, suivant son cours
Tout Paris en bateau défile,
L’cœur plein d’entrain, ça va, ça vient,
Mais l’soir lorsque tout dort tranquille...

  シュレンヌやシャラントンに行くには
  セーヌ川をいくつもの橋をくぐって行く
  昼間は、川の流れに従って
  船上ではパリがまるごと次々に通り過ぎる、
  元気あふれる心で、行ったり来たり、
  だが、みなが静かに寝入る夜には…

Sous les ponts de Paris, lorsque descend la nuit,
Toutes sortes de gueux se faufilent en cachette
Et sont heureux de trouver une couchette,
Hôtel du courant d’air, où l’on ne paie pas cher,
L’parfum et l’eau c’est pour rien mon marquis
Sous les ponts de Paris.

  パリの橋の下では、夜のとばりが降りるころ、
  さまざまなルンペンたちが隠れ処にもぐり込み
  寝床をみつけて満足する、
  高くつかない、風通しのいいホテル、
  香りだって水だってタダというわが王侯貴族
  パリの橋の下では

Sous les ponts de paris1


A la sortie d’l’usine, Julot rencontre Nini
Ça va t’y la rouquine? C’est la fête aujourd’hui.
Prends ce bouquet, quelques brins d’muguet
C’est peu mais c’est toute ma fortune,
Viens avec moi, j’connais l’endroit
Où l’on n’craint même pas l’clair de lune.

  工場の出口で、ジュロはニニと出会う
  赤毛ちゃんご機嫌いかが?きょうは祭りだ。
  この花束をお取り、スズランだよ
  ほんのわずかだけど僕の持ち合わせの全部なんだ、
  ついておいで、知っているんだよ
  月明かりさえ気にならない場所を

Sous les ponts de Paris, lorsque descend la nuit
Comme il n’a pas de quoi s’payer une chambrette,
Un couple heureux vient s’aimer en cachette, 
Et les yeux dans les yeux faisant des rêves bleus,
Julot partage les baisers de Nini
Sous les ponts de Paris.

  パリの橋の下では、夜のとばりが降りるころ
  逢引き部屋の代金を持っていないから
  幸せなカップルはこっそりと愛し合うためにやって来る
  そして見つめ合ってすてきな夢を抱きながら、
  ジュロはニニと口づけをかわす
  パリの橋の下で

Sous les ponts de paris2


Rongée par la misère, chassée de son logis,
L’on voit une pauvre mère avec ses trois petits.
Sur leur chemin, sans feu ni pain
Ils subiront leur sort atroce.
Bientôt la nuit, la maman dit :
"Enfin ils vont dormir mes gosses."

  貧困に苦しみ、住処を追われた、
  3人のおさなごを連れた哀れな母親を見かける
  この先、温まるための火も食べるためのパンもなく
  彼らはむごい境遇を耐え忍んで生きていくのだ。
  日が暮れかかったころ、母親は言う
  「子どもたちはもう眠りにつくわ。」

Sous les ponts de Paris, un'mère et ses petits
Viennent dormir là tout près de la Seine
Dans leur sommeil ils oublieront leur peine
Si l’on aidait un peu, tous les vrais miséreux
Plus de suicides ni de crimes dans la nuit
Sous les ponts de Paris.

  パリの橋の下、母親と子どもたちは
  そこに、セーヌ川のほとりに眠りにやってくる
  眠っているあいだは彼らも苦しみを忘れるだろう
  もし、ほんとうに気の毒な人々みんなに、ちょっと手を差し伸べてあげたなら
  自殺も夜間の犯罪もなくなることだろう
  パリの橋の下で

[注] en cachette「こっそりと、ひそかに」



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2015
05.17

パリの屋根の下Sous les toits de Paris

Albert Préjean Sous les toits de Paris


ルネ・クレールRené Clair監督の映画「巴里の屋根の下Sous les toits de Paris」の主題歌で、監督自身が作詞し、モーリス・ジョベールMaurice Jaubertが作曲した曲「パリの屋根の下Sous les toits de Paris」(1930年)を今回、取り上げましょう。主演のアルベール・プレジャンAlbert Préjeanが歌い、のちにモーリス・シュヴァリエMaurice Chevalierが持ち歌にしました。歌詞は、映画のストーリーそのものです。

アルベール・プレジャン



モーリス・シュヴァリエ



Sous les toits de Paris          パリの屋根の下
Albert Préjean                アルベール・プレジャン


Quand elle eut vingt ans
Sa vieille maman
Lui dit un jour tendrement:
"Dans notre log'ment
J'ai peiné souvent
Pour t'él'ver fallait d'l'argent;
Mais t'as compris, un peu plus chaque jour,
Ce que c'est le bonheur, mon amour

  彼女が二十歳になったときのこと
  かあさんは
  ある日優しく彼女に言うのだった
  「私たちが住んでいるこの住まいで
  私はけっこう苦労したわ
  あんたを育てるにはお金が要ったのよ
  でもわかっているよね、日に日に少しづつ、
  幸せが近づいているわ、可愛い娘よ

Sous les toits de Paris
Tu vois ma p'tit' Nini
On peut vivre heureux et bien uni
Nous somm's seul's ici-bas
On n's'en aperçoit pas
On s'rapproche un peu plus et voilà !

  パリの屋根の下で
  ねえ、私の可愛いニニ
  これからも幸せに仲睦まじく暮らしましょう
  私たちはここでは二人っきりだけど
  寂しくはないし
  私たちはもう少しもっと親密になるわよ!

Tant que tu m'aim's bien
J'n'ai besoin de rien
Près de ta maman
Tu n'as pas d'tourments
C'est ainsi qu'cœur à cœur
On cueill', comme une fleur,
Sous les toits de Paris, le bonheur".

  あんたが私をとても愛してくれりゃ
  私はなんにも要らない
  かあさんのそばにいりゃ
  あんたはなんの苦労もない
  だからこうして心が触れ合って
  一輪の花を摘むように、
  パリの屋根の下で、幸せを摘むのよ

Sous les toits de Paris1


Un jour, sans façon,
Un joli garçon,
Comme on chant' dans les chansons
Lui fit simplement
Quelques compliments,
La grisa de boniments;
Nini, j'te jur' ça s'fait plus la vertu
Je t'ador', sois à moi dis, veux-tu ?

  ある日、ふらりと、
  すてきな若者が、
  歌の文句のように
  彼女になにげなく
  甘い言葉をかけ、
  彼女を口説いた
  「ニニ、誓うよ、もう行儀よくしていられない
  君が好きだ、僕のものになってよねぇ、どうだい?」

Sous les toits de Paris
Dans ma chambr' ma Nini
On s'aim'ra, c'est si bon d'être uni !
C'est quand on a vingt ans
Quand fleurit le printemps,
Qu'il faut s'aimer, sans perdre un instant
L'air était très pur
Et le ciel d'azur
Ell' dit: "Je n'veux pas !"
Puis ell' se donna.
C'est ainsi qu'en ce jour
Le vainqueur, comm' toujours
Sous les toits de Paris fut l'amour !

  パリの屋根の下で
  僕のニニ、僕の部屋で
  愛し合おうよ、結ばれるのはとてもいいものさ!」
  春爛漫の
  二十歳の時期には、
  一時も無駄にせず、愛し合うべきだ
  空気は澄みきって
  空は青いよ
  彼女は「いやよ!」といいつつ
  身をまかせた。
  こんなわけでこの日も
  勝利者は、いつものことだが
  パリの屋根の下では愛だった!

Malgré les serments,
Hélas son amant
La quitta cruellement
La pauvre Nini
Pleura bien des nuits
Un soir... . on frapp'... c'était lui
Il supplia: "Ma chérie, j'ai eu tort,
Pardonn'-moi, tu sais je t'aim' encor' "

  誓いに反し
  ああ、恋人は
  彼女を残酷にも捨ててしまった
  哀れなニニは
  夜ごと泣き通した
  ある夕べ…誰かが戸を叩いた…彼だった
  彼は叫んだ「いとしい人、僕が間違っていた、
  許しておくれ、まだ君を愛しているんだよ」と

Sous les toits de Paris3


Sous les toits de Paris
Quelle joie pour Nini
De r'trouver un passé tant chéri
Quand il dit: "Maintenant
Tu sais c'est le moment,
Faut s'marier tous les deux gentiment
Car rien n'est cassé,
Tout est effacé,
Oublie le passé
Et viens m'embrasser"
Vit' Nini pardonna
Et l'bonheur s'installa
Sous les toits de Paris c'est comm' ça !

  パリの屋根の下で
  ニニにとってなんという喜びだったことか
  とってもいとしいかつての彼に再会し
  彼がこう言った時には「今が
  その時機なんだよ、
  ふたりともすなおに結婚しなきゃ
  なにも壊れちゃいないし
  すべて消えたんだから、
  過去のことは忘れて
  僕にキスしてよ」
  即座にニニは許した
  そして幸せが訪れたんだ
  パリの屋根の下に そんな次第さ!



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2015
05.16

花を贈るEnvoi de fleurs

Anton Valery


今回は「花を贈るEnvoi de fleurs」です。
この曲は、1896年にアンリ・ベルナールHenri Bernardが作詞し、作曲家で歌手でもあったポール・デルメ Paul Delmet が作曲した古い美しい曲。もう忘れられている曲のひとつでしょう。
タイトルのEnvoi de fleursは、「花の贈り物」という意味で、詩人が女性に素朴な花束を贈って自分の想いを伝えるという歌詞。「花を召しませ」という邦題が付けられていますが、このブログでは「花を贈る」としました。思うに、詩人からの贈り物の花束とは、愛をささやく詩である、この歌自体のことかもしれません。

歌手はアントン・ヴァレリーAnton Valeryを選び、YouTubeにアップしました。



Tino RossiはMusicMeで聴けます。

Envoi de fleurs           花を贈る
Anton Valery            アントン・ヴァレリー


Pour vous obliger de penser à moi,
D'y penser souvent, d'y penser encore,
Voici quelques fleurs, bien modeste envoi,
De très humbles fleurs qui viennent d'éclore,

  君に僕のことを思ってもらおうと、
  なんども思ってもらおうと、もっと思ってもらおうと、
  ほら花を何本か、ごくささやかな贈り物として、
  咲いたばかりのとてもつつましい花々を、

Envoi de fleurs3


Ce ne sont pas là de nobles bouquets,  注1
Signés de la main de savants fleuristes,
Liés par des nœuds, de rubans coquets,
Bouquets précieux, chefs-d'œuvre d'artistes,

  これは 腕のいい花職人たちの刻印が押された、
  きれいなリボンの結ばれた、
  高級な花束、
  貴重な花束、芸術家の作品じゃない、

Ce sont d'humbles fleurs, presque fleurs des champs,
Mais ce sont des fleurs simples et sincères,
Des fleurs sans orgueil au libre penchant,
Des fleurs de poète, à deux sous, pas chères, 注2

  これは つつましい花々、野の花にちかいもの、
  でもこれは素朴で誠実な花々、
  思い上がりのない自由な好みの花々、
  安価で、値の張らない、詩人の花々だ、

Envoi de fleurs1


J'aurais mieux aimé de riches bijoux,
Que ce souvenir vraiment trop champêtre,
Bagues, bracelets et mille joujoux,  注3
J'aurais mieux aimé, vous aussi peut-être,

  こんなあまりにも田舎っぽい土産物なんかより
  高価な宝石のほうが僕としては望ましかった、
  指輪や、ブレスレットやたくさんの品々が、
  僕としては望ましかった、あなたもたぶんそうだろう

Mais du moins ces fleurs, ce modeste envoi, 注4
Ces très humbles fleurs qui viennent d'éclore
Vous diront tout bas de penser à moi,
D'y penser souvent, d'y penser encore.

  だがそれでもこの花々、このささやかな贈り物、
  この咲いたばかりのとてもつつましい花々は
  そっとあなたにささやくだろう 僕のことを思ってくれるように、
  なんども思ってくれるように、もっと思ってくれるようにと。

[注]
1 làは単独で強意のために用いられている。
2 à deux sous「あまり値打ちのない、安物の」
3 joujou「(幼児の)おもちゃ」ではなく「お気に入り、愛用品」くらいの意味。
4 du moins「しかしながら、少なくとも」




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2015
05.15

ラ・ボエームLa bohème

Charles Aznavour La bohème


1965年にアズナヴールが出した、彼の一番の代表作「ラ・ボエームLa bohème」を取り上げます。この曲を愛する人はとても多いでしょうから、その分、翻訳も多く出回っていると思います。しかし、私なりにかなり綿密に取り組んだつもりですので、あえて発表してみることにいたしました。作詞はジャック・プラントJacques Planteです。

ステージでは、必ずハンカチを使ってリラの花などを表現して歌います。



La bohème              ラ・ボエーム
Charles Aznavour           シャルル・アズナヴール


Je vous parle d'un temps
Que les moins de vingt ans
Ne peuvent pas connaître
Montmartre en ce temps-là
Accrochait ses lilas 注1
Jusque sous nos fenêtres
Et si l'humble garni 注2
Qui nous servait de nid
Ne payait pas de mine 注3
C'est là qu'on s'est connu
Moi qui criais famine
Et toi qui posais nue

  ある時代のことをあなた方に話そう
  二十歳前の人たちには
  経験しようのない時代のことを
  モンマルトルではその頃
  僕たちの部屋の窓のすぐ下まで
  リラが枝を伸ばして咲いていた
  そして僕たちの愛の巣となった
  つましい家具つきの貸間は
  見ばの悪いものではあったが
  僕たちが知り合ったのはそこだった
  僕のほうは空腹を訴え
  君のほうは裸でポーズをとっていた

La bohème1


La bohème, la bohème 注4
Ça voulait dire on est heureux 注5
La bohème, la bohème
Nous ne mangions qu'un jour sur deux

  ラ・ボエーム、ラ・ボエーム
  それは僕たちが幸せだということだった
  ラ・ボエーム、ラ・ボエーム
  僕たちは1日おきにしかちゃんと食べられなかった

Dans les cafés voisins
Nous étions quelques-uns
Qui attendions la gloire
Et bien que miséreux
Avec le ventre creux
Nous ne cessions d'y croire
Et quand quelques bistros 注6
Contre un bon repas chaud
Nous prenaient une toile
Nous récitions des vers
Groupés autour du poêle
En oubliant l'hiver

  近くのいくつかのカフェでは
  僕たちは 栄光を待ち望む
  なにがしかの存在だった
  空腹をかかえ
  貧しかったけれど
  栄光を信じてやまなかった
  あるビストロでは
  一回のうまい温かい食事と引き換えに
  絵を一枚引きとってくれ
  僕たちはストーブの回りに集まって
  冬の寒さも忘れて
  詩を朗唱したものだった

La bohème, la bohème
Ça voulait dire tu es jolie
La bohème, la bohème
Et nous avions tous du génie

  ラ・ボエーム、ラ・ボエーム
  それはきみが素敵だということだった
  ラ・ボエーム、ラ・ボエーム
  僕たちはみな天才だった

Souvent il m'arrivait
Devant mon chevalet
De passer des nuits blanches 注7
Retouchant le dessin
De la ligne d'un sein
Du galbe d'une hanche
Et ce n'est qu'au matin
Qu'on s'asseyait enfin
Devant un café-crème
Epuisés mais ravis
Fallait-il que l'on s'aime 注8
Et qu'on aime la vie

  しばしば僕は
  画架の前で
  夜を明かした
  胸のラインや
  腰の輪郭の
  デッサンに手を加えながら
  そして夜明けになってからやっと
  一杯のカフェ・クレームを前に
  くたびれ果てながらも喜びに溢れて
  僕たちは腰を下ろした
  僕たちはほんとうに愛し合っていたんだ
  そしてほんとうに人生を愛していたんだ

La bohème2


La bohème, la bohème
Ça voulait dire on a vingt ans
La bohème, la bohème
Et nous vivions de l'air du temps 注9

  ラ・ボエーム、ラ・ボエーム
  それは僕たちが二十歳だということだった
  ラ・ボエーム、ラ・ボエーム
  そして僕たちは無一文で暮らしていた

Quand au hasard des jours 注10
Je m'en vais faire un tour 注11
A mon ancienne adresse
Je ne reconnais plus 注12
Ni les murs, ni les rues
Qui ont vu ma jeunesse 注13
En haut d'un escalier
Je cherche l'atelier
Dont plus rien ne subsiste
Dans son nouveau décor
Montmartre semble triste
Et les lilas sont morts

  たまたまある日
  かつて住んでいたところに
  出かけてみた
  僕の青春を見守っていた
  家々の壁や、いくつもの通りは
  僕にはもう見分けることができなかった
  階段の上の方に
  あのアトリエを探したけれど
  それらしいものはもう残っていなかった
  あたらしい装いのかげで
  モンマルトルは悲しげにみえた
  そしてリラの花々は枯れてしまった

La bohème5


La bohème, la bohème
On était jeunes, on était fous
La bohème, la bohème
Ça ne veut plus rien dire du tout

  ラ・ボエーム、ラ・ボエーム
  僕たちは若く、僕たちは無軌道だった
  ラ・ボエーム、ラ・ボエーム
  それは もうまったく何も意味しない

[注]
1 accrochaitは他動詞accrocher「ひっかける、つるす」の3人称単数形で、主語はMontmartreという擬人的表現。「モンマルトルではリラが」と意訳するしかない。
2 siは譲歩の意味を含めた提示で「…ではあるが」。形容詞humbleは、本来は「謙虚な」という意味だが、名詞の前につけられて「取るに足らない、つましい」の意味になる。
3 ne pas payer de mine「見てくれが悪い、見ばがよくない」
4 la bohème男性名詞の場合は、自由気ままに生きる人、芸術家、ボヘミアンという個人を指すが、女性名詞としては集合的に、「ボヘミアン、すなわち自由気ままにその日暮らしの生活を送る芸術家たち」あるいは「(ボヘミアンの)自由気ままな生活」の意味。題名が、原題の読みで知られているので、歌詞中の訳語もそれに合わせた。
5 vouloir dire「…を意味する」
6 この節のnousは僕と彼女に限らず、ほかの画家仲間も含めた「僕たち」のようだ。この行から節の終りまで一つの文。quelque bistroが2行あとのprenaitの主語で、nous(間接目的語)からune toile(直接目的語)をprendre「取る、要求する」。ここも、注1と同様の擬人的表現なので、「あるビストロでは」として意訳。さらに、「絵と交換に食事を提供してくれた」とまでしたほうが分かりやすかったかもしれない。
7 passer des nuits blanches「徹夜する」。nuit blanche「眠れぬ夜」は「青春という名の宝」にも出てきた。
8 Faut-il que…!「…としか思えない、全く…である」の半過去形。
9 vivre de l'air du temps「無一文で暮らす」
10 au hasard de「…しだいで、のままに」au hasard des jours「たまたまある日」
11 s'en aller+inf.「…しに行く」tourは、ここでは「ちょっとした外出、散歩」。
12reconnaîtreは、(記憶と照らし合わせて)「…がそれと分かる、…に見覚えがある」という意味。否定形なので、自分の知っている壁や通りを「それと分かること、すなわち識別することができない」ということであり、現在の壁や通りが「見覚えがない」ということではない。
13 ここも、壁や通りがvoirするという擬人的表現。5行下のMontmartre semble tristeも同様。ともにそのまま訳した。



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2015
05.14

花の時代Le temps des fleurs

Vicky Leandros


先日、ヴイッキー・レアンドロスVicky Leandrosの「恋はみずいろL’amour est bleu」を取り上げましたが、今回はそのヴイッキーの「花の時代Le temps des fleurs」を。メリー・ホプキンMary Hopkinの「悲しき天使Those were the days」を、フランス語に翻案した曲です。このメロディは、もともと、1926年にコンスタンチン・ポドレフスキーК. Н. Подревскийの詩にボリス・フォミーンБ. И. Фоминがジプシー民謡を元にした曲をつけた「長い道Дорогой длинною」というロシア語の歌でしたが、ソビエト連邦からの亡命者によって欧米に広められるうち、いつしか作者不詳のロシア民謡と呼ばれるようになり、その後1962年に、イギリスで活躍したアメリカ合衆国出身の歌手、ジーン・ラスキンGene Raskinが編曲しThose were the daysのタイトルで自作として発表しました。そして1968年にポール・マッカートニーSir James Paul McCartneyのプロデュースでメリー・ホプキンMary Hopkinが歌いました。
その後、スペイン語版、ドイツ語版、ヴィッキーによるフランス語版が出て、ダリダDalidaも歌っています。また、メリー・ホプキン自身がイタリア語でも歌っています。そして、森山良子ほかが日本語でも歌い、世界的なヒット曲となりました。「悲しき」などという言葉を冠した邦題が多くてうんざりしますが、ロシア語の原曲も、メリー・ホプキンの曲も、このフランス語の曲も、過ぎし昔を懐かしむ内容です。

ロシア語の原曲



メリー・ホプキン



ヴィッキー・レアンドロス



Le temps des fleurs   花の時代
Vicky Leandros      ヴィッキー・レアンドロス


Dans une taverne du vieux Londres
Où se retrouvaient des étrangers
Nos voix criblées de joie montaient de l'ombre 注1
Et nous écoutions nos cœurs chanter
C'était le temps des fleurs
On ignorait la peur
Les lendemains avaient un goût de miel
Ton bras prenait mon bras
Ta voix suivait ma voix
On était jeunes et l'on croyait au ciel
La, la, la...

  異邦人同士が再会していた
  古い時代のロンドンの酒場で
  喜びでいっぱいの私たちの声が物陰から湧き起った
  そして私たちは自分たちの心が歌うのを聴いていた
  それは花の時代だった
  私たちは恐れなんか無視していた
  明日は蜜の味だった
  あなたの腕は私の腕をとり
  あなたの声は私の声に続いた
  私たちは若く 天を信じていた

Le temps des fleurs4


Et puis sont venus les jours de brume
Avec des bruits étranges et des pleurs
Combien j'ai passé de nuits sans lune
A chercher la taverne dans mon cœur
Tout comme au temps des fleurs
Où l'on vivait sans peur
Où chaque jour avait un goût de miel
Ton bras prenait mon bras
Ta voix suivait ma voix
On était jeunes et l'on croyait au ciel
La, la, la ......

  そして 妙な音と涙をともなって
  霧のたちこめる日がやって来た
  私たちが恐れもなく暮らし
  毎日が蜜の味だった
  花の時代そのままの
  心のなかのあの酒場を探して
  どれだけの月のない夜を私は過ごしたことか
  あなたの腕は私の腕をとり
  あなたの声は私の声に続いていた
  私たちは若く、天を信じていた
  ラ、ラ、ラ...

Je m'imaginais chassant la brume
Je croyais pouvoir remonter le temps
Et je m'inventais des clairs de lune
Où tous deux nous chantions comme avant
La, la, la ......
Ton bras prenait mon bras
Ta voix suivait ma voix
On était jeunes et l'on croyait au ciel
La, la, la ......
On était jeunes et l'on croyait au ciel

  私は自分が霧を追い払うのを想像した
  私は時間をさかのぼれるものと信じていた
  そして、私は自分のために月明かりを創り出した
  そこで私たち二人は以前のように歌っていた
  それは花の時代だった
  私たちは恐れなんか無視していた
  明日は蜜の味だった
  あなたの腕は私の腕をとり
  あなたの声は私の声に続いた
  私たちは若く、天を信じていた
  ラ、ラ、ラ...
  あなたの腕は私の腕をとり
  あなたの声は私の声に続いた
  私たちは若く、天を信じていた
  ラ、ラ、ラ...
  私たちは若く、天を信じていた

Et ce soir je suis devant la porte
De la taverne où tu ne viendras plus
Et la chanson que la nuit m'apporte
Mon cœur déjà ne la connaît plus
C'était le temps des fleurs
On ignorait la peur
Les lendemains avait un goût de miel
Ton bras prenait mon bras
Ta voix suivait ma voix
On était jeunes et l'on croyait au ciel
La la la...

  そして今夜、私はあの酒場の扉の前にいる
  そこに あなたはもはや現れないだろう
  そして夜が私に届けてくれる歌を
  私の心はもう知らない
  それは花の時代だった
  私たちは恐れなんか無視していた
  明日は蜜の味だった
  あなたの腕は私の腕をとり
  あなたの声は私の声に続いた
  私たちは若く、天を信じていた
  ラ、ラ、ラ...

Le temps des fleurs4


[注] le tempsは「季節」と訳すこともできるが、この曲では昔を懐かしむ内容に合わせて「時代」とした。
1 cribléは「ふるいにかけられた」だが、「(ふるいのように)穴だらけの」からcriblé deは「…だらけの」の意味に。




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2015
05.13

ある日恋の終わりがLes amours finissent un jour

Georges Moustaki Les amours finissent un jour


ギー・マルシャンGuy Marchandの「運命Destinée」のページに書きましたが、きょう5月13日は、メイストームデーといって別れ話を切り出すのに最適な日だそうです。そこで、今回は、ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiの「ある日恋の終わりがLes amours finissent un jour」を。恋の破局を醒めた言葉で綴る美しい曲です。1961年に出された、ムスタキの最初のアルバム「ムスタキMoustaki 」に収録されています。昔の顔はまるで別人のようですね。



私はコラ・ヴォケールCora Vaucaireの歌が好きです。→musicMeで聴けます。

Les amours finissent un jour         ある日恋の終わりが
Georges Moustaki                ジョルジュ・ムスタキ
  

Les amours finissent un jour,
Les amants ne s'aiment qu'un temps.
A quoi bon te regretter, mon bel amour d'un été ?
Voici déjà venir l'hiver;
Bientôt le ciel sera couvert
De gros nuages plus lourds
Que notre chagrin d'amour.

  恋はいつの日か終わる、
  恋人たちが愛し合うのはひとときだけだ。
  きみに未練残してなんになるんだ?ひと夏の恋人よ
  冬はもうやって来た;
  まもなく空は
  僕たちの恋の悲しみよりも重苦しい
  分厚い雲に覆われるだろう。

Les amours finissent un jour,
Les amants ne s'aiment qu'un temps.
A quoi bon penser à moi ?
Il y a d'autres que moi
Pour dire les mots que tu attends,
Pour t'offrir de nouveaux printemps
Pour oublier le passé, 注1
Pour le faire recommencer.

  恋はいつの日か終わる、
  恋人たちが愛し合うのはひとときだけだ。
  僕を想って何になるんだ?
  僕以外にいるさ
  きみが期待する言葉をささやき、
  きみに新しい春を贈ってくれるひとが
  過去を忘れるために、
  もう一度やり直すために。

Les amours finissent2


Les amours finissent un jour,
Les amants ne s'aiment qu'un temps.
A quoi bon se déchirer,
Pourquoi souffrir ou pleurer ?
Rien de nouveau sous le soleil,
Tout est tellement, tellement pareil.
Il vaudra mieux désormais
Oublier comme on s'aimait. 注2

  恋はいつの日か終わる、
  恋人たちが愛し合うのはひとときだけだ。
  互いに傷つけ合って何になる、
  なぜに苦しみ涙を流すんだ?
  この世に新しいものは何ひとつとてない、
  すべてはまったく、まったく同じようだ。
  これからは忘れたほうがいいだろう
  僕たちがどのように愛し合っていたか。

Les amours finissent un jour,
Les amants ne s'aiment qu'un temps,
Mais nous deux, c'était différent :
On aurait pu s'aimer longtemps, longtemps, longtemps. 注3

  恋はいつの日か終わる、
  恋人たちが愛し合うのは ひとときだけ、
  だが僕たち二人は違っていたよ:
  いつまでも愛し合えただろうに、ずっと、ずっと。

Les amours finissent1


[注] 邦題は「ある日恋の終わりが」とも「ある日愛の終わりが」ともされるが、いずれにせよ「残されし恋には」と同様に、助詞で止めた、思わせぶりな表現。amourは、ここでは「恋」のほうがいいと思うが、「愛」「恋人」「情事」…、訳語の選択が問われる言葉だ、cœurと同様に。
1 pourで始まる行が4回続く。dire とoffrir は、d'autres que moi がおこなうはずのことだが、oublierと faireは「きみ」がおこなうはずのことなので、訳では単純に併記できない。
2 commeここでは、「どれほど、どのように」の意味。原因・理由をあらわす場合は主節の前に置かれる。
3 条件法過去で、結果的には実現しなかったことを希望的ニュアンスを込めて述べている。




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2015
05.12

自転車乗りLa bicyclette

Yves Montand La bicyclette


イヴ・モンタンYves Montandの曲はすでに何曲か取り上げていますが、あらためてプロフィールをご紹介しましょう。
彼は、1921年にイタリアで生まれ、幼い頃にムッソリーニのファシスト政権から逃れて一家でフランスに移り住みました。本名はイーヴォ・リーヴィIvo Liviで、イヴ・モンタンという芸名は、子供の頃に、母親が戸外にいた彼を、「イーヴォ上がっておいで!Ivo, monta!」と呼んでいたのにちなむということはよく知られています。

マルセイユで育ち、1944年にパリに出て、エディット・ピアフÉdith Piafに見出されて本格的に歌い始めました。彼は数年間、ピアフの愛人でもあり、「バラ色の人生La vie en rose」で歌われる恋人はモンタンです。
1946年に出演した「夜の門Les portes de la nuit」で主題曲の「枯葉Les feuilles mortes」を歌い、これが大ヒットしました。大歌手になってからも、1968年の後半以降13年間ほどはシャンソンのステージに上がらずに映画に専念し、名優というにふさわしい本物の演技を見せてくれています。
そして、1981年に、60歳でオランピア劇場カムバック。翌年には東京公演もおこなわれました。エンターテイナーとしての魅力を存分に発揮した、すばらしいステージだったようです。

私生活面では、1951年に女優のシモーヌ・シニョレSimone Signoretと結婚し、何度か共演もしています。結構、浮気者だったようで、マリリン・モンローMarilyn Monroeと1960年の映画「恋をしましょうLet's Make Love」での共演の際に浮名を流したことは特に有名です。後年、アシスタントのキャロル・アミエルCarole Amielと結婚し、1988年に唯一の実子ヴァランタンValentinをもうけました。1991年に亡くなり、ペール・ラシェーズ墓地で、シモーヌ・シニョレと一緒に眠っています。生前、ある女性が、自分の娘がモンタンとの間にできた子だと言いだし、モンタンはDNA鑑定を拒否しましたが、彼の死後、その真否を確かめるために墓を開けてDNAを調べることになり、その結果、彼の子ではないことが判明したという珍しいエピソードがあります。

今回取り上げるのは、彼の代表曲のひとつ「自転車乗りLa bicyclette」(1968年)です。作詞がピエール・バルーPierre Barouh、作曲がフランシス・レイFrancis Laiという、「男と女Un homme et une femme」の映画音楽と同じコンビの作品です。モンタンはひとつの曲をたいへんな時間をかけて納得のいくまで練習したそうです。この曲の、ちょうど自転車で疾走しているような独特の軽快感も、並外れた努力が支えていたのでしょう。
原題は、À bicycletteとされていることが多いのですが、La bicycletteが正しいことが分かりました。邦題も「自転車」とすべきでしょうが、あえて「自転車乗り」のままにいたします。

これは1981年のオランピアでの公演。表情がとてもいいですね!茶色のシャツにズボン、ノー・ネクタイというのはデヴュー当時と同じ格好のようです。



La bicyclette      自転車乗り
Yves Montand      イヴ・モンタン


Quand on partait de bon matin 注1
Quand on partait sur les chemins
À bicyclette
Nous étions quelques bons copains
Y avait Fernand y avait Firmin 注2
Y avait Francis et Sébastien
Et puis Paulette

  僕らは朝早く出発し
  僕らは路上を走り出した
  自転車で
  僕らはいい仲間だった
  フェンナンがいてフィルマンがいて
  フランシスがいてセバスチャンも
  そしてポーレットも

La bicyclette2


On était tous amoureux d'elle
On se sentait pousser des ailes 注3
À bicyclette
Sur les petits chemins de terre 注4
On a souvent vécu l'enfer
Pour ne pas mettre pied à terre
Devant Paulette

  僕らはみんな彼女が好きだった
  僕らは羽が生えたみたいな気分だった
  自転車に乗って
  土の小道で
  ときどきすごく辛い思いをした
  ポーレットの前で
  地面に足をつけないために

Faut dire qu'elle y mettait du cœur 注6
C'était la fille du facteur
À bicyclette 注7
Et depuis qu'elle avait huit ans
Elle avait fait en le suivant
Tous les chemins environnants
À bicyclette

  彼女は気が入っているってこと言っておかなきゃ
  自転車に
  郵便配達人の娘だったからさ
  8歳の時から
  そのあとを追って
  周辺の全部の道を
  走っていたんだ
  自転車で

La bicyclette1


Quand on approchait la rivière
On déposait dans les fougères
Nos bicyclettes
Puis on se roulait dans les champs
Faisant naître un bouquet changeant 注8
De sauterelles, de papillons
Et de rainettes

  川の近くまで行ってから
  シダの茂みに置いた
  僕らの自転車を
  そして野原を転げまわった
  キリギリスや蝶々や
  アマガエルなど
  代わる代わる飛び出させながら

Quand le soleil à l'horizon
Profilait sur tous les buissons
Nos silhouettes
On revenait fourbus contents
Le cœur un peu vague pourtant
De n'être pas seul un instant 注9
Avec Paulette

  地平線の太陽が
  あたりの草むらのうえに
  僕らの影をくっきりと映し出したとき
  僕らは家路についた 疲れ切って満足して
  けど ちょっとすっきりしない気持ちで
  わずかな間もポーレットと
  二人っきりになれなかったから

La bicyclette5


Prendre furtivement sa main 注10
Oublier un peu les copains
La bicyclette
On se disait c'est pour demain
J'oserai, j'oserai demain
Quand on ira sur les chemins
À bicyclette

  こっそり彼女の手を取ること
  仲間たちをちょっと忘れること
  自転車
  それは明日のことにしようと思った
  明日僕はきっときっとやってやるさ
  道路を走るときにね
  自転車で

[注] 会話では、自転車のことを、vélo(初期の自転車vélocipèdeの略)ということが多く、貸し自転車のVélib(vélo+libre)も最近普及している。
1 onはnousと同義。この歌詞も、前回の「サンジャン」と同様、半過去が多い。de bon matin「朝早く」
2 すべて、Il y avaitのilが省略されている。
3 se sentir+inf.「自分が…するのを感じる」pousser des ailes「羽をはやす」のはonだが、訳としては、「羽がはえる」というほうが自然。
4 terreには「地球」「大地」という意味もあるが、ここは「土」。つまり、舗装していない道を走るわけだ。2行あとのterreは「地面」。
5 vivre l'enfer「地獄を生きる」すなわち、たいへん辛い状態を体験すること。
6 Il faut direのilが省略されている。mettait du cœur à…「…に熱意を注ぐ」
7 à bicycletteは前行のdu facteurからつながると同時に、もう一つ前の行のyの内容にもなっている。
8 この行からこの節の最後にかけては理解しづらいが、野原を転げまわるとびっくりして飛び出してくる生き物たちをbouquet changeant と言っているようだ。ちなみにbouquetには「打ち上げ花火の最後の大花火」の意味もある。
9 seul avec Pauletteひとりで彼女といっしょ、つまりは彼女と二人っきりになるということ。
10 不定詞の2行とLa bicycletteは、そのあとのc'est…のceの内容となる。



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2015
05.11

今朝Ce matin-là

Barbara Ce matin-là


バルバラBarbaraの「今朝Ce matin-là」は今の季節にぴったりな素敵な歌!1964年にリリースされた二つのアルバム、Dis, quand reviendras-tu ?とBarbara chante Barbaraに収録されています。作詞はバルバラ自身、作曲はリリアンヌ・ベネリLiliane Benelli。



Ce matin-là 今朝
Barbara   バルバラ


J´étais partie ce matin, au bois,
Pour toi, mon amour, pour toi,
Cueillir les premières fraises des bois,
Pour toi, mon amour, pour toi.

  私は今朝出かけたのよ、森へ、
  あなたのために、愛しい人、あなたのために、
  初摘みの木いちごを摘みに、
  あなたのために、愛しい人、あなたのために。

Ce matin-là1


Je t´avais laissé encore endormi
Au creux du petit jour.
Je t´avais laissé encore endormi
Au lit de notre amour.
Ti li li la la

  あなたをまだ眠らせたままにしておいたわ
  昧爽のふところに。
  あなたをまだ眠らせたままにしておいたわ
  私たちの愛のベッドに。

J´ai pris, tu sais, le petit sentier
Que nous prenions quelquefois
Afin de mieux pouvoir nous embrasser
En allant tous les deux au bois.

  私は、ほら、あの小径を辿ったわ
  もっと愛し合えるようにと
  二人して森へと向かって
  何度か歩いた小径を。

Il y avait des larmes de rosée
Sur les fleurs des jardins.
Oh, que j´aime l´odeur du foin coupé
Dans le petit matin.
Ti li li li li

  露の涙がこぼれていたわ
  庭の花々の上に。
  おお、夜明けの
  刈られた干し草の匂いってとっても好きよ。
  ティリリリリ

Ce matin-là2


Seule, je me suis promenée au bois.
Ti li li li li li li li li
Tant pis pour moi, le loup n´y était pas.
Ti la li li li li li li li

  ひとりで、私は森へ散歩に行ったの。
  ティリリリリリリリ
  残念なことに、オオカミはいなかったわ。
  ティラリリリリリリリ

Pour que tu puisses, en te réveillant,
Me trouver contre toi,
J´ai pris le raccourci à travers champs
Et bonjour, me voilà.

  あなたが、目覚めつつ、
  傍らに私を見つけられるよう、
  私は野原を横切って近道をしたの
  そしておはよう、私はここよ。

J´étais partie, ce matin, au bois.
Bonjour, mon amour, bonjour.
Voici les premières fraises des bois
Pour toi, mon amour, pour toi
Pour toi, pour toi.
Ti li li li li li li li li li li…

  私は今朝出かけたのよ、森へ、
  おはよう、愛しい人、おはよう。
  ほら初摘みの木いちごよ
  あなたのための、愛しい人、あなたのための
  あなたのための、あなたのための
  ティリリリリリリリリリリ…

Ce matin-là3


[注] 歌詞ではce matin「今朝」となっているが、題名はCe matin-làで、「あの朝」で、のちに回想しているようなニュアンスが加わっている。邦題は歌詞内容に合わせ「今朝」とした。



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2015
05.10

アヴェ・マリアAve Maria

Charles Aznavour Ave Maria


先に、シャルル・アズナヴールCharles Aznavourの「ラ・マンマLa mamma」をご紹介しましたが、その歌詞には、アヴェ・マリアを歌うというフレーズがあって、この曲はLa Mamma Ave Mariaと呼ばれることもあります。アズナヴールは1978年に「アヴェ・マリアAve Maria」(作詞:Charles Aznavour、作曲:Georges Garvarentz)という曲も別に歌っていますので、母の日の今日、ご紹介したいと思います。
Avéとフランス語的に表記されることもありますが、ラテン語の表記のままにします。

動画は1994年のステージの収録。 最初にMCがあります。



Ave Maria      アヴェ・マリア
Charles Aznavour シャルル・アズナヴール


Ave Maria
Ceux qui souffrent viennent à toi
Toi qui as tant souffert
Tu comprends leurs misères
Et les partages
Marie courage

  アヴェ・マリア
  傷ついた者はあなたの御許に来る
  とても傷ついているあなたは
  彼らの悲哀を理解し
  それを分かつ
  心あるマリーよ

Ave Maria1


Ave Maria
Ave Maria
Ceux qui pleurent sont tes enfants
Toi qui donnas le tien 注1
Pour laver les humains
De leurs souillures 注2
Marie la pure

  アヴェ・マリア
  アヴェ・マリア
  嘆く者はあなたの子
  あなたはその涙を
  人々を清め彼らの穢れを
  除くためにそそぐ
  清らかなるマリーよ

Ave Maria
Ave Maria
Ceux qui doutent sont dans la nuit
Maria
Éclaire leur chemin
Et prends-les par la main
Ave Maria

  アヴェ・マリア
  アヴェ・マリア
  疑う者は闇に迷う
  マリアよ
  彼らの道を照らし
  彼らの手を引き給え
  アヴェ・マリア

Ave Maria3


Ave Maria, Ave Maria
Amen

  アヴェ・マリア、アヴェ・マリア
  アーメン

[注]
1 le tienが何を指すか、文法的には不明だが、文脈上、前行の動詞pleurerの名詞形pleur=larme「涙」と解釈した。
2 souillure「排水溝」が本義だが、ネットの仏仏辞書によるとCe qui rend une personne impure「穢れ」という意味があるようだ。




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2015
05.09

わが心のアランフェスAranjuez, mon amour

Richard Anthony


マドリード郊外のアランフェスにある宮殿は、ブルボン王朝全盛の頃、春の離宮として使用されていたもので、2001年には世界遺産に登録されました。スペインの作曲家ホアキン・ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」は、この美しい場所にも醜い傷跡を残したスペイン内戦への非難を込めて作られた曲です。
この曲にギ・ボンタンペリGuy Bontempelliがフランス語の歌詞をつけてリシャール・アントニーRichard Anthonyが歌ったAranjuez, mon amourを今回取り上げます。

リシャール・アントニーは、1938年、エジプト、カイロ生まれで、イギリスやアルゼンチンで幼少時代を過ごしたのち、パリに来ました。1958年のデビューから、60年代半ばまで、英米のヒット曲をフランス語にして歌い、ピーター・ポール・アンド・マリーPeter, Paul and Maryの「500マイル500 Miles」(仏題:J'entends siffler le train)、ボブ・ディランBob Dylanの「風に吹かれてBlowin' in the Wind」(仏題:Ecoute dans le vent)などがヒットしました。当時はまさにイエイエ時代、内気な彼は「ロックの物静かな父親」と呼ばれたそうです。そして、1967年に出されたこの曲が世界中で大ヒットし800万枚以上の売り上げを記録。その後も活動を続け、600曲以上録音し、21曲が売り上げ1位、アルバムを5000万枚以上売り上げました。そして、つい先日4月19日に大腸癌で亡くなりました。77歳でした。

原曲そのままにクラシック・オーケストラをバックに歌う美しい曲。「恋のアランフェス」という邦題で呼ばれることもあり、モナムールmon amourが連発されるので、恋の歌だと思われがちですが、アランフェスAranjuezを擬人化して呼びかけているわけで、作曲家の意思に忠実に、スペイン内戦をテーマとした歌詞なのです。ちょうど、「桜んぼの実る頃Le temps des cerises」がパリ・コンミューンの連盟兵たちの虐殺を背景としているのと同じように。したがって、「恋のアランフェス」という邦題は避け、「わが心のアランフェス」としました。

1936年の人民戦線政府の成立から始まり、1939年4月1日のフランコ軍事政権の樹立で幕を閉じたスペイン内戦が歌詞のテーマです。軍隊がやって来て、人民戦線側の市民たちを壁の前で銃殺しました。そして、その命日に、彼らの死を悼む人々がやって来て花を手向けます。壁を這い赤い花を咲かせるバラは、まるで彼らの血痕の跡のようです。

よりきれいで音質のいい動画でも、あまりにも歌詞の内容から離れている映像のものは選びたくないので、こちらにいたしました。



Aranjuez, mon amour  わが心のアランフェス
Richard Anthony     リシャール・アントニー


Mon amour
Sur l'eau des fontaines
Mon amour
Où le vent les amène 注1
Mon amour
Le soir tombé 注2
On voit flotter 注3
Des pétales de roses

  いとしい君よ
  泉のみなもに
  風が運んだのか
  いとしい君よ
  日暮れて
  バラの花びらの
  漂うのが見える

Aranjuez5.jpg


Mon amour
Et les murs se gercent
Mon amour
Au soleil, au vent, à l'averse
Et aux années qui vont passant 注4
Depuis le matin de mai qu'ils sont venus 注5
Et quand chantant, soudain ils ont écrit 注6
Sur les murs, du bout de leur fusil
De bien étranges choses 注7

  いとしい君よ
  壁はひび割れる
  いとしい君よ
  太陽と、風と、驟雨と
  過ぎゆく年月にさらされて
  彼らがやって来て
  そして歌いながら、やにわに
  とても奇妙なものを
  銃口で壁に記した  
  あの5月の朝以来

Mon amour
Le rosier suit les traces
Mon amour
Sur le mur et enlace 注8
Mon amour
Leurs noms gravés
Et chaque été
D'un beau rouge sont les roses 注9

  いとしい君よ
  バラの木はその痕跡を伝って伸びる
  いとしい君よ
  壁の上を そして絡み付く
  いとしい君よ
  刻まれた彼らの名に
  そして夏が訪れるたびに
  バラの花々は美しい赤一色になる

Mon amour
Sèchent les fontaines
Mon amour
Au soleil, au vent de la plaine
Et aux années qui vont passant
Depuis le matin de mai qu'ils sont venus
La fleur au cœur, les pieds nus
Le pas lent et les yeux éclairés d'un étrange sourire

  いとしい君よ
  泉も枯れている
  いとしい君よ
  太陽と、野にわたる風と、
  過ぎゆく年月にさらされて
  花を抱き、靴を履かず
  ゆっくりした足どりで、妙な笑みで目を輝かせて
  人々がやって来た
  あの5月の朝以来

Et sur ce mur, lorsque le soir descend
On croirait voir des taches de sang 注10
Ce ne sont que des roses
Aranjuez, mon amour

  そして壁には、日暮れたのち
  いくつもの血のあとが見えるやに思えるが
  それはバラの花々に過ぎない
  アランフェス、いとしい君よ

Aranjuez3.jpg


[注]
1 lesはこの節の最後のdes pétales de roses。
2 tombé の前にétantが省略されている。
3 知覚動詞+qqn/qqc +inf.「が…するのを知覚する」の語順が変わっている。
1節目を、mon amour を省き、散文的な表現に変えると、Le vent amène des pétales de roses sur l'eau des fontaines. Le soir étant tombé, on les y voit flotter.となる。
4 aller en+現在分詞「しだいに…する」のenが省略されている。
5 depuis以下はles murs se gercentにつながる。qu'ils以下はle matin de maiの説明で、本来はoùを用いるところをqueで代用。
6 quand以下はils sont venusのあとで起こったことだが、[例文]Il se promenait dans le bois quand il a rencontré un viellard.「彼が森を散歩しているとひとりの老人に出会った」と同様の用法。したがって、A quand B.は、「Bしていた時Aが起こった」ではなく、「Aしていて、その時、Bが起こった」ということになる。chantantは、後続のils ont écritを修飾。
7 直接的な表現を避け、銃の乱射で銃弾が壁を傷つけ、また血痕の跡も残ったということだけを言っている。
8 enlacerは、「(植物が)絡み付く」と「抱き締める」の二義がある。双方の意味を含めた表現だろう。
9 通常の語順に変えると、Les roses sont d'un beau rouge.
10 croiraitは条件法で、婉曲表現。



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2015
05.09

プティ・コンセール《カース・ファビアン・ファルメールを歌う》

Kaas etc


アミカル・ド・シャンソンのプティ・コンセール第8回目は、《カース・ファビアン・ファルメールを歌う》です。パトリシア・カースPatricia Kaas、ララ・ファビアンLara Fabian、ミレーヌ・ファルメールMylène Farmerの曲をフランス語・イタリア語・英語で歌います。5月9日(土)、原宿の「アコスタディオ」で14時30分開演。

出演者は、井上葉子、上村良子、蒲沢しげ子、北島はるか、笹環来、野村幸子、橋本裕子、日栄照美、村井葉子、Sublime、Kazan、Nonnie の12人。ピアノ伴奏は関根忍さん。
全席自由2500円、当日券あります。ぜひいらしてください!

曲目をご紹介しましょう。ほとんどすべて、共同主宰者の宇藤カザンのブログ《アミカル・ド・シャンソン》および私の新旧のブログで取り上げています。題名をクリックするとページが開きます。

[パトリシア・カースPatricia Kaasの曲]
Mon mec à moiモン・メッカ・モア
Venus des abribusバス停のヴィーナスたち
Kennedy roseケネディー・ローズ
Hôtel Normandyホテル・ノルマンディー
D'Allemagneダルマーニュ
Mademoiselle chante le bluesマドモアゼルはブルースを歌う
Fatiquée d'attendre待ちくたびれて
Une fille de l'Est東欧の娘
Il me dit que je suis belleはかない愛だとしても

[ララ・ファビアンLara Fabianの曲]
Carusoカルーソー
Je suis malade僕は病んでいる(灰色の途)
Broken vow破られた誓い  (歌詞付き動画のみ)
Speranzaスペランツァ〈希望〉
Je t'aimeジュテーム
Tangoタンゴ
Pas sans toiあなたが居ないなんて
Je me souviensジュ・ム・スヴィアン

[ミレーヌ・ファルメールMylène Farmerの曲]
Déshabillez-moi脱がせてちょうだい
Rêver夢見る
Une belle journée素晴らしい一日
Je te dis toutすべて話すわ



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2015
05.08

本選の審査結果

5月6日の《第2回 東京シャンソンコンクール本選》の審査結果をお知らせします。

入賞者は下記のとおりです。(YouTubeにアップ済みの歌唱はクリックすると開きます。)

<日本語部門>

グランプリ
 副賞5万円
 八木章夫(神奈川) さくらんぼの実る頃Le temps des cerises 

準グランプリ
 西塚祥子(秋田) 海のマリー Marie la mer

歌唱賞
 一條荘子(岩手) メア・キュルパ Mea culpa 
 小川香織(山形) やさしさDe la tendresse
 おぐら恵子(千葉) 愛はあなたのように L’amour te ressemble
 金子史央(東京) はかない愛だとしてもIl me dis que je suis belle 
 菊地優(東京) パリ・カナイユ Paris canaille 
 堀江順子(宮城) 涙Voir un ami pleurer
 
<フランス語部門>

グランプリ
 副賞5万円
 入江珠子(福岡) Mon enfance私の幼いころ

準グランプリ
 北島はるか(埼玉) Je voulais te dire que je t'attends君を待っている

プルミエプリ
 井上葉子(埼玉) J'avais rêvé d'une autre vie夢やぶれて
 岸本真知子(東京) Si prèsそばにいて
 小関美央(千葉) Station Quatre-Septembreカトル・セプタンブル駅
 玉井大司(東京) Que reste-t-il de nos amours?残されし恋には
 日栄照美(東京) A quoi ça sert l'amour ?恋は何のために


なお、上記以外の本選出場者には、奨励賞が授与されます。
第2回は第1回にもましてハイレベルのコンクールとなりました。本選に出場するだけでも非常に価値のあるコンクールだという評判はますます高まったようです。

shuugou1.jpg


5月21の《東京シャンソンコンクール》入賞者コンサートには、第1回・第2回の入賞者の大半が出場します。すばらしいコンサートになりそうです。
チケットのお申し込みは、東京日仏文化サロン:chansontokyo@gmail.com / 042-363-2213 まで。



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2015
05.08

イワシたちLes sardines

Pierre Louki Les sardines


今回は、ピエール・ルーキPierre Loukiが作った「イワシたちLes sardines」というユニークな曲です。1963年のアルバム:Pierre Loukiに収録されています。
パリの地下鉄にギュウギュウ詰めになっている人々を缶詰のオイルサーディンにたとえた歌詞で、アルゼンチン・タンゴ風のメロディーがおしゃれです。
私はこの曲を、クレール・エルジエールClaire Elzièreのアルバム:「パリ、愛の歌 第2楽章~永遠のシャンソン名曲集~Chansons d’amour de Paris le seconde mouvement」で知りました。彼女の歌はとてもステキですが、動画は見つかりません。いつか暇ができたら私がアップしましょう。



Les sardines       イワシたち
Pierre Louki       ピエール・ルーキ


Si l'on pouvait desserrer les sardines,
Si l'on pouvait enfin leur éviter, 注1
D'avoir le cou aux pieds de la voisine,
Et du fer blanc à chaque extrémité, 注2
Elles pourraient, dans l'huile parfumée,
Remuer la queue, ne serait-ce qu'une fois,
En chantant "Sur la mer calmée", 注3
Chez l'épicier y aurait d' la joie !

  イワシたちを解放してやれたなら、
  首が隣のイワシの足元に
  そして体の末端がブリキ缶の壁に
  てな状況を免れさせてやれたなら
  イワシたちは香りの良い油に浸って、
  「ある晴れた日に」を歌いながら、
  一度だけだとしても、尾びれを動かせるだろう、
  食料品店は喜びであふれるだろう!

Les sardines2


{Refrain:}
La santé,
Ça n'a pas de prix,
Donnez de l'air,
De l'air aux sardines.
La santé,
Ça n'a pas de prix,
Donnez de l'air,
Aérez Paris.

  健康
  それは値段がつけられない。
  外気を与えてよ、
  外気をイワシたちに
  健康
  それは値段がつけられない。
  外気を与えてよ、
  パリに風を入れてよ

Si l'on pouvait desserrer les sardines,
Si l'on pouvait écarter les harengs, 注4
On ferait bien, pour qu'ils aient meilleure mine, 注5
D' les renvoyer à la mer un moment.
Par le ministre une loi rédigée,
Ordonnerait, de ne plus les serrer,
De faire la surface corrigée,
Tant de sardines au mètre carré.

  イワシたちを開放してやれたなら、
  ニシンたちの間隔を空けてやれたなら、
  彼らの血色がよくなるよう、
  ひととき海に帰してやるといいだろう。
  大臣によって制定された法律が、
  もう彼らをギューギュー詰めにしないよう、
  面積を修正するように命ずるだろう、
  たくさんのイワシたちを1平米になんて。

Les sardines4


{au Refrain}

Si l'on pouvait desserrer les sardines
Dans le métro, quelle révolution ! 注6
Quel réconfort pour les fortes poitrines 注7
Et quel confort d' l'Étoile à la Nation !
Sardines à l'huile ou bien aux aromates,
Gens de Pantin ou bien gens de Puteaux,
Ne vous laissez plus mettre en boîte,
Tous avec moi, chantez plutôt.

  イワシたちを解放してやれたなら、
  メトロのなかは、大革命だ!
  豊かなバストは大いにもてはやされ
  エトワールからナションの路線は大いに快適になる!
  オイルサーディンであれスパイス効かせたイワシであれ、
  パンタンの人たちであれピュトーの人たちであれ、
  もう缶のなかに詰め込んじゃいけないよ、
  みんな、ボクといっしょに歌おうよ。

Les sardine6


{au Refrain}

[注]
1 éviter à qn. de+inf.「…に…することをを免れさせる」
2 fer blanc「ブリキ」
3 Sur la mer calmée「静かな海の上で」の意味だが、プッチーニPucciniのオペラ「蝶々夫人Madama Butterfly」の劇中歌「ある晴れた日にUn bel dì,vedremo」のフランス語版のタイトル。
4 être serré comme des harengs (dans une caque)「(樽に詰められた)ニシンのように、ぎっしり詰まっている、すし詰めである」という言い回しがある。
5 faire bien+de inf.「…するのがよい、適切である」
6 quel(le)が繰り返されるが、感嘆の意味。
7 forte poitrine「厚い胸、豊かな胸」

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2015
05.07

ホリディHolidays

Michel Polnareff Holidays


ミッシェル・ポルナレフMichel Polnareffの「ホリディHolidays」は1972年の大ヒット曲。日本でも「愛の休日」の邦題で大ヒットして(ウィキペディアによると69年の「シェリーに口づけTout tout pour ma chérie」を超える彼の最大のヒットとなった)、初の来日公演が実現し、ポルナレフならではの派手なステージで多くのファンを沸かせました。来日の前に、パリ・オランピア劇場でのライブ「ポルナレフ革命Polnarévolution」が開催され、その宣伝用ポスターにポルナレフ自身の臀部を露出した写真が使用され、彼はフランス当局に、公序を乱したとして逮捕されています。翌73年、2度目の来日公演を開催。この年、税金問題が発覚してアメリカに移住します。常にひとさわがせなポルナレフですが、特に問題の多かった時期です。

この歌詞は、楽しい休日を歌っただけのものではないことは分かりますが、さて何を言いたいのか…。翌73年に、アルバム「ポルナレフ革命Polnarêve」のマスターテープ・コピーをパリから日本へ空輸する際、ハイジャック犯によって飛行機が爆破され、テープが焼失します。歌詞のなかの、Les avions se cassent(飛行機は壊れるものなんだよ)というフレーズはそれを予測していたかのようです。
連休中に出す予定でしたが、縁起が悪いかもと思い直し、連休の終わった今日に安心して出します。



Holidays        ホリディ(愛の休日)
Michel Polnareff    ミッシェル・ポルナレフ


Holidays, oh holidays
C'est l'avion qui descend du ciel
Et sous l'ombre de son aile
Une ville passe
Que la terre est basse
Holidays

  ホリデイ、おおホリデイ
  空から降りていくのは飛行機
  そしてその翼の陰を
  ひとつの街が通り過ぎる
  地面はなんて下のほうにあるんだ
  ホリデイ

Holidays2.jpg


Holidays, oh holidays
Des églises et des HLM
Que fait-il le Dieu qu'ils aiment?
Qui vit dans l'espace
Que la terre est basse
Holidays

  ホリデイ、おおホリデイ
  教会や公団住宅
  彼らが敬愛する神は何をしている?
  宇宙にいる神は
  地面はなんて下のほうにあるんだ
  ホリデイ

Holidays, oh holidays
De l'avion, l'ombre prend la mer
La mer comme une préface
Avant le désert
Que la mer est basse
Holidays

  ホリデイ、おおホリデイ
  飛行機の影は海をとらえる
  海はまるで
  砂漠の前兆のようだ
  海はなんて下のほうにあるんだ
  ホリデイ

Holidays1.jpg


Holidays, oh holidays
Tant de ciel et tant de nuages
Tu ne sais pas à ton âge
Toi que la vie lasse 
Que la mort est basse
Holidays

  ホリデイ、おおホリデイ
  広がる空といっぱいの雲
  君の歳じゃ分からないだろうね
  君は 人生が退屈なものだって
  死が足下にあるって
  ホリデイ

Holidays, oh holidays
C'est l'avion qui habite au ciel
Mais n'oublie pas, toi si belle
Les avions se cassent
Et la terre est basse
Holidays

  ホリデイ、おおホリデイ
  これは空に住んでいる飛行機さ
  だが忘れないで、とてもきれいな君
  飛行機は壊れるものなんだよ
  そして地面は下にある
  ホリデイ

[注] Tu ne sais pas に、que la vie lasse とque la mort est basseがつながる。したがって、Que la terre est basseなどの感嘆表現とは異なると解釈。Toi は、次節のtoi si belleと同様、挿入されている。lasserは他動詞だが、目的語はない。


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2015
05.06

五月のパリが好きJ'aime Paris au mois de mai

Charles Aznavour Jaime Paris au mois de mai


今回は、「五月のパリが好きJ'aime Paris au mois de mai」です。
シャルル・アズナヴールCharles Aznavourが作詞し、デュオを組んでいた相手のピエール・ロッシュ Pierre Rocheが作曲し、1956年にアズナヴールがソロで録音しました。
ジャクリーヌ・フランソワ Jacqueline François、クロード・フランソワClaude François、イザベル・オーブレIsabelle Aubret、フランシス・ルマルクFrancis Lemarque、エディー・ミッチェルEddy Mitchel、そしてザーズZazなども歌っています。

シャルル・アズナヴール



ジャクリーヌ・フランソワ



クロード・フランソワ



ザーズ



J'aime Paris au mois de mai 五月のパリが好き
Charles Aznavour     シャルル・アズナヴール


J'aime Paris au mois de mai
Quand les bourgeons renaissent
Qu'une nouvelle jeunesse
S'empare de la vieille cité
Qui se met à rayonner
J'aime Paris au mois de mai
Quand l'hiver le délaisse
Que le soleil caresse
Ses vieux toits à peine éveillés

  5月のパリが好き
  芽が新生し
  新たな若さが
  古い都に満ちあふれ
  都が輝やき出す
  5月のパリが好き
  冬が去り
  目覚めたばかりの古い屋根屋根を
  太陽が優しく撫でる

Jaime Paris au mois de mai5


J'aime sentir sur les places
J'aime dans les rues où je passe
J'aime ce parfum de muguet que chasse
Le vent qui passe
Il me plaît à me promener
Par les rues qui s'faufilent
A travers toute la ville
J'aime, j'aime Paris au mois de mai

  立ち寄った通りにある
  広場で
  吹き過ぎる風が運んでくる
  このスズランの香りを嗅ぐのが好き
  街中を縫うように続く通りを
  散歩するのはいいものだ
  僕は好き、5月のパリが好き

J'aime Paris au mois de mai
Lorsque le jour se lève
Les rues sortant du rêve
Après un sommeil très léger
Coquettes se refont une beauté 注1
J'aime, J'aime Paris au mois de mai
Quand soudain tout s'anime
Par un monde anonyme
Heureux de voir le soleil briller

  5月のパリが好き
  朝陽が昇るころには
  ごく僅かな眠りのあとに
  通りは夢から覚め
  あだっぽい女たちは
  化粧を直す
  5月のパリが好き
  名も知れぬ人々によって
  急にすべてが活気づく
  太陽が輝くのを見るのは幸せなこと

Jaime Paris au mois de mai1


J'aime le vent m'apporte
Des bruits de toutes sortes
Et les potins que l'on colporte
De porte en porte
Il me plaît à me promener
Dans les rues qui fourmillent,
Tout en draguant les filles, 注2
J'aime, j'aime Paris au mois de mai

  あらゆる種類の騒音や
  戸口から戸口へと
  ひとが伝えるうわさ話などを
  風が運んでくれるのが好き
  人がひしめく通りを、
  娘たちをひっかけながら、
  歩くのはいいものだ
  僕は好き、5月のパリが好き

J'aime Paris au mois de mai
 En juin aussi d'ailleur
Avec ses bouquinistes
Et ses aquarellistes
Que le printemps a ramenés
Comme chaque année le long des quais
J'aime Paris au mois de mai
  Ça ne veut pas dire que je n'aime pas Lyon ou Marseille
La Seine qui l'arrose
Et mille petites choses
Que je ne pourrais expliquer

  5月のパリが好き
   6月だって好きさ
  河岸にはいつもの年のように
  春が連れて来る
  本の露店商や
  水彩画家たちが並ぶ
  5月のパリが好きだ
   リオンやマルセイユが好きじゃないって意味じゃないよ
  そしてパリを潤すセーヌ河
  そして説明できないような
  無数の小さなことがらが

J'aime quand la nuit se léve
Et quand la paix sur terre,
Et, que la ville soudain s'éclaire,
De millions de lumières,
Il me plaît à me promener
Contemplant les vitrines
La nuit qui me fascine
J'aime,J'aime Paris au mois de mai

  夜が更けて
  地上に静けさが訪れ、
  そして、無数の灯りで、
  街が突然明るくなるときが好き
  ショーウィンドーを覗きながら
  歩くのが好き
  夜は僕を魅了する
  僕は好き、5月のパリが好き

Jaime Paris au mois de mai3


[注]  題名では「五月」 としたが、歌詞中では「5月」と表記した。
1 se refaire une beauté「化粧し直す」
2 この行をen souriant aux filles「娘たちに微笑みかけながら」とし、次のDans les rues qui fourmillent,を先にもってきている歌詞もある。




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2015
05.05

群衆La foule

Édith Piaf la foule


今回はエディット・ピアフÉdith Piafの「群衆La foule」です。原曲はアンヘル・カブラルÁngel Cabral作曲の「誰も私の悩みを知らないQue nadie sepa mi sufrir」、アルゼンチンをルートとする南米ペルーのワルツです。恋人だったマルセル・セルダンMarcel Cerdan亡きあと1957年に訪れた南米アルゼンチンでピアフはこの曲と巡り合いました。同年、ミッシェル・リヴゴーシュMichel Rivgaucheによってフランス語に翻案され、翌58年にピアフがオランピアで創唱します。原曲も、ピアフのフランス語版の成功の後、Amor de mis amoresという名でリメイクされ、多くの歌手に歌われています。

ペルーの原曲Que nadie sepa mi sufrirは恋人を失った男の嘆きを歌っています。



後に作られたAmor de mis amores



ピアフの「群衆」。とり憑かれたようなしぐさ、それはこの曲に限ったことなのでしょうか?



オランダのウェンデ・スナイデルスWende Snijdersは、非常に研ぎ澄まされた感性のある歌手で、以前から注目しています。ただの振り付けや表現とはまるで別物で、身体感覚の良さが歌につながっていて、全身が歌っている感じがします。



La foule            群衆
Édith Piaf           エディット・ピアフ


Je revois la ville en fête et en délire 注1
Suffoquant sous le soleil et sous la joie
Et j'entends dans la musique les cris, les rires
Qui éclatent et rebondissent autour de moi
Et perdue parmi ces gens qui me bousculent
Étourdie, désemparée, je reste là
Quand soudain, je me retourne, il se recule,
Et la foule vient me jeter entre ses bras...

  思いだすわ 街はお祭で浮かれている
  太陽の熱と喜びで息が詰まりそうになりながら
  音楽に混じって わたしのまわりではじけて跳ねる
  叫び声、笑い声が聞こえる
  わたしを突き飛ばす人たちにまぎれ
  ぼおっとなり、途方にくれ、つっ立っている
  突然、わたしは振り向き、その人は後ずさりし、
  群衆がわたしを彼の腕の中に飛び込ませる…

La foules2


Emportés par la foule qui nous traîne
Nous entraîne
Écrasés l'un contre l'autre
Nous ne formons qu'un seul corps
Et le flot sans effort 注2
Nous pousse, enchaînés l'un et l'autre
Et nous laisse tous deux
Épanouis, enivrés et heureux.

  わたしたちを引きずり押し流す
  群衆に運ばれ
  たがいに相手に押し付けられ
  わたしたちは一体になる
  そして人波はやすやすと
  わたしたちを押していく、たがいにつながったまま
  そしてわたしたち二人を
  晴れやかな、うっとりした、幸せな気分にさせる

Entraînés par la foule qui s'élance
Et qui danse
Une folle farandole
Nos deux mains restent soudées
Et parfois soulevés
Nos deux corps enlacés s'envolent
Et retombent tous deux
Épanouis, enivrés et heureux...

  駆け出して
  ファランドールを踊る
  群衆に押し流され
  わたしたちのふたつの手は固く結ばれたまま
  ときには押し上げられて
  つながったわたしたちのふたつの体は宙を舞い
  そしていっしょにまた落ちて来る
  晴れやかな、うっとりした、幸せな気分のまま…

La foule


Et la joie éclaboussée par son sourire 注3
Me transperce et rejaillit au fond de moi
Mais soudain je pousse un cri parmi les rires
Quand la foule vient l'arracher d'entre mes bras...

  彼の微笑みに引き出されたうれしさが
  わたしを貫き芯まで浸み込む
  でも突然に 周囲の笑い声にまぎれてわたしは叫ぶ
  群衆がわたしの腕から彼をもぎとろうとするとき

Emportés par la foule qui nous traîne
Nous entraîne
Nous éloigne l'un de l'autre
Je lutte et je me débats
Mais le son de ma voix
S'étouffe dans les rires des autres 注4
Et je crie de douleur, de fureur et de rage
Et je pleure...

  わたしたちを引きずり押し流す
  群衆に運ばれ
  わたしたちはたがいに遠ざかる
  わたしはあらがい、もがく
  でもわたしの声は
  ほかの人たちの笑い声にかき消され
  わたしは悲しみと、怒りと、狂おしさで叫ぶ
  そしてわたしは泣く…

Entraînée par la foule qui s'élance
Et qui danse
Une folle farandole
Je suis emportée au loin 注5
Et je crispe mes poings, maudissant la foule qui me vole
L'homme qu'elle m'avait donné
Et que je n'ai jamais retrouvé...

  駆け出して
  ファランドールを踊る
  群衆に押し流され
  わたしは遠くへ運ばれる
  わたしはこぶしを握り締める、一旦与えてくれた男を
  わたしから奪い去った群衆を呪いながら
  そしてその男にはもう二度と会えなかった…

La foules3


[注] 過去のことを思い出している内容だが、現在形で臨場感を出し、最後のみ過去形が用いられている。訳文もそれに合わせた。
1 revoir「再び見る」という意味もあるが、ここでは「思い出す」の意味。
2 sans effort「やすやすと、楽々と」
3 éclabousser本来は「泥・水をはねる、巻き添えにする」の意味。
4 étouffer は「窒息させる」だが、s'étoufferには「(音が)消える」の意味がある。
5 受動態



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2015
05.04

本選エントリー曲

明後日、5月6日の《第2回東京シャンソンコンクール》本選のエントリー曲を発表いたします。
日本語部門は邦題を先に示し、フランス語部門は原題を先に示しています。

ほとんどの曲は、曲目をクリックしていただくと、私の新旧のブログと、コンクールの共同主宰者:宇藤カザンのブログの曲紹介のページが開きます。でもコンクールでは、お一人お一人の歌唱が主役ですから、原曲の情報は参考にしか過ぎないことをお断りしておきましょう。

あい美沙子(東京)   女歌手は20才Chanteuse a vingt ans 
井上葉子(埼玉)   J'avais rêvé d'une autre vie夢やぶれて
一條荘子(岩手)   メア・キュルパ Mea culpa 
入江珠子(福岡)   Mon enfance私の幼いころ
一ノ瀬和子(神奈川) ボン・ボワヤージュ Bon voyage 
イリス(東京)    La pluie雨
一戸雅子(青森)   恋心L’amour c’est pour rien 
Violette(東京)   Les parfums d'autrefois古き香り
伊藤桂子(東京)   愛していると言えなくて Je ne sais pas dire 
大木明(千葉)    La mammaラ・ マンマ
井上明子(東京)   生きる時代Le temps de vivre
岸本真知子(東京)  Si prèsそばにいて (YouTube動画)
小川香織(山形)   やさしさDe la tendresse
北島はるか(埼玉)  Je voulais te dire que je t'attends君を待っている
おぐら恵子(千葉)   愛はあなたのように L’amour te ressemble
小関美央(千葉)   Station Quatre-Septembreカトル・セプタンブル駅 (YouTube動画)
金子史央(東京)    はかない愛だとしてもIl me dis que je suis belle 
斉藤暢子(東京)   L'aigle noir黒いワシ
菊地優(東京)    パリ・カナイユ Paris canaille 
佐藤眞弓(山形)   Je t'aimeジュ・テーム
Takanori(東京)   群衆 La foule 
玉井大司(東京)   Que reste-t-il de nos amours?残されし恋には
榊原舞(長野)    サンフランシスコの6枚の枯葉Six feuilles mortes de San Francisco
土屋悦子(東京)   Tous les visages de l'amour忘れじの面影
佐久間隆史(秋田)   我が心の赤い風船Les ballons rouges 
寺島寧環(神奈川)  Le kidル・キッド
島田えまり(東京)   セ・フィニ(嘆き) C’est fini 
野村幸子(東京)   Il me dit que je suis belleはかない愛だとしても
ステラ☆長堀(埼玉) ジョジョ Jojo 
Paco(東京)     Hôtel Normandyホテル・ノルマンディー
すみもとふみこ(兵庫) 年老いた夫婦(永遠のきずな) Les veux mariés 
橋本裕子(神奈川)  C'est si bonセ・ シ・ボン
西塚祥子(秋田)   海のマリー Marie la mer 
日栄照美(東京)   A quoi ça sert l'amour ?恋は何のために
堀江順子(宮城)   涙Voir un ami pleurer 
松尾千鶴(神奈川)   La foule群衆
八木章夫(神奈川)   さくらんぼの実る頃Le temps des cerises 
MOKO(熊本)    Mon Dieu私の神様
渡邊睦美(神奈川)   我が心の赤い風船Les ballons rouges

 

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