
今回は、ヴイッキー・レアンドロスVicky Leandrosの「恋はみずいろL’amour est bleu」(作詞:ピエール・クールPierre Cour、作曲:アンドレ・ポップAndré Popp、アルバム:Why Say Goodbyeに収録)です。ヴィッキー・レアンドロスVicky Leandrosは1949年にギリシャのコルフ島で生まれた歌手で、6ヵ国語を使い分ける語学力を持っています。1967年に、ユーロビジョン・ソング・コンテストでルクセンブルク代表として出場し、この「恋はみずいろL'amour est bleu」を歌って4位を獲得しました。1968年に、ポール・モーリアPaul Mauriatが編曲したものがアメリカでヒットチャートに5週連続で第1位になり、イージーリスニングの曲としても人気を保っています。日本語ヴァージョンもあり、森山良子などが歌っています。
ヴィッキーはその後、1972年に、「アプレ・トワAprès toi」でユーロビジョン優勝を果たしました。2006年にはギリシャの港町ピレウスの副市長に就任し、文化振興や国際交流に貢献。その後、政治家としての活動をやめて、2009年には新しいアルバムを出し、現在も65歳で健在です。
タイトルのbleuは、邦題では「みずいろ」とされていますが、「青い、青色」のこと。歌詞のなかにもbleuは頻繁に出てきます。日本では、暗く悲しいイメージに結びつけがちな色ですが、フランスでは、美しく明るいイメージで用いられることがほとんどで、この曲でも、恋の美しさ、素晴らしさをあらわす色です。
ポール・モーリア
ヴイッキーの動画は私が作りました。
L’amour est bleu 恋はみずいろ
Vicky Leandros ヴイッキー・レアンドロス
Doux, doux, l'amour est doux
Douce est ma vie, ma vie dans tes bras 注1
Doux, doux, l'amour est doux
Douce est ma vie, ma vie près de toi
甘い、甘い、恋は甘い
人生は甘い、あなたの腕のなかのわたしの人生は
甘い、甘い、恋は甘い
人生は甘い、あなたのそばでのわたしの人生は
Bleu, bleu, l'amour est bleu
Berce mon cœur, mon cœur amoureux 注2
Bleu, bleu, l'amour est bleu
Bleu comme le ciel qui joue dans tes yeux
青い、青い、恋は青い
わたしのこころを揺するの、恋するこころを
青い、青い、恋は青い
あなたの目に映る空のように青い

Comme l'eau, comme l'eau qui court
Moi, mon cœur court après ton amour
水のように、流れる水のように
わたし、わたしのこころはあなたの愛を求めて流れる
Gris, gris, l'amour est gris
Pleure mon cœur lorsque tu t’en vas
Gris, gris, le ciel est gris
Tombe la pluie quand tu n'es plus là
灰色、灰色、恋は灰色
わたしのこころは泣く あなたが行ってしまって
灰色、灰色、空は灰色
雨が降る あなたがいなくなって
Le vent, le vent gémit
Pleure le vent lorsque tu t'en vas
Le vent, le vent maudit
Pleure mon cœur quand tu n'es plus là
風が、風がうなってる
風が泣いている あなたが行ってしまって
風が、風が呪ってる
わたしのこころは泣く あなたがいなくなって

Comme l’eau, comme l’eau qui court
Moi, mon cœur, court après ton amour
水のように、流れる水のように
わたし、わたしのこころはあなたの愛を求めて流れる
Bleu, bleu, l'amour est bleu
Le ciel est bleu lorsque tu reviens
Bleu, bleu, l'amour est bleu
L'amour est bleu quand tu prends ma main
青い、青い、恋は青い
空は青い あなたが戻ってきて
青い、青い、恋は青い
恋は青い あなたがわたしの手をとると

Fou, fou, l'amour est fou 注3
Fou comme toi et fou comme moi
Bleu, bleu, l'amour est bleu
L'amour est bleu quand je suis à toi
L'amour est bleu quand je suis à toi
狂ってる、狂ってる、恋は狂ってる
あなたみたいに狂ってる わたしみたいに狂ってる
恋は青い わたしはあなたのものだから
恋は青い わたしはあなたのものだから
[注]
1 Douce est ma vieは、Ma vie est douceが倒置されている。ほかにも倒置が多い歌詞である。
2 Berce mon cœur命令形ともとれるが、主語が前の行のl'amourだと判断。2節あとのPleure mon cœurは、似た形だが、主語・動詞の倒置。
3 fouはたいてい「狂った、気違いの」と訳されるが、いろんなニュアンスがあり、ここでは、「熱狂的な、我を忘れた」くらいの意味、つまり「ハイな状態」のこと。
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再びパトリシア・カースPatricia Kaasです。「東欧の娘Une flle de l'Est」を取り上げましょう。ジャン=ジャック・ゴールドマンJean-Jacques Goldmanが作詞・作曲し、1999年のアルバムLe Mot de passeに収録されています。
以前取り上げた、カースの「はかない愛だとしてもIl me dit que je suis belle」も、ジャン=ジャック・ゴールドマンが作った曲で、この時はサム・ブリュースキーSam Brewskiのペンネームを使っていました。
l'Est とはl’Europe de l'Estすなわち「東欧」のことですが、「東欧」というのはどこを指すのかを明確に定義することは困難で、ウィキペディアの解説を引用することにしましょう。
東ヨーロッパ(ひがしヨーロッパ、英語:Eastern Europe)は、東欧ともいい、ヨーロッパ東部の地域を指す。
基本的にヨーロッパを東西に分けるのはあくまで便宜的なものである。この分類法に明確な定義はなく、時代や主観によって大きく変遷する。現在の民族的な分類では東スラヴ人が大半を占める地域を示すことが多いが、これもあいまいである。中世の文化や地勢学的にはエルベ川以東をさしていたが、これもすでに用いられることはない。このように時代や主観によって「東欧」の地理的概念と政治的概念 は大きく変わってきた。
1989年頃まではヨーロッパの共産主義圏と中立国かつ緩衝国だったオーストリアおよびフィンランドを指して「東欧」と呼んでいたが、最近になってそれらの国々の一部は中欧に含まれている。
カースの母親はドイツ人で、ドイツの国境近くのロレーヌ地方で生まれ、彼女のファーストアルバムに入っている「ダルマーニュD'Allemagne」にも、その血筋が表わされています。この歌の場合も、l’Estは、かつての概念である「ヨーロッパの共産主義圏」すなわち「冷戦における鉄のカーテンの東側」という意味で用いられているのでしょう。
Une fille de l'Est 東欧の娘
Patricia Kaas パトリシア・カース
Parce que nos cieux sont ténébreux
Et qu'ici on n'a pas la mer
On a mis le bleu dans nos yeux
C'est dans nos regards qu'on se perd
私たちの空は陰鬱だから
そして私たちには海がないから
私たちは目のなかに青色を置いた
私たちのまなざしにひとは引き込まれる
C'est peut-être à cause du soleil
Qui nous oublie longues saisons
On veut de l'or comme à Marseille
On l'a mis dans nos cheveux blonds
それはたぶん長い時季、私たちを忘れていた
太陽のせい
私たちはマルセイユのような金色を欲し
私たちはそれを金髪のなかに置いた

Je suis d'un pays d'un horizon d'une frontière
Qui sonne guerre, qui sonne éternel hiver
Et si tu veux m'apprendre
Si tu veux vraiment bien me connaître
Je suis dans chaque mot, dans chacun de mes gestes
Une fille de l'Est
私はある地平線の地ある国境の地の出身
その地は戦争を響かせ、永遠の冬を響かせる
そしてもしもあなたが私のことを知りたいなら
もしもあなたが本当に私と知り合いたかったら
私は一つ一つの言葉のなか一つ一つの身振りのなかに私はいる
東欧の娘
Ici le froid glace les corps
Mais la chaleur peut te brûler
Chez nous tout est intense et fort 注1
On fait pas les choses à moitié 注2
ここでは寒さが体を凍えさせる
でも熱情があなたを燃え立たせることができる
私たちのところではすべてが濃密で力強い
私たちはものごとを中途半端にしない
Et toutes ces croix, ces tranchées
Ici l'on sait le prix du sang
L'absurdité des combats quand
On est tombé des deux côtés
そしてこれらの十字架、これらの塹壕のすべて
ここで私たちは血の価値と
戦いのおろかしさを知る
双方が倒れたときに
Je suis d'une région d'une langue d'une histoire
Qui sonne loin, qui sonne batailles et mémoire
Celle qui m'a vue naître
Celle qui m'a faite ainsi que je suis faite
Une terre un caractère, celle que je reste
私は一つの宗教と一つの言語と一つの歴史に属し
それは遠くで響き戦いと記憶を響かせる
私が生まれるのを見た者
このように作られた私を作った者
一つの大地一つの性格、私がそうあり続ける者
Je suis de ces gens dignes
Et debout dans leur silence
Où parole est parole où promesse a un sens
私はこれらの尊厳な
沈黙のうちに佇立する人々に属する
そこでは言葉は言葉であり、約束は一つの意味を持つ
Et si tu sais comprendre
Qui je suis quand j'aime ou je déteste
Je t'offrirai l'amour droit, simple et sincère
D'une fille de l'Est…
Une fille de l'Est
そしてもしあなたが理解してくれたなら
私が愛しあるいは嫌うときに、私が誰なのかを
私はあなたにまっすぐで、素朴で真摯な
東欧の娘の愛を捧げるだろう
東欧の娘の

[注] 訳しにくい歌詞だ。結構悩んだ末、とりあえず大意は捉えられたかなというところでひとまず筆を置くことにした。
1 歌詞サイトに出ている歌詞は、nousが抜けていることが多い。
2 faire les choses à moitié「物事を中途半端にする」
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ジョジョに捧げたこの曲「ジョジョJojo」は、12月に取り上げた「涙(友が泣くのを見る) Voir un ami pleurer」と同様、1977年の最後のアルバム「偉大なる魂の復活(レ・マルキーズ)Les Marquises」に収められています。非常に非常に悲しい曲です。
Jojo ジョジョ
Jacques Brel ジャック・ブレル
Jojo
Voici donc quelques rires
Quelques vins quelques blondes 注1
J'ai plaisir à te dire
Que la nuit sera longue
A devenir demain
Jojo
Moi je t'entends rugir
Quelques chansons marines
Où des Bretons devinent
Que Saint-Cast doit dormir 注2
Tout au fond du brouillard
ジョジョ、
さてここには笑いがあり
ワインがあり煙草がある
僕はうれしいよ
明日になるまで
夜は長いよと君に言えることが
ジョジョ、
僕はね君が吠えるようにして
船乗りの歌を歌うのを聴く
その歌ではブルターニュ人たちが想像している
サン=カが
きっと霧の奥深くで眠るだろうと

Six pieds sous terre Jojo tu chantes encore
Six pieds sous terre tu n'es pas mort
地面の下6フィートにいるジョジョ、君はまだ歌っている
地面の下6フィートにいる君はまだ死んでいない
Jojo
Ce soir comme chaque soir
Nous refaisons nos guerres
Tu reprends Saint-Nazaire 注3
Je refais l'Olympia
Au fond du cimetière
Jojo
Nous parlons en silence
D'une jeunesse vieille 注4
Nous savons tous les deux
Que le monde sommeille
Par manque d'imprudence
ジョジョ
今夜はいつもの夜のように
僕たちはまた戦いをやろう
君はサン=ナゼールを奪還する
僕はオランピアのステージを再演する
墓地の奥で
ジョジョ
僕たちは声に出さず話す
老けた若者たちのことを
僕たちは二人とも分かっている
無分別さが欠けると
世界が活動を停止することを

Six pieds sous terre Jojo tu espères encore
Six pieds sous terre tu n'es pas mort
地面の下6フィートにいるジョジョ、君はまだ望んでいる
地面の下6フィートにいる君はまだ死んでいない
Jojo
Tu me donnes en riant
Des nouvelles d'en bas
Je te dis:“Mort aux cons !” 注5
Bien plus cons que toi
Mais qui sont mieux portants 注6
Jojo
Tu sais le nom des fleurs
Tu vois que mes mains tremblent
Et je te sais qui pleure
Pour noyer de pudeur 注7
Mes pauvres lieux communs 注8
ジョジョ
君は笑いながら僕に
地下のニュースを知らせてくれる
僕は「くたばれバカたちめ」と君に言う
君よりずっとバカだ
だがずっと元気なやつらだ
ジョジョ
君は花々の名を知っている
君は僕の震える手を見る
そして慎み深さゆえに僕の月並みな言葉をぼやかそうと
君が涙を流すことを僕は知っている

Six pieds sous terre Jojo tu frères encore 注9
Six pieds sous terre tu n'es pas mort
地面の下6フィートにいるジョジョ、君はまだ兄弟だ
地面の下6フィートにいる君はまだ死んでいない
Jojo
Je te quitte au matin
Pour de vagues besognes
Parmi quelques ivrognes
Des amputés du cœur
Qui ont trop ouvert les mains
Jojo
Je ne rentre plus nulle part
Je m'habille de nos rêves
Orphelin jusqu'aux lèvres 注10
Mais heureux de savoir
Que je te viens déjà 注11
ジョジョ
僕は半端な用事のために
朝に君のもとを離れる
酔っぱらいたちのなかで
胸が張り裂ける思いの人々は
大手を広げて悲しみ過ぎた
ジョジョ
僕はもうどこへも戻らない
僕は僕たちの夢を身にまとう
僕は口がきけないほどになったなみなしごだ
だが幸せだ
僕は君のところに行くんだから
Six pieds sous terre Jojo tu n'es pas mort
Six pieds sous terre Jojo je t'aime encore.
地面の下6フィートにいるジョジョ、君はまだ死んでいない
地面の下6フィートにいるジョジョ、僕は君をまだ愛している。
[注]
1 blondeは「金髪女性」ではなく、「淡色ビール」あるいは「黄色種の紙巻たばこ」のいずれかで、どちらともとれるが後者を選んだ。
2 Saint-Castは、ブルターニュのサン・カ・ル・ギルドSaint-Cast-le-Guildoの港の埠頭にある灯台Feu du port de Saint-Castであろう。
3 Saint-Nazaireサン=ナゼール港はフランス初の大西洋側の港で、第2次大戦中はドイツ海軍の重要な根拠地であった。造船業がさかん。
4 jeunesseは集合名詞で、「若者たち」「青年層」。革命的精神を尊重するブレルは、当時の若者たちが、imprudence「軽率さ」「無分別」の欠けた、覇気のない状態であることを憂えてvieille「老けた」と形容している。
5 con「馬鹿、まぬけ」。Mort à…!=À mort…!「…を殺せ、やっつけろ」。
6 être bien portant「体の調子がよい」
7 noyer「溺死させる」が本義だが、「水で薄める」のニュアンスから「ぼかす、紛らす、途方にくれさせる」といった意味でも用いられる。
8 lieux communs「常套句、月並みな話題」
9 名詞のfrère「兄弟」からfrèrerという動詞を作り、その2人称単数形にしている。
10 orphelin jusqu'aux lèvres辛い孤独な境遇のためにしゃべれなくなった「みなしご」に自分をたとえている。
11 当時ブレルはすでに癌に冒されていて、自分も遅かれ早かれ死んでジョジョのところに行くということを言っている。
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「セ・シ・ボンC'est si bon」は、1947年にアンリ・ベッティHenri Bettiが作曲し、アンドレ・オルネズAndre Hornezが作詞。翌1948年に、ジャック・エリアン楽団Jacques Hélianが創唱し収録し、続いて、エティエンヌ姉妹Les Sœurs Étienneおよびイヴ・モンタンYves Montandが収録。しかし、この曲を世に知らしめたきっかけは、同年、ニースのジャズ・フェスティヴァルソプラノ歌手のシュジー・ドレールSuzy Delairが歌ったことで、それを聴いたルイ・アームストロングLouis Armstrongがアメリカでレコーディングしたいと申し出ました。翌1949年にジェリー・シーレンJerry Seelenが英語の歌詞(It's So Good)を付け、ジョニー・デズモンドJohnny Desmondが歌って大ヒット。ルイ・アームストロングのレコーディングは1950年。1953年には黒人女性歌手アーサ・キットEartha Kittのフランス語ヴァージョン(あまりにもセクシーだということで、当時NHKでは放送禁止になったそうです)も出て、アメリカではたいへんなヒット曲となりました。
また、1950年にアンジェール・デュランAngèle Durandというベルギー系のドイツの歌手がレコーディングし、そのフランス語ヴァージョンはベルギーで、そのドイツ語ヴァージョンはドイツでヒットしました。
その後は、モンタンも自分の歌を磨いて代表的なレパートリーにしていきましたし、たいへん多くの歌手たちに歌われて来ました。
イヴ・モンタンYves Montandの歌は、ステージでは1953年にエトワール劇場でのリサイタルで発表されましたが、ちょうどシャルル・トレネの「セ・ボンC'est bon」がヒットしていたため、当初は注目されなかったとかでもその後は、文字通り(?)「それはとてもいいC'est si bon」が「それはいいC'est bon」を超える人気となりました。私の住んでいるマンションは「セボン○○」という名称。「それはどうでもいい」ことでした。
モンタン
ミレイユ・マチューMirielle Mathieu とペチュラ・クラークPetula Clarkeの女同士の楽しいデュオ。
C'est si bon セ・シ・ボン
Yves Montand イヴ・モンタン
(Oui mais)
C'est si bon
De partir n'importe ou,
Bras dessus, bras dessous, 注1
En chantant des chansons.
C'est si bon
De se dir' des mots doux,
Des petits rien du tout
Mais qui en disent long.
(ああだけど)
とってもステキさ
どこにだって 出かけるのは、
たがいに腕をからませ、
歌をうたいながら。
とってもステキさ
なんでもないことについて、
けど 長い語らいで
甘い言葉をささやきあうのは。

En voyant notre mine ravie
Les passants, dans la rue, nous envient.
C'est si bon
De guetter dans ses yeux
Un espoir merveilleux
Qui donne le frisson.
C'est si bon,
Ces petit's sensations.
Ça vaut mieux qu'un million,
Tell'ment, tell'ment c'est bon.
僕たちのうれしそうな顔を見て
通行人たちは、通りで、僕たちをうらやむ。
とってもステキさ
心を震わす
素晴らしい希望が
彼女の瞳にうかがえるのは。
とってもステキさ、
この小さな興奮は。
100万フランにまさるほど、
こんなに、こんなにステキさ。
Vous devinez quel bonheur est le nôtre,
Et si je l'aim' vous comprenez pourquoi.
Elle m'enivre et je n'en veux pas d'autres
Car elle est tout's les femmes à la fois.
Ell' me fait : "Oh !". Ell' me fait : "Ah !".
僕たちの幸福がどんなもんかあててごらん、
またなぜ僕が彼女を愛するか分かるかい。
彼女は僕を酔わせ 他の女性はいらない
だって彼女は同時にすべての女性なんだ。
彼女は僕に「おぉ」と言わせ、「あぁ」と言わせる。
C'est si bon
De pouvoir l'embrasser
Et puis de r'commencer
A la moindre occasion.
C'est si bon
De jouer du piano
Tout le long de son dos
Tandis que nous dansons.
C'est inouï ce qu'elle a pour séduire,
Sans parler de c'que je ne peux pas dire. 注2
とってもステキさ
彼女を抱くことができるのは
そしてそれから ちょっとした機会に
また始めるのは。
とってもステキさ
僕たちがダンスをしているあいだ
彼女の身体に沿って
ピアノを弾くのは。
彼女が備えている魅力は信じられないほどだ、
僕が言い表せないことはいうまでもない。

C'est si bon,
Quand j'la tiens pour dans mes bras, 注3
De me dir'que tout ça
C'est à moi pour de bon. 注4
C'est si bon,
Et si nous nous aimons,
Cherchez pas la raison:
C'est parc'que c'est si bon,
C'est parc'que c'est si bon,
C'est parc'que c'est trop bon
とってもステキさ、
彼女が腕のなかにいると感じたときに、
これがぜんぶ
本当に僕のものなんだと
思うのは。
とってもステキさ、
僕たちが愛し合っても、
理由なんか探さないでくれよ:
だってとってもステキなんだから、
だってとってもステキなんだから、
だってあまりにもステキなんだから
[注]
1 bras dessus, bras dessous「互いに腕を組んで、仲良く」
2 sans parler de「…は言うまでもなく」
3 tenir pour「…とみなす」で、j'la tiens dans mes bras「彼女を腕に抱く」とはニュアンスが異なる。
4 àは所有を示し、à moi「私に属す、私のもの」。pour de bon「本当に」。
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ティノ・ロッシTino Rossiが歌った「ピカルディーのバラRoses de Picardie」という曲は、1916年にハイドン・ウッドHaydn Woodによって英国で作曲され、1918年以来、フランスでたいへん人気を呼びました。そのもとの英語の歌詞Roses of Picardyは、第1次大戦中に、フレデリック・エドワード・ウエザリーFrederick Edward Weatherlyという英国の詩人(弁護士でもありました)が作詞したものです。フランスの戦争未亡人に恋した英国人将校によってピカルディーで作られたという伝説もありますが、彼自身がフランスの戦争未亡人に恋したのかどうかはいろんな説があって不明です。1927年にこの曲を題材にした無声映画Roses of Picardyが作られています。ちなみに、ピカルディはベルギーと国境を接し、海を挟んでイギリスを望む位置にあり、バラの産地として、またビールの産地として知られています。
世界中の300人以上の歌手が歌っています。シドニー・ベチェットSidney Bechet、フランク・シナトラFrank Sinatra、プラターズThe Plattersなど。
また、イザベル・アジャーニIsabelle Adjani とアラン・スーションAlain Souchonの出演した L'été meurtrierという1983年の映画のお蔭でこの曲(オーケストラ演奏)が再び注目されたそうです。
そしてイヴ・モンタンYves Montandは、原曲のルフラン部分を、あらたな歌詞でDansons la roseという題名をつけて歌っています。いつも、妻のシモーヌ・シニョレSimone Signoretへの愛を表現する形でこの歌を歌ったそうです。今回はこちらをメインに取り上げます。そのあとに、ティノ・ロッシの元歌を加えます。
Dansons la rose (Roses de Picardie) ピカルディーのバラ
Yves Montand イヴ・モンタン
Dire que cet air 注1
Nous semblait vieillot
Aujourd'hui
Il me semble nouveau
Et puis surtout
C'était toi et moi
Ces deux mots
Ne vieillissent pas
この旋律は
僕たちには もう今じゃ
古くさく思えるっていうのかい
僕には新鮮に思えるよ
またとくに
君と僕という
この二つの言葉は
古くなったりはしないさ

... Souviens-toi
Ça parlait 注2
De la Picardie 注3
Et des roses
Qu'on trouve là-bas
Tous les deux
Amoureux
Nous avons dansé
Sur les roses
De ce temps-là. (×2)
…思い出してよ
それは
あのピカルディーのこと
そしてそこに咲いている
バラのことだよ
愛し合っている
二人は
踊ったよね
バラの上で
あの頃。
[注]
1 Dire que…「…というじゃないか、というんだから」
2 Ça parler de…「…のことだ、のことを言う」
3 laがついているのは、特別の思いを込めていることを表す。

ティノ・ロッシの歌う元歌。
Roses de Picardie ピカルディーのバラ
Tino Rossi ティノ・ロッシ
De ses grands yeux de saphir clair
Aux reflets changeants de la mer,
Colinette regarde la route,
Va rêvant, tressaille, écoute.
Car au loin, dans le silence,
Monte un chant enivrant toujours ;
Tremblante, elle est sans défense
Devant ce premier chant d'amour :
海のうつろう輝きを映す
澄んだサファイア色の大きな目で
コリネットは道を見て、
夢うつつで進み、身を震わせ、耳を澄ます。
なぜなら遠くに、静寂のなかに、
今なお心酔わせる歌が湧き上がる;
震えながら、彼女はなす術を失っている
かの最初の愛の歌を前にして:
{Refrain:}
Des roses s'ouvrent en Picardie,
Essaimant leurs arômes si doux
Dès que revient l'Avril attiédi,
Il n'en est de pareille à vous !
Nos chemins pourront être un jour écartés
Et les roses perdront leurs couleurs,
L'une, au moins gardera pour moi sa beauté,
C'est la fleur que j'enferme en mon cœur !
暖かい4月になると
とても甘い香りを振りまきながら
ピカルディーにバラたちが花開くが、
あなたに匹敵するバラはない!
私たちの道はいつか分かれるかもしれず
バラたちは色あせるだろうが、
ひとつのバラが、少なくとも僕のために美しさを保つだろう、
それは僕の心のなかに閉じ込めた花だ!
A jamais sur l'aile du temps,
Depuis lors ont fui les ans...
Mais il lit dans ses yeux la tendresse,
Ses mains n'ont que des caresses ;
Colinette encore voit la route
Qui les a rapprochés un jour,
Quand monta vers son cœur en déroute
Cette ultime chanson d'amour :
時の翼に乗って永遠に、
それ以来歳月は過ぎて行った…
だが彼は彼女の眼に愛情を読み取り、
彼の両手は彼女にひたすら優しく触れる;
コリネットはまだ道を見ている
いつだったか彼らを近づけた道を、
そのとき彼女の混乱していた心に
この究極の愛の歌が湧き上がった:
{Refrain}

最後に、フランク・シナトラのRoses of Picardyを。
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今回は、リアンヌ・フォリーLiane Folyの「古き香りLes parfums d'autrefois」。作詞: Liane Foly, Philippe Viennet, 作曲:André Manoukian。1993年のアルバム:Les petites notesに収録されています。フォリーは日本ではあまり知られていませんが、味のある歌を聴かせてくれる素晴らしい歌手です。彼女の曲では、「ゆるやかにDoucement」をすでに取り上げ、その記事に彼女のプロフィールを簡単にご紹介しています。
Les parfums d'autrefois 古き香り
Liane Foly リアンヌ・フォリー
Dans mon jardin secret y a des fleurs immortelles
Des soucis des pensées des racines éternelles 注1
Y a des arbres écorchés par des serments gravés
Et deux trois réverbères qui m'éclairent sur hier
私の秘密の花園には永遠の花々が
根の朽ちない不安草や思考草が咲き
樹皮に誓いの刻まれた樹々や
昨日の私を照らす2、3の街灯が立っている
L'allée de mon immeuble qui voulait voir le jour
Le couloir vers ma chambre trop étroit pour danser
L'église au toit pointu qui orientait ma vue
Vers un tout p'tit bout de ciel qui me tendait ses ailes
陽の目を見たがっていた私の住まいへの路地
踊るには狭すぎた私の部屋への廊下
私に翼を差し伸べるとてもちっぽけな空のかけらへと
私の目を誘ったとんがり屋根の教会

Au plus profond de moi je les emporterai
Ces parfums d'autrefois que je garde en secret
Les images danseront resteront à jamais
Au plus profond de moi, un élixir de paix
私の内奥にそれらを運んで行こう
私がひそかに大事にしているこれらの古い香り
そのイメージは揺れ動き永遠に残る
私の内奥に、安らぎの妙薬として
Encrés dans mon cahier, je les revoie encore
Les bateaux qui partaient, me laissant sur le port
Le vieux tutu froissé, que j'ai envoyé valser 注2
Le lipstick rougissant de mes premiers baisers
私のノートに記されたそれらを、私は再び目にする
私を港に残して、出て行く船たち
皺くちゃの古いバレーのスカート、それは私が放り出したもの
初めての口づけのときの赤く色づいた口紅
Au plus profond de moi je les emporterai
Ces parfums d'autrefois que je garde en secret
Les images danseront resteront à jamais
Au plus profond de moi, un élixir de paix
私の内奥にそれらを運んで行こう
私がひそかに大事にしているこれらの古い香り
そのイメージは揺れ動き永遠に残る
私の内奥に、安らぎの妙薬として

Au plus profond de moi je les emporterai
Ces parfums d'autrefois que je garde en secret
Avant qu'ils s'évaporent je veux qu'ils brûlent encore
Chaque jour chaque nuit comme l'essence de ma vie
私の内奥にそれらを運んで行こう
私がひそかに大事にしているこれらの古い香り
霧散してしまう前にまた燃えて欲しい
昼も夜も私のいのちのエキスとして
[注]
1 souciは「心配」と「キンセンカ」、penséeは「思考」と「パンジー、三色スミレ」をかけている。訳語は苦肉の策。
2 envoyer valser qn.「…を首にする、放り出す」。
Comment:3

前回に続き、パトリシア・カースPatricia Kaasのファーストアルバム:Mademoiselle chante le bluesに収録された曲をもう一つご紹介しましょう。大ヒット曲Mon mec à moiです。1987年。作詞:ディディエ・バルブリヴィアンDidier Barbelivien、作曲:フランソワ・ベルンハイム François Bernheim。mecとは、話し言葉で、彼氏や亭主を指す言葉ですから「わたしの彼氏」と呼びたいと思います。一般には原名の読みの「モン・メック・ア・モア」で呼ばれていますが、実際の発音としてはmecとàがつながって、メッカとなります。それだけは直させていただいて副題としましょう。
気が滅入った時に聴くと(歌うとさらに)スカーッとします。特効薬みたいな歌です。
Mon mec à moi わたしの彼氏(モン・メッカ・モア)
Patricia Kaas パトリシア・カース
Il joue avec mon cœur
Il triche avec ma vie
Il dit des mots menteurs
Et moi je crois tout c'qu'il dit
Les chansons qu'il me chante
Les rêves qu'il fait pour deux
C'est comme les bonbons menthe
Ça fait du bien quand il pleut 注1
Je m'raconte des histoires
En écoutant sa voix
C'est pas vrai
C'est pas vrai ces histoires
Mais moi j'y crois. 注2
彼はわたしの心をもてあそぶ
彼はわたしの人生をごまかす
彼はウソの言葉を吐く
でもわたし 彼の言葉をぜんぶ信じる
彼の歌う歌
彼が二人のために描く夢ったら
ミント入りキャンディーみたいなもの
雨降りの時にゃいいものよ
彼の声を聞きながら
わたしは作り話を反芻する
その話はほんとじゃない
けど わたしはそれを信じるわ

Mon mec à moi
Il me parle d'aventures
Et quand elles brillent dans ses yeux 注3
J'pourrais y passer la nuit 注4
Il parle d'amour
Comme il parle des voitures
Et moi j'l'suis où il veut 注5
Tellement je crois tout c'qu'il m'dit
Tellement je crois tout c'qu'il m'dit
Oh oui
Mon mec à moi
わたしの彼氏
彼はわたしにアヴァンチュールを語る
目を輝やかせて熱弁するとき
わたしは一晩中付き合ってもいいわ
彼は恋を語る
まるで車の話をするみたいにね
そしてわたしは彼の望むところについて行く
こんな風に彼の言葉を全て信じる
こんな風に彼の言葉を全て信じる
ああそうよ
わたしの彼氏
Sa façon d'être à moi
Sans jamais dire je t'aime
C'est rien qu'du cinéma
Mais c'est du pareil au même
Ce film en noir et blanc
Qu'il m'a joué deux cents fois
C'est Gabin et Morgan 注6
Enfin ça ressemble à tout ça
J'm'raconte des histoires
Des scénarios chinois 注7
C'est pas vrai ces histoires
Mais moi j'y crois
彼のわたしへの態度
けして「愛してる」と言わないっていう
それは映画そのもの
だって それはまるで同じよ
この白黒映画とね
彼が200回もわたしに演じてみせたのは
ギャバンとモルガン
ま それはそういったものよ
わたしは自分に作り話を言ってきかせる
ちんぷんかんぷんの筋書を
その話はほんとじゃない
けど わたしはそれを信じるわ

Mon mec à moi 注8
Il me parle d'aventures
Et quand elles brillent dans ses yeux
J'pourrais y passer la nuit
Il parle d'amour
Comme il parle des voitures
Et moi j'l'suis où il veut
Tellement je crois tout c'qu'il m'dit
Tellement je crois tout c'qu'il m'dit
Oh oui
Mon mec à moi
Mon mec à moi
Il me parle d'aventures
Et quand elles brillent dans ses yeux
J'pourrais y passer la nuit
Il parle d'amour
Comme il parle des voitures
Et moi j'l'suis où il veut
Tellement je crois tout c'qu'il m'dit
Tellement je crois tout c'qu'il m'dit
Oh oui
Mon mec à moi
Il me parle d'aventures
Et quand elles brillent dans ses yeux
J'pourrais y passer la nuit
Il parle d'amour
Comme il parle des voitures
Et moi j'l'suis où il veut
Tellement je crois tout c'qu'il m'dit
Tellement je crois tout c'qu'il m'dit
Oh oui
[注]
1 faire du bienは、「効く、気持ちをすっきりさせる」といった意味。
2 y croireは、すなわちcroire à ces histoires。
3 ellesは、前行のd'aventuresを指すが、この部分はやむを得ず意訳した。
4 j'pourraisのj’は、シュを子音だけで言う感じ。y passer la nuitは、passer une nuit à+不定詞の「~して一夜を明かす」の意味でとらえたい。
5 suisはêtreではなくsuivre。
6 1938年の「霧の波止場Le Quai Des Brumes」あたりだろうか。ジャン・ギャバンJean Gabinと、当時17歳のミシェル・モルガンMichèle Morganが出演した白黒映画。
7 chinois「中国(語)の」は、「ちんぷんかんぷんの、訳のわからない」という意味で用いられる。
8 ここからは、第2段落の歌詞が繰り返されるので、訳は省いた。
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今回は、パトリシア・カースPatricia Kaasの「マドモアゼルはブルースを歌うMademoiselle chante le blues」(作詞:ディディエ・バルブリヴィアンDidier Barbelivien、作曲:Bob Medhi)です。パトリシア・カースPatricia Kaasの歌は、ジャズやブルースに近いといわれますが、私はフランス演歌だと思っています。妖しい魅力を漂わせながら、小さい体ですごい声量で歌う姿から、「ピアフの再来」ともいわれました。数回の大々的な世界ツアーを成し遂げ、その際、日本にも再三訪れました。
この曲は1987年にシングルでリリースされ、翌1988年に同名のファースト・アルバムに収録され、同年、ヴィクトワール賞を受賞しています。「マドモアゼル・シャントゥ・ブルース」という邦題で呼ばれていますが、原題の読み風ながら、原題に含まれているleが入っていないということと、昨年2011年に出た、Mademoiselle n'a pas chanté que le blues(「マドモアゼルはブルースしか歌わなかった」の意味)というアルバム名も原題の読みで言うのかとも言いたくなるので、直訳の題名に変えました。また、歌詞のなかではあえて「お嬢」と訳しています。
Mademoiselle chante le blues マドモアゼルはブルースを歌う
Patricia Kaas パトリシア・カース
Y’en a qui élèvent des gosses au fond des hlm 注1
Y’en a qui roulent leurs bosses du Brésil en Ukraine 注2
Y’en a qui font la noce du côté d’Angoulême 注3
Et y’en a même
Qui militent dans la rue avec tracts et banderoles
Et y’en a qui en peuvent plus de jouer les sex symbols 注4
Y’en a qui vendent l’amour au fond de leur bagnole
公団住宅の奥で子供たちを育てる人たちもいる
ブラジルからウクライナへと渡り歩く人たちもいる
アングレームの近くで結婚式を挙げる人たちもいる
そしてまた通りではビラや旗で闘う人たちもいる
そしてセックス・シンボルをもはや演じられなくなった人たちもいる
クルマのなかで愛を売る人たちもいる
{Refrain:}
Mademoiselle chante le blues
Soyez pas trop jalouses
Mademoiselle boit du rouge
Mademoiselle chante le blues
お嬢はブルースを歌う
あまり妬っかまないでよ
お嬢は赤ワインを呑む
お嬢はブルースを歌う

Y’en a huit heures par jour qui tapent sur des machines 注5
Y’en a qui font la cour masculine féminine 注6
Y’en a qui lèchent les bottes comme on lèche des vitrines 注7
Et y’en a même
Qui font du cinéma, qu’on appellent Marilyn
Mais Marilyn Dubois s’ra jamais Norma Jeane 注8
Faut pas croire que l’talent c’est tout c’qu’on s’imagine
一日8時間タイプライターを打つ人たちもいる
女っぽくまた男っぽく言い寄る人たちもいる
ショーウィンドーをなめるように覗きこむみたいにブーツをなめるようにへつらう人たちもいる
そして映画に出る人たちもいて、ひとはマリリンと呼ぶ
だがマリリン・デュボワはノルマ・ジーンには決してならない
その才能は自身が想像するものだけがすべてだと思っちゃいけない
{Refrain}

Elle a du gospel dans la voix et elle y croit
彼女はゴスペル・ソングを声に備え自分でも自信がある
Y’en a qui s’font bonne sœur, avocat, pharmacienne
Y’en a qui ont tout dit quand elles ont dit je t’aime
Y’en a qui sont vieilles filles du côté d’Angoulême
Y’en a même
Qui jouent femmes libérées
Petit joint et gardénal qui mélangent vie en rose et image d’Epinal 注9
Qui veulent se faire du bien sans jamais s’faire du mal
{Refrain}
修道女、弁護士、薬剤師になる人たちもいる
あなたを愛しているわと言うことですべてを言いつくした人たちもいる
アングレームの近辺にはオールドミスたちもいる
そしてまた
解放された女性を演じる人たちも
マリファナや睡眠薬でバラ色の人生とエピナル版画を混同する人たちも
苦しい思いをしないでいい思いをしたいと願う人たちもいる

Elle a du gospel dans la voix et elle y croit
Mademoiselle chante le blues
彼女はゴスペル・ソングを声に備え自分でも自信がある
お嬢はブルースを歌う
[注]
1 Y’en a=Il y en a
2 rouler leurs bosses「転々と居所(職業)を変える、渡り歩く」
3 Angoulêmeフランス西部の都市
4 n’en pouvoir plus inf.「もう…できない」のneが省略されている。sex symbolsは英語。仏語ならsexe symboles。
5 huit heures par jourは挿入されている。
6 font la cour「(特に女性を)口説く、言い寄る」。masculine féminineはそれぞれ形容詞でla courにかかるが日本語に置き換えにくいので意訳した。
7 lècher は「なめる」の意味だが、lècher les bottesは「へつらう、おべっかを使う」、lècher des vitrinesは「ショーウィンドーを覗きこむ、ウィンドーショッピングをする」という成句。
8 マリリン・モンローMarilyn Monroeの本名がNorma Jeane Baker。
9 joint「マリファナたばこ」の俗名。gardénal「鎮痛剤、催眠剤」の一種。image d’Epinalは、エピナル地方で作られてきた、鮮やかな色彩の版画。
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今回は、ミッシェル・サルドゥーMichel Sardouの「永遠のきずな(年老いた夫婦)Les vieux mariés」(作詞:サルドゥーとピエール・ドラノエPierre Delanoë作曲:ジャック・ルヴォーJacques Revaux)。先に取り上げた「恋の病La maladie d'amour」と同じ1973年のアルバムに収録された曲で、7歳から77歳までがかかるという「恋の病」が昇華された境地といった内容です。実は今日4月22日は、2004年に亡くなった私の夫の命日。息子たちの結婚も、孫たちの顔も知らずに逝ってしまった人と、ひょっとしたら今頃こんな夫婦でいられたかもと、この曲を選びました。
サルドゥー
ガルーGarouとモラーヌMaurane、リアンヌ・フォリーLiane Folyとジェラール・ダルモンGerard Darmon 。2組のデュオです。
Les vieux mariés 永遠のきずな(年老いた夫婦)
Michel Sardou ミッシェル・サルドゥー
On vient de marier le dernier
Tous nos enfants sont désormais heureux sans nous
Ce soir il me vient une idée
Si l'on pensait un peu à nous
Un peu à nous
On s'est toujours beaucoup aimés
Mais sans un jour pour vraiment s'occuper de nous
Alors il me vient une idée
Si l'on partait comme deux vieux fous 注1
Comme deux vieux fous
On habiterait à l'hôtel
On prendrait le café au lit
On choisirait un p'tit hôtel
Dans un joli coin du midi
Ce soir il me vient des idées
Ce soir il me vient des idées
僕たちは最後の子を結婚させたところだ
もう 子供たちはみな僕たちがいなくても幸せになったね
今夜あることを思いついたよ
もしも僕たちのことをすこしは考えたなら
すこしは僕たちのことを
僕たちはいつもとっても愛し合ってきた
だが一日たりとちゃんと自分たちのことに専心しなかった
そこであることを思いついたんだよ
おかしな老人カップルとして出かけようじゃないかと
おかしな老人カップルとして
ホテルに泊まって
ベッドでコーヒーを飲もうよ
南フランスの片隅のさ
小さなホテルを選ぼうよ
今夜あることを思いついたよ
今夜あることを思いついたんだよ

On a toujours bien travaillé
On a souvent eu peur de n'pas y arriver 注2
Maintenant qu'on est tous les deux
Si l'on pensait à être heureux
A être heureux
Tu m'as donné de beaux enfants
Tu as le droit de te reposer maintenant
Alors il me vient une idée
Comm'eux j'aimerais voyager 注3
Hum voyager
Mais on irait beaucoup moins loin
On n'partirait que quelques jours
Et si tu me tiens bien la main
Je te reparlerai d'amour
Ce soir il me vient des idées
Ce soir il me vient des idées
僕たちはいつもよく働いた
時々はうまく行かないんじゃないかと恐れた
今 二人はそうなっているんだよ
幸せになろうと思っていたんだとしたら
幸せに
君は僕にステキな子供たちを与えてくれた
君には今 休息する権利があるんだよ
だからあることを思いついたよ
彼らのように僕は旅行したいな
うん 旅行だよ
だがあまり遠くには行かない
数日間だけ行くことにしよう
そしてもし君が僕の手をとったら
僕は君にまた愛を語ろう
今夜あることを思いついたよ
今夜あることを思いついたんだよ

Nous revivrons nos jours heureux
Et jusqu'au bout moi je ne verrai plus que toi 注4
Le temps qui nous a rendu vieux
N'a pas changé mon coeur pour ça
Mon cœur pour ça
僕たちは二人のしあわせな日々をまた生きよう
そして僕はね最後まで君しか見ないよ
僕たちを老いさせた時間は
だからといって僕の心までは変えはしなかった
僕の心までは
[注] 題名は、vieux が名詞で、mariésが形容詞ともとれるが、nouveaux mariés「新婚夫婦」と対になる表現として、vieuxが形容詞で mariésが名詞とした方がいいだろう。vieuxには、「年取った」のみならず「古くからの」すなわち「長年連れ添った」という意味が重なっている。
1 ここも、vieuxが形容詞で fousが名詞、あるいはその逆ともとれるが、同様の訳語で間に合う。
2 y arriver「目的を達する、事を成し遂げる」
3 euxは、新婚旅行に旅立った子どもたち。
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グロリア・ラッソGloria Lassoの「ボン・ヴォワヤージュBon voyage」(1958年、作詞Jacques Larue, 作曲Dunny Small)は、3月19日に取り上げたイヴェット・ジローYvette Giraudの「アデューAdieu」と同様、恋人に別の女性ができ、辛い心を抑えながら相手にさよならを言う内容ですが、さらにいさぎよく、「よい旅を」と相手を送り出します。つまりは、別れ話を切り出す側ではなく、切り出された側の対応がテーマ。私としては、「恋は切なくEmportez mon amour」のほうが性に合いそうですが…。
voyageの仮名表記は「ヴォヤージュ」とされることが多いのですが、これはまずいので、手持ちの辞書の表記に合わせます(「ヴォワイヤージュ」としている電子辞書もありますが)。また、イザベル・アジャーニ主演の同名の映画とは無関係です、念のため。
グロリア・ラッソ(1922~2005)は、スペイン出身の歌手で、「マドリッドから来たナイチンゲール」(本当はカタロニアから来ましたが…)と呼ばれました。看護婦をしていたときに、病気になった歌手の代役でラジオに出たことがきっかけで歌手となり、50年代にフランスで活躍しました。ラテンのスタンダードやブラジル音楽の数多くの名曲をカバーしてラテンとフランスの音楽の橋渡しをし「フランス・ラテン音楽の女王」と称されました。彼女の曲はたいてい恋を歌った、軽快でメロディアスなものですが、バイオリン、ギター、トランペット、カスタネットを用いた情熱的でロマンチックなオーケストレーションがたいへん特徴的です。日本では「急流Le torrent」「ゴンドリエGondolier」なども知られています。60年代に入ってからは、ダリダDalidaに人気を奪われて、メキシコに渡り、メキシコや南米で人気を博しました。1962年に作られた「マガリMagali」という大曲があり、こちらもいずれ取り上げる予定です。生涯に少なくとも6回、説によると9回結婚したといわれます。Bon voyage を5回~8回言ったということかな。
Bon voyage ボン・ヴォワヤージュ
Gloria Lasso グロリア・ラッソ
Pas la peine de prendre 注1
Cet air triste en me quittant
Puisque celle qui t’aime t’attend
Offre-lui de ma part ces lilas du jardin 注2
Je ne lui en veux pas
Je la plains. 注3
私のもとを去るのに
そんな悲しそうなそぶりをすることはないのよ
あなたを愛している人が待っているんだから
私の代わりに その方にこの庭のリラの花をあげて
私、その方を悪く思ってはいないのよ
その方の気持ちを察するわ。

Bon voyage! Bon voyage!
Le soleil brillera bien sans toi
Tu peux faire une croix
J’ai fini de t’aimer
Bon voyage! Et ne reviens jamais.
よい旅を!よい旅を!
あなたがいなくても太陽はちゃんと輝くわ
信じていいのよ
私はあなたを愛するのをやめたわ
よい旅を!そして二度と戻らないで。
Je m’emporte, c’est bête 注4
Je te souhaite d’être heureux
On m’a dit qu’elle avait de beaux yeux
On m’a même ajouté,
Comme pour t’excuser,
Que tu l’aimes au point de l’épouser. 注5
私はのぼせてるわ、馬鹿ね
あなたがしあわせになるよう願うわ
あの方はきれいな眼をしてらっしゃるって人が教えてくれた
そしてまた、付け加えたわ、
あなたを弁護して、
結婚を考えるほどあなたがその方を愛していると。

Bon voyage! Bon voyage!
Ta tendresse pour moi, garde-la
Quand tu vas tout à l’heure 注6
Te jeter dans ses bras
N’aie pas peur que je pleure pour ça.
よい旅を!よい旅を!
私に対しての優しい気持ち、それは残していてね
あなたはもうすぐ
あの方の腕のなかに飛び込むでしょうけど
そのために私が泣くなんて心配しないで。
[注]
1 ce n’est pas la peine de「…するには及ばない」の省略形。
2 de la part de qn.「…の代理で」
3 plaindre「気の毒に思う、同情する」だが、ちょっと違ったニュアンス。
4 s’emporter「かっとなる、腹を立てる」
5 au point de+inf.「…するほどまで」
6 tout à l’heure「もうすぐ」
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今回は、バルバラBarbaraの「愛していると言えなくてJe ne sais pas dire」。1964年のアルバム:Barbara chante Barbaraに収録され、このアルバムは翌1965年にACCディスク大賞を受賞しました。
Je ne sais pas dire 愛していると言えなくて
Barbara バルバラ
Je ne sais pas dire "Je t'aime.".
Je ne sais pas, je ne sais pas.
Je ne peux pas dire "Je t'aime."
Je ne peux pas, je ne peux pas.
Je l'ai dit tant de fois pour rire. 注1
On ne rit pas de ces mots-là.
Aujourd'hui que je veux le dire,
Je n'ose pas, je n'ose pas.
Alors, j'ai fait cette musique
Qui mieux que moi te le dira.
「愛してる。」と言うことができない
できない、できない。
「愛してる。」と言うことができない
できない、できない。
冗談では私は何度も言ったわ。
この言葉を私たちは笑わなかった。
今日、私はそれを言いたいの、
勇気がないの、勇気がないの
だから、私よりうまくあなたにそれを語ってくれる
この音楽を作ったの。

Pour une larme, pour un sourire
Qui pourraient venir de toi,
Je ferais le mieux et le pire
Mais je ferais n'importe quoi.
Pourtant le jour et la nuit même,
Quand j'ai le mal d'amour pour toi,
Là, simplement dire "Je t'aime."
Je n'ose pas, je n'ose pas,
Alors, écoute ma musique
Qui mieux que moi te le parlera.
あなたが示してくれるかもしれない
涙のため、微笑みのためには
一番いいことも一番悪いこともやるわ
なんでもやるわ。
だけど昼も夜も、
私があなたへの愛に苦しむとき、
そうよ、ただ「愛してる。」と言う
勇気がないの、勇気がないの
だから、私の音楽を聴いて
それは私よりうまくあなたにその言葉を話せるわ。
Je sais ta bouche sur ma bouche.
Je sais tes yeux, ton rire, ta voix.
Je sais le feu quand tu me touches
Et je sais le bruit de ton pas.
Je saurais, sur moi, dévêtue,
Entre mille, quelle est ta main nue, 注2
Mais simplement dire "Je t'aime.",
Je ne sais pas, je ne sais pas.
私の唇に重ねられたあなたの唇を知っているわ。
あなたの目を、あなたの笑いを、あなたの声を知っているわ。
あなたが私に触れるときに燃え立つものを知っているし
あなたの足音を知っているわ。
服を脱いだ私に触れる、
あなたの裸の手を、千もの手のなかから、区別できるわ
でもただ「愛してる。」と言うことが、
できない、できない。
C'est trop bête, je vais le dire.
C'est rien, ces deux mots-là
Mais j'ai peur de te voir sourire.
Surtout, ne me regarde pas.
Tiens, au piano, je vais le dire,
Amoureuse du bout des doigts.
Au piano, je pourrais le dire.
Ecoute-moi, regarde-moi.
ばかげてるわ、私はそれを言おうとしてる。
何でもない、この2つの言葉
でもあなたが笑うのを見るのが怖いのよ。
絶対に、私を見ないで。
ほら、ピアノで、私はそれを言うわ、
指先に愛を込めて。
ピアノでなら、私はそれを言えるわ。
聴いていてね、見ていてね。

Je ne peux pas,
Je ne sais pas,
Je n'ose pas.
Je t'aime, je t'aime, je t'aime...
無理なの、
できない、
勇気がない。
愛してる、愛してる、愛してるわ…
[注]
1 pour rire「冗談で」
2 entre mille「数多くのなかで」
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エディット・ピアフÉdith Piafの「メア・キュルパ(夜は恋人) Mea culpa」(作詞:Édith Piaf、作曲:Michel Rivgauche)は、引きずるような重い感じのメロディで、歌詞の内容も重い曲です。日本では「夜は恋人」という邦題で呼ばれていますが、原題のmea culpaとは、ラテン語で「わが罪」という意味で、culpa(フランス語でpéche)は特に「宗教上の罪」を指します。歌詞には、キリスト教の7つの大罪「L’orgueil傲慢、L’envie嫉妬、La gourmandise暴食、La paresse怠惰、La colère憤怒、la luxure色欲、L’avarice強欲」が織り込まれていて、それらは、罪そのものというより、罪を犯す原因となる心の働きです。恋をするということは、それら7種の罪を犯すことになるようで、Mea culpa!は相手の男への呼びかけのようにも思えてきます。ちなみに、ドイツのエニグマEnigmaの同名の曲はまったく別の曲です。
Édith Piaf エディット・ピアフ
Mea culpa ! Mea culpa !
わが罪よ!わが罪よ!
J'ai péché par orgueil
De t'avoir tout à moi
Dans un simple clin d'œil.
Mea culpa !
わたしは罪を犯した
ほんのちょっと目配せしただけで
あなたをすべてわたしのものにするという傲慢さから。
わが罪よ!

J'ai péché par envie
De me donner à toi
En te donnant ma vie.
Mea culpa !
わたしは罪を犯した
わたしのいのちをあなたに預けて
自分をあなたに捧げたいという欲望から。
わが罪よ!

Et puis par gourmandise,
Illuminée par l'éclat de tes yeux,
J'ai vu ta bouche et je me sentais grise
J'ai bu sans fin à tes lèvres exquises?
... et je buvais du feu !
そして貪欲さから、
あなたの目の輝きにそそられて、
あなたの口もとを見て陶酔した気分になった
あなたの美味な唇を飲みほしてしまった?
…わたしは火を飲んだのよ!
J'ai péché par paresse
Quand j'ai connu tes bras,
Berceau de mes caresses.
Mea culpa !
わたしは怠惰から罪を犯した
私を抱擁する揺りかごのような
あなたの腕を知ったときに。
わが罪よ!

Que ceux qui n'ont jamais péché
Me jettent la première pierre.
Que ceux qui n'ont jamais aimé
Me refusent une prière.
けっして罪を犯したことのない人々が
最初にわたしに石を投げればいい。
けっして愛したことのない人々が
わたしの祈りを拒絶すればいい。
J'ai péché par colère
Contre toi, contre moi,
Contre toute la terre.
Mea culpa !
わたしは怒りから罪を犯した
あなたに対して、わたし自身に対して、
地上のものすべてに対して。
わが罪よ!

J'ai péché par luxure,
Chaque soir, dans tes bras,
Mais mon âme était pure.
Mea culpa !
わたしは色欲から罪を犯した、
毎夜、あなたの腕のなかにいて、
でもわたしの魂は純粋だった。
わが罪よ!

Et puis par avarice,
Je t'ai caché dans le fond de mon cœur
Pour mieux t'y adorer avec délice
A l'abri des voleurs.
そしてまた強欲から、
わたしはあなたを心の奥底にしまい込んだ
無上の喜びをもってあなたをより強く愛したいから
ぬすっとたちから安全なところで

Ainsi donc, tu le vois,
J'ai péché les sept fois
Rien qu'à cause de toi.
Mea culpa !
さてそうして、あなたはお分かりね、
わたしは7度罪を犯した
あなたのせいでしかないのよ
わが罪よ!
Mais un jour,
Si tu me le demandais,
Oh ! mon amour !
... Je recommencerais.
Mea culpa ! Mea culpa !
でもいつか
もしもあなたがそれを要求したら、
おお!愛する人よ!
…わたしはもう一度同じことをするでしょう。
わが罪よ!わが罪よ!
[注] 7つの大罪は太字で表記した。訳語は文脈で適宜変えた。
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シャルル・トレネCharles Trenetの「優しきフランスDouce France」は文字通り優しい歌です。「恋の名残は?(残されし恋には)Que reste-t-il de nos amours ?」と同様、トレネが作詞し、レオ・ショーリアックLéo Chauriacが作曲しました。1940年にドイツ軍がパリ入城したときニースにいたトレネは除隊されたのち、パリに戻ることを決意し、翌1941年にアヴニュー劇場のステージに立ちました。43年にそこで歌ったこの歌は、すべてのフランス人、なかでもレジスタンス運動に加わっていた人々の愛聴曲となりました。
Douce France 優しきフランス
Charles Trenet シャルル・トレネ
Il revient à ma mémoire
Des souvenirs familiers
Je revois ma blouse noire
Lorsque j´étais écolier
Sur le chemin de l´école
Je chantais à pleine voix
Des romances sans paroles
Vieilles chansons d´autrefois
おなじみの想い出が
記憶によみがえる
小学生だったころの
僕の黒い上っ張りが目に浮かぶ
学校に通う道で
声を張り上げて歌ったものだ
歌詞のない恋歌を
昔の古い歌を

{Refrain:}
Douce France
Cher pays de mon enfance
Bercée de tendre insouciance
Je t´ai gardée dans mon cœur!
Mon village au clocher aux maisons sages
Où les enfants de mon âge
Ont partagé mon bonheur
Oui je t´aime
Et je te donne ce poème
Oui je t´aime
Dans la joie ou la douleur
Douce France
Cher pays de mon enfance
Bercée de tendre insouciance
Je t´ai gardée dans mon cœur
優しいフランス
心地よく安穏にはぐくまれた
幼年時代の愛しい国
僕はおまえを心にとどめた!
鐘楼とつましい家々のある僕の村
そこで僕と同じ年頃の子供たちが
僕としあわせを分かち合った
そうさ僕はおまえを愛す
そしてこの詩をおまえに捧げる
そうさ僕はおまえを愛す
楽しいときも苦しいときも
優しいフランス
心地よく安穏にはぐくまれた
幼年時代の愛しい国
僕はおまえを心にとどめた!

J´ai connu des paysages
Et des soleils merveilleux
Au cours de lointains voyages 注1
Tout là-bas sous d´autres cieux 注2
Mais combien je leur préfère
Mon ciel bleu mon horizon
Ma grande route et ma rivière
Ma prairie et ma maison.
僕は諸々の風景や
素晴らしい太陽を知った
はるかなる旅の途上
異国の地すべてで
だが僕がどんなに好んでいることか
僕の青空、僕の地平線
僕の幹線道路そして僕の河
僕の草原そしてわが家を。
{au Refrain}
[注]
1 au cours de「…の間に、途中で」
2 sous d´autres cieux「他の国(地)で」
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ジャン=ロジェ・コーシモンJean-Roger Caussimon(1918-1985 )はフランスの俳優でシンガー・ソングライター。レオ・フェレLéo Ferréの曲の作詞を数多く手がけたことで知られています。コーシモン作詞、フェレ作曲で、二人それぞれ歌っている曲「相棒Mon camarade」を今回取り上げます。製作年は不明ですが、フェレの1958年のアルバム:Encore du Léo Ferréに収録されています。
「わが仲間」という邦題がつけられているようですが、歌詞の内容から、「相棒」としたいと思います。
レオ・フェレ。1953年に曲の内容に合わせて作られたフィルムのようです。
コーシモン
ジュリアン・クレールJulien Clercもピアノを弾きながら歌っています。musicMeで聴けます。
Mon camarade 相棒
Léo Ferré レオ・フェレ
Je n´sais plus combien ça fait d´mois
Qu´on s´est rencontrés, toi et moi
Mais depuis, tous deux, on s´balade...
On n´prend jamais le vent debout
C´est lui qui pousse et on s´en fout 注1
Mon camarade...
En avril, tous les prés sont verts
Ils sont tout blancs quand c´est l´hiver
En mars, ils sont en marmelade 注2
Mais il y a pour deux vagabonds
Un coin d´étable où il fait bon
Mon camarade!
何か月経つのかもう分からない
僕たちが出会ってから、君と僕が
だがそれ以来、僕たち二人は、連れだって歩いている…
僕たちは決して逆風を受けない
後押ししてくれるから、平気なのさ
相棒が…
4月には、原っぱは一面、緑になる
冬には真っ白になる
3月には、融けてぐしゃぐしゃだ
だが二人の放浪者には
居心地のいい家畜小屋の隅っこがあるのさ
相棒よ!

On s´souviendra du balthazar
Qu´on a fait ce soir, par hasard
Avec un vieux corbeau malade...
On a tout mangé, même les os
Et tu vas roupiller bientôt
Mon camarade...
V´là la première étoile qui luit
Les grenouilles, dans l´fin fond d´la nuit 注3
En chœur, lui font une sérénade...
Les grenouilles ont des p´tits points d´or
Dans les yeux, tu l´savais?... Tu dors
Mon camarade...
僕たちは想い出すことだろう
今夜たまたま、年老いた病気の烏といっしょに
やった大饗宴を…
僕たちは食べ尽くした、骨まで
そして君はまもなくうとうとと眠りにつく
相棒は…
ほら一番星が輝いているよ
蛙たちが、宵闇の奥深くで
声を合わせて、星にセレナーデを捧げている…
蛙たちは小さな金色の点を
目のなかに持っている、君は知ってたかい?…君は眠ってる
相棒ったら…

Je me demande, certains jours
Pourquoi nous poursuivons toujours
Cette éternelle promenade...
Oui, c´est parc´qu´on n´a pas trouvé
Le bonheur qu´on avait rêvé...
Mon camarade...
Un jour, on s´ra tout ébahis
On arrivera dans un pays
Plein de fleurs, d´oiseaux, de cascades...
On s´ra reçus à bras ouverts
Y aura des carillons dans l´air!
Mon camarade!
僕は自問する、時おり
なぜ僕たちがずっと
この終わりのない放浪を続けているのかと
そうさ、それは僕たちが
夢見てきた幸福を見いだせなかったからだ
相棒よ…
いつか、僕たちは仰天することだろう
僕たちはある国に辿りつくのさ
花々や、鳥たちや、滝がいっぱいの…
僕たちは大歓迎される
鐘が鳴り響くんだよ!
相棒よ!
Y aura une petite blonde pour moi
Et puis une petite brune pour toi
Qui trouves que les blondes c´est trop fade...
Elles nous trouveront bien à leur goût
Et diront : Venez donc chez nous!
Mon camarade...
On trouvera ça, mais oui, mon vieux!
C´est peut-être là-haut, dans les cieux
Dame, faudra pas rester en rade... 注4
On a tant marché ici-bas 注5
Qu´y a pas d´raison qu´on n´y arrive pas! 注6
Mon camarade!
僕には金髪の娘が
そして金髪が月並みだと思っている君には
褐色の髪の娘があらわれるだろう…
彼女たちは僕たちが好みに合うと認めて
こう言うだろう:私たちの家にさぁいらっしゃい!と
そうなるさ、だがな、おまえ!
それはたぶんあそこ、天国でのこと
もちろん、見捨てられたままでいることはない…
僕たちは娑婆をさんざ歩き回ったんだから望みが叶わない訳なんぞないさ!
相棒よ!

[注]
1 prendre le vent debout=avoir le vent debout(海事用語で)「向かい風を受ける、風に逆らって航行する」。
2 en marmelade「(料理が)煮崩れした、ぐしゃぐしゃにつぶれた、」
3 fin fond de「…の奥」
4 Dame「もちろん、そうさ」par Notre=Dameの略。rester en rade「見捨てられる」「立ち往生する」。
5 ici-bas「この世、現世」
6 y arrive「目的を達する、事を成し遂げる」
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「海のマリーMarie la Mer」は、1973年にリリースされた、サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamo自作の曲。「人魚姫」の童話を思い出させるような歌詞で、メロディーも美しく、私はアダモの曲のなかでいちばん好きです。
実は今日の午後、《アミカル・ド・シャンソン》の共同主宰者の宇藤カザンが、赤坂のレディーバードでのソロライブでこの曲を歌うというので、取り上げることにいたしました。→Kazan ライブ
アダモは自分の歌を複数の言語で歌っています(イタリア語、スペイン語、ドイツ語、オランダ語、日本語、ポルトガル語、トルコ語)。そして現在、1億枚のディスクの売り上げを記録しています。
1993年からベルギーのユニセフ大使を務めていること、2001年にベルギー国王アルベール2世よりレジオンドヌール勲章5等を授与されたことも特筆に値します。
Marie la Mer 海のマリー
Salvatore Adamo サルヴァトーレ・アダモ
Marie la Mer,
Au creux d'une vague
Je t'ai trouvée étrange et belle
Comme un oiseau de mer
海のマリー、
波のくぼみに
海鳥みたいな
不思議な美しい君を僕は見つけた

Marie la Mer,
Le ciel était rouge et les algues étaient d'or
Comme de longs cheveux ondoyant sur la mer
Tu m'as souri, Marie la Mer
Il faisait beau dans tes yeux verts 注
Et on s'est regardé, longtemps, longtemps
Marie la Mer,
Au creux d'une vague
Je t'ai perdue effarouchée
Comme un oiseau de mer
海のマリー、
空は赤く 海藻は金色で
海のうえで揺れ動く長い髪の毛のようだった
君は僕に微笑んだ、海のマリー
君の緑色の瞳のなかは澄み切っていた
僕たちは見つめ合った、ずっと、ずっと
海のマリー、
波のくぼみに
海鳥のように
おびえた君を失った

Le temps s'était perdu en mer
Il faisait beau dans tes yeux verts
J'ai tendu la main doucement, doucement
Marie la Mer,
Me pardonneras-tu, je t'attendrai longtemps
Marie la Mer,
Il pleut sur la plage
Il pleut pour toujours
Dans le ciel passent quelques oiseaux de mer
時は海のなかで失われて行った
君の緑色の瞳のなかは澄み切っていた
僕は手を差し伸べた、そっと、そっと
海のマリー、
僕を許してくれるかい、僕は君をずっと待っているよ
海のマリー、
浜辺に雨が降る
いつまでも雨が降る
空を海鳥が数羽通り過ぎる
[注] Il fait beau「天気がいい」という表現を、瞳のなかをあらわすのに用いている。
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前回のジャック・ブレルJacques Brelの「子供の頃Mon enfance」(1967年)と同じ題名の曲を、バルバラBarbaraも歌っていて、1968年のアルバム「黒い太陽Le Soleil noir」に収録されています。
ブレルは1929年生まれで、バルバラが1930年生まれ。この二つの同名の曲は制作年も近く、ともに戦争が始まったことが歌詞に書かれていて、好一対だといっていいと思います。
バルバラは1943年7月から1945年の8月まで、家族といっしょにローヌ=アルプRhône-Alpes地方のサン=マルスランSaint-Marcellinに住んでいました。この想い出の町を訪ねる内容の歌詞です。
難しくて少々苦労しましたが、バルバラらしい深い感性に貫かれた曲で、その美しい言葉の流れについ引き寄せられてついて行くと、いつしか寒さに震える自分に気づくような、そんな気が…。
Mon enfance 子供の頃
Barbara バルバラ
J'ai eu tort, je suis revenue,
Dans cette ville, au loin, perdue,
Où j'avais passé mon enfance,
J'ai eu tort, j'ai voulu revoir,
Le coteau où glisse le soir,
Bleu et gris, ombre de silence,
私は間違いをした、私は戻って来たのだ、
子供の頃を過ごした、
遠くて辺鄙なこの町に、
私は間違いをした、私はまた見たいと望んだのだ、
夜になると、
蒼色と灰色の、静寂の影がさす丘を、
Et j'ai retrouvé, comme avant,
Longtemps après,
Le coteau, l'arbre se dressant,
Comme au passé,
J'ai marché, les tempes brûlantes,
Croyant étouffer sous mes pas,
Les voix du passé qui nous hantent,
Et reviennent sonner le glas,
そして私はふたたび見出した、以前のままに、
長い時を経て、
木がまっすぐに立っている、丘を、
昔のままに、
私は歩いた、こめかみを熱くさせて、
私たちにつきまとい、
弔鐘を鳴らしに戻って来る、過去からの声を、
私の足下で踏み鎮めているのだと信じつつ、

Et je me suis couchée sous l'arbre,
Et c'était les mêmes odeurs,
Et j'ai laissé couler mes pleurs,
Mes pleurs,
J'ai mis mon dos nu à l'écorce,
L'arbre m'a redonné des forces,
Tout comme au temps de mon enfance,
Et longtemps, j'ai fermé les yeux,
Je crois que j'ai prié un peu,
Je retrouvais mon innocence,
そして私は木の下に横たわった、
同じ匂いがした、
そして私は涙が流れるままにした、
涙が、
私は裸の背中を樹皮にもたせかけた、
木は私に活力を取り戻させた、
子供の頃とまるで同じように、
そして長いあいだ、私は目を閉じていた、
ちょっと祈っていたように思う、
私は無垢な心を取り戻した、
Avant que le soir ne se pose,
J'ai voulu voir,
La maison fleurie sous les roses,
J'ai voulu voir,
Le jardin où nos cris d'enfants,
Jaillissaient comme sources claires,
夜になるまえに、
私は見たかった、
バラに覆われた花いっぱいの家を、
私は見たかった、
私たちの子供の頃の叫び声が、
澄んだ泉のように湧き上がる庭を、

Jean-Claude et Régine et puis Jean, 注1
Tout redevenait comme hier,
Le parfum lourd des sauges rouges,
Les dahlias fauves dans l'allée,
Le puits, tout, j'ai retrouvé,
Helas
ジャン=クロード、レジーヌ、そしてジャン、
みんな昨日の姿に戻っていた、
赤セージのきつい香り、
小道の褐色のダリア、
井戸、すべてを、私はまた見出した、
ああ
La guerre nous avait jetés là,
D'autres furent moins heureux, je croix,
Au temps joli de leur enfance,
La guerre nous avait jetés là,
Nous vivions comme hors-la-loi,
戦争がその時私たちを放り出した、
他の人たちはそれほど幸せじゃなかった、と私は思う、
彼らの子供の頃の結構な時代には
戦争がその時私たちを放り出した、
私たちは無法者のように生きていた、
Et j'aimais cela, quand j'y pense,
Oh mes printemps, oh mes soleils,
Oh mes folles années perdues,
Oh mes quinze ans, oh mes merveilles,
Que j'ai mal d'être revenue,
Oh les noix fraîches de Septembre,
Et l'odeur des mûres écrasées,
C'est fou, tout, j'ai tout retrouvé,
Hélas,
そして私はそれが気に入っていた、考えてみると、
おお私の春、おお私の太陽、
おお失われた私の狂おしい歳月、
おお私の15歳の頃、おお私の素晴らしいものたち、
戻って来てなんと辛いことか、
おお9月の新鮮なクルミと、
そしてつぶれた黒イチゴの匂い、
それはすごいこと、すべて、私はすべてをまた見いだした、
ああ、

Ils ne faut jamais revenir,
Au temps caché des souvenirs,
Du temps béni de son enfance,
Car parmi tous les souvenirs,
Ceux de l'enfance sont les pires,
Ceux de l'enfance nous déchirent,
Vous, ma très chérie, ô ma mère, 注2
Où êtez-vous donc, aujourd'hui,
Vous dormez au chaud de la terre,
Et moi, je suis venue ici,
Pour y retrouver votre rire,
Vos colères et votre jeunesse,
Mais je suis seule avec ma détresse,
Hélas,
けっして立ち戻るべきじゃない、
子供の頃の祝福されるべき時代の、
想い出に覆い隠された時代に、
なぜならすべての想い出のなかで
子供の頃の想い出は最もひどいものだから、
子供の頃の想い出は私たちを引き裂く、
あなた、私のとても愛しい人、おお私のお母さん、
いったいどこにあなたはいるの、いま、
あなたは暖かい土に眠っている、
そして私は、ここにやって来た、
あなたの笑いを、
あなたの怒りを、あなたの若さをまた見出したいと、
でも私は悲しみを抱えてひとりぼっち、
ああ、

Pourquoi suis-je donc revenue,
Et seule, au détour de ses rues,
J'ai froid, j'ai peur, le soir se penche,
Pourquoi suis-je venue ici,
Où mon passé me crucifie,
Elle dort à jamais mon enfance...
いったいなぜ私は戻って来たのか、
そしてひとり、回り道して、
寒さを感じ、恐れを感じている、夜の更けゆくなか、
なぜ私はここに戻って来たのか、
私の過去が私を苛むこの地に、
私の子供時代は永遠に眠る…
[注]
1 すべてバルバラの兄弟の名前。
2 母親は、この曲の前年の67年に亡くなっている。
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ジャック・ブレルJacques Brelは、自分の少年時代を内容とした曲をいくつか歌っています。今回、そのうちの「子供の頃Mon enfance」を取り上げます。この曲は、父親のことを歌ったMon père disaitとともに1967年のJacques Brel 67というアルバムに収録されています。難解な部分があって少々苦労し、不完全ですが出すことにいたします。
ブレルはベルギーのブリュッセル生まれですが、この曲をはじめとして彼の曲の歌詞には「フラマン人flamand」という言葉がよく出てきます。「フランドルFlandreに住む人」という意味ですが、フランドルとは、旧フランドル伯領を中心とした、フラマン語(オランダ語の一種)が公用語の、オランダ、ベルギー、フランスにまたがった地域のことです。英語ではFlanders。子どもの頃に「フランダースの犬」という本をお読みになった方があろうかと思いますが、そのフランダースです。ベルギー国内ではフラマン語共同体と分類される部分で、北部のフランデレン地域と領域がほぼ同じで事実上同一の地域として扱われ、ブレルはフランデレン地域のフラマン人の血筋です。
ブレルはフランスを「魂の故郷」と呼び、生まれ育ったベルギーについては反駁の態度を示したと言われます。しかし、故郷の人々への愛情を表現する歌詞も多く、その田舎臭さを揶揄するのも逆説的な愛情表現と捉えることができます。そしてまた、フランデレン地域と南部のワロン地域の対立を憂慮し、フランデレン民族主義(フランデレン分離独立主義)に反対する態度を強く表明しています。
ライブ
Hé! m'manという曲を含めたリハーサル。インタヴューに答えている部分もあり、貴重な動画です。
Mon enfance 子供の頃
Jacques Brel ジャック・ブレル
Mon enfance passa
De grisailles en silences 注1
De fausses révérences
En manque de batailles
L'hiver j'étais au ventre
De la grande maison
Qui avait jeté l'ancre
Au nord parmi les joncs
L'été à moitié nu
Mais tout à fait modeste
Je devenais indien 注2
Pourtant déjà certain
Que mes oncles repus
M'avaient volé le Far West
僕の少年期は過ぎ去った
静かな単色の風景のなかを
争いのない
いつわりの礼儀正しさのうちに
冬、大きな家のふところで
僕は過ごした
家はイグサに覆われた北方の地に
錨を下ろしていた
夏、半身はだかで
だがとても控えめに
僕はインデアンになった
けれど飽食家の叔父たちが
僕から遥かなる西部を奪い去ることは
もう確かだった

Mon enfance passa
Les femmes aux cuisines
Où je rêvais de Chine
Vieillissaient en repas 注3
Les hommes au fromage 注4
S'enveloppaient de tabac 注5
Flamands taiseux et sages
Et ne me savaient pas
Moi qui toutes les nuits
Agenouillé pour rien
Arpégeais mon chagrin 注6
Au pied du trop grand lit
Je voulais prendre un train
Que je n'ai jamais pris
僕の少年期は過ぎ去った
僕がシナを夢見ていた
台所で女たちは
まかないに携わっていた
気楽な身分の男たちは
タバコをくゆらせていた
無口でおとなしいフラマン人たちは
僕のことを知らなかった
僕は毎晩わけもなくひざまずき
どでかいベッドの足元で
悲しい気持ちに浸っていた
僕は乗ったことのない
列車に乗りたかった

Mon enfance passa
De servante en servante 注7
Je m'étonnais déjà
Qu'elles ne fussent point plantes 注8
Je m'étonnais encore
De ces ronds de famille
Flânant de mort en mort
Et que le deuil habille
Je m'étonnais surtout
D'être de ce troupeau
Qui m'apprenait à pleurer
Que je connaissais trop
J'avais l'œil du berger
Mais le cœur de l'agneau
僕の少年期は過ぎ去った
女中から女中へと
僕は驚いていた
彼女たちが身を落ち着けないことに
僕はまた驚いていた
死から死へと渡り行き
喪服が似合う
この家族の輪舞にも
僕はなかんずく意外だった
この群に属するということが
この群は僕に泣くことを教え込み
僕は泣くことを知り過ぎていた
僕は羊飼いの耳を持っていた
だが羊の心を持っていた

Mon enfance éclata
Ce fut l´adolescence
Et le mur du silence
Un matin se brisa
Ce fut la première fleur
Et la première fille
La première gentille
Et la première peur
Je volais je le jure
Je jure que je volais
Mon cœur ouvrait les bras
Je n'étais plus barbare
僕の少年期ははじけ散った
それは青春だった
そして沈黙の壁が
ある朝崩壊した
それは初めての花
初めて会った少女
初めてのやさしい人
そして初めての恐れだった
僕は宙を飛んだ誓うよ
誓うよ僕は宙を飛んだと
僕の心は諸手を広げていた
僕はもう野蛮人ではなかった
Et la guerre arriva
そして戦争が始まった
Et nous voilà ce soir.
そして僕たちは今夜ここにこうしている。
[注]
1 grisaille「グリザイユ技法」という、灰色の濃淡で浮彫のような効果を出す絵画技法およびその作品。グリザイユを思わせる灰色の風景を言うこともある。
2 indien あとにle Far Westとあるので、「インド人」ではなく「アメリカン・ネイティヴ」を指す。
3 vieillir本来は「歳をとる」。「(ある職業などに)長年携わる」という意味もある。
4 fromage本来は「チーズ」。「気楽な地位」をも意味する。
5 s'envelopper de「…で身を包む、」tabac「タバコ」で、というのは、タバコの煙で、ということだろう。
6 arpéger「(楽器を)アルペッジョで弾く」が本義だが、メタファーとして感覚や感情を引き起こすことをも言う。
7 de…en「…から…へ」世話をしてくれる女中が次々と変わったということを言っている。
8 ne…point(=ne…pas)「少しも…ない」方言・文語的表現で用いられる。plante本来は「植物」だが、「伸びゆく人間」「根付いていくもの」の意味でも用いられる。
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クロード・フランソワClaude Françoisの曲は、「いつものようにComme d'habitude (My way)」「アレクサンドリー、アレクサンドラAlexandrie, Alexandra」をすでに取り上げていますが、今回は、「陽のあたる月曜日Le lundi au soleil」(1972年。作曲:パトリック・ジュヴェPatrick Juvet、作詞:フランク・トマFrank Thomas&ジャン=ミッシェル・リヴァJean-Michel Rivat)を。
空が青く太陽が昇っている時間には、オフィスで仕事をしていなくちゃならない。そんな月曜日に、照り輝く太陽のもとで、恋人と二人楽しく、あるいは何もせずに過ごせたら…。
Le lundi au soleil 陽のあたる月曜日
Claude François クロード・フランソワ
Regarde ta montre
Il est déjà huit heures
Embrassons-nous tendrement
Un taxi t´emporte
Tu t´en vas, mon cœur
Parmi ces milliers de gens
C´est une journée idéale
Pour marcher dans la forêt
On trouverait plus normal
D´aller se coucher
Seuls dans les genêts
腕時計を見て
もう8時だよ
優しくキスしよう
タクシーが君を連れていく
君は行ってしまう、愛しい人
このたくさんの人々のなかに
森のなかを歩くのに
理想的な一日なのに
エニシダのなかで二人っきりで
寝そべるのが
僕たちにはもっと当然なことに感じるだろうに
Le lundi au soleil
C´est une chose qu´on n´aura jamais
Chaque fois c´est pareil
C´est quand on est derrière les carreaux
Quand on travaille que le ciel est beau
Qu´il doit faire beau sur les routes
Le lundi au soleil
陽のあたる月曜日
けっして得られることのないものだ
いつだって同じだ
僕たちが窓ガラスの内側にいるとき
僕たちが働いているときだ、空が青いのは
道路の上は晴れているにちがいない
陽のあたる月曜日

Le lundi au soleil
On pourrait le passer à s´aimer
Le lundi au soleil
On serait mieux dans l´odeur des foins
On aimerait mieux cueillir le raisin
Ou simplement ne rien faire
Le lundi au soleil
陽のあたる月曜日
僕たちは愛し合って過ごせるだろうに
陽のあたる月曜日
干し草の匂いに包まれると気持ちがいいだろうに
ぶどうを摘むほうがもっといいだろう
あるいはただ何もしないほうが
陽のあたる月曜日
Toi, tu es à... l´autre bout
De cette ville
Là-bas, comme chaque jour
Les dernières heures
Sont les plus difficiles
J´ai besoin de ton amour
Et puis dans la foule au loin
Je te vois, tu me souris
Les néons des magasins
Sont tous allumés
C´est déjà la nuit
君、君は…
この街の向こうの端にいる
そこでは、毎日のように
一日の終りの時間が
もっともきつい
僕は君の愛が必要だ
そして遠くの人ごみのなかに
僕は君を見る、君は僕に微笑む
店のネオンが
すべて点いた
もう夜だ

Le lundi au soleil
C´est une chose qu´on n´aura jamais
Chaque fois c´est pareil
C´est quand on est derrière les carreaux
Quand on travaille que le ciel est beau
Qu´il doit faire beau sur les routes
Le lundi au soleil
陽のあたる月曜日
けっして得られることのないものだ
陽のあたる月曜日
いつだって同じだ
僕たちが窓ガラスの内側にいるとき
僕たちが働いているときだ、空が青いのは
道路の上は晴れているにちがいない
陽のあたる月曜日
Le lundi au soleil
On pourrait le passer à s´aimer
Le lundi au soleil
On serait mieux dans l´odeur des foins
On aimerait mieux cueillir le raisin
Ou simplement ne rien faire
Le lundi au soleil
陽のあたる月曜日
僕たちは愛し合って過ごせるだろうに
陽のあたる月曜日
干し草の匂いに包まれると気持ちがいいだろうに
ぶどうを摘むほうがもっといいだろう
あるいはただ何もしないほうが
陽のあたる月曜日

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ミッシェル・サルドゥーMichel Sardouは、珍しくも保守反動、右翼を自称するシャンソン歌手で、自身の政治的メッセージを込めた歌も数多く出しています。
この歌「恋の病La maladie d'amour」に関しては、右翼であろうが左翼であろうが無関係な普遍的テーマで、恋はすべての人がかかる病(やまい)だということを歌っています。ま、日本で、「お医者さまでも草津の湯でも…」と歌われてきたのと同じ内容。
1973年の同名のアルバムに収録されています。
サルドゥーとイヴ・デスカYves Desscaが作詞し、 作曲者は、「いつものようにComme d'habitude」を作曲したジャック・ルヴォーJacques Revauxとされていますが、実は、この曲の母体は、バロックのパッヘルベルのカノンKanon und Gigue in D-Durです。シャンソンには、詩が歌詞になることが多いだけではなく、曲さえも由緒ある出自のものがかなりあるようです。
パッヘルベルのカノンはこちら。
この曲よりもっとパッヘルベルのカノンの原型を留めているのが、アラン・バリエールAlain BarrièreのTout s'en va déjàです。(歌詞を訳してはみましたが、言葉面だけの内容に思え、ご紹介する気になれませんでした。)
La maladie d'amour 恋の病
Michel Sardou ミッシェル・サルドゥー
Elle court elle court
La maladie d'amour
Dans le cœur des enfants 注1
De sept à soixante dix-sept ans 注2
Elle chante elle chante
La rivière insolente
Qui unit dans son lit 注3
Les cheveux blonds les cheveux gris 注4
Elle fait chanter les hommes et s'agrandir le monde
Elle fait parfois souffrir tout le long d'une vie
Elle fait pleurer les femmes elle fait crier dans l'ombre
Mais le plus douloureux c'est quand on en guerit
巡るよ巡る
恋の病は
7歳から77歳までの
末裔たちの心のなかを
恋の病は 歌い讃える
驕れる川を
その川床で
金髪たち 銀髪たちが結ばれる
恋の病は 男たちに歌わせ 世界を拡げる
恋の病は ときには生涯ずっと苦しませる
恋の病は 女たちに涙を流させ 陰で泣き叫ばせる
だが もっとも苦しいのは恋の病が癒える時

Elle court elle court
La maladie d'amour
Dans le cœur des enfants
De sept à soixante dix-sept ans
Elle chante elle chante
La rivière insolente
Qui unit dans son lit
Les cheveux blonds les cheveux gris
Elle surprend l'écolière sur le banc d'une classe
Par le charme innocent d'un professeur d'anglais
Elle foudroie dans la rue cet inconnu qui passe
Et qui n'oubliera plus ce parfum qui volait
巡るよ巡る
恋の病は
7歳から77歳までの
末裔たちの心のなかを
恋の病は 歌い讃える
驕れる川を
その川床で
金髪たち 銀髪たちが結ばれる
恋の病は 教室の席に座る女生徒を突然襲う
英語の先生の純な魅力で
恋の病は 通りを歩く誰かさんを一撃し
漂うあの香りを忘れられなくさせる
Elle court elle court
La maladie d'amour
Dans le cœur des enfants
De sept a soixante dix-sept ans
Elle chante elle chante
La rivière insolente
Qui unit dans son lit
Les cheveux blonds les cheveux gris
巡るよ巡る
恋の病は
7歳から77歳までの
末裔たちの心のなかを
恋の病は 歌い讃える
驕れる川を
その川床で
金髪たち 銀髪たちが結ばれる

[注]
1 enfantは、子供という意味のみならず、複数形でアダムの末裔たる人類を示す場合がある。77歳までを含めると言っているわけだから、これに該当しよう。
2 「ドゥセタスワサントディセタン」という音の響きが重要なだけで、80歳でも仲間外れにされたわけではないので、ご心配なく。
3 litは川床とベッドをかけて言っている。
4 les cheveux blonds はブロンドの若い人々、les cheveux grisはグレーの髪の高年齢者。それらすべてがということで、それぞれ同士とも相互にとも言っていない。いろいろあろう。
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歌手であり女優でもあるヴァネッサ・パラディVanessa Paradisは、1972年にサン=モール=デ=フォッセで生まれました。俳優である叔父の紹介で早くも7歳でテレビ出演。1987年に「夢見るジョーJoe le taxi」で歌手デビューし、フランスで11週連続で№1となる大ヒットを記録しました。翌年、ファースト・アルバム「マリリン&ジョンM&J」を、1990年にはセルジュ・ゲンズブールのプロデュースで「ヴァリアシオンVariations sur le même t'aime」を、1993年には「ビー・マイ・ベイビーVanessa Paradis」をリリースし、すべて世界的なヒットとなりました。その後は2008年までにアルバムを5枚出し、2009年にBest ofと題した文字通りのベストアルバムを出しています。
女優としては、1989年の「白い婚礼Noce blanche」でデビューし、セザール賞新人女優賞とロミー・シュナイダー賞を受賞。1998年には「ハーフ・ア・チャンスUne chance sur deux」に出演し、アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドと共演。1998年には「橋の上の娘La Fille sur le pont」に出演しました。シャネルの広告塔としても知られています。
1998年、俳優のジョニー・デップが彼女に一目ぼれしたことから交際が始まり、翌年に長女を、2002年には長男を出産。その間、女優としての活動は停止していましたが、その後、2004年にはSFパニックサスペンス作品「エイリアンVSヴァネッサ・パラディAtomik Circus - Le retour de James Bataille」で復帰しました。一番新しいところでは、2013年に、アメリカ映画「ジゴロ・イン・ニューヨークFading Gigoloに出演しています。
ジョニー・デップとはその後別れ、今は歌手・作曲家・プロデューサーのバンジャマン・ビオレBenjamin Biolayといっしょにいるそうです。
Joe le taxi 夢見るジョー
Vanessa Paradis ヴァネッサ・パラディ
Joe le taxi, 注1
Y va pas partout, 注2
Y marche pas au soda. 注3
タクシー・ジョーは
どこでも行くわけじゃないし、
ソーダ水なんかじゃ動かないわ
Son saxo jaune 注4
Connaît toutes les rues par cœur, 注5
Tous les p’tits bars,
Tous les coins noirs
Et la Seine,
Et ses ponts qui brillent.
彼の黄色いサックスは
道をぜんぶ知りつくしていて、
小さなバーもぜんぶ、
あぶない場所もぜんぶ
セーヌ川と
いくつもの輝く橋も知っている

Dans sa caisse,
La musique à Joe,
C’est la rumba,
Le vieux rock au mambo.
Joe, le taxi,
C’est sa vie,
Le rhum au mambo,
Embouteillage. 注6
クルマのなかでは
ジョーの音楽がかかっていて、
それはルンバや、
マンボ調の古いロック。
タクシー・ジョー、
それが彼の生活、
マンボにうかれて飲むラム酒と、
ボトル詰め風交通渋滞が。
Il est comme ça,
Joe - Joe - Joe.
彼はこんなふうよ、
ジョー‐ジョー‐ジョー。
Dans sa caisse,
La musique à Joe résonne.
クルマのなかでは、
ジョーの音楽が鳴り響いてる。
C’est la rumba,
Le vieux rock au mambo bidon. 注7
それはルンバ、
マンボもどきの古いロック。

Vas-y Joe,
Vas-y Joe,
Vas-y fonce,
Dans la nuit, vers l’amazone, 注8
Joe le taxi,
Et Xavier Cugat, 注9
Joe le taxi,
Et Yma Sumac, 注10
Joe - Joe - Joe,
それ行けジョー、
それ行けジョー、
それ突き進め、
夜のなかを、アマゾンに向かって、
タクシー・ジョー、
グザビエ・キュガも、
タクシー・ジョー、
イマ・シュマックも、
ジョー‐ジョー‐ジョー、

Joe, le taxi,
C’est sa vie,
Le rhum au mambo,
Embouteillage,
Joe le taxi,
Et les Mariachis, 注11
Joe le taxi,
Et le cha-cha-chi, 注12
Joe le taxi,
Et le cha-cha-chi,
Vas-y Joe,
Vas-y fonce,
Dans la nuit, vers l’amazone.
タクシー・ジョー、
それが彼の生活、
マンボにうかれて飲むラム酒
ボトル詰め風交通渋滞、
タクシー・ジョー、
マリアッチ楽団も、
タクシー・ジョー、
チャチャチャも、
それ行けジョー、
それ突き進め、
夜のなかを、アマゾンに向かって。
[注]
1 Joe le taxi 題名は「夢見るジョー」という既存の邦題を用いたが、歌詞のなかでは、言葉通りに訳した。
2 Y va pas=Il ne va pas
3 Y marche pas(=Il ne marche pas)au soda.ソーダ水じゃだめで、酒でなきゃ動かない。
4 son saxo jauneは、クラクションを鳴らすということから、彼のクルマすなわちタクシーの車体のことを言っている。動画にも黄色いタクシーが出ている。あとで出てくるsa caisseもクルマの車体のこと。
5 connaître qn. par cœur「…を熟知している」
6 embouteillage前行にラム酒があるので、「瓶詰」と「交通渋滞」の両義をかけた表現。
7 bidonは名詞としては「ドラム缶、ガソリンタンク」の意味。名詞の後につくと、「偽の、まがい物の」の意味となる。ここでは本来のクルマに関連したニュアンスも含めながら、後者の意味で用いられている。
8 l’amazone「アマゾン川」なら本来は大文字で表記されるはず。「(ギリシャ神話の)アマゾネス」もAmazonesと大文字である。小文字だと、「婦人旗手」あるいは、鳥の名の「ボウシインコ」の意味となるが、隠語で、「車に乗って客引きする売春婦」も意味する。dans la nuitということで、こちらの意味と、また南米音楽との関連で「アマゾン川」と、両方をかけた表現のようだ。
9 Xavier Cugatは、スペイン生まれ、ルンバのヴァイオリニスト
10 Yma Sumacは、ペルーのマンボ歌手
11 les Mariachisは、メキシコ音楽の小編成の楽団
12 cha-cha-chi 本来はcha-cha-chaだが、taxiに語尾を合わせたようだ。曲にはチャチャチャという音声も入っている。
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今回はフローラン・パニーFlorent Pagnyの「愛せることSavoir aimer」(作詞:リオネル・フロランスLionel Florence、作曲:パスカル・オビスポPascal Obispo)。この曲は1997年の同名のアルバムに収録され、同年、シングル盤もリリースしました。150万枚の売り上げで、パニーはこの曲で翌98年にヴィクトワール賞の男性歌手賞を受賞しました。
歌いやすいメロディーですが、たいへん哲学的な内容の歌詞です。
パニーは1961年にブルゴーニュで生まれ、72年にオート・サヴォアに家族で移り住みました。13歳の時から地元で歌い始め、16歳で学校を中退してパリに出て、いろんなアルバイトをして生活したのちに、映画、テレビの俳優の仕事を始めました。歌手への転向は、1987年に出した最初のシングルN'importe quoiのヒットで始まり、90年に最初のアルバムを出します。95年に出したアルバム「わが家へようこそBienvenue chez moi」にはパヴァロッティpavarottiの「カルーソーCaruso」のカヴァー(動画は→こちら)を加え、話題になりました。次がSavoir aimerの大ヒット。以後のものとしては、04年のオペラのアリアを集めたアルバム「バリトンBariton」、09年の「パニー、ブレルを歌うPagny chante Brel」がユニークな内容です。昨年2010年にも、未発表のオリジナル曲で構成したアルバムTout et son contraireを出しました。
アルゼンチン女性と結婚し、1997年からはパタゴニアとパリを行き来して生活し、2009年からマイアミに一時住んだものの、またパタゴニアに戻っています。
彼の手話風の動作が間違っているという指摘があり、ちょっと問題になっているようです。
スーアド・マッシSouad Massiとのデュオ。
Savoir aimer 愛せること
Florent Pagny フローラン・パニー
Savoir sourire, 注1
À une inconnue qui passe,
N'en garder aucune trace,
Sinon celle du plaisir
Savoir aimer
Sans rien attendre en retour,
Ni égard, ni grand amour,
Pas même l'espoir d'être aimé,
微笑むことができること、
通りかかる見知らぬ人に、
その余韻を何も残さないこと、
喜びの余韻を除いて
愛することができること
見返りを何も期待しないで、
敬意も、大きな愛も、
また愛されたいという望みすらも、
{Refrain:}
Mais savoir donner,
Donner sans reprendre,
Ne rien faire qu'apprendre
Apprendre à aimer,
Aimer sans attendre,
Aimer à tout prendre, 注2
Apprendre à sourire,
Rien que pour le geste, 注3
Sans vouloir le reste
Et apprendre à Vivre 注4
Et s'en aller.
また与えることができること、
取り返すことなく与えることが、
学ぶことのほかに何もしないこと
愛することを学ぶことの、
期待せずに愛することを、
よく考えて愛することを、
微笑むことを学ぶこと、
ただふるまいとしてだけで、
ほかは望まずに
そして生きることを学ぶこと
また死に行くことを。

Savoir attendre,
Goûter à ce plein bonheur 注5
Qu'on vous donne comme par erreur, 注6
Tant on ne l'attendait plus. 注7
Se voir y croire 注8
Pour tromper la peur du vide 注9
Ancrée comme autant de rides 注10
Qui ternissent les miroirs
待つことができること、
この充分な幸福を味わうこと
まるで期待していなかったから、
間違って与えられたかに思える幸福を。
自分がそれを信じていることに気づくこと
鏡を曇らせる顔の皺と同様に根付いてしまった
虚無への恐怖を紛らすために
{Refrain}
Savoir souffrir
En silence, sans murmure,
Ni défense ni armure
Souffrir à vouloir mourir 注11
Et se relever
Comme on renaît de ses cendres,
Avec tant d'amour à revendre 注12
Qu'on tire un trait sur le passé.
苦しむことができること、
沈黙のうちに、つぶやきもせず、
防御もせず甲冑もつけず
死にたくなるほど苦しむこと
そして立ち直ること
灰のなかから再生するように、
線を引いて過去を消してしまえるほどに
余剰の愛に溢れて。

{Refrain}
Apprendre à rêver
À rêver pour deux,
Rien qu'en fermant les yeux,
Et savoir donner
Donner sans rature 注13
Ni demi-mesure
Apprendre à rester. 注14
Vouloir jusqu'au bout 注15
Rester malgré tout, 注16
Apprendre à aimer,
Et s'en aller,
Et s'en aller...
夢見ることを学ぶこと
ふたりのために夢見ることを、
ただ目を閉じながら、
そして与えることができること
削ったり加減したりせずに
与えること
とどまることを学ぶこと。
どんなことがあってもとことん最後まで
とどまることを望むこと、
愛することを学ぶこと、
そして死に行くこと、
そして死に行くこと…

[注]
1 savoir+inf. 「…できる、能力を備えている」。
2 à tout prendre「すべてを考え合わせると、結局のところ」
3 rien que「ただ…だけ(のために)」
4 Vivreは大文字で重要性を示している。次行のs'en allerはそれとの対比で「死ぬ」こととなる。
5 goûter à「…の味をみる」。plein名詞の前で「完全な、十分の」
6 par erreur「間違って」
7 Tant(原因を表す節を導く)「それほど…」
8 se voir「自分を…だと知る」。yはà ce plein bonheur。
9 le vide「空虚」は「死」を意味するようだ。
10 ancréeは前行のla peurを修飾。
11 à+inf.(程度・結果)「…するほどまでに」
12 tant…que「とても…なので…」
13 sans rature ni surcharges「削除も加筆もせずに」という表現がある。demi-mesure「その場逃れ、中途半端」と合わせ、いさぎよくそっくり全部与えることを表現している。
14 軽微なものから重要なものへ、というのはフランス語の表現すべてに共通。この歌詞も、sourire から始まり、最後になって出てくるresterは大きな意味を持つ。動じないこと、逃げないこと、あるがままでいること…、そして愛することを学び続ける。かくして生を全うした後にs'en allerさよならするのである。
15 jusqu'au bout「最後まで」
16 malgré tout「是が非でも」
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「美しい星でÀ la belle étoile」のページで、作曲家ジョゼフ・コズマJoseph Kosmaが作った、ジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩によるシャンソンをリストアップしましたが、今回はそのうちの一つ、「学校から出てきたらEn sortant de l'école」というとても楽しい曲です。
イヴ・モンタンYves Montandの歌が一番知られています。→dailymotionでご覧ください。
コラ・ヴォケールCora Vaucaire
サラSaraちゃんという(1992年の時点で)10歳の女の子のステージ。2015年の今はもう32、3歳になっているはず。
サンセヴェリノSanseverinoはたいへんユニークな歌手です。
レ・フレール・ジャックLes frères Jacquesも歌っています。
En sortant de l'école 学校から出てきたら
Yves Montand イヴ・モンタン
En sortant de l'école
nous avons rencontré
un grand chemin de fer 注1
qui nous a emmenés
tout autour de la terre 注2
dans un wagon doré.
Tout autour de la terre
nous avons rencontré
la mer qui se promenait
avec tous ses coquillages
ses îles parfumées
et puis ses beaux naufrages
et ses saumons fumés.
学校から出てきたら
僕らは出くわした
でっかい鉄道に
その鉄道は僕たちを
金いろの車両で
陸地を一巡りさせてくれた
陸地を一巡りしたら
ぼくらは出くわした
貝たちや
いい香りの島々や
それからうつくしい難破船たちや
燻製の鮭たちを引きつれて
散歩している海に。

Au-dessus de la mer
nous avons rencontré
la lune et les étoiles
sur un bateau à voiles
partant pour le Japon
et les trois mousquetaires des cinq doigts de la main
tournant la manivelle d'un petit sous-marin
plongeant au fond des mers
pour chercher des oursins.
その海の向こうで
僕らは出くわした
月と星たちに
日本に向かう帆かけ船の上で
そして三銃士が五本の指で
小さな潜水艦のクランクを回して
ウニを探しに
海の底に潜っているのに出くわした。
Revenant sur la terre
nous avons rencontré
sur la voie de chemin de fer
une maison qui fuyait
fuyait tout autour de la terre
fuyait tout autour de la mer
fuyait devant l'hiver
qui voulait l'attraper.
それから陸地に帰ってきたら
僕らは出くわした
線路上を
逃げて行く一軒の家に
陸地をぐるっとまわって逃げて行き
海をぐるっとまわって逃げて行き
冬の前を逃げて行き
冬は家をつかまえようとしていた。

Mais nous sur notre chemin de fer
on s'est mis à rouler 注3
rouler derrière l'hiver
et on l'a écrasé
et la maison s'est arrêtée
et le printemps nous a salués.
だけど車両に乗った僕たちは
すぐ走りだし
冬を追いかけて
轢きころした
すると家はとまり
春が僕らに挨拶した。
C'était lui le garde-barrière 注4
et il nous a bien remerciés
et toutes les fleurs de toute la terre
soudain se sont mises à pousser
pousser à tort et à travers 注5
sur la voie de chemin de fer
qui ne voulait plus avancer 注6
de peur de les abîmer.
春は踏切番だったので
僕らにお礼を言った
すると陸地全体の花がみんな
いきなり咲き始めた
線路の上で
やたらに咲き始めた
車両はもう進めない
轢いちゃうといけないから。

Alors on est revenu à pied
à pied tout autour de la terre
à pied tout autour de la mer
tout autour du soleil
de la lune et des étoiles
A pied à cheval en voiture et en bateau à voiles.
そこで僕らは歩いて帰った
歩いて陸地をぐるっとまわり
歩いて海をぐるっとまわり
太陽のまわりや
月や星のまわりも
歩いたり馬や馬車や帆かけ船で。
[注]
1 un chemin de ferは、鉄道システム全体を指すが、線路あるいは列車のみを指すこともある。訳語は前後の文脈で選ぶわけだが、ここではgrandがついていることと、この歌詞の不思議世界のなかでは、ちょうど銀河鉄道のように、ひとつの有機体としての鉄道というニュアンスでとらえられる。線路を示す場合は、la voie de chemin de ferとなっている。
2 la terreを「地球」とする説もあるが、la merと並べられているので、「陸地」ととらえたい。
3前行でnousの状況を説明し、そのnousをonに置き換えて主語としている。
4 le garde-barrière「踏切番」がlui「彼」だということだが、訳としては、「彼は踏切番だ」と言わざるを得ない。
5 à tort et à travers「出まかせに、むやみに」
6 la voie de chemin de ferがquiの先行詞なので、「線路が(花を轢いちゃうといけないから)それ以上進むことを望まない」となるが、「線路」を「車両」に替えて訳すほうが自然だろう。
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東京では、ひなげしがあちこちの道端でそろそろ咲き始めました。1961年に世田谷で初めて発見されたという外来種で、年々増えてきているようです。花色はソフトなオレンジ色。でも、ムルージMouloudjiの「小さなひなげしのようにComme un p'tit coquelicot」で歌われるひなげしは真紅。この曲は、珍しい対話形式の歌詞で、それをひとりで歌っています。彼のちょっとぼやけた感じの声がこの曲によく合っているようです。
先にご紹介した「サンフランシスコの6枚の枯葉Six feuilles mortes de San Francisco」のページに彼のことを少し解説していますのでご覧ください。
クロード・フランソワClaude Francoisがテレビ番組でムルージの横で歌っています。
Comme un p'tit coquelicot 小さなひなげしのように
Mouloudji ムルージ
Le myosotis, et puis la rose,
Ce sont des fleurs qui dis'nt quèqu' chose ! 注1
Mais pour aimer les coqu'licots
Et n'aimer qu'ça... faut être idiot ! 注2
忘れな草、それからバラだったら、
そりゃなにか意味を伝える花だよ!
だがひなげしが好きだとは
それだけが好きだとは…おかしなことに違いないよ!
T'as p't'êtr' raison ! seul'ment voilà : 注3
Quand j't'aurai dit, tu comprendras !
La premièr' fois que je l'ai vue,
Elle dormait, à moitié nue
Dans la lumière de l'été
Au beau milieu d'un champ de blé. 注4
Et sous le corsag' blanc,
Là où battait son cœur,
Le soleil, gentiment,
Faisait vivre une fleur :
Comme un p'tit coqu'licot, mon âme ! 注5
Comme un p'tit coqu'licot.
ごもっともだ!ただこういうことなんだ
話したら、君は分かってくれるだろう!
僕が初めて彼女に会ったとき、
彼女は眠っていたんだ、肌もあらわに
夏の陽射しのもとで
麦畑の真ん中で。
そして白いブラウスの内側、
そこで彼女の心臓が鼓動していた、
陽の光が、やさしく、
一輪の花をはぐくんでいたんだ:
小さなひなげしのような、まさにそうさ!
小さなひなげしのような。

C'est très curieux comm' tes yeux brillent
En te rapp'lant la jolie fille !
Ils brill'nt si fort qu'c'est un peu trop 注6
Pour expliquer... les coqu'licots !
君の目がそんなに輝くなんてとても妙だ
そのきれいな娘を思い出しながら!
君の目は少々過度なまでに強く輝いている
説明するためにしては…ひなげしのことを!
T'as p't'êtr' raison ! seul'ment voilà
Quand je l'ai prise dans mes bras,
Elle m'a donné son beau sourire,
Et puis après, sans rien nous dire,
Dans la lumière de l'été
On s'est aimé ! ... on s'est aimé !
Et j'ai tant appuyé
Mes lèvres sur son cœur,
Qu'à la plac' du baiser
Y avait comm' une fleur :
Comme un p'tit coqu'licot, mon âme !
Comme un p'tit coqu'licot.
そうかもしれない!ただこういうことなんだ
彼女を腕に抱いたとき、
彼女は僕に美しい微笑みを投げかけた、
そしてそのあと、たがいに何も言わず、
夏の陽射しのもとで
僕たちは愛し合った!…僕たちは愛し合った!
そして僕はあまりに強く押し付けたので
僕の唇を彼女の胸に、
キスしたところに
一輪の花のような跡がついた:
小さなひなげしのような、まさにそうさ!
小さなひなげしのような。

Ça n'est rien d'autr' qu'un'aventure 注7
Ta p'tit' histoire, et je te jure
Qu'ell' ne mérit' pas un sanglot
Ni cett' passion... des coqu'licots !
それは1回の情事に過ぎないじゃないか
君の話は、断言するが
それはすすり泣きや
ひなげしへの…愛着に値するものじゃないよ!
Attends la fin ! tu comprendras :
Un autr' l'aimait qu'ell' n'aimait pas !
Et le lend'main, quand j'l'ai revue,
Elle dormait, à moitié nue,
Dans la lumière de l'été
Au beau milieu du champ de blé.
Mais, sur le corsag' blanc,
Juste à la plac' du cœur,
Y avait trois goutt's de sang
Qui faisaient comm' un' fleur :
Comm' un p'tit coqu'licot, mon âme !
Un tout p'tit coqu'licot.
終わりまで聞いてくれ!そうすりゃ分かる:
彼女を愛する男がいて、彼女はそいつを愛していなかった!
そして翌日、僕が彼女をまた見たとき、
彼女は眠っていた、肌もあらわに
夏の陽射しのもとで
麦畑の真ん中で。
だが、白いブラウスの上の、
ちょうど心臓のところに、
血の跡が三つついていた
それは花みたいだった:
小さなひなげしのような、まさにそうさ!
とても小さなひなげし。
[注] 友人の言葉と本人の言葉を色分けした。
1 quèqu'=quelque会話の内容だということで、このようなくずした語が入る。dire quelque chose(主語は物)「何かを物語る、なんらかの意味を伝える」
2 il fautのilが省略されている。
3 p't'êtr'=peut-être
4 au beau milieu de「…の真ん中で」
5 comme un p'tit coqu'licotは前行のune fleurを修飾するので、commeは「…のような」の意味。邦題は「…のように」となっているが、前後のつながりのない形なので、これでもいいだろう。mon âmeは「本当に」といった感嘆詞的な表現。
6 si…que~「あまりに…なので~だ」 (この節の11~13行目のtant…queも同じ) 。un peu trop pour「…するには少々度が過ぎている」。tropの後にfortを補うと分かりやすい。
7 n'être rien d'autre que「…以外のなにものでもない」
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今回は、イヴ・デュテイユYves Duteilが1981年に作詞・作曲した「モンソー公園でAu parc Monceau」という優しい曲。
モンソー公園は、パリの3大公園の中では最も小さく親しみやすい公園で、凱旋門近く8区の高級住宅街の中にあります。1778年にシャルトル侯爵によって前ロマン主義的な庭園として造られ、劇作家ルイ・カロージが幻想的な庭園に仕上げました。荘厳なアーチ状の正面入口。ロトンド(円堂)と呼ばれるC.N.ルドゥー設計によるパリ入市税徴収小屋。かつてはここがパリの境で、パリに入る人々から税金をとっていたといわれます。「模擬海戦場」を表現したという人工的に廃墟風にしたコリント式円柱、ピラミッド、日本の燈籠など、様々なユニークなオブジェや、ショパン、ギー・ド・モーパッサン、アルフレッド・ミュッセ、アンブロワーズ・トマなどの彫像もあります。円柱の前には池があり、そこに注ぎ込む小川、滝、丘があり、花々が咲き乱れる美しい公園です。また、ここは、1797年に世界最初のパラシュートが着陸した歴史的な地点としてとしても知られているそうです。1783年にモンゴルフィエ兄弟が飛ばすことに成功していた熱気球から。
エンゾエンゾEnzoEnzoとのデュオの動画をYouTubeにアップしました。彼がひとりで歌っているのよりさらにステキです!
2010年に私が撮ってきた公園の写真を入れて歌詞をご紹介しましょう。
Au parc Monceau モンソー公園で
Yves Duteil & EnzoEnzo イヴ・デュテイユ&エンゾエンゾ
Au parc Monceau
Entre les grilles et les arceaux
Les enfants sages ont des cerceaux
Au fil de l’eau
Dissimulés dans les roseaux
On entend piailler les oiseaux
モンソー公園で
柵とアーチとの間で
おとなしい子供たちが輪回しの輪を持っている
小川の流れに沿って
葦の陰から
小鳥たちのさえずりが聞こえる
Le parc Monceau
Petit morceau de mon histoire
Le vieux monsieur des balançoires
Les cygnes noirs
La ville
Etait à l’autre bout du monde
Entre le lac et la Rotonde
モンソー公園
僕の物語の小さな断片
老紳士 ブランコ
黒鳥たち
街は
世界の向こう側だった
池と円堂の間

Au parc Monceau
Entre les grilles et les arceaux
Les cours d’histoire avaient bon dos 注2
Près du métro
Elle m’attendait sans dire un mot
J’ai pris sa main comme un cadeau
モンソー公園で
柵とアーチとの間で
歴史の流れはいい口実だった
メトロのそばで
彼女は何も言わず僕を待っていた
僕は彼女の手を贈り物を受け取るようにとった
Le parc Monceau
Premier baiser de mon histoire
Sur un des bancs d’une allée noire
Un peu d’espoir
La peur
La folle envie d’oublier l’heure
Ma main posée contre son cœur
モンソー公園
暗い小道のベンチでの
僕の人生で初めてのキス
わずかの希望と
恐れ
手を彼女の胸に置き
時を忘れていたいというどうしようもない欲求

Au parc Monceau
Entre les grilles et les arceaux
Le bonheur a fait son berceau
Pour nos seize ans
La pyramide et ses mille ans
Nous avaient cachés des passants
モンソー公園で
柵とアーチとの間に
しあわせはその揺りかごを作ってくれた
僕たちの16歳のために
ピラミッドとその千年の歳月は
僕たちを通行人たちから隠してくれた

Un parc en France
Petit morceau de mon enfance
Où j’ai trouvé l’adolescence
Un jour de chance
Un square
Bien à l’abri dans ma mémoire
Quand j’y retourne par hasard
フランスのある公園
僕の子ども時代の小さな断片
そこで僕は青春を見つけた
チャンスがおとずれた日
小公園
私の記憶のなかにちゃんと残っている
私がたまたまそこに戻る時には
Au parc Monceau
Entre les grilles et les arceaux
Entre les gardes et les landaus 注3
Au parc Monceau
Entre les fleurs et les moineaux
Les cours d’histoire avaient bon dos
モンソー公園で
柵とアーチとの間で
警備員たちと幌馬車との間で
モンソー公園で
花々とスズメたちとの間で
歴史の授業というのはいい口実だった
Au parc Monceau
モンソー公園で

[注] ソロの歌詞を示したが、デュオでは代名詞が若干変わっている。
1 sageは「賢明な、思慮深い」が本義だが、「おとなしい」「地味な」という意味にも用いられる。
2 cours d’histoire「歴史の授業」。avoir bon dos「(嘲笑などを)平然と受ける、罪(責任)をかぶる」「いい口実になる」。モンソー公園には歴史があり、由来を考えさせられる建造物やオブジェなども多く、歴史を勉強しようという口実で彼女を誘ったということか。
3 landau子ども連れの多い公園なので「乳母車」かと思ったが、公園内を巡る「幌馬車」のことを言うようだ。
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今回はジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensの「蝶々とりLa chasse aux papillons 」。この曲は1952年に彼が作詞・作曲しました。ちょっとコミカルでメルヘンティックな曲です。
ブラッサンスは、「仲間を先に(パリジャン気質)Les copains d'abord 」を先にご紹介しています。
La chasse aux papillons 蝶々とり
Georges Brassens ジョルジュ・ブラッサンス
Un bon petit diable à la fleur de l'âge 注1
La jambe légère et l'œil polisson
Et la bouche pleine de joyeux ramages 注2
Allait à la chasse aux papillons
青春まっ盛りの若者が
足どり軽くいたずらっぽく目を輝かせ
楽しい独り言をいっぱい言いながら
蝶々をとりに行った

Comme il atteignait l'orée du village
Filant sa quenouille, il vit Cendrillon
Il lui dit : "Bonjour, que Dieu te ménage 注3
J't'emmène à la chasse aux papillons"
村のはずれに着いて
糸を紡ぐシンデレラに会った
彼女に言った、「こんにちは、ごきげんよう
蝶々とりに連れてってあげるよ」
Cendrillon ravie de quitter sa cage
Met sa robe neuve et ses bottillons
Et bras d'ssus bras d'ssous vers les frais bocages
Ils vont à la chasse aux papillons
シンデレラは檻を抜け出せるのが嬉しくて
新しい服と編み上げ靴を身につけ
腕くみ合って涼しい森へ
蝶々とりにでかけた

Il ne savait pas que sous les ombrages
Se cachait l'amour et son aiguillon
Et qu'il transperçait les cœurs de leur âge
Les cœurs des chasseurs de papillons
彼は知らなかった 森陰には
恋とその棘が隠れていることを
そしてその棘が彼らの年ごろの心に
蝶々とりの心臓に突き刺さることを
Quand il se fit tendre, elle lui dit : "J'présage
Qu'c'est pas dans les plis de mon cotillon
Ni dans l'échancrure de mon corsage
Qu'on va à la chasse aux papillons"
若者が優しい態度になった時、娘は言った、
「言っとくけど あたしのスカートのひだや
ブラウスの前あきでは
蝶々なんてとれないわ」と
Sur sa bouche en feu qui criait : "Sois sage !"
Il posa sa bouche en guise de bâillon 注4
Et c'fut l'plus charmant des remue-ménage
Qu'on ait vu d'mémoir' de papillon
「だめよ!」と叫ぶ熱い唇に
猿ぐつわ代りに彼は唇を押し付けた
そしてそれは蝶々とりの思い出にある
大騒ぎのうちでいちばんすてきなものだった
Un volcan dans l'âme, ils r'vinrent au village
En se promettant d'aller des millions
Des milliards de fois, et mêm' davantage
Ensemble à la chasse aux papillons
熱い思いを抱いて、二人は村に戻った
何百万回も何十億回も、さらにもっと
いっしょに蝶々とりに行こうねと
約束しながら

Mais tant qu'ils s'aim'ront, tant que les nuages
Porteurs de chagrins, les épargneront
Il f'ra bon voler dans les frais bocages 注5
Ils f'ront pas la chasse aux papillons
けれど愛し合ってるかぎり、
悲しみを運んで来る雲が、彼らを大目に見るかぎり
涼しい森で宙に飛ぶことが楽しくって
彼らは蝶々とりはしないでしょう
[注]
1 Un bon petit diable「おちゃめでやんちゃな子」。à la fleur de qc.「…のいちばんよい時に」
2 ramage「(子供などの)意味の採りにくい言葉、おしゃべり」を(食べ物のように)「口いっぱいにほおばる」といった表現だが意訳した。
3 que Dieu te ménage「神様が君をいたわってくれますように」
4 en guise de「…の代わりに」
5 Il faire bon+inf.「…するのは楽しい」

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今回は、ジルベール・ベコーGilbert Bécaudの「小さな愛と友情Un peu d'amour ou d'amitié」です。1972年にルイ・アマードLouis Amadeの歌詞にベコーが曲を付けました。
原題のun peuは、量的に「少し」という意味ですが、一般に知られている邦題は「小さな」となっています。まぁいいことにしましょう。
サルヴァトーレアダモSalvatore Adamoも歌っています。
その後、ベコーは、英語(A Little Love and Understanding) 、ドイツ語(Ein bißchen Glück und Zärtlichkeit) 、スペイン語(Un poco de Amor y Amistad) 、で歌いました。
Un peu d'amour ou d'amitié 小さな愛と友情
Gilbert Bécau ジルベール・ベコー
Toi qui es seul et qui réclames
un peu d´amour et d´amitié
un peu de chaleur pour ton âme
Pour toi tout seul je veux chanter
ひとりぼっちの君、そして求めている君
愛と友情をほんのちょっと
暖かさをほんのちょっと魂に与えてよと
そんなまったくひとりぼっちの君のために僕は歌いたい
Le transistor sera complice
d´un secret entre toi et moi
et sur les ondes je me glisse
pour t´apporter un peu de joie.
トランジスターラジオが
君と僕の秘密に加担してくれるだろう
そして電波に乗って僕は滑っていく
君にほんのちょっとの喜びを運ぶために。
Toi dans ton bateau sur la mer
toi dans ton village lointain
t´as un problème insurmontable?
tiens, pose-le là, sur la table
Laisse passer, laisse passer
et le temps et le temps et le temps et le temps et le temps
te le règlera
okay, okay....bien
海に浮かぶ船にいる君
遠くの村にいる君
君は克服できない困難を抱えているのかい?
さあ、それを置くんだ、テーブルの上に
やり過ごそう、やり過ごそう
時が 時が 時が 時が 時が
君にそれを解決させてくれる
オーケー、オーケーだよ…ほんとに

Je ne veux pas que tu regrettes
les soleils que tu as ratés 注
Je te promets des soirs de fête
ah, mais ceux-là, faut pas les louper.
僕は逃してしまった栄光を
君が悔やむことを望まない
僕は君に歓楽の夕べを約束する
ああ、そうした喜びを逃さないで。
Et toi ta chambre c´est comme une île
où tu as dû souvent pleurer
autour de toi il y a la ville -
prends ton manteau, on va trinquer
そして君の部屋、それは島のようなもので
そこで君はときどき涙に暮れなきゃならなかった
君のまわりには町があるんだよ-
コートを着て、乾杯しに行くんだ
Trinquer aux marins sur la mer
aux gars du village lointain
à tous leurs problèmes insurmontables
tiens, pose-les là, sur la table
海の上の水夫たちに
遠い村の人々に
克服できない困難を抱えているすべての人々に乾杯しに
さあ、それを置くんだ、テーブルの上に

laisse crever, laisse crever
et le temps et le temps et le temps et le temps et le temps
nous les règlera
okay, okay... bien
くたばらせよう、くたばらせよう
時が 時が 時が 時が 時が
僕たちにそれを解決させてくれる
オーケー、オーケーだよ…ほんとに
[注] soleilは「太陽」にたとえられる権勢や幸福。
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今回はシャルル・アズナヴールCharles Aznavour の「セフィニC'est fini」。1965年のアルバム:Aznavour 65に収録され、シングル版も出ています。C'est finiは「それは終わった」という意味ですが原題の仮名書きを邦題としましょう。
C'est fini セフィニ
Charles Aznavour シャルル・アズナヴール
Je ne peux détacher
Mes yeux de ton visage
Et ne peux m'empêcher
De penser à demain
Qui s'annonce déjà
Comme un mauvais orage
Qui lavera nos rires
A l'eau de mon chagrin
君から目を
逸らすことができない
そして、嫌な雷雨のように
僕の悲しみの涙で
僕たちの笑顔を洗い去ってしまう
兆しをすでに見せている
そんな明日を考えるのを
止めることができない
J'ai le cœur déchiré
Et j'ai mal de comprendre
Que les mots que tu dis
Veulent tous dire adieu
Je regarde sans voir
J'écoute sans entendre
Le chagrin me surprend
Debout silencieux
僕の心は引き裂かれている
そして、僕には理解できない
君の言う言葉がすべて
さよならを告げようとしていることを
見ていても何も見えない
聞いていても何も聞こえない
悲しみが僕を襲い
黙して立ちつくす

Je rêve de passé
Quand le présent t'emporte
Qu'il ne me reste plus
Qu'à te serrer la main
Je voudrais la garder
Mais nos amours sont mortes
A deux pas de mon cœur
Tu es déjà si loin
僕は過去を追い求めるが
現在は君を連れ去る
君の手を握ることしか
僕には残っていないのか
君の手を引きとめておきたい
だが、僕たちの愛は死んだ
僕の胸のそばにいても
君はもうすでに遠い人だ
C'est fini fini fini fini fini fini fini 注1
セフィニ フィニ フィニ フィニ フィニ フィニ フィニ
Se peut-il qu'un bonheur
Qui tenait tant de place
Et donnait tant de joie
Disparaisse à jamais
Effaçant de ta vie
Même jusqu'à la trace
Du moindre souvenir
Que l'amour nous a fait
そんなことがあり得るのか
大きな場所を占め
たくさんの喜びをもたらしたしあわせが
永遠に消えてしまうなんてことが
愛が僕たちに与えた
わずかの思い出
の痕跡さえ
君の人生から消し去って
Je ne sais comment faire
Et je ne sais que dire
Je veux paraître fort
Une dernière fois
Les larmes au coin des yeux
Je me force à sourire
D'un sourire forcé 注2
Qui ne te trompe pas 注3
僕はどうしたらいいか分からず
言うことしかできない
強がってみせたい
最後にもう一度だけ
目の隅に涙を浮かべ
微笑むように努めるよ
見え見えの
わざとらしい微笑で
Trop lâche pour mourir
Bien qu'effrayé de vivre
Je compte sur l'oubli
Pour trouver le repos
Il faudra m'habituer
Dans les années à suivre
A des jours sans ta voix
A des nuits sans ta peau
死ぬには意気地がない
生きることが怖いくせに
僕には忘却がよすがだ
休息を見出すためには
これからの年月
君の声のない日々に
君の肌のない夜に
慣れなければならない

C'est fini fini fini fini fini fini fini...
セフィニ フィニ フィニ フィニ フィニ フィニ フィニ…
[注]
1 fini の繰り返しの響きが身上なので、題名と同様、読みを仮名書きした。
2 sourire forcé「作り笑い」
3 qui ne te trompe pas「君を欺かない」 →「君に見透かされる」→「見え見えの」。
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クロクロClocloことクロード・フランソワClaude Françoisは、「いつものようにComme d'habitude(My way)」をすでに取り上げました。今回は、1978年、彼の死の四日後に発売されたシングル盤の曲として知られる「アレクサンドリー、アレクサンドラAlexandrie, Alexandra」です。彼の生まれ故郷のエジプトを歌ったディスコ調の曲で、1977年に、ジャン=ピエール・ブールテールJean-Pierre Bourtayreが作曲、エチエンヌ・ロダ・ジルEtienne Roda Gilが作詞。
Alexandrie, Alexandra アレクサンドリー、アレクサンドラ
Claude François クロード・フランソワ
Rah! Ha! Rah! Ha!
Voile sur les filles, barques sur le Nil
Je suis dans ta vie, je suis dans tes bras
Alexandra, Alexandrie
Alexandrie où l'amour danse avec la nuit
J'ai plus d'apétit qu'un barracuda 注1
Je boirai tout le Nil si tu me reviens pas
Je boirai tout le Nil si tu me reviens pas
Alexandrie, Alexandra
Alexandrie où l'amour danse au fond des bras
Ce soir j'ai de la fièvre et toi, tu meurs de froid
ラ!ア!ラ!ア!
娘たちを覆うヴェール、ナイル川に浮かぶ小舟
僕は君の人生のなかにいる、僕は君の腕のなかにいる
アレクサンドラ、アレクサンドリー
恋が夜とともにダンスするアレクサンドリア
僕はバラクーダ魚以上に貪欲だ
もしも君が戻って来なきゃナイル川をぜんぶ飲み干すだろう
もしも君が戻って来なきゃナイル川をぜんぶ飲み干すだろう
アレクサンドリー、アレクサンドラ
恋が君の腕のなかでダンスするアレクサンドリア
今夜僕は熱くなり、そして君、君は寒くて死にそうだ

Les sirènes du port d’Alexandrie 注2
Chantent encore la même mélodie wowo
La lumière du phare d’Alexandrie 注3
Fait naufrager les papillons de ma jeunesse
アレクサンドリアの港の人魚たちは
同じメロディーをまだ歌っている ウォーウォー
アレクサンドリアの大灯台の灯りは
僕の青春の蝶を難破させる
Rah! Ha! Rah! Ha!
Voile sur les filles et barques sur le Nil
Je suis dans ta vie, je suis dans tes draps
Alexandra, Alexandrie
Alexandrie où tout commence et tout finit
J'ai plus d'apétit qu'un barracuda
Je te mangerai crue si tu me reviens pas
Je te mangerai crue si tu me reviens pas
Alexandrie, Alexandra
Alexandrie ce soir je danse dans tes draps
Je te mangerai crue si tu me retiens pas
ラ!ア!ラ!ア!
娘たちを覆うヴェール、ナイル川に浮かぶ小舟
僕は君の人生のなかに、君のシーツのなかにいる
アレクサンドラ、アレクサンドリー
すべてが始まりすべてが終わるところアレクサンドリア
僕はバラクーダ魚以上に貪欲だ
もしも君が戻って来なきゃ君をナマで食べてしまうだろう
もしも君が戻って来なきゃ君をナマで食べてしまうだろう
アレクサンドリー、アレクサンドラ
アレクサンドリア 今夜僕は君のシーツのなかでダンスする。
もしも君が僕を止めなきゃ君をナマで食べてしまうだろう

Les sirènes du port d'Alexandrie
Chantent encore la même mélodie wowo
La lumière du phare d'Alexandrie
Fait naufrager les papillons de ma jeunesse
アレクサンドリアの港の人魚たちは
同じメロディーをまだ歌っている ウォーウォー
アレクサンドリアの大灯台の灯りは
僕の青春の蝶を難破させる
Rah! Ha! Rah! Ha!
Voile sur les filles, barques sur le Nil
Alexandrie, Alexandra
Ce soir j'ai de la fièvre et toi, tu meurs de froid
Ce soir je danse, je danse, je danse dans tes bras
Allez danse! Oui danse!
Danse, danse, danse, danse!
Alexandrie, Alexandra
Ce soir je danse, je danse, je dans dans tes bras
ラ!ア!ラ!ア!
娘たちを覆うヴェール、ナイル川に浮かぶ小舟
アレクサンドリー、アレクサンドラ
今夜、僕は熱くなり君は寒くて死にそうだ
今夜僕はダンス、ダンス、君のシーツのなかでダンスする。
さあダンスだ!そうさダンス!
ダンス、ダンス、ダンス、ダンス!
アレクサンドリー、アレクサンドラ
今夜僕はダンス、ダンス、君のシーツのなかでダンスする

4人の女性のダンス・チーム、レ・クロデットLes Clodetteを従え、踊りながら歌うステージ
「注] 題名のAlexandrieはもちろんアレクサンドリアという地名だが、Alexandraは、アレクサンドロスに由来するアレクサンダー、アレクサンドルなどの男性名の女性形で、アレクサンドラという女性名。ここでは相手の女性の名前であろう。なお、歌詞中のAlexandrieは、地名としてはアレクサンドリアとし、Alexandraとつなげた部分はアレクサンドリーとした。
1 barracuda「オニカマス」熱帯・亜熱帯産の巨大な肉食性海魚。
2 sirèneは実際のところは船の汽笛だろうが、chanter「歌う」という形容を用いているので、メルヘンティックな喩えということで「人魚」とした。
3 アレクサンドリアの大灯台は、紀元前3世紀頃にアレクサンドリア湾岸のファロス島に建造された灯台。ファロス島は、アレクサンドリア港に埋め立てにより作られた半島の突端の小さな島で、世界の七不思議のひとつとされる。
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今回も四月にふさわしい曲を。シャルル・トレネCharles Trenetの「四月のパリEn avril à Paris」(1953年)です。いえ、「四月にパリで」としたほうが正確かもしれませんが…。
ジャクリーヌ・フランソワJacqueline François
En avril à Paris 四月のパリ
Charles Trenet シャルル・トレネ
Quand Paris s´éveille au mois d´avril
Quand le soleil revient d´exil
Quand l´air plus doux berce une jeune romance
Quand le printemps vraiment commence
4月にパリが目覚めるとき
太陽が逃亡から戻って来るとき
柔らかさを増した風が若いロマンスを揺するとき
春がまさに始まらんとするとき

{Refrain:}
Alors voici qu´aux portes de Paris
Accourt tout le pays
Par l´amour ébloui
Et du Nord jusqu´au Midi
La France chante et rit
En avril à Paris.
そのとき、ここパリの市門に
国中の人々が駆けつける
ときめく恋にそそられて
そして北から南まで
フランスは歌い笑う
4月にパリで。
À Saint-Michel la Seine 注1
Oublie ses peines anciennes
Au cœur du Luxembourg 注2
Les oiseaux chantent l´amour
Sur un banc Jeanne et Pierre sont de retour
Il fait si bon ma mie
De céder à l´envie
D´un baiser que l´on prend
Que l´on donne en même temps
Au milieu de la fête du printemps.
サン=ミッシェルでセーヌ川は
過去の苦しみを忘れる
ルクサンブール公園の真ん中で
小鳥たちは愛を歌う
ベンチにジャンヌとピエールは戻っている
ねえ愛しい君、とってもすてきなことさ
春の祭の真っ最中に
キスし
またキスされたいという
欲望に屈するのは。

{au Refrain}
[注] 題名では「四月」としたが、歌詞中は「4月」と表記した。
1 Saint-Michel セーヌ左岸の第5区にある地下鉄4号線の駅。
2 Luxembourgセーヌ左岸の第6区にあるJardin du Luxembourg「ルクサンブール公園」
Comment:4

ポルトガルのファドには暗い曲が多いのですが、アマリア・ロドリゲスAmália Rodriguesの歌で知られる「コインブラCoimbra」( 1947年、作詞・作曲:ラウル・フェラーニョRaul Ferrão)は初夏の日差しを思わせるとても明るい曲。コインブラとはポルトガル中央部に位置する都市の名。この曲をイヴェット・ジローYvette Giraudが「ポルトガルの四月Avril au Portugal」というタイトルでフランス語に翻案し歌っています。今日から4月なのでこの曲を。夏の終わりに4月の恋を振り返っているという歌詞内容ですが…。
アマリア・ロドリゲス「コインブラ」
イヴェット・ジロー「ポルトガルの四月」
Avril au Portugal ポルトガルの四月
Yvette Giraud イヴェット・ジロー
Je vais vous raconter
Ce qui m’est arrivé
Sous un ciel où l’été 注1
S’attarde
Histoire d’amoureux
Voyage aventureux
Que pour les jours heureux
Je garde
Un grand navire à quai,
La foule débarquait
Deux yeux sous des bouquets
Regardent
L’amour devait rôder
Puisqu’on s’est regardés
Et que mon cœur s’est mis à chanter... 注2
まだ夏が居すわる
空のもとで
お話ししましょう
わたしに起こったことを
しあわせな日々として
心に残している
恋の物語
波瀾万丈の船旅を
大きな船が波止場に停泊し、
人々が下船した
花束の陰から二つの目が
見つめている
恋は待ち受けていたのよ
だってわたしたちは見つめ合い
わたしの心は歌いだした…

Avril au Portugal,
A deux c’est idéal,
Là-bas si l’on est fou,
Le ciel l’est plus que vous, 注3
Pour un sentimental
L’amour existe t-il
Ailleurs qu’au Portugal
En Avril.
ポルトガルの4月は
二人にとっておあつらえむき
そこでは 人々が有頂天なら
空はみんなよりもっと有頂天だもの
おセンチな恋など
4月のポルトガルとは
別のところに
あるものよ
Le soir sous mes yeux clos 注4
Glissant au fil de l’eau
Je vois par le hublot
La rive
Des voiles de couleur
De lourds parfums de fleurs
Des chants de bateleurs
M’arrivent...
Tout ça berce mon cœur
D’un rêve de bonheur
Dont les regrets ailleurs 注5
Me suivent,
L’amour devait savoir
En nous suivant le soir
Que j’aimerais un jour le revoir...
目を閉じている間に日が暮れ
水の流れに乗っていくと
窓越しに
岸辺が見える
カラフルな帆
花々のつよい香り
芸人たちの歌が
わたしのもとにやって来る…
それらはしあわせな夢で
わたしの心を優しく揺すぶる
そしてそれを惜しむ気持ちもまた
わたしにつきまとう、
その夜わたしたちを見守ってくれた愛には
分かったはず
わたしがまたいつか彼に会いたいってことが

Avril au Portugal,
A deux c’est idéal,
Là-bas si l’on est fou,
Le ciel l’est plus que vous,
Mais sans penser à mal 注6
Son cœur attendra t-il
Que j’aille au Portugal,
En avril.
ポルトガルの4月は
二人にとっておあつらえむき
そこでは 人々が有頂天なら
空はみんなよりもっと有頂天だもの
でも悲観することはない
彼は待っているわ
わたしがポルトガルに行くのを
4月にね
[注] 題名では「四月」と表記したが、歌詞中は「4月」とした。
1 恋を経験したのは4月なので、夏の終り頃を示すこの表現は、その話をしている今のこと。
このあとの歌詞は、話の内容という形をとっているが、過去のことを語るなかに現在形が混じる。臨場感を示すための物語体の現在である。
2 se mettre à inf.「…し始める」
3 l’estのleは、前行のfouのこと。
4 Le soir sous mes yeux closは「目を閉じていたら、いつしか日が暮れていた」というニュアンス。
5 regretは「後悔」というより「惜しむ気持ち」だろう。ailleursは副詞で、通常はd’ailleursの形で用いられ、単独では「よそで」の意味だが、不明瞭なニュアンスで訳さざるを得なかった。
6 à mal「悪いほうへ、悪く」

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