
ジュリエット・グレコJuliette Gréco の歌う「ロマンス(恋歌)Romance」は、1946年(?)にアンリ・バシスHenri Bassisが(Henri Bossisの名で)作詞し、ジョゼフ・コズマJoseph Kosmaが作曲しました。最初はディスクのB面に収録されて人目を引きませんでしたが、1951年に、Le Gantelet vert (The Green Glove)という米仏共同制作のRudolph Maté監督の映画でグレコ自身の歌が用いられて(編集段階でカットされたという情報もあるが)注目され、52年のディスク大賞を獲得し、同年リリースされたアルバム:Juliette Gréco chante ses derniers succèsに収録されました。
この曲が作られた年に生まれた人はもう60代後半。これまで何度か甘いロマンスを経験したことでしょうね。でも、このタイトルのRomanceは、そんなロマンスではなくて、「恋の歌」という意味。シャルル・トレネCharles Trenetの「優しきフランスDouce France」にも、「歌詞のない恋歌Des romances sans paroles」を小学生の頃に声を張り上げて歌ったというフレーズがあります。ということで、一般に知られている「ロマンス」という邦題を、原題の読みということで採用しますが、「恋歌」を副題といたします。
Romance ロマンス(恋歌)
Juliette Gréco ジュリエット・グレコ
{Refrain:}
Ces mots chargés de romance
Comme un matin qui sourit
C´est un amour qui commence
Dans le printemps de Paris
微笑む朝のように
恋歌にあふれたこれらの言葉
恋が始まるわ
パリの春に

Paris, qui n´est à personne,
Est à toi si tu le veux
Mon ami, je te le donne
Ce cadeau, c´est pour nous deux
パリ、それは誰のものでもない、
あなたのためのもの お望みならね
愛しいひと、あなたに差し上げるわ
この贈り物を、これは私たちふたりのためのものよ
{au Refrain}
Veux-tu les rues de ma ville
Trainant autour des cafés
Où les jours passent tranquilles
Et les filles décoiffées?
わたしの街の通りはいかが?
カフェーの辺りをぶらぶらするの
そこでは日々が静かに過ぎてゆくわ
髪を解いた娘たちもいかが?

{au Refrain}
Les amoureux se promènent
Ils se regardent, ravis
Mon ami, c´est toi que j´aime
Le bonheur, c´est pour la vie
恋人たちが散歩している
彼らはうっとりと見つめ合う
愛しいひと、わたしが愛しているのはあなたよ
しあわせは一生つづくわ
{au Refrain}
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第2回の《東京シャンソンコンクール》の本選出場者が決まりました。錚々たる面々です。素晴らしいコンクールになるでしょう。
東京日仏文化サロンのホームページは⇒こちら
5月6日の本選と、5月21日の第1回・第2回入賞者コンサートのチケットを発売しております。購入ご希望の方は、上記画像に記されたアドレスまたは電話(FAX)番号にご連絡ください。
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今回はセルジュ・ラマの「女歌手は20才La chanteuse a vingt ans」です。「僕は病んでいる(灰色の途)Je suis malade 」と同様、アリス・ドナAlice Donaが作った曲で同じアルバム:Je suis maladeに収録されています。
「女歌手は20才」というタイトルですが、女歌手は本当は20才ではない…、いえ、ずっと20才なんです。
作者のアリス・ドナAlice Dona自身の歌がすばらしいです。
シルヴィー・ヴァルタンSylvie Vartanもレパートリーにしています。
La chanteuse a vingt ans 女歌手は20才
Serge Lama / Alice Dona セルジュ・ラマ / アリス・ドナ
Elle arrive à huit heures, personne n'est encore là
Elle ferme à double tour sa loge, et la voilà 注1
Qui d'un air attendri, sourit à son miroir
Ça fait bientôt trente ans qu'elle fait ça tous les soirs
彼女は8時に着く、誰もまだそこにはいない
彼女は自分の楽屋のドアをきちんと閉める、彼女は
感じいっている様子で、鏡に微笑みかける
毎晩そうするようになってまもなく30年になる
Puis elle prend son visage à deux mains
Le caresse comme si ça n'était plus le sien
Puis elle prend les fards et les crayons
Se dessine un sourire avec application
Les faux cils, la longue robe noire
Les souliers de satin, la perruque d'argent
Maintenant, la chanteuse a vingt ans
そして彼女は両手を顔に置き
まるで自分のものではないかのように撫でさする
そして彼女は化粧用の粉やスティックをとり
丹念に微笑をほどこす
付けまつげ、黒いロングドレス
サテンの靴、銀のヘアピース
今、女歌手は20才だ

Puis elle rentre en écartant les bras 注2
Comme si elle rentrait pour la première fois
Puis elle chante avec cette voix-là
Comme disent les journaux qu'on ne remplace pas
Elle sourit avec ce sourire-là
Qui n'appartient qu'à elle et que nous aimons tant
Maintenant, la chanteuse a vingt ans
そして両腕を広げながら彼女は出てくる
まるで初めて舞台に上るかのように
そして彼女は歌う
誰も代わりができないと新聞雑誌に書かれるように
彼女だけの、僕たちが大好きなあの微笑みで
微笑む
今、女歌手は20才だ
Puis elle sort, épuisée, son maquillage fond
Elle répond d'un air triste à deux ou trois questions
Elle s'habille en civil, elle rentre dans l'auto 注3
Puis s'endort sur l'épaule de son impresario
そして彼女は退場する、疲れて、化粧は崩れて
彼女は悲しげな様子で2、3の質問に答える
彼女は普段着に着替え、車に乗り込む
そしてマネージャーの肩にもたれて眠る
Elle revoit l'Alcazar et Deauville 注4
A l'époque où les hommes étaient encore dociles
Elle revoit même ce petit chanteur
Sacrifiant son cachet pour lui offrir des fleurs
Elle revoit ces amoureux transis 注5
Qui jetaient dans son lit des colliers de diamant
Maintenant, la chanteuse a vingt ans
彼女は男たちがまだ手なずけ易かった時代の
アルカザールとドーヴィルを思い出す
彼女は思い出す この小柄な歌手が
彼女に花を捧げるために自分のギャラを費やしたのを
彼女は思い出す これらの臆病な恋人たちが
彼女のベッドにダイアの首飾りを投げ込んだのを
今、女歌手は20才だ
Puis elle rentre en écartant les bras
Comme si elle rentrait pour la première fois
Puis elle chante avec cette voix-là
Comme disent les journaux qu'on ne remplace pas
Elle sourit avec ce sourire-là
Qui n'appartient qu'à elle et que nous aimons tant
Maintenant, la chanteuse a vingt ans
そして両腕を広げながら彼女は出てくる
まるで初めて舞台に上るかのように
そして彼女は歌う
誰も代わりができないと新聞雑誌に書かれるように
彼女だけの、僕たちが大好きなあの微笑みで
微笑む
今、女歌手は20才だ

Puis elle rentre en écartant les bras
Comme si elle rentrait pour la dernière fois
Elle se plaint avec cette voix-là 注6
Comme diront les journaux qu'on ne remplacera pas
Puis elle pleure avec ce sourire-là
Qui n'appartient qu'à elle et que nous aimions tant
Maintenant, la chanteuse a vingt ans
そして両腕を広げながら彼女は出てくる
まるで初めて舞台に上るかのように
そして彼女はうめくように歌う
誰も代わりができないと新聞雑誌に書かれるように
彼女だけの、僕たちが大好きなあの微笑みを浮かべつつ
泣く
今、女歌手は20才だ
[注]
1 fermer (la porte)à double tour「厳重に戸締りする、鍵を2度回してドアを締める」
2 rentreは「戻る」の意味だが、会話等では、entreの誤用で、「入る」の意味で用いられる。ここでは「場に入る」すなわち「ステージに出る」ことを言っている。
3 s'habiller en civil「(制服ではなく)平服を着る」。ここでは「(舞台衣装ではなく)普段着を着る」。
4 Alcazar「アルカザール」中世スペインのムーア人の城塞。Deauville「ドーヴィル」は、ノルマンディー海岸の町で、港、ヴィラ、カジノ、ホテルを擁するリゾート地。
5 amoureux transi「臆病な恋人」
6 se plaindre「うめく」 が本義だが、詩語で「すすり泣くような声(音)を出す」意味にも用いられるので言葉を補って訳した。
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今回は「君を待っているJe voulais te dire que je t'attends」です。1976年にミッシェル・ジョナスMichel Jonaszが作り歌いました。その後、いろんな歌手やグループのカヴァーが続々と出てそれぞれヒットしている注目の曲です。
Je t'attends(ジュタタン)という言葉の響きが活かされているという点では、シャルル・アズナヴールCharles Aznavourおよびジルベール・ベコーGilbert Becaudの「君を待つJe t'attends」と同様です。
ミッシェル・ジョナス
米国のコーラス・グループ、マンハッタン・トランスファーThe Manhattan Transferのカヴァー(1978年)。
ベルギーのジョナタン・セラダJonatan Cerradaの歌もヒットしました(2003年)。
イザベル・ブーレイIsabelle Boulay、モラーヌMaurane、パトリック・ブリュエルPatrick Bruelの3人が2001年に歌っています。→こちら
Je voulais te dire que je t'attends 君を待っている
Michel Jonasz ミッシェル・ジョナス
Je mettrai mon cœur dans du papier d´argent,
Mon numéro d´appel aux abonnés absents. 注1
Mes chansons d´amour resteront là dans mon piano.
J´aurai jeté la clé du piano dans l´eau.
J´irai voir les rois de la brocante.
"Vendez mon cœur trois francs cinquante."
Tu savais si bien l´écouter 注2
Que ma vie s´est arrêtée
Quand tu m´a quitté.
僕は自分の心を銀紙に包みこみ
自分の電話番号を「現在使用されていない電話番号」とする。
僕の愛の歌はピアノのなかに残るだろう。
僕はピアノの鍵を水に投げ捨ててしまっているから。
僕はなうての古物商たちに会いに行く。
「僕の心を3フラン50サンチームで売ってください。」
君はよく分かってくれるよね
君が僕のもとを去ったとき
僕の人生が止まってしまったって。

Je voulais te dire que je t´attends
Et tant pis si je perds mon temps. 注3
Je t´attends, je t´attends tout le temps
Sans me décourager pourtant.
Comme quelqu´un qui n´a plus personne
S´endort près de son téléphone,
Et sourit quand on le réveille
Mais ce n´était que le soleil.
君を待っていると君に言いたい
そしてもしも徒労に終わればがっかりだ。
君を待っている、君を待っている、ずっと
だけどめげることなく。
ちょうど相手のいないやつが
電話のそばで眠り、
そして誰かがそいつを起こすと 微笑むように
が、それは太陽に過ぎない。
L´autre jour, j´ai vu quelqu´un qui te ressemble
Et la rue était comme une photo qui tremble.
Si c´est toi qui passe le jour où je me promène,
Si c´est vraiment toi, je vois déjà la scène.
Moi je te regarde
Et tu me regardes.
ある日、君に似た人を見かけた
そして街は震える写真のようだった。
もしも僕が散歩している日に通りかかるのが君なら、
もしもそれがほんとうに君なら、僕はその場面をすでに見ている。
僕は君を見
そして君は僕を見るんだ。
Je voulais te dire que je t´attends
Et tant pis si je perds mon temps.
Je t´attends, je t´attends tout le temps,
Ce soir, demain, n´importe quand.
Comme quelqu´un qui n´a plus personne
S´endort près de son téléphone
Et qui te cherche à son réveil,
Tout seul au soleil, j´attends.
君を待っていると君に言いたい
そしてもしも徒労に終わればがっかりだ。
君を待っている、君を待っている、ずっと
今夜、明日、いつだって。
ちょうど相手のいないやつが
電話のそばで眠り、
目覚めるとき君を探すように、
日差しの中でたった一人、君を待っている。

Je voulais te dire que je t´attends.
Si tu savais comme je t´attends!
Je t´attends, je t´attends tout l´temps.
Quand seras-tu là? Je t´attends.
Si tu savais comme je t´attends!
Je t´attends, je t´attends tout l´temps.
Je voulais te dire que je t´attends.
君を待っていると君に言いたい
そしてもしも徒労に終わればがっかりだ。
君を待っている、君を待っている、ずっと
いつ君は来るの?僕は君を待ってる。
どんなに僕が君を待ってるのか君が知ってくれたら!
君を待っている、君を待っている、ずっと
君を待っていると君に言いたい。
[注]
1 abonné「(ガス、電気、電話などの)加入者」
2 半過去形は緩和表現。
3 perdre son temps「時間を費やす、無駄にする」
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バルバラBarbaraの歌うÀ peineという曲がとても好きで、取り上げたいと以前から思っていました。1970年、作詞はバルバラ自身、作曲はロラン・ロマネッリRoland Romanelli。À peineとは「ほとんど…ない」とか「やっと…したばかり、…するやいなや」などと、文脈のなかで働く言葉で、歌詞のなかではさまざまな意味合いで用いられています。ですから、単独では日本語に置き換えにくい言葉。(前回の)「朝の食事」ならぬ「朝の情事」という邦題もあるようですが、どうもいただけません。私は「かろうじて」と付けてみたこともありますが、歌詞内容に合わないので、やめて原題の仮名書きで「ア・ペーヌ」といたします。
YouTubeには1974年のコンサート時の動画があり、ロッキングチェアに座って歌っている貴重な映像ですが、歌唱の質としては私の持っているCDに比して残念な気がしてならず、自分であらたに動画を作成しました。
À peine ア・ペーヌ
Barbara バルバラ
À peine le jour s’est levé, 注1
À peine la nuit va s’achever
Que déjà, ta main s’est glissée,
Légère, légère. 注2
À peine sorti du sommeil,
À peine, à peine tu t’éveilles
Que déjà, tu cherches ma main
Que déjà, tu frôles mes reins.
陽が昇り始めるやいなや、
夜が明け染めるやいなや
もう、あなたの手が滑り込んできた、
すばやく、すばやく。
眠りから醒めるやいなや、
あなたが目覚めるやいなや、すぐに
もう、あなたはわたしの手を探す
もう、あなたはわたしの腰に触れる。
L’aube blafarde, par la fenêtre,
L’aube blafarde, va disparaitre.
C’est beau : regarde par la fenêtre.
C’est beau : regarde le jour paraitre.
青白い曙光、窓からの、
青白い曙光が、消えようとしている。
美しいわ、窓から見て。
美しいわよ、陽が昇るのを見て。

À chaque jour recommencé,
À se vouloir, à se gagner, 注3
À se perdre, à se déchirer,
À se battre, à se crucifier.
Passent les vents et les marées.
Mille fois perdus, déchirés,
Mille fois perdus, retrouvés,
Nous restons là, émerveillés.
また始まる日ごとに、
たがいに、求め、とらえ、
疎んじ、苦しめ、
争い、痛めつけ合う。
風がそして潮の満ち引きが通り過ぎる。
何度となく関係が壊れ、引き裂かれ、
何度となく疎遠になり、和解したのち、
わたしたちはここにとどまっている、魅せられて。
Ton indocile, ta difficile
Et puis docile, ta si fragile,
Je suis la vague où tu te noies,
Et je m'enroule au creux de toi.
あなたの素直じゃない女、難しい女、
そしてまた従順な、とても弱い女、
わたしは波であなたはその波に溺れる、
そしてわたしはあなたに抱かれて丸くなっている。
À peine le temps s’est posé,
Printemps, hiver, automne, été.
Tu t’en souviens? C’était hier,
Printemps, automne, été, hiver.
À peine tu m’avais entrevue,
Déjà, tu m’avais reconnue.
À peine tu m’avais souri
Que déjà, je t’avais choisi.
ある季節に入るやいなやその季節は過ぎて巡っていく、
春、冬、秋、夏と。
あなたは覚えている?それはついこの前のことよ、
春、秋、夏、冬。
わたしをちらっと見るやいなや、
もう、あなたはわたしだと分かったわね。
あなたがわたしに微笑むやいなや
もう、わたしはあなたを選んだ。
Mon indocile, mon difficile
Et puis docile, mon si fragile,
Tu es la vague où je me noie,
Tu es ma force, tu es ma loi.
素直じゃない人、厄介な人、
そしてまた素直な、とても弱い人、
あなたは波でわたしはその波に溺れる、
あなたは抗しがたい力、あなたはわたしの掟。

Dans la chambre, s’est glissée l’ombre.
Je t’aperçois dans la pénombre.
Tu me regardes, tu me guettes.
Tu n’écoutais pas, je m’arrête. 注4
Au loin, une porte qui claque.
Il pleut, j’aime le bruit des flaques.
Ailleurs, le monde vit, ailleurs
Et nous, nous vivons là, mon cœur 注5
Et je m’enroule au creux de toi
Et tu t’enroules au creux de moi.
部屋に、人影が忍び込んできた
わたしはあなたを薄明りのなかに認める。
あなたはわたしを見つめ、わたしの様子をうかがう。
あなたは聞こうとしなかったから、わたしは口をつぐむ。
遠くで、扉がバタンと音を立てる。
外は雨、わたしは水たまりの音が好き。
余所では、人々が生活している、余所では
そしてわたしたちは、わたしたちはここで生きている、愛する人
そしてわたしはあなたに抱かれて丸くなっている
そしてあなたもわたしに抱かれて丸くなっている。
Le temps passe vite à s’aimer.
À peine l’avons-nous vu passer
Que déjà, la nuit s’est glissée,
Légère, légère.
Ta bouche à mon cou, tu me mords.
Il fait nuit noire au dehors.
Ta bouche à mon cou, je m’endors.
Dans le sommeil, je t’aime encore.
愛し合っていると時は速く過ぎて行く
わたしたちが時の過ぎるのを知るやいなや
もう、夜が滑り込んでくる、
すばやく、すばやく。
わたしの首にあなたの唇が触れ、あなたはわたしを噛む。
外は闇夜。
わたしの首にあなたの唇が触れ、わたしは眠りにつく。
眠りつつ、わたしはまたあなたを愛する。
À peine je suis endormie
Que déjà, tu t’endors aussi.
Ton corps, à mon corps, s’est fait lourd.
Bonsoir, bonne nuit, mon amour...
わたしが寝入るやいなや、
もう、あなたもまた眠りにつく。
あなたの身体は、わたしの身体に、重くもたれかかった。
おやすみなさい、愛する人…

[注]
1 à peine…que「…するやいなや(…した)」。le jour s’est levéとla nuit va s’acheverは同じ意味のことを言い換えている。
2 légèreはmainを修飾する場合は、「敏捷な」「巧妙な」というニュアンスがある。ここでは、文脈から前者を選んだ。
3 代名動詞が続く。一応すべて相互的な意味と解釈して、「互いに」と「合う」ではさんでまとめた。perdus以下の形容詞の複数形もその延長で解釈される。
4 文脈から判断して意訳した。
5 mon cœur「心」「心臓」ではなく、「愛するひと」という呼びかけ。
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ジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩を歌詞にした歌はもう何曲かご紹介しました。「美しい星でÀ la belle étoile」のページに、作曲家ジョゼフ・コズマJoseph Kosmaが曲を付けたプレヴェールの詩をリストアップしていますので参照ください。
今回は、そのうちの1曲、「朝の食事Déjeuner du matin」を取り上げましょう。「バルバラBarbara」と同様、1946年の詩集「ことばParoles」に収められた私の大好きな詩です。1962年にマレーネ・ディートリッヒMarlene Dietrichが歌いました。ディートリッヒはドイツの女優で、「リリー・マルレーンLili Marleen」が最も知られていますが、「バラ色の人生La vie en rose」などフランス語のシャンソンも歌います。
ある神父がこの詩を、「私の夫Mon mari」と題名を変えて教訓話にしてしまったことにプレヴェールがたいへん怒って抗議文を送ったそうです。この詩の「私」とは「彼」の「妻」とは限らないし、また「女」とも限らない。男同士の愛であってもいいんだとリベラリストのプレヴェールは考えていたようです。
Déjeuner du matin 朝の食事
Marlene Dietrich マレーネ・ディートリッヒ
Il a mis le café
Dans la tasse
Il a mis le lait
Dans la tasse de café
Il a mis le sucre
Dans le café au lait
Avec la petite cuiller
Il a tourné
Il a bu le café au lait
Et il a reposé la tasse
Sans me parler
彼はコーヒーを
カップに注いだ
彼はミルクを
コーヒーのカップに入れた
彼は砂糖を
カフェオレに入れた
小さなスプーンで
彼はかき回した
彼はカフェオレを飲んだ
そして彼はカップを置いた
わたしになにも言わずに

Il a allumé
Une cigarette
Il a fait des ronds
Avec la fumée
Il a mis les cendres
Dans le cendrier
Sans me parler
Sans me regarder
彼は火を付けた
1本のタバコに
彼は輪を作った
その煙で
彼は灰を落とした
灰皿のなかに
わたしになにも言わず
わたしに目を向けずに
Il s'est levé
Il a mis
Son chapeau sur sa tête
Il a mis son manteau de pluie
Parce qu'il pleuvait
Et il est parti
Sous la pluie
Sans me parler 注1
Sans me regarder
彼は立ち上がった
彼はかぶった
帽子をあたまに
彼はレインコートを着た
雨が降っていたから
そして彼は出ていった
雨のなか
わたしになにも言わず
わたしに目を向けずに
Et moi j'ai pris
Ma tête dans mes mains 注2
Et j'ai pleuré.
そしてわたしは
あたまを抱えた
そして泣いた。

[注]
1 ディートリッヒはこう歌っているが、原詩ではSans une paroles「一言もなく」。
2 原詩ではMa tête dans ma main。
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前回の「初めての日のようにComme au premier jour」に続き、桜に因んだ曲を。「バラ色の桜と白い林檎Cerisier rose et pommier blanc」です。1950年にジャック・ラリュJacques Larueが作詞し、ルイギイLouiguyが作曲。アンドレ・クラヴォーAndré Claveauが創唱しました
イヴェット・ジローYvette Giraudやペチュラ・クラーク Petula Clarkなども歌っています。
1953年にキューバのペレス・プラードPerez Prado楽団が「セレソ・ローサCerezo Rosa」というマンボの曲にしました。
Cerisier rose et pommier blanc バラ色の桜と白い林檎
André Claveau アンドレ・クラヴォー
{Refrain:}
Quand nous jouions à la marelle
Cerisiers roses et pommiers blancs 注1
J'ai cru mourir d'amour pour elle
En l'embrassant
僕たちが石けりで遊んでいた頃
バラ色の桜と白い林檎よ
彼女に口づけしていると
僕は彼女への愛で死にそうな想いだった

Avec ses airs de demoiselle,
Cerisiers roses et pommiers blancs
Elle avait attiré vers elle
Mon cœur d'enfant
乙女らしい姿で、
バラ色の桜と白い林檎よ
彼女は引き寄せたんだ
僕のうぶな心を
La branche d'un cerisier
De son jardin caressait
La branche d'un vieux pommier
Qui dans le mien fleurissait
彼女の庭の
桜の枝は優しく愛撫したよ
僕の庭で花を咲かせている
古い林檎の木の枝を
De voir leurs fleurs enlacées
Comme un bouquet de printemps
Nous vint alors la pensée
D'en faire autant.
春の花束のように
絡み合った花々を見て
その時僕たちに起こったんだ
同じことをしたいという想いが。

Et c'est ainsi qu'aux fleurs nouvelles 注2
Cerisiers roses et pommiers blancs
Ont fait un soir la courte échelle 注3
A nos quinze ans
そしてこうして咲き初めた花々に
バラ色の桜と白い林檎が
ある夕べ、手助けをしてくれたんだ
僕たちが15歳のときに
Non, non, ne dites pas qu'à son âge 注4
Vous n'étiez pas si volage
Non, non, quand deux lèvres vous attirent
J'en sais peu qui peuvent dire non.
いや、いや、その年頃には
自分はそんなにふしだらじゃなかったなどと言わないで
いや、いや、唇が誘惑してきたとき
だめだと言える人など僕はほとんど知らない。
{Refrain}
Mais un beau jour les demoiselles,
Frimousse rose et voile blanc,
Se font conduire à la chapelle
Par leur galant.
だけどある日、娘たちは
顔をバラ色に染め白いヴェールをまとい、
恋人に
教会へと導かれる。
Ah quel bonheur pour chacun !
Le cerisier tout fleuri 注5
Et le pommier n'en font qu'un
Nous sommes femme et mari.
ああ、ふたりにとってなんて幸せなことか!
満開の桜の木と
林檎の木とがすることはただ一つだけ
僕たちは妻と夫だ。

De voir les fruits de l'été 注6
Naître des fleurs du printemps
L'amour nous a chuchoté
D'en faire autant.
夏の果実が
春の花々から生まれるのを見ていると
愛が私たちにささやいた
同じようになさいよと。
Si cette histoire est éternelle
Pour en savoir le dénouement
Apprenez-en la ritournelle
Tout simplement
このお話が永遠に続くというのなら
結末を知るには
ただ単に
お決まりの言葉をお聞きなさい
Et dans deux ans deux bébés roses
Faisant la ronde gentiment
Vous chanteront cerisiers roses
Et pommiers blancs.
2年後にはバラ色の2人の赤ちゃんが
おとなしく回りながら
バラ色の桜と白い林檎の歌を
歌ってくれることでしょう。

[注]
1 cerisier「桜の木」正確にはさくらんぼを収穫するためのセイヨウミザクラ、pommierは、「林檎の木」のことで、roseとblancという、それらの花の色で形容している。無冠詞であり、呼びかけと捉えられる。
2 c'est ainsi que…「かくして…、そんな理由で…」les fleurs nouvelles「咲き初めた花々」とは、恋の芽生えた自分たちのこと。
3 faire la courte échelle à qn.「(手や肩などで)…のためにはしごの代わりをしてやる、…の手助けをしてやる」1行目のaux fleurs nouvellesにつながる。
4 不特定な人としてのvous「あなた方」が、かつてその歳(具体的には15歳)だった時には。
5 De…printempsは、意味上の従属節で、L'amour以下が主節。voir…+inf.「…が…するのを見る」
Comment:2

ジャクリーヌ・ボワイエJacqueline Boyerが歌った「初めての日のようにComme au premier jour」は、1960年に、ピエール・ドレイフュスPierre Dreyfusが作詞し、ユベール・ジローHubert Giraudが作曲し、同年、パリで行われたシャンソン・コンクールで2位に入賞しました。古さを感じさせない、たいへん魅力的な曲です。ジャクリーヌは、先日「聞かせてよ愛の言葉をParlez-moi d'amour」をご紹介したリュシエンヌ・ボワイエLucienne Boyerの娘です。
ジャクリーヌの歌唱の好ましい動画がYouTubeになかったので、私が作成しました。
Comme au premier jour 初めての日のように
Jacqueline Boyer ジャクリーヌ・ボワイエ
Comme au premier jour toujours, toujours
Je me souviens du temps, du temps charmant
Où sous le cerisier le cœur grisé tu m'as parlé d'amour
初めての日のように、いつも、いつも
すてきだったあの頃を、あの頃を思い出す
桜の木の下でうっとりした心であなたは私に愛をささやいた

Comme au premier jour toujours, toujours
Je revois le matin où le destin mettait sur mon chemin
Dans le creux de ta main mes plus beaux lendemains
初めての日のように、いつも、いつも
あの朝を思い出すわ 私の人生の途上で運命が
あなたの手のひらに私の最も美しいあしたを委ねた朝を
Mon horizon, mon rayon de soleil 注1
C'est toi dès ton réveil qui fais ma plus jolie chanson
Comme au premier jour toujours, toujours
Le printemps refleurit quand tu souris
Et me donne la joie de te sentir à moi autant qu'au premier jour
私の地平、私の陽光
あなたは目覚めるやいなや私の最も美しい歌を作ってくれる
初めての日のように、いつも、いつも
あなたが微笑むと春はふたたび花開き
初めての日と同じくらいに
あなたをわたしのものと感じる喜びを与えてくれる
Si tu partais un jour
Bousculant le passé
Je renierais l'amour
Qui m'aurait tant blessé
Ne vole pas ce qui nous appartient
Ne détruit pas mon bonheur et le tien.
あなたが過去を投げ出して
いつの日か去ってしまったら
愛は私を深く傷つけてしまうでしょうから
そんな愛を私は拒むことでしょう
私たちが得たものを取り去らないで
私のそしてあなたのしあわせを壊さないで。
Comme au premier jour toujours, toujours
Je reverrai le temps
Le temps charmant où sous le cerisier
Le cœur grisé tu m'a parlé d'amour
初めての日のように、いつも、いつも
あの頃を私は思い出すことでしょう
桜の木の下でうっとりした心であなたがわたしに愛をささやいた
すてきだったあの頃を

Comme au premier jour toujours, toujours,
Nous irons tous les deux heureux, heureux
Sur le même chemin cueillir des lendemains
Qui n'auront pas de fin
初めての日のように、いつも、いつも、
二人いっしょにしあわせに、しあわせに
同じ道を辿って摘みに行きましょう
終わりのないあしたを
Mon horizon, mon rayon de soleil
C'est toi dès ton réveil qui fais ma plus jolie chanson
Comme au premier jour toujours, toujours
Enchaînés désormais à tout jamais grandira notre amour 注2
Qui sera pour toujours plus fort qu'au premier jour
私の未来、私の陽光
あなたは目覚めるやいなや私の最も美しい歌を作ってくれる
初めての日のように、いつも、いつも
これからは二人は永遠に結ばれてわたしたちの愛は大きくなり
いつまでも初めて出会った日よりもずっと強くなるでしょう
[注]
1 horizonは「地平線、水平線」「将来」などの意味がある。mon horizon, mon rayon de soleil は「あなた」をそう喩えている。
2 過去分詞enchaînésは、nousを修飾するが省略されている。 à tout jamais「いつまでも、永遠に」次行のpour toujoursも同義。 notre amour grandira が倒置されている。
Comment:1

ブラジルの作曲家・ミュージシャンのアントニオ・カルロス・ジョビンAntônio Carlos Brasileiro de Almeida Jobim(通称トム・ジョビンTom Jobim)は、1950年代後半に、ジョアン・ジルベルトJoão Gilberto、ヴィニシウス・ヂ・モライスVinícius de Moraesらとともに、ボサノヴァという音楽ジャンルを創生したことで知られています。代表作はなんと言っても「イパネマの娘Garota de Ipanema」 (作詞:モライス、英名:The girl from Ipanema)です。彼が1965年に作った「三月の水Águas de março」という曲を、ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustaki が、1973年にフランス語に翻案して歌っています。曲名もそのまま「三月の水Les eaux de Mars」。
南半球のブラジルでは、3月は夏が終わり秋が訪れる季節。元のポルトガル語の歌詞は、その3月の情景を名詞を羅列して表現しています。そして、フランス語の歌詞では、北半球の3月、すなわち春をイメージしたものに一部変えられています。
ムスタキ
ステイシー・ケントStacey Kent
ポルトガル語の、エリス・レジーナElis Regina とジョビンのデュオ。こんな風に息が合って楽しく歌えたら最高ですね。
Les eaux de Mars 三月の水
Georges Moustaki ジョルジュ・ムスタキ
Un pas, une pierre, un chemin qui chemine
Un reste de racine, c'est un peu solitaire
C'est un éclat de verre, c'est la vie, le soleil
C'est la mort, le sommeil, c'est un piège entrouvert
一歩、石ころ、通じた道
切り株の残り、それはちょっと孤独
それはガラスのかけら、それは人生、太陽
それは死、眠り、それは口を開けた罠
Un arbre millénaire, un nœud dans le bois
C'est un chien qui aboie, c'est un oiseau dans l'air
C'est un tronc qui pourrit, c'est la neige qui fond
Le mystère profond, la promesse de vie
樹齢千年の木、木の節穴
それは吠える犬、それは飛ぶ鳥
それは腐る幹、それは融ける雪
深遠な神秘、生命の約束

C'est le souffle du vent au sommet des collines
C'est une vieille ruine, le vide, le néant
C'est la pie qui jacasse, c'est l'averse qui verse 注1
Des torrents d'allégresse, ce sont les eaux de Mars
それは丘の上の風のそよぎ
それは古い廃墟、空虚、虚無
それはガサガサと鳴くカササギ、それはドバッと降る驟雨
歓喜のほとばしり、それらは3月の水
C'est le pied qui avance à pas sûr, à pas lent
C'est la main qui se tend, c'est la pierre qu'on lance
C'est un trou dans la terre, un chemin qui chemine
Un reste de racine, c'est un peu solitaire
それは確かな、ゆっくりした足どりで進む足
それは差し出した手、それは誰かが投げる石
それは地面の穴、通じた道
切り株、それはちょっと孤独
C'est un oiseau dans l'air, un oiseau qui se pose
Le jardin qu'on arrose, une source d'eau claire
Une écharde, un clou, c'est la fièvre qui monte
C'est un compte à bon compte, c'est un peu rien du tout 注2
それは飛ぶ鳥、とまった鳥
水を撒かれた庭、澄んだ水の泉
棘、釘、それは上昇する熱
それは安上がりな見積もり、それはやや取るに足らないもの
Un poisson, un geste, c'est comme du vif argent
C'est tout ce qu'on attend, c'est tout ce qui nous reste
C'est du bois, c'est un jour le bout du quai
Un alcool trafiqué, le chemin le plus court
魚、しぐさ、それはまるで現金
それは私たちが待つものすべて、それは私たちに残るものすべて
それは森、それは埠頭での一日
密売のアルコール、一番の近道
C'est le cri d'un hibou, un corps ensommeillé
La voiture rouillée, c'est la boue, c'est la boue
Un pas, un pont, un crapaud qui croasse
C'est un chaland qui passe, c'est un bel horizon
C'est la saison des pluies, c'est la fonte des glaces
Ce sont les eaux de Mars, la promesse de vie
それはミミズクの叫び、眠り込んだ身体
錆びた自動車、それは泥、泥だ
一歩、橋、ガアガア鳴くヒキガエル
それは過ぎゆくはしけ、それは美しい水平線
それは雨季、それは氷の溶解
それらは3月の水、生命の約束

Une pierre, un bâton, c'est Joseph et c'est Jacques
Un serpent qui attaque, une entaille au talon
Un pas, une pierre, un chemin qui chemine
Un reste de racine, c'est un peu solitaire
一つの石、一本の棒、それはジョゼフでそれはジャック
襲ってくる蛇、踵の傷
一歩、一つの石、通じた道
切り株、それはちょっと孤独
C'est l'hiver qui s'efface, la fin d'une saison
C'est la neige qui fond, ce sont les eaux de Mars
La promesse de vie, le mystère profond
Ce sont les eaux de Mars dans ton cœur tout au fond
それは消える冬、季節の終り
それは融ける雪、それらは3月の水
生命の約束、深遠な神秘
それらは君の心の奥底の3月の水
Un pas, une " ... pedra é o fim do caminho
E um resto de toco, é um pouco sozinho ... "
Un pas, une pierre, un chemin qui chemine
Un reste de racine, c'est un peu solitaire...
一歩、一「…つの石、道の果て
切り株、それはちょっと孤独…」
一歩、一つの石、通じた道
切り株、それはちょっと孤独…
[注] タイトルのみ「三月」と、漢数字で表記した。
1 la pie qui jacasse「ぺちゃくちゃしゃべるおしゃべり女」という意味も派生しているが、ここでは「鳴くカササギ」という原義がふさわしい。
2 à bon compte「安上がりに、大過なく」
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先日、ゴダールJean-Luc Godardの「女は女であるUne femme est une femme」(1961年)を見てきました。もう半世紀以上昔の映画です。アンナ・カリーナAnna Karinaってこんなに魅力的でかわいい女優さんだったんですね。
映画に出てきたシャルル・アズナヴールCharles AznavourのTu t’laisses allerという曲が面白くて、ぜひブログで取り上げたいと思いました。原題は「おまえはだらしない、だらけている」といった意味で、結婚して5年経ち、格好も構わなくなり、だらしのない粗暴な女になってしまった妻。その悪妻の姿をありありと描写しこきおろしつつも逆説的に愛情を表現しています。「悪妻は百年の不作」ということわざのように、奥さんの出来が悪いとダンナは苦労するわけです。でもね、「悪夫は百年の飢饉」だとも菊池寛は言ってるんですよ。この意味、分かる気がする私です。1960年にアズナヴール自身が作り、同年のアルバムLes Deux Guitaresに収録されました。邦題はいくつかあるようですが、「のらくらもの」を採用しましょう。
シャルル・アズナヴールCharles Aznavour
アニー・コルディーAnnie Cordyとのデュオ
Tu t’laisses aller のらくらもの
Charles Aznavour シャルル・アズナヴール
C'est drôle ce que t'es drôle à regarder
T'es là, t'attends, tu fais la tête 注1
Et moi j'ai envie d'rigoler
C'est l'alcool qui monte en ma tête 注2
Tout l'alcool que j'ai pris ce soir
Afin d'y puiser le courage
De t'avouer que j'en ai marr'
De toi et de tes commérages
De ton corps qui me laisse sage 注3
Et qui m'enlève tout espoir
変だよおまえは変に見えるぜ
おまえがそこで、構えて、むくれてるのを見ると
僕はね笑いたくなるよ
僕は頭をアルコール漬けにしたぜ
今晩呑んだアルコールぜんぶで
おまえに告げる勇気を引き出すために
おまえとおまえの無駄話にも
そして僕を貞淑にさせ
僕からあらゆる希望を奪い去る
おまえのからだにも
もうげんなりだとね
J'en ai assez faut bien qu'j'te l'dise 注4
Tu m'exaspèr's, tu m'tyrannises
Je subis ton sal'caractèr'
Sans oser dir' que t'exagèr's 注5
Oui t'exagèr's, tu l'sais maint'nant
Parfois je voudrais t'étrangler
Dieu que t'as changé en cinq ans
Tu t'laisses aller, Tu t'laisses aller
おまえに言わなきゃならん、僕はうんざりだって
おまえは僕をいらつかせ僕に横暴に振る舞う
僕はおまえの汚い性格に耐えてるんだ
おまえが目立つとはあえて言わないが
そう、おまえは目立つって、今気づけよ
時々、僕はおまえを絞め殺したくなるよ
まったく、おまえは5年で変わっちまった
おまえはだらけてる、だらけてる
Ah ! tu es belle à regarder
Tes bas tombant sur tes chaussures
Et ton vieux peignoir mal fermé
Et tes bigoudis quelle allure
Je me demande chaque jour
Comment as-tu fait pour me plaire
Comment ai-j' pu te faire la cour 注6
Et t'aliéner ma vie entière
Comm' ça tu ressembles à ta mère
Qu'a rien pour inspirer l'amour
ああ!おまえは見た目はきれいさ
おまえの靴下は靴までずり落ちている
おまえの古いバスローブはちゃんと締まってない
おまえのカーラーはなんて状態だ
僕は毎日思うんだ
僕に気に入られるためにおまえはどんな風にしたのか
僕はどんな風におまえに言い寄って
僕の人生のすべてをおまえに預けることができたのかと
おまえはそっくりさ
恋心を抱かせるものなど何も持たないおまえの母親に

D'vant mes amis quell' catastroph'
Tu m'contredis, tu m'apostrophes
Avec ton venin et ta hargne
Tu ferais battre des montagnes 注7
Ah ! j'ai décroché le gros lot 注8
Le jour où je t'ai rencontrée
Si tu t'taisais, ce s'rait trop beau 注9
Tu t'laisses aller, Tu t'laisses aller
なんてことだ、僕の友人たちの前で
おまえは僕に反論し、僕にぞんざいな口をきく
悪意を持って喧嘩ごしで
あちこちでもめ事を引き起こす
ああ!大当たりを引いちまったよ
おまえに出会った日に
おまえは口をつぐんでりゃ、たいへん結構さ
おまえはだらけてる、だらけてる
Tu es un'brute et un tyran
Tu n'as pas de cœur et pas d'âme
Pourtant je pense bien souvent
Que malgré tout tu es ma femme
Si tu voulais faire un effort
Tout pourrait reprendre sa place
Pour maigrir fais un peu de sport
arranges-toi devant ta glace
Accroche un sourire à ta face
Maquille ton cœur et ton corps
おまえは野蛮人で暴君だ
おまえは心も魂も持っちゃいない
だが僕はしばしば思う
だがそれでもおまえは僕の女房だ
もしおまえが努力しようと思うなら
すべてもとどおりになるだろう
やせるためにちょっとスポーツをやり
鏡の前で身づくろいをし
顔に笑みを浮かべ
心と体に化粧をほどこすんだよ

Au lieu d'penser que j'te déteste
Et de me fuir comme la peste 注10
Essaie de te montrer gentille
Redeviens la petite fille
Qui m'a donné tant de bonheur
Et parfois comm' par le passé 注11
J'aim'rais que tout contre mon cœur 注12
Tu t'laisses aller, Tu t'laisses aller
僕がおまえを嫌ってると思ったり
僕を疫病神みたいに避けたりせずに
優しいそぶりをみせて
僕にしあわせをいっぱいくれた
かわいい娘に戻るんだ
そうしたら時には昔のように
僕は胸にぴったりと抱き寄せたいと思うよ
おまえはだらけてる、だらけてるよ
[注]
1 faire la tête「ぶすっとする、ふくれっ面をする」
2 monte en la tête「(酒が)回る」だが意訳した。
3 en avoir marre「もうたくさんだ、飽き飽きする」「これで充分だ」
4 en avoir assez「うんざりする」
5 tu l'sais maint'nant
6 faire la cour à qn.「…のご機嫌をとる、(女性)に言い寄る」
7 faire battre des montagnes「いたる所でもめ事を引き起こす」
8 j'ai décroché le gros lot「(宝くじの)1等、当たりくじ」をj'ai décroché「手に入れた、射止めた」というのは反語的な表現。
9 Ce serait trop beau.「そうなれば結構このうえない」
10 peste「ペスト」だが、「有害な人、嫌な人」の意味にも用いる。
11 par le passé「昔、以前」
12 toutは強調の意味。contre son cœur「胸元に」
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今回はエディット・ピアフÉdith Piafの「私の街でDans ma rue」です。1946年に、ジャック・ダタンJacques Datinが作詞・作曲。コラ・ヴォケールCora Vaucaireの「白いバラ(サン・ヴァンサン通り)Rose Blanche (Rue Saint-Vincent)」、ベルト・シルヴァBerthe Sylvaの「白いバラLes roses blanches」と同様に、とってもとっても悲しい歌です。そういえばコラ・ヴォケールCora Vaucaireの「モンマルトルの丘 La complainte de la butte」にも、モンマルトルの幼い娼婦が描かれていましたね。
最近、ザズZazのカヴァーがたいへんヒットしました。2010年のファーストアルバム「モンマルトルからのラブレターZAZ」に収録されています。
Dans ma rue 私の街で
Édith Piaf エディット・ピアフ
J'habite un coin du vieux Montmartre
Mon père rentre soûl tous les soirs
Et pour nous nourrir tous les quatre
Ma pauvr' mére travaille au lavoir.
Moi j'suis malade, j'rêve à ma fenêtre
Je r'garde passer les gens d'ailleurs
Quand le jour vient à disparaître
Il y a des choses qui me font un peu peur
わたしは古きモンマルトルの一角に住んでいる
父さんは毎晩酔っぱらって帰って来る
そしてわたしたち4人の子を養うために
かわいそうな母さんは洗濯屋で働いてる。
病気のとき、わたしは窓ぎわで
よそ者たちが通り過ぎるのを眺める
日が暮れてくると
わたしをちょっと怖じけさせるようなものごとがある

Dans ma rue il y a des gens qui s' promènent
J'les entends chuchoter dans la nuit
Quand je m'endors bercée par une rengaine
J'suis soudain réveillée par des cris
Des coups d'sifflet, des pas qui traînent, qui vont et viennent
Puis le silence qui me fait froid dans tout le cœur
わたしの街にはうろつく人々がいる
その人たちがざわめくのを聞き 夜になると
古い唄に揺すられてわたしは眠りにつく
当然わたしは叫び声で
警笛で、うろついたり、行ったり来たりする足音で目が覚め
そのあとの静寂がわたしを心底ぞっとさせる
Dans ma rue il y a des ombres qui s' promènent
Et je tremble et j'ai froid et j'ai peur
わたしの街にはうろつく影たちがいて
わたしは震え寒気がし怖じけづく
Mon père m'a dit un jour : "la fille,
Tu ne vas pas rester là sans fin
T'es bonn' à rien, ça c'est d'famille 注1
Faudrait voir à gagner ton pain 注2
Les hommes te trouvent plutôt jolie
Tu n'auras qu'à sortir le soir
Il y'a bien des femmes qui gagnent leur vie
En "s' balladant sur le trottoir"
父さんがある日わたしに言った、「娘や、
お前はずっとここにいるんじゃないんだよ
お前は何の役にも立っちゃいない、それは血筋だが
自分で食いぶちを稼がなきゃならん
男たちはお前を結構きれいだと思うさ
夜に出て行きさえすりゃいいんだよ
「通りをぶらついて」
暮らしを立ててる女はたくさんいるよ

Dans ma rue il y a des femmes qui s' promènent
J'les entends fredonner dans la nuit
Quand je m'endors bercée par une rengaine
J'suis soudain réveillée par des cris
Des coups d'sifflet, des pas qui traînent, qui vont et viennent
Puis le silence qui me fait froid dans tout le cœur.
わたしの街にはうろつく女たちがいる
わたしは女たちが口ずさむのを聞き 夜になると
古い唄に揺すられて眠りにつく
当然わたしは叫び声で、
警笛で、うろついたり、行ったり来たりする足音で目が覚め
そのあとの静寂がわたしを心底ぞっとさせる
Dans ma rue il y a des femmes qui s' promènent
Et je tremble et j'ai froid et j'ai peur
わたしの街にはうろつく女たちがいて
わたしは震え寒気がし怖じけづく
Et depuis des semaines et des semaines
J'ai plus d' maison, j'ai plus d'argent
J' sais pas comment les autres s'y prennent 注3
Mais j'ai pas pu trouver d' client
J'demande l'aumône aux gens qui passent
Un morceau d' pain, un peu d' chaleur
J'ai pourtant pas beaucoup d'audace
Maintenant c'est moi qui leur fait peur
そして何週間も何週間も前から
わたしには住むところも無く、お金も無い
ほかの女たちがどうやるのか知らないけれど、
わたしはお客を見つけられない
一切れのパンとわずかな温もりを
施してと通りすがりの人に求める
けれどわたしにはあまり度胸が無くて、
今はわたしが彼らを怖じけさせる
Dans ma rue tous les soirs je m' promène
On m'entend sangloter dans la nuit
Quand le vent jette au ciel sa rengaine
Tout mon corps est glacé par la pluie
わたしの街を毎晩わたしはうろつく、
わたしがすすり泣くのをひとは聞く、夜になって
風が古い唄を空にまき散らす時
私の体はぜんぶ雨に濡れて凍りつく。

Mais je n' peux plus, j'attends sans cesse que le bon Dieu vienne 注4
Pour m'inviter à me réchauffer tout près de Lui
もうおしまいよ、わたしは絶えず待っている 神様がやって来て、
御許で温めるためにわたしを召してくださるのを。
Dans ma rue il y a des anges qui m'emmènent
Pour toujours mon cauchemar est fini
わたしの街にはわたしを連れて行ってくれる天使たちがいて、
わたしの悪夢は永遠に終わったのよ。
[注]
1 être bon(ne) à …「…に適した、役に立つ」。c'est de famille「(性格・行動などが)一家に特有なものである、血筋だ」
2 非人称主語のilが省略されている
3 s'y prendre「手をつける、ふるまう」
4 n'en pouvoir plus「もう駄目である、力尽きた」
Comment:7

今回はイヴ・デュテイユYves Duteilの「夜の通行人に捧ぐHommage au passant d'un soir」。彼自身が作詞・作曲しギターの弾き語りで歌っています。1981年に出たÇa n'est pas c'qu'on fait qui compte というアルバムに収録されています。
この歌詞には、どこかちょっとバルバラの「黒いワシL'aigle noir」を思い起こさせるものがあります。「過去から現れたひとりの通行人Un passant, surgi du passé」とは?私はこの曲を、加藤登紀子の日本語の歌で知りました。その歌詞はある程度原曲の内容を引き継いでいますが、「通行人」が恋の対象となるような女性として描かれているのが原曲の意図とは異なります。別の日本語の歌詞は、女性歌手が身を貶めるまでにして歌手としての自分を売る姿をあらわしていますし、ほかにもいろいろあるようで。
デュテイユの歌は、フランス語の発音の訓練にとてもいいと以前から思っています。この曲を、この美しいメロディに乗って滑らかに歌えるようになるにはかなり上達する必要がありそう。私も始めてみます!
デュテイユの動画はYouTubeにはありませんでしたが、2012年に私が作成しました。
Hommage au passant d'un soir 夜の通行人に捧ぐ
Yves Duteil イヴ・デュテイユ
Quand je jouais de la guitare
Par plaisir ou par désespoir 注1
Rue Dufour et Rue Vaugirard,
J'arrêtais vers onze heures du soir.
Je fouillais mes carnets d'adresses
Pour trouver deux sous de tendresse,
Des amours que le petit jour emportait sans cesse. 注2
J'ignorais ce qu'était ma vie,
J'ignorais, mais j'avais envie
De chanter pour être moins triste et moins seul aussi.
Puis un soir, pour m'encourager,
Un passant, surgi du passé,
M'avait dit des mots qui depuis ne m'ont plus quitté.
楽しみでまたは落ち込んだ気分で
デュフォール通りやヴォジラール通りで
ギターを弾いていたとき
夜11時ごろには終えていた。
僕は 住所録をさぐって、
わずかな優しさを、
朝がのべつ奪い去る愛情を探しだす。
僕は自分の生き方が分からなかった、
分からなかった、けれど欲していた
悲しみと孤独とを軽減するために歌うことを。
そしてある夜、僕を勇気づけようと
ひとりの通行人が、過去から現れて、
それ以来忘れることのできない言葉を僕に言った。

Quand je jouais de la guitare,
Avenue de l'Observatoire,
J'ignorais que dans ton regard
Le bonheur était provisoire. 注3
J'écrivais des chansons d'amour
Et chacun s'asseyait autour.
Des sourires étaient ma récompense et tu souris toujours.
J'ignorais ce qu'était ta vie,
J'ignorais, mais j'avais envie
De chanter pour que tout soit bien quand le ciel est gris.
Tout autour dans nos univers
Le printemps virait à l'hiver,
Et les jours du calendrier passaient à l'envers. 注4
天文台大通りで、
ギターを弾いていたとき、
あなたの視線に
つかの間の幸せがよぎったことに気づかなかった。
僕は愛の歌を書いていて
みんなは周りに座っていた。
僕は感謝の気持ちで微笑み あなたも終始微笑んでいた。
僕はあなたの生活を知らなかった
知らなかった、けれど欲していた
空が灰色のときにすべてがよくなるようにと歌うことを。
僕たちのまわりでは
春が冬に戻っていた、
そしてカレンダーの日付は逆行していた。
{Instrumental}
[間奏]
Puis j'ai joué de la guitare 注5
Sur ton cœur et loin des regards.
Tout le reste était dérisoire,
Le présent perdait la mémoire. 注6
Je vivais mes chansons d'amour,
J'avais peur de te perdre un jour,
Et j'aimais les bruits de l'école en bas dans ta cour. 注7
J'ignorais si c'était ma vie,
J'ignorais, mais j'avais envie
De continuer mon chemin vers le paradis.
Je respirais tout doucement,
J'avais peur d'éveiller le temps
Qui dormait dans nos souvenirs, et j'étais content.
そして僕はギターを弾いた
あなたの心に向け 人々の視線を離れて。
ほかのものはすべて取るに足りなかった、
「今」が記憶を失っていた。
僕は自分の愛の歌を生きていた、
いつかあなたを失うかもしれないと恐れ、
あなたのところの中庭で下の方から聞こえる学校のざわめきを愛した。
それが自分の生き方なのか分からなかった
分からなかった、けれど欲していた
天国に向かって自分の道を進むことを。
僕はとても静かに呼吸していた、
僕は目覚めさせることを恐れていた
想い出のなかに眠りこんでいる時間を、そして僕は満足だった。
La la la la la la la…
La la la la la la la…
J'ignorais si c'était ma vie,
J'ignorais, mais j'avais envie
De continuer mon chemin vers le paradis.
Je respirais tout doucement,
J'avais peur d'oublier ce temps
Je rêvais de m'en souvenirs, depuis si longtemps.
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ…
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ…
それが自分の生き方なのか分からなかった
分からなかった、けれど欲していた
天国に向かって自分の道を進むことを。
僕はとても静かに呼吸していた、
僕はこの時間を忘れることを恐れていた
それを覚えていたいと夢みていた、ずっと前から。

Quand je jouais de la guitare
Pour te plaire ou pour t'émouvoir
En hommage au passant d'un soir, 注8
J'écrivais pour l'amour de l'art.
J'ignorais que c'était ma vie,
J'ignorais, mais j'avais envie
De chanter pour que tu sois fière de m'avoir choisi.
あなたを喜ばせあるいはあなたを感動させようと
ある夜の通行人に捧げ
ギターを弾くとき、
僕は芸術への愛のために曲を書く。
僕は自分の生き方が分からなかった
分からなかった、けれど欲していた
あなたが僕を選んだことを誇りにしてくれるために歌うことを
La la la la la la la…
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ…
[注]
1 par plaisir「気晴らしに、楽しみで」
2 一夜の宿を提供してくれる人(女性?)を住所録で探す。だが、朝になると終わる愛情である。
3 provisoire「かりそめの、一時的な」。この行を直訳すると、「幸せが一時的であること」。
4 すなわち、意識が過去に向かっていた。
5 歌詞全体がほとんど半過去で書かれているのに、ここは複合過去になっている。ここでギターを弾くという行為が、特別の「今」という時間をもたらす。
6 次行にJe vivais mes chansons d'amourとあることからも分かるように、 「今」だけがあるという状態を、「『今』が記憶を失っていた」と表現している。
7 les bruits de l'école、そしてdans ta courとあるので、courを「校庭」とすると「あなた」すなわち「過去から現れたある通行人」は、学校時代の先生だったのか…。あるいは、その人物は「昔から彼の音楽を見守ってくれている」象徴的な存在なのか?
8 en hommage à「…に敬意を表して」
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アンリ・サルヴァドールHenri Salvadorが歌うJ'ai vuは、2000年のアルバム「サルヴァドールからの手紙Chambre Avec Vue」に収録されている曲で、ミッシェル・モドMichel Modoの作詞、サルヴァドール自身の作曲。このアルバムの曲では、最も知られている「冬の庭(温室)Jardin d'hiver」をすでに取り上げています。
もう充分いろんなことをやってきたから、残りの人生は余禄でしかない?いやいやそんなことはないよ、まだ生きるべき夢がたくさんあるんだよと、私たちの背中を押してくれる歌詞です。 はつらつと生きて行こうじゃありませんか!
このブログでは「私は見た」という直訳の邦題にし、一般的に知られている邦題「人生という名の旅」は副題とします。
アルバムでは一人で歌っていますが、この動画では小野リサLisa Onoといっしょに歌っています。
J'ai vu 私は見た(人生という名の旅)
Henri Salvador アンリ・サルヴァドール
J´ai lu
Tant de mers tant de rivages
Tant de ciel de paysages
私は読んだ
たくさんの海 たくさんの海辺
見渡すばかりのたくさんの空のことを
J´ai vu
Tant d´escales et tant de ports
私は見た
たくさんの寄港地とたくさんの港を

J´ai pu
Me chauffer au creux des îles
Me cacher au fond des villes
J´ai pu marcher sur des sables d´or
私にはできた
島々のふところで温まることが
街々の奥底に身を潜めることが
私にはできた 金色の砂の上を歩くことが
J´ai vu des matins
De joies de chagrins
De rires et d´envies
De peines et de bonheur dans ma vie
私は見た さまざまな朝を
喜びの 悲しみの
笑いの 欲望の
苦しみのそして幸福の朝を 私の人生で
J´ai cru
Etre au bout de l´aventure
Mais mon cœur lui me murmure
Qu´il y a tant de rêves à vivre encore
私は悟った
冒険はもう終わりだと
だが心が私にささやく
まだ生きるべき夢がたくさんあると
J´ai lu
Tant de mers tant de rivages
Tant de ciel de paysages
私は読んだ
たくさんの海 たくさんの海辺
見渡すばかりのたくさんの空のことを

J´ai vu
Tant d´escales et tant de ports
私は見た
たくさんの寄港地とたくさんの港を
J´ai pu
Me chauffer au creux des îles
Me cacher au fond des villes
J´ai pu marcher sur des sables d´or
私にはできた
島々のふところで温まることが
街々の奥底に身を潜めることが
私にはできた 金色の砂の上を歩くことが

J´ai vu des matins
De joies de chagrins
De rires et d´envies
De peines et de bonheur dans ma vie
私は見た さまざまな朝を
喜びの 悲しみの
笑いの 欲望の
苦しみのそして幸福の朝を 私の人生で
J´ai cru
Etre au bout de l´aventure
Mais mon cœur lui me murmure
Qu´il y a tant de rêves à vivre encore(×2)
私は悟った
冒険はもう終わりだと
だが心が私にささやく
まだ生きるべき夢がたくさんあると
Tant de rêves à vivre encore
Tant de rêves à vivre encore
生きるべき夢がたくさん
生きるべき夢がたくさん

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「アデューAdieu」もよく日本語で歌われている曲ですが、フランスではもう忘れられているかもしれません。元はイタリアのインノセンツィCarlo Innocenziが1951年に作曲した「さらば栄光の夢よAddio, Sogni Di Gloria」というカンツォーネ。翌52年、ミレイユ・ブロセイMireille Broceyがフランス語の歌詞を作り、イヴェット・ジローYvette Giraudが歌いました。歌詞の内容は、グロリア・ラッソGloria Lassoの「ボン・ヴォワイヤージュBon voyage」ととても似ていて、恋人に別の女性ができ、辛い心を抑えながら相手にさよならを言うといった内容です。
この曲も、イヴェット・ジローのフランス語の動画がYouTubeになかったので自分で作成しました。
原曲のAddio, Sogni Di Gloria
Adieu アデュー
Yvette Giraud イヴェット・ジロー
Celle qui t´a pris à moi, je devrais la maudire 注1
Pourtant, vois-tu mon amour, je me force à sourire
Elle est charmante et tu l´aimes, cela doit suffire
Puisque ton bonheur est là, c´est fini, oublie-moi
あなたを私から奪った女を、私は呪ってしかるべきね
でも、愛しいひと、私は微笑むよう努めるわ
彼女は魅力的だしあなたは彼女を愛している、それで充分でしょう
だってあなたのしあわせはそこにあるんだもの、もう終わりよ、私を忘れて

Adieu, toi que j´ai tant aimé
Adieu, toi qui m´as tout donné
Tu m´avais fait le serment de m´aimer pour la vie
Oui, mais ton cœur brusquement en décide autrement
さようなら、私がとても愛したあなた
さようなら、私にすべてを捧げてくれたあなた
あなたは私を一生愛すると誓ってくれた
ええ、でもあなたの心は突然にそれをたがえることにしたのね
Adieu, puisqu´il faut nous quitter
C´est mieux, je ne veux pas pleurer
Nous avons eu, souviens-t´en, des années si jolies
Que rien qu´en les évoquant on ferait un roman 注2
さようなら、私たちは別れなきゃならないから
そのほうがいいわ、私は泣きたくないの
想い出して、私たちはとても素敵な年月を過ごして来た
それを想い出すだけで、ひとつの小説が書けるほどの
Mais le destin qui nous sépare
Ne peut pas nous désunir
Tant qu´il reste dans ma mémoire
L´empreinte de nos souvenirs
でも私たちを別れさせる運命は
私たちを引き裂くことはできないわ
私たちの想い出が
私の記憶のなかに刻みつけられているかぎり
Adieu, je garde au fond de moi
Tes yeux et l´écho de ta voix
Ton souvenir est vivant 注3
C´est lui qui me caresse
Auprès de moi, je te sens
Invisible et présent
さようなら、私は心の奥に
あなたの瞳とあなたの声の響きをとどめるわ
あなたの面影は生きている
私を愛撫するのはその人よ
私の前に、私はあなたを感じるの
見えないけれどちゃんといるわ

Adieu, toi que j´ai tant aimé
Adieu, toi qui m´as tout donné
さようなら、私がとても愛したあなた
さようなら、私にすべてを捧げてくれたあなた
[注]
1 prendre qc.(qn) à qn.「…を…から奪い取る、取り上げる」
2 rien que…「…するだけで、…だけのために」
3 ton souvenir 「あなたの思い出」。dans son souvenirなどの表現では、所有格が記憶する側を示すが、ここでは記憶される側を示す。次行のluiは、その「思い出されるあなた」を「彼」と置き換えている。
Comment:2

今回は、ミスタンゲットMistinguettの「私の男Mon homme」です。
1918年に第一次世界大戦が終了した後、1920年代には、パリの女性たちは長かった髪をばっさり耳元まで切り、唇には真っ赤なルージュを塗り、コルセットを外しパンツスタイルで自転車にまたがり、カフェでシガレット片手に男性さながらに政治を語るなどするようになりました。そうした時代、まさしくパリが花開き、そしてパリが華やかに浮かれた黄金時代は「狂気の時代Les année folles」と呼ばれました。しかし1929年の世界恐慌とともに、その華やかな狂気の時代は儚くも終焉を迎えました。その「狂気の時代」の象徴ともされた歌手がミスタンゲットMistinguett(1875-1956)で、華麗な舞台と脚線美で人々を魅了しました。15歳年下の歌手モーリス・シュヴァリエMaurice Chevalierと恋仲だったことでも知られています。歌では「サ・セ・パリCa, c'est Paris」が一番有名です。
エディット・ピアフÉdith Piaf 、ジュリエット・グレコJuliette Gréco、パタシューPatachouも歌っています。
昨年2014年3月のカジノ・ド・パリでのミュージカル「ミスタンゲット、狂気の時代の女王Mistinguett, reine des années folles」でグアテマラ生まれのカルメン・マリア・ヴェガCarmen Maria Vegaがミスタンゲットを演じました。
Mon homme 私の男
Mistinguett ミスタンゲット
Sur cette terr', ma seul' joie, mon seul bonheur
C'est mon homme.
J'ai donné tout c'que j'ai, mon amour et tout mon cœur
À mon homme
Et même la nuit,
Quand je rêve, c'est de lui,
De mon homme.
Ce n'est pas qu'il est beau, qu'il est riche ni costaud
Mais je l'aime, c'est idiot,
I'm'fout des coups 注1
I'm'prend mes sous,
Je suis à bout 注2
Mais malgré tout 注3
Que voulez-vous 注4
この地上で、私の唯一の楽しみ、私の唯一の喜び
それは私の男。
私は持っているものをすべて与える、私の愛、私の心を
私の男に
そして夜も、
見るのは、彼の夢、
私の男の夢。
彼が美男子だからでも金持ちだからでもがっしりしているからでもなく
私は彼を愛してる、それはおかしなこと、
彼は私を殴る
彼は私のお金を取る、
私はもう限界
でもやっぱり
どうしようもないの

Je l'ai tell'ment dans la peau 注5
Qu'j'en d'viens marteau, 注6
Dès qu'il s'approch' c'est fini
Je suis à lui
Quand ses yeux sur moi se posent
Ça me rend tout' chose 注7
Je l'ai tell'ment dans la peau
Qu'au moindre mot
I'm'f'rait faire n'importe quoi
J'tuerais, ma foi
J'sens qu'il me rendrait infâme
Mais je n'suis qu'un' femme
Et, j'l'ai tell'ment dans la peau...
私はあまりにも彼に首ったけ
気が変になりそうなくらいに
彼が近づいてきたらもうおしまいよ
私は彼のもの
彼の視線が私に注がれると
私は生き返る
私はあまりにも彼に首ったけで
ちょっと口に出すだけで
彼は私に何でもやらせるわ
捨てるわ、信仰も
彼は私を卑しい女にしてしまった気がする
でも私はひとりの女にすぎない
そして、こんなに彼に首ったけなの…
Pour le quitter c'est fou ce que m'ont offert
D'autres hommes.
Entre nous, voyez-vous ils ne valent pas très cher 注8
Tous les hommes
La femm' à vrai dir' 注9
N'est faite que pour souffrir
Par les hommes.
Dans les bals, j'ai couru, afin d'l'oublier j'ai bu
Rien à faire, j'ai pas pu 注10
Quand i'm'dit : ‟Viens”
J'suis comme un chien
Y a pas moyen
C'est comme un lien
Qui me retient.
彼と別れるために、わたしにやたら手助けしてくれるわ
ほかの男たちが。
ここだけの話だけれど、そうなの、彼らは大して値打ちがないのよ
男たちはみんな。
本当のところ女はね
苦しむようにしか作られていない
男でね
ダンスホールに、私は通いつめた、彼を忘れようとお酒を飲んだ
どうしようもない、だめだったわ
彼が私に、「おいで」と言えば
私は犬みたいに言うことをきく
手立てはないの
まるで紐で
つながれているみたい

Je l'ai tell'ment dans la peau
Qu'j'en suis dingo.
Que cell' qui n'a pas aussi
Connu ceci
Ose venir la première
Me j'ter la pierre.
En avoir un dans la peau
C'est l'pir' des maux
Mais c'est connaître l'amour
Sous son vrai jour 注11
Et j'dis qu'il faut qu'on pardonne
Quand un' femme se donne
À l'homm' qu'elle a dans la peau...
私はあまりにも彼に首ったけ
気が狂うほどに。
誰か、まだこんな経験を
したことのない女は
真っ先にやってきて
私に石を投げるわ。
ひとりの男に首ったけになるなんて
悪のうちでも最低だけど
それは恋というものを
ほんとうに知ることなの
だから私は言いたいの、皆は許すべきだと
ひとりの女が
首ったけの男にすべてを捧げることを

[注]
1 (I’m’fout=Il me fout) foutre des coups à qn.「…を殴る」
2 à bout「(体力・忍耐などの)限界に」
3 malgré tout「是が非でも」「それでもなお、やはり」
4 Que voulez-vous「しかたないじゃないか、どうしようもないだろう」
5 avoir qn./qc. dans la peau「(人に)ほれ込む、熱愛している、(物に)熱中している、夢中になる」
6 marteauは名詞の「金槌」の意味のほかに、形容詞の「気がふれている、頭がおかしい」の意味がある。
7 Ça me rend tout’ chose「そのことは、私にすべてを取り戻させる」すなわち「そのことで私は回復する」。さらに意訳した。
8 entre nous「ここだけの話だが」。voyez-vous「考えてみてください、そうでしょう」。
9 à vrai dire「実を言うと、本当のことを言うと」
10 Rien à faire.=Il n’y a rien à faire「どうしようもない」
11 connaître qn.(qc.) sous son vrai(véritable) jour「…をその真の姿において知る、正しく知る」
Comment:6

前回、ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの「春なのにC'est le printemps」を取り上げました。 続いて、レオ・フェレLéo Ferréの「春が来たC'est le printemps」。原題は同じですが別の曲です。
1964年にリリースされたアルバム:Ferré 64に収録されています。
C'est le printemps 春が来た
Léo Ferré レオ・フェレ
Y a la nature qu´est tout en sueur
Dans les hectares y a du bonheur
C´est l´printemps
自然界は汗だくになっている
何ヘクタールもにわたってしあわせが広がる
春だ
Y a des lilas qu´ont même plus l´temps
De s´faire tout mauves ou bien tout blancs
C´est l´printemps
リラがモーヴ色にあるいは真っ白になるのは
もうまもなくだ
春だ

Y a du blé qui s´fait du mouron 注1
Les oiseaux eux ils disent pas non
C´est l´printemps
麦が気をもんでいる
鳥たちだって否とは言わない
春だ
Y a nos chagrins qu´ont des couleurs
Y a même du printemps chez l´malheur
僕たちの悲しみも色づく
不幸な者の家にもまた春が来た
Y a la mer qui s´prend pour Monet 注2
Ou pour Gauguin ou pour Manet
C´est l´printemps
海は、モネの絵のよう
あるいはゴーギャンの絵あるいはマネの絵のようだ
春だ
Y a des nuages qui n´ont plus d´quoi 注3
On dirait d´la barbe à papa 注4
C´est l´printemps
雲はもうたくわえを失い
綿菓子みたいだ
春だ

Y a l´vent du nord qu´a pris l´accent
Avec Mistral il passe son temps 注5
C´est l´printemps
北風は調子を強めた
ミストラルとともに時を過ごすのだ
春だ
Y a la pluie qu´est passée chez Dior 注6
Pour s´payer l´modèle Soleil d´Or 注7
雨はディオールの店に立ち寄る
ソレイユドール薔薇のモデルを自分に奮発するために
Y a la route qui s´fait nationale
Et des fourmis qui s´font la malle 注8
C´est l´printemps
国道になった道がある
そして旅支度をしているアリたちがいる
春だ
Y a d´la luzerne au fond des lits 注9
Et puis l´faucheur qui lui sourit
C´est l´printemps
臥所の奥にウマゴヤシが生えている
そしてそれに微笑みかける幽霊グモがいる
春だ
Y a des souris qui s´font les dents 注10
Sur les matous par conséquent 注11
C´est l´printemps
オス猫たちに向かって
歯を研ぐネズミたちがいる、だから
春なんだ

Y a des voix d´or dans un seul cri
C´est la Sixtine qui sort la nuit 注12
ただ一つの叫びのなかにも数々の黄金の響きがある
それは夜を追い払うシスティナ礼拝堂だ
Y a la nature qui s´tape un bol
A la santé du rossignol
C´est l´printemps
自然は丸薬を呑む
ナイチンゲールの健康のために
春だ
Y a l´beaujolais qui la ramène 注13
Et Mimi qui s´prend pour Carmen 注14
C´est l´printemps
ボジョレー・ワインがのさばる
そしてミミがカルメンを気取る
春だ
Y a l´île Saint-Louis qui rentre en Seine
Et puis Paris qui s´y promène
C´est l´printemps
サンルイ島はセーヌ河に戻る
そしてパリはそこを散歩する
春だ
Y a l´été qui s´pointe dans la rue 注15
Et des ballots qui n´ont pas vu 注16
C´était l´printemps
夏が街にやって来る
そして馬鹿たちには分かっちゃいなかった
春だったんだと
[注] レオ・フェレの歌詞は厄介で正確に訳しようがないと居直っての訳で申し訳ないが、信頼できる情報が得られれば訂正していきたい。
1 se faire du mouron「気をもむ、心配する」。mouronは、サクラソウ科の「ルリハコベ」あるいは俗に「髪の毛」のこと。
2 se prendre pour「…と理解される」「自分を…と思う、…気取りである」。Monet、Gauguin、Manetという画家の名は、彼らの絵画ということだろう。
3 avoir de quoiは通常「(十分な)金がある」の意味。
4 On dirait「…のようだ」。la barbe à papa「綿菓子」。
5 Mistral 「ミストラル」ウィキペディアには、「ミストラルは、フランス南東部に吹く地方風。アルプス山脈からローヌ河谷やデュランス川流域を吹いて加速度を増し、カマルグ周辺の地中海に吹き降ろす、寒冷で乾燥した北風である。ラングドック北東部平野からプロヴァンス、トゥーロン東部の間に影響を及ぼす風もミストラルであるが、強い西風と感じられる。通常冬から春にかけて吹くが、全ての季節に発生する。」とある。l´vent du nord 「北風」がMistralとともに時を過ごすというのは、この2種のミストラルを言うのであろう。
(6 chez DiorはChristian Dior「クリスチャン・ディオール」のブティック。
7 se payer「自分に…を奮発する」。Soleil d´Or「金色の太陽」の意味で、バラの品種として知られる。
8 se faire la malle「荷造りをする、出発準備をする」
9 litは「川床」などの意味もあるが、意外性のある「寝台、ベッド」をあえて選んだ。
10se faire les dents「(ネズミなどが)歯を研ぐ」。人の場合は「(困難に)慣れる、鍛えられる」
11 par conséquent「したがって、だから」
12 La chapelle Sixtineバチカンの「システィナ礼拝堂」。ミケランジェロの壁画「最後の審判」をはじめとして数々の装飾絵画作品がある。
13 小文字なので、地名ではない。ローヌ県北部、ボジョレー地方の山のふもとで生産されるワイン。ramener sa fraise(ou sa gueule)「偉がる、出しゃばって口を出す」を単にla ramenerともいう。
14 Mimiは、漫画の「ムトネ一家La Famille Moutonet」に登場する10歳位の女の子ではないかと思われる。普通名詞のmimiは、幼児語で「猫、にゃんこ」で、恋人や子どもへの呼びかけにも用いられる。
15 se pointer「着く、やって来る」
16 ballot「包み」のことだが、「ばか、うすのろ」をも意味する。
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今回は、1945年のアメリカ映画「ステート・フェアState Fair」(監督:ヘンリー・キングHenry King) の主題曲「春の如くIt Might As Well Be Spring」のフランス語版「春なのにC'est le printemps」(作詞:ジャン・サブロンJean sablon)を取り上げます。1948年の第1回ディスク大賞Charles Crosを受賞しました。(レオ・フェレLéo Ferréの歌う同名の曲は別物です。こちらは次回取り上げましょう。)
人々が青春を謳歌し恋に燃え、浮かれ楽しむ春、そうしたことと縁遠い人(花粉症の私を含めて)にとっては嫌な季節でしかありません。前回ご紹介した、ジュリエット・グレコJuliette Grécoの「日曜日はきらいJe hais les dimanches」をちょっと思い出させる歌詞です。
ジーン・クレインJeanne Crainが原曲のIt Might As Well Be Springを歌っている映画のシーン。
ジャクリーヌ・フランソワJacqueline François。古い貴重な録音です。
ステイシー・ケントStacey Kentが新しい感覚で歌っています。彼女の歌い方は個人的にとても好きです。
ジャズ歌手のブロッサム・ディアリーBlossom Dearieもフランス語版をピアノの弾き語りで歌っています。もう1曲入っているので長い動画です。
C'est le printemps 春なのに
Jacqueline François ジャクリーヌ・フランソワ
{Refrain:}
Agitée comme un roseau dans la tourmente
Tout m'énerve et tout m'irrite en ce moment
Le monde me désenchante
Par ce beau jour de printemps 注1
Fatiguée, désabusée et sans courage
Impatiente je ne sais plus ce qui m'attends
Je sens arriver l'orage
Par ce beau jour de printemps
嵐のなかの葦のように心ざわめいて
いまはすべてが私をいらいらさせじりじりさせ
世界が私を幻滅される
この春の晴れた日に
私はくたびれて、しらけ、元気をなくし
辛抱できず 私を待っているものが何なのかもう分からない
ひと雨来そうな気がする
この春の晴れた日に

Les choses que j’aimais je ne les aime plus 注2
Je veux un tas de choses que jamais vous n’avez eues
Je ne comprends pourquoi
J’ai perdu mon entrain
Je prétends être très brillante
Et je ne sais plus rien
私が愛してきたものを私はもう愛していない
あなた方がけっして持ったことのないものを私はいっぱい望んでいる
私にはなぜだか分からない
私は元気をなくし
とっても調子がいいふりをする
そうしかできないのよ
{Refrain}
Je voudrais me sentir loin d'ici
Fuir la vie de chaque jour
Et peut-être en m'évadant ainsi
Y trouverais-je l'amour
Les bourgeons des marronniers
De mon enfance,
L'aubépine la jacinthe et les lilas blancs
En vain me chantent leur romance
Douterais-tu du printemps ?
Tout est si joyeux
Pourtant je suis malheureuse
D'où me vient tout ce tourment
O mon ami c'est le printemps
ここから遠いところにいると感じたい
毎日の生活から逃れたい
そしてたぶんこんな風に逃避して
そこに私は見出すかしら、愛を
私の子どもの頃のマロニエの芽を、
サンザシ、ヒヤシンスや白いリラは
私にそれぞれの恋歌を歌うけれどそれは虚しいこと
あなたは春を疑うことなんてあるの?
すべてがとっても楽しいもの
でも私は不幸
この悩みがぜんぶ私にやって来た出どころ
おお友よ それは春なのよ

[注] 歌詞サイトにある歌詞はすべてステイシー・ケント版のようだ。ジャクリーヌ・フランソワの歌の第2節(文字色を変えた部分)は私が聞きとって加えた。間違いがあるかも知れないことをお断りしておく。また第3節7行目のla jacintheとl'aubépineは彼女の歌に合わせて順を入れ替えた。ステイシー・ケントは、その第2節は歌っていない。第3節のあと、スキャットと演奏を入れ、再び第3節をジャズ的なアレンジで歌っている。
1 par(天候・時間に用いられる場合は)「…の中を、…の時に、…のおりに」
2 この行と次行は聴き直して修正した。
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「日曜日はきらいJe hais les dimanches」は、1950年にシャルル・アズナブールCharles Aznavour がエディット・ピアフEdith Piafのために作詞し、フロランス・ヴェランFlorence Véranが作曲した曲ですが、ピアフは最初、歌詞内容に辟易してか、この曲を歌うことを拒否します。そこで、この曲を気に入ったジュリエット・グレコJuliette Grécoが譲り受けて歌ったところ、1951年のSASEMのエディット・ピアフ賞を受賞してしまいます。「あんないい曲をあげちゃうなんて!」とピアフはアズナブールをなじり、同年、ようやく自分も歌う気になったとか。今でも、グレコの歌のほうが知られていますが、ピアフの歌を聴いてみると、優劣ということではなく、彼女のために作られた曲だという感じが確かにします。
ちょっとインパクトの強いタイトルですが、日曜日を特別なものに考えるのは嫌いだけど、あなたは日曜日も働くというのはやめて、ただ二人でのんびり過ごす時間を楽しむ日にしましょうよ、ということを言いたいようです。
なお、ラファエルRaphaëlという人気の若手歌手が歌っているのは、同名ながら別の曲です(→こちら)。
ジュリエット・グレコ
エディット・ピアフ
Je hais les dimanches 日曜日はきらい
Juliette Gréco ジュリエット・グレコ
Tous les jours de la semaine
Sont vides et sonnent le creux 注1
Bien pire que la semaine 注2
Y a le dimanche prétentieux 注3
Qui veut paraître rose
Et jouer les généreux 注4
Le dimanche qui s'impose
Comme un jour bienheureux
1週間のすべての日は
空っぽで虚しい
でも平日よりひどいことに
もったいぶった日曜日は
バラ色に見せかけようとし
気前のいいふりをしようとする
日曜日は
幸せに満ちた日だと思われている
Je hais les dimanches !
Je hais les dimanches !
日曜日はきらいよ!
日曜日はきらいよ!
Dans la rue y a la foule
Des millions de passants
Cette foule qui marche
Comme à un enterrement
L'enterrement d'un dimanche
Qui est mort depuis longtemps.
街には群衆がいる
何百万もの通行人が
この群衆は通り過ぎる
無関心な様子で
この群衆は進む
お葬式に向かうみたいに
とっくの昔に死んだ
日曜日のお葬式に

Je hais les dimanches !
Je hais les dimanches !
日曜日はきらいよ!
日曜日はきらいよ!
Tu travailles toute la semaine et le dimanche aussi
C'est peut-être pour ça que je suis de parti-pris 注5
Chéri, si simplement tu étais près de moi
Je serais prête à aimer tout ce que je n'aime pas.
あなたは全週日そして日曜日にも働くのね
たぶんわたしの考えが偏ってるのかもしれないけど
あなた、ただわたしのそばにいてさえくれたなら
わたしが好きじゃないものだってぜんぶ愛せるわよ。
Les dimanches de printemps
Tout flanqués de soleil
Qui effacent en brillant
Les soucis de la veille
Dimanche plein de ciel bleu 注6
Et de rires d'enfants
De promenades d'amoureux
Aux timides serments
春の日曜日は
陽光につつまれ
その輝きのうちに
昨日の心配事も
消し去ってくれる
日曜日には青空がいっぱいに広がり
子どもたちの笑いであふれ
おずおずと愛を誓おうとする
恋人たちの散策であふれ

Et de fleurs aux branches
Et de fleurs aux branches
そして木の枝には花々があふれる
そして木の枝には花々があふれる
Et parmi la cohue
Des gens, qui, sans se presser,
Vont à travers les rues
Nous irions nous glisser
Tous deux, main dans la main
Sans chercher à savoir
Ce qu'il y aura demain
N'ayant pour tout espoir 注7
人ごみにまぎれて
急ぐことなく、
通りを横切る人たちがいる
わたしたちも入り込みましょう
二人で手に手をとって
明日なにがあるかなんて
考えようとしないで
ただひとつ望むのは
Que d'autres dimanches
Que d'autres dimanches
別の日曜日だけ
別の日曜日だけ

Et tous les honnêtes gens
Que l'on dit bien-pensants
Et ceux qui ne le sont pas
Et qui veulent qu'on le croie
Et qui vont à l'église
Parce que c'est la coutume
Qui changent de chemise
Et mettent un beau costume
そして保守的だといわれる
律儀な人たちすべて
そしてそうじゃない人たち
そしてそう思われたいと望んでいる人たち
そしてそれが習慣だというわけで
教会に行く人たち
シャツを着替え
きれいな服を着る人たち
Ceux qui dorment vingt heures
Car rien ne les en empêche
Ceux qui se lèvent de bonne heure
Pour aller à la pêche
Ceux pour qui c'est le jour
D'aller au cimetière
Et ceux qui font l'amour
Parce qu'ils n'ont rien à faire
誰にも邪魔されないからって
20時間も眠り続ける人たち
釣に出かけるために
早起きする人たち
墓参りする日だと
決まっている人たち
他にやることがないから
セックスする人たち
Envieraient notre bonheur 注8
Tout comme j'envie le leur 注9
D'avoir des dimanches
De croire aux dimanches
D'aimer les dimanches
Quand je hais les dimanches ...
そうした人たちはわたしたちの幸福を妬むでしょう
わたしがその人たちの幸福を
日曜日を持ち
日曜日を信じ
日曜日を愛すという幸福を妬むように
わたしは日曜日がきらいだなんだけど…
[注]
1 sonner le creux=sonner creux「うつろな音を立てる」
2 pire「より悪い」を強調する場合、beaucoupやplusでなく、bien やcent foisを用いる。
3 (Il) y a…qui…「…が…である」
4 jouer「…を気取る」。les généreux「気前のいい人たち」
5 être de parti-pris「考え方が偏っている」
6 このpleinに、次節のde fleurs までがつながっている。
7 pour tout+無冠詞名詞「唯一の…として」。ne…que「…しかない」の構文で、次節につながる。
8 envieraientの主語は、それまでに挙げられている人たちすべて。
9 tout comme「全く同様に」
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今回はギー・マルシャンGuy Marchandの「運命Destinée」。彼は1937年にパリで生まれた俳優・歌手・ミュージシャンで、ピアノ、サキソフォン、クラリネットも演奏します。ジャンルはジャズとタンゴがメイン。
この曲は、以前取り上げたジョー・ダッサンの「インデアン・サマーL'été indien」(1975年)ととても似ていますが、実際、そのメロディーをひっくり返す形で作られたといわれます。1982年にギー・マルシャンが出演したコメディー「ザ・カンニング アルバイト情報Les sous-doués en vacances」のために自身が作詞し、ウラジミール・コスマVladimir Cosmaとともに作曲したもので、科学者にラヴ・マシーンを作らせ、ダンスを踊る男女に二人の愛情波が最高になるような曲を聴かせる、という場面でこの曲が登場します。
まだ会えない運命の人に熱烈に呼びかけます…でも会えずに終わってしまう…といった内容の歌詞。コミカルな意図を含みつつも、平凡な出逢いまでも奇蹟に変えてしまうような力を持っていて、誰かに歌ってもらいたい、あるいは誰かに歌って聴かせたい気もしてしまいます。またメロディーも1度聴くとなぜか耳に残る魅力があり、その後さまざまな別の歌詞でも歌われています。
ともかく男性の立場の歌ですから、ホワイトデ-の今日を選びました。が、ホワイトデ-とはそもそも何?とウィキペディアを調べましたら、やはり日本の企業の発案。中国語では「白色情人節」と言うそうです。そしてこの記事で面白かったのは「関連項目」の欄。別れ話を切り出すのに最適な日というのが、5月13日のメイストームデーだそうです。この日は別れを歌った曲を取り上げる予定に。
Destinée 運命
Guy Marchand ギー・マルシャン
Destinée,
On était tous les deux destinés 注1
A voir nos chemins se rencontrer
A s'aimer sans demander pourquoi
Toi et moi
運命なんだ、
僕らは二人とも運命づけられてるんだ
僕たちの道が交わるように
なぜと問うことなく愛し合うように
君と僕は
Destinée,
Inutile de fuir ou de lutter
C'est écrit dans notre destinée
Tu ne pourras pas y échapper
C'est gravé
運命なんだ、
逃げてもあらがっても無駄だ
僕たちの運命に記されているんだ
君は免れることはできないんだ
それは刻まれているんだ

{Refrain :}
L'avenir,
Malgré nous doit toujours devenir 注2
Tous nos désirs d'amour inespérés, imaginés, inavoués
Dans la vie,
Aucun jour n'est pareil tu t'ennuies
Tu attends le soleil impatiemment, éperdument, passionnément.
未来は、
常に僕たちの思いと異なるようになる
僕たちの恋の望みは、予想以上の、想像上の、意識できないものだ
人生では、
どの日だってこんなじゃなくて君はうんざりしている
君は太陽を、じりじりしながら、気も狂うほどに、熱烈に待ちわびている
Destinée,
Depuis longtemps j'avais deviné
Qu'à toi l'amour allait m'enchaîner
Quand je rencontrerai quelque part, ton regard,
運命なんだ、
ずっと前から僕は分かっていた
愛が僕を君に結び付けるだろうって
どこかで、僕が君の視線と出合ったときに、

Destinée,
Où es tu toi qui m’es destinée
Si jamais vous vous reconnaissez
Je voudrais vous entendre crier 注3
M'appeler
運命なんだ、
僕と運命づけられている君はどこにいるんだ?
ひょっとしてあなたが自分がそうなんだと分かったら
叫んでほしい
僕を呼んでほしい
{Refrain}
Destinée,
Encore une fois le cœur déchiré
Je suis un clown démaquillé
Le grand rideau vient de se baisser
Sur l'été 注4
運命なんだ、
また再びこころは張り裂ける
僕は化粧を落としたピエロだ
大きな幕が下りたところだ
夏に
Destinée,
On était tous les deux destinés
A voir nos chemins se rencontrer
A s'aimer sans demander pourquoi
Toi et moi
運命なんだ、
僕らは二人とも運命づけられてるんだ
僕たちの道が交わるように
なぜと問うことなく愛し合うように
君と僕は
{Refrain}
Destinée,
On était tous les deux destinés
A voir nos chemins se rencontrer
A s'aimer sans demander pourquoi
Toi et moi
運命なんだ、
僕らは二人とも運命づけられてるんだ
僕たちの道が交わるように
なぜと問うことなく愛し合うように
君と僕は

Destinée
Inutile de fuir ou de lutter
C'est écrit dans notre destinée
Tu ne pourras pas y échapper
C'est gravé
運命なんだ、
逃げてもあらがっても無駄だ
僕たちの運命に記されているんだ
君は免れることはできないんだ
それは刻まれているんだ
Destinée
Encore une fois le cœur déchiré
Je suis un clown démaquillé
Le grand rideau vient de se baisser
Sur l'été
運命なんだ、
また再びこころは張り裂ける
僕は化粧を落としたピエロだ
大きな幕が下りたところだ
夏に
[注]
1 tous les deux は挿入されており、onがnousの代用なので、受動態の過去分詞はdestinésと複数形になり、3行目と4行目のà…につながる。なお、題名および冒頭のDestinéeは名詞。
2 通常の語順に直すと、L'avenir doit toujours devenir malgré nous
3 vousは不特定な人々への呼びかけとして用いられている。
4 前回のユーグ・オーフレイHugues Aufrayの「また春が来たらDès que le printemps revient」では、春が恋の季節だったが、フランスではもっぱらヴァカンスシーズンの夏が恋の季節。夏の上にカーテンが下りるというのは、すなわち恋の季節に幕が下りるということ。秋が恋の終りだということも、多くの歌のテーマになっている。
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今回は、ユーグ・オーフレイHugues Aufrayの「また春が来たらDès que le printemps revient」。
オーフレイは、1929年に、ブーローニュの森の北側にあるベッドタウン、ヌィイ=シュール=セーヌNeuilly-sur-Seineで生まれました。人種差別や排他主義に異議を唱え、旅や友情や同胞愛などのテーマを詩的に歌い上げるシンガー・ソングライターで、ボブ・ディランBob Dylanを初めてフランスに紹介し、フランス語に翻案して歌った歌手として、アメリカンフォークの影響を受けた曲風のギタリストとしても知られます。ジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensやセルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgなどのフランスの歌手たちの曲を歌いますし、スペインの民族音楽や英国や南米の音楽、さらには黒人音楽(ゴスペル、ブルース)やロックなどもレパートリーに加えています。つまりは世界中の音楽をこなすわけです。1964年のユーロヴィジョン・コンクールconcours Eurovision de la chansonにルクセンブルグ代表としてこの曲で出場し、4位に入賞しました。現在も活動を続けています。
Dès que le printemps revient また春が来たら
Hugues Aufray ユーグ・オーフレイ
Les filles sont jolies
Dès que le printemps est là
Mais les serments s´oublient
Dès que le printemps s´en va
Là-bas dans la prairie
J´attends toujours, mais en vain
Une fille en organdi
Dès que le printemps revient.
娘たちは美しい
春になると
だが誓いは忘れ去られる
春が過ぎると
ここ、野原で
僕はずっと待っている、虚しくも
オーガンディを着た娘を
また春が来たら。

{Refrain:}
Non, le temps n´y fait rien
Oh non, le temps n´y peut rien
いや、時は何もしやしない
いやいや、時は何もできやしない
Je repense à ses yeux
Dès que le printemps est là
Je revois nos adieux
Dès que le printemps s´en va
Mais son image rôde
Au détour de mon chemin
Quand les soirées se font chaudes
Dès que le printemps revient.
僕は彼女の瞳をまた思う
春になると
僕たちの別れをまた目にする
春が過ぎると
だが彼女の姿がつきまとう
僕の辿る道々で
だけど夜は熱くなる
また春が来たら

Je crois la retrouver
Dès que le printemps est là
Je cesse d´y rêver
Dès que le printemps s´en va
Après bien des hivers 注
Pourtant mon cœur se souvient
Comme si c´était hier
Dès que le printemps revient.
僕はまた彼女を見つけられると信じる
春になると
僕はそのことを夢見るのをやめる
春が過ぎると
長い冬を越しても
僕の心は覚えている
まるで昨日のことのように
また春が来たら。
Parfois je veux mourir
Dès que le printemps est là
Je crois toujours guérir
Dès que le printemps s´en va
Mais je sens la brûlure
D´une douleur qui m´étreint
Comme une ancienne blessure
Dès que le printemps revient {x2}
時々僕は死にたくなる
春になると
いつも治ると信じる
春が過ぎると
だが僕を締め付ける苦しみが
古い傷のように
この身を焦がすのを感じる
また春が来たら
[注] bienは強意の意味。hiverが複数形であるのも同様。
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「古きパリの岸辺でSur les quais du vieux Paris」というとっても優しい曲は、1936年に、ルイ・ポトラLouis Poteratが作詞し、ラルフ・エルウィンRalph Erwinが作曲し、ジャン・サブロンJean Sablonが歌いました。そしてリュシエンヌ・ドリールLucienne Delyleが1939年に歌ってヒットし、彼女のほうが創唱者とみなされるようになりました。後年、ジュリエット・グレコJuliette Grécoもレパートリーにしています。
リュシエンヌ・ドリール
ジュリエット・グレコ
Sur les quais du vieux Paris 古きパリの岸辺で
Lucienne Delyle リュシエンヌ・ドリール
Quand doucement tu te penches
En murmurant "C’est dimanche,
Si nous allions en banlieue faire un tour
Sous le ciel bleu des beaux jours? "
Mille projets nous attirent,
Mais, dans un même sourire,
Nous refaisons le trajet simple et doux
De nos premiers rendez-vous
あなたが「きょうは日曜日だね、
好天の青空のもと 郊外をひと回りしようか?」と
ささやきながら優しく身をかがめるとき
たくさんのプランがわたしたちを引きつける、
でも、同じ微笑みを浮かべながら、
わたしたちはふたりの最初のランデヴーと同じ
単純ですてきな道のりをまた辿る

{Refrain:}
Sur les quais du vieux Paris,
Le long de la Seine
Le bonheur sourit,
Sur les quais du vieux Paris,
L’amour se promène
En cherchant un nid.
Vieux bouquiniste,
Belle fleuriste
Comme on vous aime,
Vivant poème!
Sur les quais du vieux Paris,
De l’amour bohème
C’est le paradis
古いパリの岸辺では、
セーヌ川に沿って
しあわせが微笑む、
古いパリの岸辺では、
ねぐらをもとめて
恋がそぞろ歩きする。
年老いた本屋、
美人の花売り
あなた方がとっても好きよ、
生きている詩ですもの!
古いパリの岸辺では、
自由気ままな恋の
それは天国

Tous les vieux ponts nous connaissent, 注
Témoins des folles promesses,
Qu’au fil de l’eau leur écho va conter
Aux gais moineaux effrontés
Et, dans tes bras qui m’enchaînent,
En écoutant les sirènes,
Je laisse battre, éperdu de bonheur,
Mon cœur auprès de ton cœur
古い橋はみなわたしたちを知っている、
浮いた約束ごとの証人よ、
水の流れに乗ってそのこだまは語ろうとする
厚かましい陽気な雀たちに
そしてわたしをつなぎとめるあなたの腕に抱かれ、
水の精たちの歌声を聞きながら、
しあわせに酔いしれて、わたしは胸をときめかせる
あなたの胸の傍らで
{au Refrain}

[注] 最後の画像はセーヌ川に架かる橋ポンデザール Pont des Arts。「古い橋はみなわたしたちを知っている、浮いた約束ごとの証人よ」と訳した部分との関連で出した。2008年頃より、この橋で恋人同士が永遠の愛を誓い、南京錠に二人の名前を書いて欄干の金網に取り付けて鍵をかけ、その鍵をセーヌ川に投げ込む「愛の南京錠」が流行した。錠前の重さは橋全体で50トンを超えるとの試算もあり、2014年6月には欄干の金網の一部が崩れて橋が一時閉鎖される事態になった。このため、パリ市当局は、南京錠が取り付けられないように、欄干の金網をアクリル板に置き換えることを決定している。橋は終わった恋の重みも支え続けなきゃならない…?
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2011年(平成23年)3月11日(金)14時46分18.1秒から4年経った今、ミッシェル・デルペッシュMichel Delpechのこの曲を。原題La maison est en ruineは「家は崩壊した」の意味ですが、一般的な邦題「哀しみの終わりに」を用いることにいたします。1974年のアルバムLe chasseurに収録。レーモン・ルフェーヴルRaymond Lefèvreのオーケストラ演奏でも知られています。先に取り上げた「ロレットの店でChez Laurette」の記事でデルペッシュについて少々解説していますので参照ください。
La maison est en ruine 哀しみの終わりに
Michel Delpech ミッシェル・デルペッシュ
Avant l’inondation, c’était notre maison
C’était notre jardin
On avait réussi à se faire une vie
Et nous n’avons plus rien
Regarde nos pommiers, ils n’ont pas résistés
Aux forces du torrent
On ne voit plus d’oiseaux, il n’y a que de l’eau
Et puis du vent
洪水の前は、これが僕らの家だった
僕らの庭だった
僕らは自分たちの生活をまっとうに営んでいた
だが僕らはもう何も持っていない
うちのリンゴの木をごらん、抗い得なかったんだ
水の勢いに
もう鳥たちの姿も見えず、水と
そして風しかない

Allez viens mon amour
Là-haut sur la colline
Regarde, la maison est en ruine
Il faut l’abandonner
Et tu te fais du mal à pleurer 注1
Nous avons des amis là-haut sur la colline
On en a dans les villes voisines
On est sûr de trouver quelqu’un qui voudra bien
Nous aider
行こうよ お前
向こうの丘の上に
ごらん、家は壊れてしまった
あきらめなきゃならない
だからお前は涙が出るほど辛い
向こうの丘の上には仲間がいる
隣の町々にもいる
僕たちを助けてくれる誰かが
きっと見つかる
On a vu bien des gens comme nous maintenant
Qui avaient tout perdu, ils vont bien quelque part
Je voudrais bien savoir ce qu’ils sont devenus
Tu sais je n’ai pas peur, il y a peut-être ailleurs
Des coins plus beaux qu’ici
Regarde la vallée, le village est noyé
Tout est fini
僕らのような人々にもうたくさん会った
すべてを失った人々に、彼らはどこかに行く
彼らがどうなったか知りたい
僕は恐れていないよ、たぶんほかに
ここよりもきれいなところがあるさ
谷間をごらん、町は水に沈んだ
すべては終わった
Allez viens mon amour
Là-haut sur la colline
Regarde, la maison est en ruine
Il faut l’abandonner
Et tu te fais du mal à pleurer
Nous avons des amis là-haut sur la colline
On en a dans les villes voisines
On est sûr de trouver quelqu’un qui voudra bien
Nous aider
行こうよ お前
向こうの丘の上に
ごらん、家は壊れてしまった
あきらめなきゃならない
だからお前は涙が出るほど辛い
向こうの丘の上には仲間がいる
隣の町々にもいる
僕たちを助けてくれる誰かが
きっと見つかる
Allez viens mon amour
On recommencera
Il me reste mon cœur et mes bras
La maison mon amour, on la rebâtira
Toi et moi
行こうよ お前
やり直そう
僕には気力も体力も残っている
家は、お前、建て直すさ
お前と僕とで

Allez viens mon amour
Là-haut sur la colline
Regarde, la maison est en ruine…
行こうよ お前
向こうの丘の上に
ごらん、家は壊れてしまった…
[注]
1 se faire du mal本来は「自分の体を痛くする、けがをする」の意味。ここでは、「自分の心を痛める」。à pleurer「涙が出るほど、非常に」
2 bien des gens「多くの人」
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リアンヌ・フォリーLiane Folyは、1962年にリヨンで生まれた歌手。両親はフランス領アルジェリアへ移住していたフランス人移民で、アルジェリアの独立に伴い帰国。音楽一家だったので幼い頃からピアノや音楽の基礎、そしてクラシック・ダンスを学び、早くから地元のバーやクラブで歌っていました。1984年からプロ活動を開始し、オリジナル曲のほか、さまざまな歌手のカヴァー曲も数多く録音し、ジャズやブルースも得意とし、独特の味のある歌い方が人を弾きつけます。また、女優としても活躍し、テレビで司会や物真似もこなします。
今回取り上げるのは「ゆるやかにDoucement」(作詞:フィリップ・ヴィエンネPhilippe Viennet、作曲:アンドレ・マヌキァンAndré Manoukian)。1993年にシングル版でリリースされ、翌94年のアルバムLumièreに収録されました。
Doucement ゆるやかに
Liane Foly リアンヌ・フォリー
J´ai beau chercher ta trace à travers les jours qui s´écument 注1
Traîner sur les terrasses ou me balader sur la Lune
J´ai beau changer d´espace m´inventer d´autres quais des Brumes
Rien de nous deux s´efface malgré le temps et l´amertume
泡のように儚い日々 あなたの足跡を追い求めても
テラスを歩き回りあるいは月面を彷徨っても何にもならない
居所を違えあらたな霧の港を創り出しても何にもならない
私たち二人のことは時の経過にも辛さにもかかわらず何も消えない

J´ai beau chercher sans cesse à travers les astres et les lois
Les erreurs, les faiblesses qui ont témoigné contre moi
J´en voulais des promesses elles m´ont toutes éloigné de toi
Elles ont tué l´ivresse qui claquait au bout de nos doigts
私に不利な証言をした過ちや弱さを
運勢や法則に照らして探し回ってみても何にもならない
そうして今後の見込みを得たかったがその見込みは私をあなたから遠ざけ
陶酔を抹殺し私たちの指先で陶酔は砕け散った
{Refrain:}
Et doucement, j´oublierai tout doucement 注2
Je f´rai semblant doucement
En attendant ton retour, comme dans une vieille chanson d´amour
そしてゆるやかに、私はすべてをゆるやかに忘れていくだろう
私は心おだやかなふりをするだろう
あなたの帰りを待ちながら、古い恋の歌に歌われるように

J´ai beau chercher des rimes à travers les lignes du destin
Entrevoir d´autres signes perchés sur les monts Tibétains
Mais elles sont hautes les cimes quand on a le cœur orphelin
Y a que dans les contes de Grimm que les histoires se finissent bien
辿ってきた運命に法則性を探しても
チベットの山々の上に現れたあらたな印をかいま見ても何にもならない
だがみなしごの心を持ったときには山頂の高みにそれらの印はある
グリムの童話にはめでたい結末の話がある
{Refrain×2}
[注]
1 avoir beau+inf.「たとえいくら…しても(無駄である)」
2 doucementは「静かに、穏やかに、徐々に、ゆっくりと、心地よく、優しく」といった幅広い意味を持ち、この行および邦題は「ゆるやかに」としたが、次行は「心おだやか」とした。同じ訳語を用いたいところだったが。
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気が向くままに選曲していますので、マイナーな曲を出すことが多くなりがちですが、今回は、シャルル・トレネCharles Trenetの「風うたいChante le vent」(1965年)という、知る人ぞ知る(知らない人は知らない?)曲です。1965年にEP盤で出され、翌66年のアルバムRachel dans ta maisonに収録されています。
動画は私が作りました。
Chante le vent 風うたい
Charles Trenet シャルル・トレネ
On l’appelait
Chante le vent
Il venait nous voir bien souvent
A Saint-Jérôme 注1
On l’aimait bien
Chante le vent
Le musicien
D’où venait-il?
On n’savait pas
Il nous disait
Je viens d’là-bas
De l’autr’ côté
De l’horizon
Là où se changent les saisons
Chante le vent
Chante le vent
Disaient les filles au cœur rêvant
私たちは彼を
風うたいと言う
彼はしばしば私たちに会いに来る
サン=ジェロームに
私たちは彼をとても愛している
風うたいという
ミュージシャンを
彼はどこから来たのか?
私たちは知らない
彼は私たちに言っていた
僕はあっち
地平線の
向こう側からやって来たと
そこでは季節が違っているんだと
風うたい
風うたいと
娘たちは夢みごこちで言うのだった
On faisait cercle autour du feu
Pour écouter ses airs joyeux
Et la Julie la belle enfant
Buvait les mots de Chante le vent
Elle fredonnait avec douceur
Pendant que nous chantions en chœur
Et tous ensemble on comprenait
Que la Julie d’amour aimait
Chante le vent
Chante le vent
Il est à toi ma belle enfant
私たちは火のまわりで輪をつくった
彼の楽しい歌を聴くために
そして美しい娘のジュリーは
風うたいの言葉に聞きほれた
彼女は優しく口ずさんでいた
私たちが声を合わせて歌っているあいだ
そしてみんなは理解した
恋するジュリーが
風うたいに
風うたいに恋していることを
彼はおまえ、わが美しい娘のものなんだ

Pourtant un jour dans sa chanson
Chante le vent eut un frisson
Il nous parla d’un autre amour
Qui lui faisait le cœur trop lourd
Quand il partit sur son cheval
Disparut dans l’ombre du val
On regarda la pauvre Julie
Qui avait perdu l’amour d’sa vie
Chante le vent
Chante le vent
Ne reviendra plus comme avant
だがある日 歌いながら
風うたいは身を震わせた
彼は心にのしかかっている
別の恋のことを私たちに語った
彼が馬に乗って去って行き
谷間の陰に姿を消したとき
いのちをかけた恋を失った
かわいそうなジュリーを私たちは見た
風うたい
風うたいは
もう以前のように戻って来はしないだろう

Dans sa chambrette ensoleillée
Julie ne s’est pas réveillée
Nous l’avons conduite un matin
Au repos des bénédictins
Quelqu’un m’a dit qu’il a cru voir
Sur la colline un cheval noir
Ainsi qu’un homme qui repartit 注2
Sitôt qû’en terre elle descendit
Adieu donc pauvre Julie
Toi qui l’aimais à la folie
Déjà de cette histoire ancienne
Combien d’entre nous se souviennent
Hochant la tête, ils disent c’était
Quand ici la joie existait
A présent, y’a plus d’poésie
Plus d’sentiment et plus d’Julie
Et quant au vent hiver, été,
Y’a plus personne pour le chanter
Pleure le vent
Pleure le vent
A Saint-Jérôme fini l’bon temps.
陽の光のさし込む小部屋で
ジュリーは意識を取り戻さなかった
私たちはある朝彼女を
ベネディクト会の安置所に運んだ
誰かが私に言った
丘の上に黒い馬と
ひとりの男を見た気がすると
彼女が埋葬されてまもなく
男は帰って行ったと
さようならかわいそうなジュリー
狂おしく彼に恋していたおまえ
この古い話を
私たちのうちどれだけ多くの者が思いだすことか
うなずきながら、皆は言う
それはここに喜びがあったときのことだ
今では、もう詩情も
感情もジュリーも消えてしまった
そして冬の、また夏の風に関しても、
それを歌う人はもういないと
風が泣く
風が泣く
サン=ジェロームではいい時代は終わった

[注]
1 Saint-Jérômeはカナダ、ケベック州の町の名だと思われる。1945年頃からトレネはケベックを訪れて、そこからインスピレーションを受けた曲を複数出している。
2 ainsi que=et, et aussi「そしてまた」
Comment:2

作曲家ジョゼフ・コズマJoseph Kosmaは、ジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩によるシャンソンを50曲以上作曲し、イヴ・モンタンYves Montand、レ・フレール・ジャックLes Frères Jacques、ジュリエット・グレコJuliette Gréco、エディット・ピアフÉdith Piaf、コラ・ヴォケールCora Vaucaire、マルセル・ムルージMarcel Mouloudjiらが歌いました。
もっとも知られているのが「枯葉Les feuilles mortes」「バルバラBarbara」で、そのほかに、「美しい星でÀ la belle étoile」「葬式に行くカタツムリの唄Deux escargots s'en vont à l'enterrement」「くじら釣りLa pêche à la baleine」「朝の食事Déjeuner du matin」「庭Le jardin」「夜のパリParis at night」「愛し合う子どもたちLes enfants qui s'aiment」「魔性と驚異Démons et merveilles」「看守の歌Chanson du geôlier」「学習帳Page d'écriture」「子どものための冬の歌Chanson pour les enfants l'hiver」「学校から出てきたらEn sortant de l'école」「外国の祭Fête foraine」「血まみれの歌Chanson dans le sang」「目録Inventaire」「鳥の絵を描くためにPour faire le portrait d'un oiseau」「五月の歌Chanson du mois de mai」「昼も夜もLe jour et la nuit」「パテル・ノステルPater noster」「歌Chanson」「僕の家でDans ma maison」「手回しオルガンL'orgue de barbarie」「劣等生Le cancre」「祭La fête」「演奏会は失敗だったLe concert n'a pas été réussi」「はがねの娘Fille d'acier」「ある朝Un beau matin」「寓話Fable」「心配の鳥Les oiseaux du souci」「鳥さしの唄Chanson de l'oiseleur」「そして祭は続くEt la fête continue」「殆どPresque」「絶望がベンチに座っているLe désespoir est assis sur un banc」「この愛Cet amour」「割れた鏡Le miroir brisé」「ひまわりTournesol」「夜の物音Les bruits de la nuit」「主顕節Epiphanie」「大きな赤いImmense et rouge」「ノックしているOn frappe」「子ども狩りChasse à l'enfant」「美しい季節La belle saison」「わたしはわたしよJe suis comme je suis」「幼年時代L'enfance」「灯台守Le gardien de phare」などがあります。
そのほかに、アンリ・クロラHenri Crolla作曲の「サンギーヌSanguine」「ブロードウェイの靴みがきLes cireurs de souliers de Broadway」、ワル・ベルグWal-Berg作曲の「私を抱いてEmbrasse-moi」、クリスティアーヌ・ヴェルジェChristiane Verger作曲の「誰かQuelqu'un」など、他の作曲家の曲も複数あります。
コズマとプレヴェールのコンビの最初の曲となったのが、1935年の「美しい星でÀ la belle étoile」で、ジュリエット・グレコJuliette Grécoが歌いました。この詩は、1946年の詩集「物語Histoires」に収録され、この曲は1966年にテレビ映画で使われました。
À la belle étoile 美しい星で
Juliette Gréco ジュリエット・グレコ
Boulevard de la Chapelle
Où passe le métro aérien
Il y a des filles très belles
Et beaucoup de vauriens
Des clochards affamés
S´endorment sur les bancs
Et de vieilles poupées
Font encore le tapin 注1
À soixante-cinq ans
ラ・シャペル通りは
メトロの高架線が通り
とってもきれいな娘たちと
大勢の不良たちがいる
腹ペコのルンペンたちは
ベンチで寝ている
そして年取ったお嬢が
まだ春をひさぐ
65歳で

{Refrain:}
Au jour le jour 注2
À la nuit la nuit
À la belle étoile
C´est comme ça que je vis
Où est-elle, l´étoile?
Moi, je ne l´ai jamais vue
Elle doit être trop belle
Pour le premier venu
Au jour le jour
À la nuit la nuit
À la belle étoile
C´est comme ça que je vis
C´est une drôle d´étoile
C´est une triste vie
なんとか一日一日
なんとか一晩一晩
美しい星で
こんなぐあいに僕は生きてるのさ
どこにあるんだ、星は?
僕はね、見たことなんかないよ
星は美しすぎるにちがいない
新参者にとっちゃ
なんとか一日一日
なんとか一晩一晩
美しい星で
こんなぐあいに僕は生きてるのさ
変な星だよ
哀れな暮らしだよ
Boulevard Richard Lenoir
J´ai rencontré Richard Leblanc
Il était pâle comme l´ivoire
Et perdait tout son sang
"Tire-toi d´ici! Tire-toi d´ici!"
Voilà ce qu´il m´a dit
"Les flics viennent de passer
Histoire de se réchauffer 注3
Ils m´ont assaisonné"
リシャール・ルノワール通りで
僕はリシャール・ルブランに出会った
彼は象牙のように蒼白くて
血の気がぜんぶ失せ
「ここからズラかれ!ここからズラかれ!」
僕にそう言ったんだ
「ポリ公たちが来やがった
景気づけに
やつらは俺を痛めつけたんだ」

Au jour le jour
À la nuit la nuit
À la belle étoile
C´est comme ça que je vis
なんとか一日一日
なんとか一晩一晩
美しい星で
こんなぐあいに僕は生きてるのさ
Boulevard des Italiens
J´ai rencontré un Espagnol
Devant chez "Dupont – Tout est bon"
Après la fermeture
Il fouillait les ordures
Pour trouver un croûton
"Encore un sale youpin"
Dit un monsieur très bien 注4
"Qui vient manger notre pain!"
イタリアン大通りで
僕はスペイン人に出会った
「なんでも旨いデュポン亭」の店の前で
閉店のあと
ヤツはゴミ箱をあさる
パンの切れ端を見つけようと
「また汚ねえユダヤ人めが」
ご立派なダンナが言う
「うちのパンを食いに来やがった!」

{au Refrain}
Boulevard de Vaugirard 注5
J'ai aperçu un nouveau-né
Au pied d'un réverbère
Dans une boîte à chaussures
Le nouveau-né dormait dormait
Ah ! quelle merveille
De son dernier sommeil 注6
Un vrai petit veinard
Boulevard de Vaugirard
ヴォジラール大通りで
僕は生まれたばかりの赤ん坊を見つけた
街灯の下で
靴の箱に入れられて
赤ん坊は眠っていた、眠っていた
ああ!その最後の眠りの
なんという驚異
小さな果報者だ
ヴォジラール大通りで
[注] 題名のla belle étoileとは地球のこと。「手紙を書き給えÉcris-moi 」の記事の注に書いたように、belle (beau)は、「結構な、立派な」ひいては「上辺だけの、嘘の」の意味で反語的に用いられることがある。そうした意味で、小笠原豊樹氏はこの題名を、「へんな星だね」と訳している(河出書房「プレヴェール詩集」)が、私は、反語的なニュアンスも込めて、「美しい星」と訳すことにした。
1 faire le tapin「客引きをする」
2 au jour le jour「その日その日で」
3 histoire de+inf.「…するために」。réchaufferは「温め直す、元気づける、奮い立たせる」という意味で再帰的な用法。少々意訳した。
4 un monsieur très bien「非常に立派な紳士」
5 この節は、元の詩に含まれているが、グレコは歌っていないので色を変えて表記した。
6 son dernier sommeil「彼の最後の眠り」とは、その赤ん坊がまもなく死んでしまうだろうということを表している。だがその眠りはやすらかなものであり、merveille「驚異」、veinard「運のいい人」という肯定的な言葉が、哀れさを示す否定的な言葉よりも説得力を持つ。
Comment:1

リュシエンヌ・ボワイエLucienne Boyerの「聞かせてよ愛の言葉をParlez-moi d'amour」(1930年、作詞・作曲ジャン・ルノワールJean Lenoir)は、シャンソンを歌いたい女性ならかならずトライすべきだと誰かに言われたことがあります。「べき」と言われてかえって歌う気にならなかった私ですが、この古い録音を聴いていると、この耳元でささやきかけるような甘い歌を歌ってみたい気持ちが自然に湧いてきて、気がついたらいつの間にかくちずさんでいます。
3年前に出した動画ですが、私が作ったなかでこれは視聴回数がなぜかダントツです。
リュシエンヌ・ボワイエは1903年にパリのモンパルナスに生まれ、歌手を志す前は、藤田嗣治やキース・ヴァン・ドンゲンKees Van Dongenらの絵のモデルをしていました。その後、キャバレーで歌い始め、現実派シャンソンのイヴォンヌ・ジョルジュYvonne Georgeをお手本にしていましたが、1929年に、ジャン・ルノワールJean Renoir宅で歌のレッスンを受けていた際にこの曲を耳にし、非常に気に入って、ルノワールに歌いたいと申し出ました。パリのキャバーで歌って観客から絶賛され、翌30年にレコーディングし、同年制定されたレコード大賞Grand Prix Du Disqueの受賞第1号となりました。
でも、彼女は、この曲ばかりリクエストされるのに嫌気がさして、3年後に「他のことを言ってParle-moi d’autre chose」(作詞・作曲ジャン・ドレット)というタンゴの曲を出しました。
その後、リュシエンヌは、39年にシンガー・ソングライターのジャック・ピルズJacques Pillsと結婚し、1941に生まれた娘ジャクリーヌ・ボワイエJacqueline Boyerも歌手となりました。1983年にパリで80歳で逝去。
Parlez-moi d'amour 聞かせてよ愛の言葉を
Lucienne Boyer リュシエンヌ・ボワイエ
{Refrain:}
Parlez-moi d' amour
Redites-moi des choses tendres
Votre beau discours
Mon cœur n' est pas las de l' entendre
Pourvu que toujours
Vous répétiez ces mots suprêmes
Je vous aime
愛の言葉をささやいて
もう一度言って 優しいことを
あなたの素敵なお話を
わたしの心は聞き飽きはしない
いつもいつも
このとってもすてきなこの言葉をくり返して
「きみを愛している」と

Vous savez bien
Que dans le fond je n' en crois rien
Mais cependant je veux encore
Écouter ce mot que j' adore
Votre voix aux sons caressants
Qui le murmure en frémissant
Me berce de sa belle histoire
Et malgré moi je veux y croire
あなたはよくご存じのはず
わたしが心の底ではそれを信じていないこと
だけど もう一度
大好きなこの言葉を聞きたい
愛撫するような響きのあなたの声は
その言葉を 震えながらささやいて
美しいお話でわたしの心を揺さぶり
わたしは心ならずもそれを信じたくなる

{Refrain}
Il est si doux
Mon cher trésor, d' être un peu fou
La vie est parfois trop amère
Si l' on ne croit pas aux chimères
Le chagrin est vite apaisé
Et se console d' un baiser
Du cœur on guérit la blessure
Par un serment qui le rassure
とても心地よいものよ
いとしい人、ちょっと浮かれるのもね
人生は ときには辛すぎる
もし わたしたちが妄想のたぐいを信じたりしないなら
悲しみは すぐにおさまり
ひとつの口づけで慰められる
安心をあたえる誓いの言葉で
心の傷は癒される

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先日「君は見るだろうTu verras」(1978年)をご紹介したクロード・ヌガロClaude Nougaroの代表作「トゥールーズToulouse」(1967年、作詞:クロード・ヌガロ、作曲:クリスチャン・シュヴァリエChristian Chevallier、クロード・ヌガロ)を今回取り上げます。トゥールーズの詩人ルシアン・マンゴーLucien Mengaudが1845年にオック語で書いた「トゥールーズ讃歌La Tolosenca (La Toulousaine)」にインスピレーションを受けて作った曲です。この曲を解説したWikipédiaの記事に、ルシアン・マンゴーの詩の一節をヌガロが歌詞に用いたことが示されています。また、歌詞に関連した画像が掲載されていますので覗いて見られるといいでしょう。
ヌガロは、1929年にトゥールーズで生まれたシンガー・ソングライターで、詩人でもありデッサンや絵画にも秀でました。12歳のときにラジオで、グレンミラーGlenn Miller、エディット・ピアフÉdith Piaf、 ベッシー・スミスBessie Smith、ルイ・アームストロングLouis Armstrongを聴いたことが彼を歌手への道に導くことになりました。学業・兵役を終えてから、パリでジャーナリズムの仕事を始め、マルセル・アモンMarcel Amont やフィリップ・クレイPhilippe Clayなどの歌詞を書くようになり、終生の友となるジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensと知り合いました。そして、ピアフの曲を作っていたマルグリット・モノーMarguerite Monnotに自分の歌を送り、1954年にキャバレー・ラパン・アジールle Lapin agileでデヴュー。他の歌手の曲作りもおこないつつ、幾つかのキャバレーで自作の歌を歌ってきました。58年にミッシェル・ルグランMichel Legrandの協力で作られた数曲を初めて録音。続いて62に出したアルバムは大きな評判を得ました。63年に自動車事故で数ヶ月間活動停止し、その翌年からブラジルに旅行。帰国後の67年に「オー・トゥールーズÔ Toulouse」と題したアルバムでこの曲を発表。翌68年にオランピアに出演し、そのステージのファースト・ライブアルバムを69年に出しました。これにもこの曲は含まれています。
その後の活動に関する詳細は省きますが、全活動を通じ、ジャズ、ラテン、アフリカンなどの音楽をシャンソンに融合することに貢献した人物で、88年にはヴィクトワール賞Victoiresの最優秀アルバムおよび最優秀アーティストに選ばれています。2004年にパリで74歳で膵臓癌で亡くなりました。
Toulouse トゥールーズ
Claude Nougaro クロード・ヌガロ
Qu'il est loin mon pays, qu'il est loin
Parfois au fond de moi se raniment
L'eau verte du canal du Midi 注1
Et la brique rouge des Minimes 注2
僕の故郷はなんと遠いんだ、なんと遠いんだ
時おり僕の心の奥で
ミディ運河の緑の水と
ミニムの赤いレンガが息を吹き返す

Ô mon païs, ô Toulouse... 注3
おおわが故郷、おおトゥールーズ
Je reprends l'avenue vers l'école
Mon cartable est bourré de coups de poing
Ici, si tu cognes tu gagnes
Ici, même les mémés aiment la castagne 注4
僕は学校への道を再び辿る
僕のかばんはげんこつでいっぱいだった
ここでは、君が殴ったら君の勝ちだ
ここでは、ばばあたちさえ殴り合いが好きだ
Ô mon païs, ô Toulouse...
おおわが故郷、おおトゥールーズ
Un torrent de cailloux roule dans ton accent 注5

Ta violence bouillonne jusque dans tes violettes 注6
On se traite de con à peine qu'on se traite 注7
Il y a de l'orage dans l'air et pourtant
砂利の奔流がおまえのアクセントのなかに流れる
おまえの荒々しさがおまえのスミレの花々にもたぎっている
人々は出会いがしらにたがいをバカ呼ばわりする
険悪な空気が漂うがしかし
L'église Saint Sernin illumine le soir 注8
D'une fleur de corail que le soleil arrose
C'est peut être pour ça malgré ton rouge et noir 注9
C'est peut être pour ça qu'on te dit Ville Rose 注10
サン・セルナン教会は夕べに輝く
太陽が光を注ぎかけた珊瑚色の花
それはたぶんそのためさ、おまえの赤と黒の激しさにも関わらず
それはたぶんそのためさ、ひとがおまえをバラ色の都市と呼ぶのは

Je revois ton pavé ô ma cité gasconne 注11
Ton trottoir éventré sur les tuyaux du gaz 注12
Est ce l'Espagne en toi qui pousse un peu sa corne 注13
Ou serait ce dans tes tripes une bulle de jazz ?
僕はガスコンヌのわが町におまえの街路を再び見る
おまえの舗道はガス管の上でえぐられている
おまえのなかのこのスペインがそのツノをちょっと生やしたのか
あるいはおまえの腹のなかにあるのはジャズのあぶくか
Voici le Capitole, j'y arrête mes pas 注14
Les ténors enrhumés tremblaient sous leurs ventouses 注15
J'entends encore l'écho de la voix de papa 注16
C'était en ce temps là mon seul chanteur de blues
ここ、市庁で僕は足を止めた
風邪を引いたテノール歌手たちが換気口の下で震えていた
僕はパパの声のこだまをまた聞く
彼は当時、僕には唯一のブルース歌いだった
Aujourd'hui tes buildings grimpent haut
À Blagnac tes avions ronflent gros 注17
Si l'un me ramène sur cette ville
Pourrai-je encore y revoir ma pincée de tuiles 注18
Ô mon païs, ô Toulouse, ô Toulouse...
今ではおまえのビルの群が高く聳え立っている
ブラニャック空港で、おまえの飛行機はでかいいびきをかく
もしも1機がこの街に僕を連れ戻したなら
僕はそこに僕の家の瓦のひとかけらを再び見ることができるだろうか

Ô mon païs, ô Toulouse...
おおわが故郷、おおトゥールーズ
[注] Toulouse「トゥールーズ」は、フランスの南西部に位置するコミューンで、ミディ=ピレネー地域圏Midi-Pyrénéesの首府、オート=ガロンヌ県Haute-Garonneの県庁所在地。この歌詞では自分の故郷であるこの街を擬人化してtu「おまえ」と呼んでいる。
1 Canal du Midi「ミディ運河」。トゥールーズでガロンヌ川Garonneから分岐し、地中海に面したトー湖にいたる全長240km、支流部分も含めた総延長では360 kmに及ぶ運河。17世紀に作られ、大西洋と地中海を結ぶ水路として重要な役割を担ってきた。1996年に文化遺産として世界遺産に登録された。
2 Les Minimes「ミニム」はトゥールーズの地区の名称。ヌガロはここで、父方の祖父母に育てられた。
3 冒頭の解説に書いたが、ルシアン・マンゴーLucien Mengaudの詩の引用である。トゥールーズを含むフランス南部のラングドックLe Languedoc地方ではロマンス語のひとつであるオック語l'occitanが用いられていた。オック語ではpaysをpaïsあるいはpaísと表記する。
4 mémé幼児語で「おばあちゃん」=mamie。castagne「殴り合い」。
5 tonは「トゥールーズの」の意味。この行は、トゥールーズのアクセントがごつごつしているということをあらわしている。
6 スミレの群生地がトゥールーズにあり、ここでの花の生産は非常に重要とされてきたのでトゥールーズはCité des violettes「スミレの街」とも呼ばれる。スミレの花を砂糖で固めたお菓子も特産品。
7 se traiter de…「たがいに相手を…扱いする」。con「ばか、間抜け」。à peine que…「…するやいなや」。
8 この行は前節のet pourtant「だがしかし」からつながる。L'église Saint Sernin :正式名はLa basilique Saint Sernin「サン=セルナン修道院」。市内西部に中世に建てられた建造物でピンクのレンガで作られており、その美しさを次行で「珊瑚色の花」と表現している。
9 rouge et noir「赤と黒」はラテン的な情熱・激しさを表現。
10 Ville Rose「バラ色の都市」トゥールーズ市街の建築はオレンジ色や赤色の暖色系のレンガが特徴であることからこう呼ばれる。
11 トゥールーズの西側から大西洋までの広い地域は昔、Gascogne「ガスコーニュ」と呼ばれた。gasconneはその形容詞。
12 gazはgasconneと語呂を合わせている。ガス管を通すために、近代化のために古き良き物が損なわれたことを表すのだろう。
13 トゥールーズはスペインの影響が強く、フランス国内有数のスペイン人社会を持つ。avoire(porter) des cornes「間男される」という言い回しがあり、「辱める」の意味の古語:escornerから生じたとされるが、pousser (un peu) sa corne「角を生やす」は同様の意味なのか?
14 le Capitole=capitole de Toulouse「トゥールーズ市庁」
15 ventouse「換気孔、通風孔」。医療用の「吸い玉」の意味もある。
16 ヌガロの父親はオペラ歌手。
17 Blagnacは、Aéroport de Toulouse - Blagnac「トゥールーズ=ブラニャック国際空港」すなわちトゥールーズ北西部および隣接するブラニャック西部にまたがって位置する空港のこと。
18 tuileは「瓦」のことだが、pincée「ひとつまみ」という語を加えて、瓦型に焼いたお菓子の「チュイール」のニュアンスを含ませている。
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今回は、カルラ・ブルーニCarla Bruniの、恋人の実名を用いた恋歌「ラファエルRaphaël」。「部屋のなかの空Le ciel dans une chambre」と同様、デビュー・アルバム「風のうわさQuelqu'un m'a dit~」に収録されています。ラファエル・エントーヴェンRaphaël Enthovenは、彼女がそれまで付き合っていた作家・編集者のジャン=ポール・エントーヴェンJean-Paul Enthovenの息子で哲学者。二人のあいだには息子オーレリアンが生まれました。夫をカルラに取られたラファエルの元妻が、それをテーマにした小説「大したことはないRien de grave」を出し、大ベストセラーに。その後、カルラはラファエルと別れ、ニコラ・サルコジNicolas Sarkozyと結婚することになります。元大統領はこの曲がお嫌いだそうです。
Raphaël ラファエル
Carla Bruni カルラ・ブルーニ
Quatre consonnes et trois voyelles c’est le prénom de Raphaël,
Je le murmure à mon oreille et chaque lettre m’émerveille,
C’est le tréma qui m’ensorcelle dans le prénom de Raphaël, 注1
Comme il se mêle au "a" au "e", comme il les entremêle au "l", Raphaël...
4つの子音と3つの母音 それがラファエルの名前、
わたしはそれを自分の耳にささやき それぞれの文字がわたしを目覚めさせる、
ラファエルの名前のなかでわたしを魔法にかけるもの それはトレマ、
それは「a」に「e」に混ざり合って、それらを「l」に交えさせる、ラファエルは…
A l’air d’un ange, mais c’est un diable de l’amour,
Du bout des hanches et de son regard de velours,
Quand il se penche, quand il se penche, mes nuits sont blanches,
Et pour toujours... Hmm
天使の雰囲気を持つ、けれど恋の悪魔、
腰の端で、ビロードのような視線で、
彼が身を乗り出すとき、彼が身を乗り出すとき、わたしは夜を明かし、
そしてずっと…フム

J’aime les notes au goût de miel, dans le prénom de Raphaël,
Je les murmure à mon réveil, entre les plumes du sommeil, 注2
Et pour que la journée soit belle, je me parfume à Raphaël...
Peau de chagrin, peintre éternel, archange étrange d’un autre ciel... 注3
わたしはハニーテイストの響きが好き、ラファエルの名前の、
わたしは目覚めるときにそれらをつぶやく、眠りの羽毛のあいだに、
そしてすてきな一日になるようにと、ラファエルの匂いを身にまとう…
「あら皮」、永遠の画家、異国の空の天使…
Pas de délice, pas d’étincelle, pas de malice sans Raphaël,
Les jours sans lui deviennent ennui, et mes nuits s’ennuient de plus belle. 注4
Pas d’inquiétude, pas de prélude, pas de promesse à l’éternel, 注5
Juste l’amour dans notre lit, juste nos vies en arc-en-ciel, Raphaël...
心地よさも、きらめきも、ちゃめっけも失せるわ ラファエルがいなきゃ、
彼がいない日中は退屈になり、夜はいっそう退屈でたまらない。
心配もなく、下準備もなく、永久の誓いもなく、
即ふたりのベッドでの情事、即ふたりの虹色の生活、ラファエルは…

A l’air d’un sage, et ses paroles sont de velours,
De sa voix grave et de son regard sans détours,
Quand il raconte, quand il invente, je peux l’écouter
Nuit et jour... Hmm
聖人の雰囲気を持つ、そして彼の言葉はビロードのよう、
低い声で、まっすぐな視線で、
彼が語るとき、彼が創作するとき、わたしはそれを聞くことができるわ、
夜も昼も…フム
Quatre consonnes et trois voyelles c’est le prénom de Raphaël,
Je lui murmure à son oreille, ça le fait rire, comme un soleil.
4つの子音と3つの母音 それがラファエルの名前、
わたしは彼の耳にささやき、それが彼を、お日さまのように笑わせる。
[注]
1 tréma「トレマ」は、Raphaël の名のëの部分にある、先行する母音と別に扱う、すなわち別々に発音することを示す記号。
2 les plumes du sommeilは、「羽毛布団、羽毛枕」のことだが、なかば目覚めつつあるまどろみ状態をも表現しているようだ。
3 peau de chagrin「粗皮(あらかわ)、山羊・羊などの皮から作る表面のザラザラしたなめし皮」。ここでは「悲しみの皮膚」といったニュアンスも含まれているようだが、1947年に書かれたオノレ・ド・バルザックHonoré de Balzacの小説「あら皮La peau de chagrin」の主人公の青年の名がRaphaëlであることを言っている。青年は自殺しようとしていたが、「あらゆる望みを叶えることができるが、望みが一つ叶うたびに少しずつ縮んでいき、縮み終ると同時に持主の命も尽きる」という粗皮を手に入れ、欲望が次々と実現し始め、怖くなってなにも欲求すまいと努めるけれどそうはいかず、皮は縮んで命も縮んで行き早過ぎる死を迎える、という話。
Raphaëlはルネッサンス期のイタリアの画家の名でもある。また、ヘブライ語で「神の癒し」を意味し、ユダヤ教からキリスト教へと引き継がれた、癒しを司る大天使の名でもある。
4 de plus belle「いっそう激しく、前よりひどく」
5 promesse à l’éternel「永久の誓い」とはすなわち結婚という形式のこと。
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「シャンゼリゼ通りLes Champs-Élysées」の原曲は、1968年にイギリスで発表されたロックで、ジェイソン・クレストJason Crestというサイケデリック・バンドの「ウォータールー通りWaterloo Road」。1969年に、ピエール・ドラノエPierre Delanoëが、ウォータールー通りをシャンゼリゼ通りに移し替えてフランス語に翻案した歌詞を作り、当時ロンドンに滞在していたジョー・ダッサンJoe Dassin がシャンソンにアレンジして歌い始めました。ジョー・ダッサンは「インデアン・サマーL'été indien」を先にご紹介しています。
1971年にはダニエル・ヴィダルDaniele Vidalもレパートリーに加えました。彼女の曲は、「パリ、ジュテームParis, je t'aime d'amour」を先にご紹介しています。
この曲は、歌詞にaux Champs-Élysées(シャンゼリゼには)という語句があることから、Aux Champs-Élyséesという題名でも呼ばれます。一般的な邦題の「オー・シャンゼリゼ」はその題名を仮名書きにしたもので、「オー」は感嘆詞じゃない。そしてまた、「オ・シャンゼリゼ」と読むのが正しいということですが、確かに普通の文章ならその理屈は通るでしょう。でも、歌を聴くと、ルフランの最初で2回繰り返すところは「オー・シャンゼリゼ」と伸ばして歌っていて、これはひょっとしたら、もともと、語呂合わせjeu de motsで、感嘆詞的な要素を暗に含んでいるんじゃないかとも思います。歌ではよくあることです。ま、私としては珍しく、邦題に「みかた」した「みかた」をしたわけですが、でも最終的には、もともとの題名を直訳して「シャンゼリゼ通り」といたします。
まずはもとの「ウォータールー通り」を聴いてみましょう。
ジョー・ダッサン。
日本では、こちらのダニエル・ヴィダルの歌のほうが知られていますね。
Les Champs-Élysées シャンゼリゼ通り
Joe Dassin ジョー・ダッサン
Je m'baladais sur l'avenue le cœur ouvert à l'inconnu
J'avais envie de dire bonjour à n'importe qui 注1
N'importe qui et ce fut toi, je t'ai dit n'importe quoi
Il suffisait de te parler, pour t'apprivoiser 注2
見知らぬものに心惹かれ 通りをぶらぶら歩いてた
誰でもいいから「こんにちは」って言ってみたかった
誰でもよかったけどたまたまそれがあなたで、あなたに何か言った
声をかけるだけで十分だった、あなたをなびかせるには

Aux Champs-Élysées, aux Champs-Élysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Élysées
シャンゼリゼには、シャンゼリゼには
晴れていても、雨降りでも、真昼でも、真夜中でも
望むものが何でもある シャンゼリゼには
Tu m'as dit "J'ai rendez-vous dans un sous-sol avec des fous 注3
Qui vivent la guitare à la main, du soir au matin"
Alors je t'ai accompagné, on a chanté, on a dansé
Et l'on n'a même pas pensé a s'embrasser
あなたは言った「地下で陽気な仲間たちと待ち合わせてる
日暮れから夜明けまでギター片手に生きてる仲間たち」と
そこで あなたについてって 歌ったり、踊ったりした
キスするなんて思いもしなかった

Aux Champs-Élysées, aux Champs-Élysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Élysées
シャンゼリゼには、シャンゼリゼには
晴れていても、雨降りでも、真昼でも、真夜中でも
望むものが何でもある シャンゼリゼには
Hier soir deux inconnus et ce matin sur l'avenue
Deux amoureux tout etourdis par la longue nuit
Et de l'Étoile à la Concorde, un orchestre à mille cordes
Tous les oiseaux du point du jour chantent l'amour 注4
昨晩は他人同士 そして今朝は通りにいて
長い夜のせいで頭がぼぅっとしている恋人同士
エトワールからコンコルドまで、千の弦楽器のオーケストラになって
夜明けを告げる鳥たちが 愛の歌を歌う
Aux Champs-Élysées, aux Champs-Élysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Élysées
シャンゼリゼには、シャンゼリゼには
晴れていても、雨降りでも、真昼でも、真夜中でも
望むものが何でもある シャンゼリゼには

[注] どうも女の子の歌詞にしたほうが自然だが、ジョー・ダッサンを想定しつつ、あまり偏らない訳語にした。
1 n'importe quiは人で「誰でも」、n'importe quoiは物で「何でも」。ともに、主語にも目的語にもなる。
2 apprivoiser 原義は「(動物を)飼いならす、手なずける」。先に取り上げた「僕になついちゃった猫Un chat que j'ai apprivoisé」参照。
3 fouは「気ちがい」とは限らない。「常軌を逸した人」ばかりか「陽気な人、浮かれ騒ぐ人」くらいの意味もある。女性形はfolleだが、複数の場合、なかに男が1人でもいると、fousとなる。
4 point du jour「夜明け」
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シルヴィー・ヴァルタンSylvie Vartanの「ニコラNicolas」は、祖国ブルガリアでのリセ(高校)時代の初恋の男の子ニコラの想い出を歌った美しい曲。1979年にリリースされたアルバムDéraisonnableに収録されています。原曲はハンガリー語のElmegyekという曲で作詞:S. Nagy Istvan、作曲・歌唱:Máté Péter。フランス語作詞:ミッシェル・マロリーMichel Mallory。「思い出のマリッツァLa Maritza」 (1968年)と共通するのは、祖国への郷愁です。
Máté Péterの歌う原曲のElmegyek。情報を下さった村田ナオミさんの訳詞は→こちらです。
Nicolas ニコラ
Sylvie Vartan シルヴィー・ヴァルタン
Non ce n'est rien qu'une chanson qui revient quelquefois 注1
Rien qu'un sourire, en souvenir d'un garçon d'autrefois
Quand mes jours sont gris
Qu'il neige sur ma vie, il revient dans ma mémoire
Au lycée Français un soir il m'attendait
Il souriait Nicolas
いえ 時々思い出されるのはひとつの歌にすぎない
昔会った男の子を思い出して浮かべる、ひとつの笑みにすぎない
私の日々が灰色のとき、
私の人生に雪が降るとき、彼が私の記憶によみがえる
フランス系のリセで ある夜彼は私を待っていた
彼は微笑んでいた ニコラは

{Refrain:}
Nicolas, Nicolas, ma première larme ne fût que pour toi
On était, des enfants, notre peine valait bien celle des grands
Nicolas, Nicolas, c'était de l'amour, on ne le savait pas
C'est la vie, qui nous prend
Qui nous emmène où elle veut et où elle va
ニコラ、ニコラ、私の初めての涙はあなたのためでしかなかった
私たちは子供でも、私たちの苦しみは大人たちの苦しみと同等だった
ニコラ、ニコラ、それは恋だったのか、私たちには分からなかった
人生は、私たちをとらえ、
私たちを思うがままに運んでいく
Un homme enfant, aux yeux trop grands, sur un quai, qui pleurait
Il a neigé, beaucoup depuis, sur là bas, sur Paris 注2
Et il ne sait rien, de moi et de ma vie
Ce que je fais, qui je suis
Il ne connaît pas, l'autre Maritza, il garde la vraie là-bas 注3
子どもっぽい男が、駅で、とっても大きな目に涙を浮かべていた
その後、雪がたくさん降った、あちらでも、パリでも
そして彼はいま私について、私の人生について何も知らない
私が何をしているか、何であるのか
彼は別のマリヅァを知らず、彼はあちらで本物を守り続けている

Nicolas, Nicolas mon premier chagrin s'appelle comme toi
Je savais, que jamais, je ne reviendrai ici auprès de toi
Nicolas, Nicolas c'était de l'amour, on ne le savait pas
C'est le temps, qui s'en va
Qui invente toutes nos peines et nos joies.
Nicolas, Nicolas, ma première larme ne fût que pour toi
On était des enfants, notre peine valait bien celle des grands
Nicolas, Nicolas, c'était de l'amour, on ne le savait pas
C'est la vie qui nous prend
Qui nous emmène où elle veut et où elle va
Nicolas, Nicolas.....
ニコラ、ニコラ 私の最初の悲しみにはあなたの名前がついている
私はわかっていた、けして、ここへあなたのそばには戻らないだろうと
ニコラ、ニコラ それは恋だったのか、私たちには分かっていなかった
時は、過ぎて行き
私たちの苦しみや歓びをすべて創り出す
ニコラ、ニコラ、私の初めての涙はあなたのためでしかなかった
私たちは子供でも、私たちの苦しみは大人たちの苦しみと同等だった
ニコラ、ニコラ、それは恋だったのか、私たちには分かっていなかった
人生は、私たちをとらえ、
私たちを思うがままに運んでいく
ニコラ、ニコラ…
[注]
1 ce n'est rien que…=c’est seulement…
2 là basは祖国、ブルガリア。
3 Maritzaは故郷ブルガリアを流れるマリヅァ川のことだが、「思い出のマリッツァLa Maritza」の歌詞に、La Maritza c'est ma rivière / Comme la Seine est la tienne「マリヅァはわたしの川 / セーヌがあなたの川であるように」というフレーズがあり、l'autre Maritza「別のマリヅァ」とは、他の地の同様の川、特に「セーヌ川」を言う。la vraieは形容詞vrai「本当の」の女性形に定冠詞を付けて名詞化されている。la vraie Maritza「本物のマリヅァ」の意味
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今回はダリダDaliaの「18歳の彼Il venait d'avoir 18 ans」です。
ダリダは、生涯に12人ほどの男性と交際し、そのうち3人が自殺。12人のうちのひとりは、ダリダが34歳の時に付き合っていたルチオという18歳のローマの学生で、彼の子ができたのですが出産をあきらめ、そのために妊娠できない身体になったそうです。
1973年、ダリダが41歳の年に、パスカル・セヴランPascal Sevranが作詞し、それにパスカル・オーリアPascal Auriatが曲を付けて持って行ったところ、ダリダは自分の体験ともつながるこの曲が気に入ってさっそく歌い、彼女の6枚目のアルバム「ジュリアンJulien...」に収録されました。そして9カ国でヒットチャート第1位に輝きました。
歌詞では、彼は18歳で自分はその2倍の歳、すなわち36歳ということで、歳の違いを気にする女の心の揺らぎが表現されていますが、これは男の作詞家の目線なんでしょうか。エディット・ピアフÉdith Piafは46歳で20歳下のテオ・サラポThéo Sarapoと結婚し、彼らがデュオで歌っている「恋は何のためにÀ quoi ça sert l'amour?」では年上の女の逞しさが表われています。ダリダの歌詞に出てくる、1954年のクロード・オータン=ララClaude Autant-Lara監督の「青い麦Le blé en herbes」という映画は、シドニー=ガブリエル・コレットSidonie-Gabrielle Coletteの1922年の小説を元にしていて、少年が同世代の恋人がいるのに年上の夫人と関係を持ってしまうという話でしたが、コレット自身は62歳の時に17歳年下の男性と再再婚。また、作家のマルグリット・デュラスMarguerite Durasは66歳の時から81歳で亡くなるまで38歳下の恋人ヤン・アンドレアYann Andréaと暮らしました。こうした例に比較すると、36歳なんて若い若い。…と、70歳に手が届きそうな私としては思います。
ララ・ファビアンLara Fabianは、ダリダへの手紙を朗読したあと歌います。
Il venait d'avoir 18 ans 18歳の彼
Dalida ダリダ
Il venait d’avoir 18 ans
Il était beau comme un enfant
Fort comme un homme
C’était l’été évidemment
Et j’ai compté en le voyant 注1
Mes nuits d’automne
彼は18歳になったばかりだった
少年らしく美しく
青年らしくたくましかった
あれはたしか夏のできことだった
それからわたしは彼を見ながら
何度かの秋の夜を過ごした

J’ai mis de l’ordre à mes cheveux
Un peu plus de noir sur mes yeux 注2
Ça l’a fait rire
Quand il s’est approché de moi
J’aurais donné n’importe quoi 注3
Pour le séduire
わたしは髪をととのえ
アイラインを少し強く引いた
そのことが彼を笑わせた
彼が近づくと
わたしは何だって与えてしまいたかった
彼を誘惑するためなら
Il venait d’avoir 18 ans
C’était le plus bel argument
De sa victoire
Il ne m’a pas parlé d’amour
Il pensait que les mots d’amour
Sont dérisoires
彼は18歳になったばかりだった
それがなによりの武器だった
彼が優位に立つための
彼はわたしに愛を語りはしなかった
彼は思っていた 愛の言葉なんて
馬鹿げたものだと
Il m’a dit: "j’ai envie de toi"
Il avait vu au cinéma
Le blé en herbes 注4
Au creux d’un lit improvisé 注5
J’ai découvert émerveillée
Un ciel superbe
彼は私に言った「君が欲しい」と
彼は映画で観たことがあった
「青い麦」を
間に合わせのベッドの上で
私は驚嘆しつつすばらしい空を
目の当たりにした

Il venait d’avoir 18 ans
Ça le rendait presqu’insolent
De certitude
Et pendant qu’il se rhabillait
Déjà vaincue, je retrouvais
Ma solitude
彼は18歳になったばかりだった
それが彼にぞんざいなまでに
自信を抱かせた
そして彼が服を着るあいだ
わたしは、征服された身で、ふたたび感じていた
孤独を
J’aurais voulu le retenir 注6
Pourtant je l’ai laissé partir
Sans faire un geste
Il m’a dit "c’était pas si mal"
Avec la candeur infernale
De sa jeunesse
わたしは彼を引き留めておきたかった
でも行かせた
彼はなんら身ぶりもせずに
わたしに言った「そう悪くはなかったよ」と
若さゆえの
どうしようもなく無邪気な調子で

J’ai mis de l’ordre à mes cheveux
Un peu plus de noir sur mes yeux
Par habitude
J’avais oublié simplement
Que j’avais deux fois 18 ans.
わたしは髪をととのえ
アイラインを少し強く引いた
いつもの癖で
ただ忘れていたのだった
わたしが18歳の2倍の歳だっていうことを。
[注]
1 「夜の数を数えた」というのは、何度もの夜を過ごしたということ。
2 se mettre du noir aux yeuxは「(黒の)アイラインを引く」。
3 条件法過去形は、条件法現在形と同様に話者の意欲・意図が介在する語気緩和の表現で、過去のある時点で話者が望んだこと。
4 Le blé en herbesは解説に書いた映画のタイトル「青い麦」で、en herbesは、麦などが「まだ青く未熟なこと」。
5 Au creux d’un lit improvisé「間に合わせのベッドの窪みに」は、屋外で身を横たえる場所を選んだことを言っている。
6 注3と同様。
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