
以前、シルヴィ・ヴァルタンSylvie Vartanが自分の父親に捧げた「父Mon père」を取り上げました。今回は、同様に父親のことを歌った曲をご紹介しましょう。「おやじMon vieux」です。心に響く歌詞内容で、日本の演歌にも似たのがあったような気が…。
この曲は、ミッシェル・サンリスMichelle Senlisが1962年に自分の父親に捧げて最初の歌詞を書き、ジャン・フェラJean Ferratが翌63 年に作曲し、同年、ジャック・ボワイエJacques Boyerとジャン=ルイ・スタンJean-Louis Stainが歌いました。そして、1974年にダニエル・ギシャールDaniel Guichardが、15歳の時に亡くなった父親に捧げるということで歌詞を一部改編して歌い始めました。
ギシャールは、1948年にパリで生まれ、69年から歌手としての活動を開始し、72年にオランピアの初ステージに立ち、63歳の現在も現役です。持ち歌のうちではこの曲が一番知られていますが、エディット・ピアフÉdith Piaf、モーリス・シュヴァリエ、Maurice Chevalier、シャルル・トレネCharles Trenetらの曲をそれぞれカヴァーしたアルバムも出しています。
この曲は最近、2009年から活動を開始した「レ・プレトル(聖職者たち)Les prêtre」という三人組が歌い、ふたたび注目されるようになりました。
この三人組は本当の聖職者で、マダガスカルの子どもたちに学用品を送る資金集めのために結成され、2010年にファースト・アルバム「神の御心はSpiritus Dei」を出し、80万枚を売り上げ、2011年に出したセカンド・アルバム「グロリアGloria」にこの曲が収録されています。
Mon vieux おやじ
Daniel Guichard ダニエル・ギシャール
Dans son vieux pardessus râpé,
Il s'en allait l'hiver, l'été,
Dans le petit matin frileux,
Mon vieux...
古い擦り切れた外套で、
彼は冬も、夏も通した、
寒い朝にも、
僕のおやじ…
Y'avait qu'un dimanche par semaine,
Les autres jours, c'était la graine
Qu'il allait gagner comme on peut,
Mon vieux...
1週間のうち日曜日は1度だけだった、
ほかの日は、できるだけ彼が得ようとする
飯のタネだった
僕のおやじ…
L'été, on allait voir la mer.
Tu vois, c'était pas la misère,
C'était pas non plus le paradis.
Eh oui, tant pis...
夏に、僕たちは海を見に行った。
まあね、それはみじめなことじゃなかった、
また楽園でもなかった。
ああそうさ、仕方ないことさ…

Dans son vieux pardessus râpé,
Il a pris, pendant des années,
Le même autobus de banlieue,
Mon vieux...
古い擦り切れた外套を着て、
何年ものあいだ、
同じ郊外のバスに乗っていた、
僕のおやじ…
Le soir, en rentrant du boulot,
Il s'asseyait sans dire un mot,
Il était du genre silencieux,
Mon veux...
夕方、仕事から帰ってきて、
一言も言わずに座っていた、
無口なタチだった、
僕のおやじ…
Les dimanches étaient monotones,
On ne recevaient jamais personne.
Ça ne le rendait pas malheureux,
Je crois, mon vieux...
日曜日は単調だった、
誰もうちに呼ぶことはなかった。
そのことが彼を不幸にはしなかった、
僕はそう思う、僕のおやじは…

Dans son vieux pardessus râpé,
Les jours de paye, quand il rentrait,
On l'entendait gueuler un peu,
Mon vieux...
古い擦り切れた外套を着て、
給料日に、彼が帰宅するとき、
僕たちは彼がちょっぴりがなるのを聞いたものだ
僕のおやじ…
Nous, on connaissait la chanson,
Tout y passait: bourgeois, patron, 注1
La gauche, la droite, même le Bon Dieu.
Avec mon vieux...
僕たちは、ある歌を知っている、
みなやっつけられるんだ:金持ち、お偉方、
左翼、右翼、神さまさえ。
おやじに…
Chez nous, y'avait pas la télé,
C'est dehors que j'allais chercher,
Pendant quelques heures, l'évasion.
Je sais, c'est con...
うちには、テレビがなかった、
僕は外に求めに行った、
何時間か、気晴らしを。
そうさ、ばかげたことさ…
Dire que j'ai passé des années 注2
À coté de lui, sans le regarder.
On a à peine ouvert les yeux, 注3
Nous deux...
彼のそばで僕が、彼に目もくれずに
何年も過ごしたなんて。
僕たちはほとんど目を開いちゃいなかった
二人とも…

J'aurais pu, c'était pas malin, 注4
Faire avec lui, un bout de chemin 注5
Ça l'aurait peut-être redu heureux
Mon veux...
僕はできたはずだ、造作もなかったさ、
彼と、いっしょに少し歩くことなど
そうすることでたぶん彼を幸せにしただろう
僕のおやじ…
Mais quand on a juste quinze ans,
On n'a pas le cœur assez grand
Pour y loger toutes ces choses-là
Tu vois...
だが15歳ばかりのときは、
こうしたことすべてを包容するほどには
大きな心を持っていなかった
そうなのさ…
Maintenant qu'il est loin d'ici,
En pensant à tout ça, je me dis:
J'aimerai bien qu'il soit près de moi,
Papa...
彼が遠いところにいる今、
こうしたことをぜんぶ考えながら、僕は思う:
彼がそばにいてくれたらと、
パパ…
[注]
1 y passer「死ぬ」。次行のavecは「…のせいで」。
2 Dire que…「…というんだから」(驚き、憤慨を示す)
3 à peine「ほとんど…ない」
4 ce n’est pas malin「間が抜けている」あるいは「そんなこと造作もない」。ここでは後者の意味で半過去形。
5 un bout de+無冠詞名詞「短い(距離、時間)」
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「空虚なものは何もないLe contre-ecclésiaste (Rien n'est vanité)」は、ジュリエット・グレコJuliette Grécoの2009年の来日公演で私の印象に残っている曲のひとつです。作詞はジャン=クロード・カリエールJean-Claude Carrière、作曲は、グレコの夫、ジェラール・ジュアネストGérard Jouannest。1999年のアルバムUn jour d'été et quelques nuits...に収録されています。題名のLe contre-ecclésiasteとは、キリストの「伝道の書Ecclésiaste」のVanité des vanités, et tout est vanité.「空の空、すべて空なり。」という記述に反論する内容すなわち「反伝道の書」という意味。副題のRien n'est vanitéの訳語「空虚なものは何もない」が邦題です。
Le contre-ecclésiaste (Rien n'est vanité) 空虚なものは何もない
Juliette Gréco ジュリエット・グレコ
Ni le bon ni le mauvais temps
Ni les odeurs de l´océan
Ni le vent sur un champ de blé
Rien n´est vanité
Ni la peau chaude d´un amant
Ni l´éclat du soleil couchant
Ni la caresse du vin frais
Rien n´est vanité
Rien n´est vanité
好天も悪天も
磯の香りも
麦畑をわたる風も
空虚なものは何もない
恋人の熱い肌も
夕陽の輝きも
冷えたワインのテイストも
空虚なものは何もない
空虚なものは何もない

Ni les secrets du firmament
Ni les atomes turbulents
Ni les colchiques dans les prés
Rien n´est vanité
Ni l´inquiétude d´un enfant
Ni le sourire d´un passant
Ni le parfum de l´étranger
Rien n´est vanité
Rien n´est vanité
蒼穹の神秘も
活発に運動する原子も
野原のイヌサフランも
空虚なものは何もない
子どもの不安も
通行人の微笑も
異邦人の香水も
空虚なものは何もない
空虚なものは何もない
Ni le murmure ni le chant
Ni le vieux mystère du temps
Ni le repos ni le danger
Rien n´est vanité
Ni la peur du dernier moment
Ni l´attirance du néant
Ni l´amour de l´éternité
Rien n´est vanité
Rien n´est vanité
つぶやきも歌も
時代の古い謎も
平安も危険も
空虚なものは何もない
今際のきわの恐れも
虚無の誘惑も
永遠の愛も
空虚なものは何もない
空虚なものは何もない

Rien, sauf le regard détourné
L´arrogance et la cruauté
Sauf l´amertume du blasé
Rien n´est vanité
Rien, sauf la mort de la beauté
Sauf le vol de la vérité
Sauf la haine et la vanité
Rien n´est vanité
Rien n´est vanité
そむけた視線や
尊大さや残忍さ以外は何も
無関心な人の苦々しい態度以外は
空虚なものは何もない
美が死ぬこと以外は何も
真理を盗むこと以外は
憎しみと虚栄以外は
空虚なものは何もない
空虚なものは何もない
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昨年から今年にかけて、私の知人たち数人が60歳・70歳の記念のコンサートを開いていますが、私もそれに倣いたくなり、2年後の2017年5月6日、70歳になった時に初めてのソロコンサートを開こうと思い立ちました。
その日を目指し、もう一つの目標があります。このブログで訳詞1000曲を達成させることです。
ここ2,3日のあいだちょっとがんばって数曲ずつ訳詞をアップしましたので、今日200曲に達しました。このあと1日1曲ずつ出したなら、今年のクリスマスイヴには500曲に達します。そして70歳の誕生日には1000曲に達する計算です。その日を目指し、今後800日間、旧ブログの500曲ほどの記事を書き直してこのブログに移し、あらたに300曲ほどを訳して加えていきます。ページの左側のカテゴリの「シャンソン歌詞・邦訳」の数字を時々チェックしてみてください。今200となっていますね、それが1000になるのが目標です。
そして、コンサート用の曲を選び練習していきます。まずはその時まで生きていなければならないんですが、何があるか分からない世の中だし、半分は神頼み。毎日1歩1歩進めている私のけなげな(?)姿を応援していただけるとうれしいです。

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その日を目指し、もう一つの目標があります。このブログで訳詞1000曲を達成させることです。
ここ2,3日のあいだちょっとがんばって数曲ずつ訳詞をアップしましたので、今日200曲に達しました。このあと1日1曲ずつ出したなら、今年のクリスマスイヴには500曲に達します。そして70歳の誕生日には1000曲に達する計算です。その日を目指し、今後800日間、旧ブログの500曲ほどの記事を書き直してこのブログに移し、あらたに300曲ほどを訳して加えていきます。ページの左側のカテゴリの「シャンソン歌詞・邦訳」の数字を時々チェックしてみてください。今200となっていますね、それが1000になるのが目標です。
そして、コンサート用の曲を選び練習していきます。まずはその時まで生きていなければならないんですが、何があるか分からない世の中だし、半分は神頼み。毎日1歩1歩進めている私のけなげな(?)姿を応援していただけるとうれしいです。

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今回は、カミーユ・クトーCamille Couteauが歌っている「僕になついちゃった猫Un chat que j'ai apprivoisé」。J'ouvre une fenêtreという2009年のアルバムに収録されています。この曲はもともと、アコーディオン奏者シヴーカSivucaが1947年に作った原曲にシコ・ブアルキChico Buarqueが1977年に「ホアンとマリアJoão e Maria」 というタイトルで歌詞を付けたブラジルの曲。カミーユ・クトーはそれにフランス語の歌詞を付けました。
シコ・ブアルキがシヴーカとともにギターを演奏し歌っている原曲
シコ・ブアルキとナラ・レオンNara Leãoとのデュオ
クトーは、自分はchanteur(歌手)ではなくchantonneur(歌を口ずさむ者)だと言います。子どもたちのための歌を作りたいんだとも言っています。アマゾンを何度か旅したことがあるという変わった人物。
apprivoiserという動詞は「(動物を)飼いならす、(人を)なつかせる」といった意味で、アントワーヌ・マリー・ジャン=バティスト・ロジェ・ド・サン=テグジュペリAntoine Marie Jean-Baptiste Roger, comte de Saint-Exupéryの「星の王子さまLe Petit Prince」では、キツネとの話のなかでとても重要な言葉になっていました。この曲名は「僕が飼いならした(あるいは、なつかせた)猫」ということになりますが、「僕になついちゃった猫」と意訳しました。
この曲の優しさがとっても気に入って、(一人で?)歌いたいなと思いましたが、耳のいい友人に言わせると、「なんともビミョーな音程が猫が喋っているように聞こえる」とのこと。それでくすぐられるのかも…。
Un chat que j'ai apprivoisé 僕になついちゃった猫
Camille Couteau カミーユ・クトー
※パートを色分けして表記しています。■男・■女・■男女
Aujourd’hui et demain
Il n’y a rien sur terre qui m’appartienne
Les lignes de ma main sont emmêlées aux lignes de la tienne
今日も明日も
この地上で僕のものなんか無い
僕の手の運命線が君の手の運命線と交わる

Tu es tendre et désabusé
あなたは優しくて悟りきってる
Je ne sais rien te refuser
僕は君を拒むすべを知らない
Nous partageons tout,
même les croissants, les problèmes, l’argent, les café-crème.
Je sais que tu sais bien qu’à part toi
Rien vraiment ne me retient.
Ne t’en va pas trop loin
Mon cœur ne sait plus battre sans le tien
Mon amour, tu es un chat que j'ai apprivoisé
Un papillon qui voudrait se poser
La mélodie que je viens d’épouser
僕たちはすべてを分かち合っている。
クロワッサンも、問題も、お金も、カフェ・クレームも。
君以外に何も僕を引きとめるものはないって
君にはよく分かってる、って僕には分かってる
あまり遠くに行かないで
僕の心臓はもうきみの心臓なしには鼓動できない
恋人よ、きみは僕になついちゃった猫
羽根をやすめようとするチョウチョ
僕がたまたま取り入れたメロディー
Toi au bord de l’eau
Au bas du dos délicieuse fossette
Pensées échevelés, allongée nue et insouciante
きみは水のほとりにいて、
背中の下のほうの魅力的な窪み
思考が混乱し、無頓着に裸で横たわっている

Toi qui siffle fort quand une chanson te trotte dans la tête
Toi qui rêves éveillé, toi qui visites les îles flottantes
頭のなかで歌が去来すると、大きな音で口笛を吹くあなた
目覚めたまま夢を見るあなた、浮き島を訪ねるあなた
Perdu dans tes pensées
En mâchonnant une fleur de pissenlit
Tu regardes passer les nuages au-desus de notre lit
Mon amour, tu es un chat que j'ai apprivoisé
Tout est si simple et semble improvisé depuis que nos regards se sont croisés
想像の中で自分を見失い
タンポポの花をもぐもぐ咬みながら
君は僕たちのベッドの上で雲が流れていくのを見つめている
恋人よ、きみは僕になついちゃった猫
僕たちの視線が交わって以来、すべてはとても簡単でなんでも即興でできちゃうみたい
Toi beauté volée, tu me regardes un coin quand tu te cambres
Tu sais m’ensorceler comme une starlette débutante
きみはすばやく動く美しさ、身を反らせるときも目の端で僕を見つめるんだ
きみは新米のスターレットのように、僕を虜にするすべを知っている
Toi, sans m’en parler, tu voudrais quitter Paris dés septembre
Toi qui rêves éveillé, toi qui sépares les étoiles les filantes
あなたはね、私に言わずに、9月になったらパリから出て行こうと思っている
あなたは目覚めながら夢を見て、流れ星と普通の星を見分けている

Aujourd’hui et demain
Il n’y a rien sur terre qui m’appartienne
Les lignes de ma main sont emmêlées aux lignes de la tienne
Mon amour, tu es un chat que j'ai apprivoisé
Un papillon qui voudra se poser
Comme sur tes lèvres je pose un baiser
今日も明日も
この地球上で僕のものなんか無い
僕の手の運命線がきみの手の運命線と交わる
恋人よ、きみは僕になついちゃった猫
羽根を休めようとするチョウチョ
僕がきみの目の上にキスを着陸させるみたいに
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「白い船Le bateau blanc」は、1962年にジルベール・ベコーGilbert Bécaudが歌った歌。子供から大人へと心身が大きく変化する、15歳という年齢の者たちへのメッセージを込めた歌。すでに大人になった人たちがいつまでも保っていたい心の世界を歌っている歌でもあるようです。
Le bateau blanc 白い船
Gilbert Bécaud ジルベール・ベコー
Tu l'auras, ton bateau blanc
C'est le bateau de ceux qui restent des enfants
Le bateau de tes quinze ans
Te sauvera de ce monde arrangé par les grands
Tu l'auras, ton bateau blanc
Mais pour l'avoir, tu auras mis le temps 注1
君は持つだろう、君の白い船を
それは まだ子供のままでいる者たちの船だ
君の15歳の船は
大人たちに采配されたこの世界から君を救ってくれる
君は持つだろう、君の白い船を
だがそれを持つのは、君が時間をおいてからのこと

Il est là, ton bateau blanc
Moi, je le vois quitter le port, prendre le vent
T'emporter tout droit devant
L'île au trésor est là-bas tout au bout qui t'attend 注2
C'était vrai ton bateau blanc 注3
Même si tu n'y croyais pas vraiment
あそこにあるよ、君の白い船は
僕はね、僕はそれが港を出て、風に乗り
君をまっすぐ前方に運んで行くのが見える
宝島はずっと向こうで君を待っているよ
君の白い船は本当にあったのさ
たとえ君がそれを本当に信じていなかったとしてもね
Le voilà, ton bateau blanc
Il va partir dans le soleil et dans le vent 注4
Comme au temps de tes quinze ans 注5
Quand il dansait sur le bord de tes rêves d'enfant 注6
Il s'en va vers le beau temps
Emmène-moi, emmène-moi dedans!
ほら、これが君の白い船さ
陽の光を浴びて風を受けて出発する
子どもの夢のふちでその船が揺らいでいた
君の15歳の時期に合わせ
晴天に向けて出て行くんだ
僕を乗っけて連れてって、連れてって!

[注]
1 mettre le temps「時間をかける」。前行のTu l'aurasより前のことを表すので、前未来になっている。少々、意訳した。
2 tout au bout「…の極限に、いちばん端に」
3 この半過去は、年下の者や動物に対して、相手が自分に言うであろうことを代行して表現する用法。次行の半過去は、以前のことを示している。
4 先に取り上げた「太陽とそよ風の下でDans le soleil et dans le vent」の題名と同じ表現。
5 au temps de「…の時に」。
6 danser surのあとに、une corde raideがつくと、「綱渡りのような危険な状態にある」。un volcanがつくと、「(火山の縁にいるように)危険が切迫している」という意味になり、このdanserも、ダンスしているというより、瀬戸際で揺らいでいるという意味合いだろう。
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今回はリーヌ・ルノーLine Renaudの「フルー・フルーFrou-Frou」を取り上げます。この題名は、衣擦れの音をあらわす、フランス語の数少ないオノマトペonomatopée(擬音語)の一つ。日本のサラサラというのと違い過ぎて妙に思えますが、軽やかなワルツのリズムに乗って繰り返されるのを聴いていると、しだいに衣擦れの音に感じられてくる気がします。

のちに、リーヌ・ルノー、ベルト・シルヴァBerthe Sylva 、ダニエル・ダリューDanielle Darrieux、シャルル・トレネCharles Trenet、イヴェット・ジローYvette Giraudら、多くの歌手がリバイバルさせました。
フランスではこの曲をテーマにした映画「サラサラと鳴るFrou-Frou」が1955年に作られました。映画のなかでは、Frou Frouはヒロインの女性のあだ名となっています。また、1923年に作られた同名の無声映画もあったようです。
そしてまた、1937年にジャン・ルノワールJean Renoirが作った映画「大いなる幻影La grande illusion」(音楽担当はピエール・ルイギPierre Louiguyとジョゼフ・コズマJoseph Kosma)で、ジャン・ギャバンJean Gabinがこの歌を口ずさんでいて、映画のサントラ盤La Grande Illusionに入っています。
リーヌ・ルノーの歌がYouTubeになく、自分で作成しました。
リザ・アンジェルLisa Angell
Frou-Frou フルー・フルー
Line Renaud リーヌ・ルノー
La femme porte quelquefois
La culotte dans son ménage
Le fait est constaté je crois
Dans les liens du mariage
Mais quand elle va pédalant
En culotte comme un zouave
La chose me semble plus grave
Et je me dis en la voyant
女は家事のさいには
よく半ズボンをはく
そういったことは結婚の絆のなかでは
認められるもの
だけど歩兵隊の兵士みたいに
半ズボンで自転車のペダルを踏めば
ことはもっと深刻
そういう女を見ると
思ってしまう

{Refrain:}
Frou frou, frou frou par son jupon la femme
Frou frou, frou frou de l'homme trouble l'âme
Frou frou, frou frou certainement la femme
Séduit surtout par son gentil frou frou
フルフルー、フルフルー 女はスカートで
フルフルー、フルフルー 男の心を惑わす
フルフルー、フルフルー たしかに女は
とりわけ優しいフルフルーで男を誘う

La femme ayant l'air d'un garçon
Ne fut jamais très attrayante
C'est le frou frou de son jupon
Qui la rend surtout excitante
Lorsque l'homme entend ce frou frou
C'est étonnant tout ce qu'il ose
Soudain il voit la vie en rose
Il s'électrise, il devient fou
男の子っぽい女など
たいして魅力的じゃない
彼女をとくにきわだたせるのは
スカートのフルフルー
このフルフルーを男が聞いたときの
彼のおこないたるやまったく驚くべき
とつぜん彼にはバラ色の人生が見え
感電し、逆上せてしまう
{Refrain}
En culotte me direz-vous
On est bien mieux à bicyclette
Mais moi je dis que sans frou frou
Une femme n'est pas complète
Lorsqu'on la voit se retrousser
Son cotillon vous ensorcelle
Son frou frou
C'est comme un bruit d'aile
Qui passe et vient vous caresser
自転車に乗るには半ズボンのほうがいいよと
あなたはおっしゃるけど
わたしはねフルフルーなしじゃ
女は完全じゃないって言うわ
女がすそをたくし上げれば
彼女のペチコートがあなたを魅惑する
そのフルフルーは
羽ばたく音のように
行きつ戻りつあなたを愛撫するわ
{Refrain}
Frou frou, frou frou certainement la femme
Séduit surtout par son gentil frou frou
フルフルー、フルフルー たしかに女は
とりわけ優しいフルフルーで男を誘う
[注] タイトルはFrou-FrouあるいはFrou Frouと表記される。映画でヒロインのあだ名に用いられたということもあって、Fを二つとも大文字にするのかもしれない。邦題の表記は「フルー・フルー」が一般的。歌詞の」なかでは、歌に近づけて、「フルフルー」とした。また、ルフランで2度繰り返される部分以外を「衣擦れの音」としたほうが意味が通じやすいが、あえて、オノマトペのままにした。
リーヌ・ルノーは2番しか歌っていない。
Comment:4

今回はバルバラBarbaraの「黒いピアノLe piano noir」(1973年、作詞:ダニエル・ティボンDaniel Thibon、作曲: ロベール・シャルルボワRobert Charlebois)です。バルバラは、29歳のときに黒い小型のグランドピアノを購入し非常に大切にしていたそうです。ちなみに彼女の死の翌年1998年に出版されたバルバラの自叙伝は「一台の黒いピアノ… Il était un piano noir」というタイトル。
1987年のライブアルバムChâtelet 87に収録されています。これはそのステージの動画で、「私の最も美しい恋の物語Ma plus belle histoire d'amour」も入っています。
Le piano noir 黒いピアノ
Barbara バルバラ
Quand je serai morte
Enterrez-moi
Dans un piano noir comme un corbeau
Do, ré, mi fa, sol, la, si, do
私が死んだら
私を葬ってね
カラスのような黒いピアノのなかに
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド
Quand je serai morte
Ecrivez dessus, comme il faut
"Elle faisait bien son numéro
Do, ré, mi fa, sol, la, si, do"
私が死んだら
ピアノの上に書いてね、
「彼女は自分のレパートリーをうまく弾いた
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド」と

Quand je serai morte
Veuillez alors me mettre à l´eau
Sur l´eau d´un fleuve
Ou d´un ruisseau
Do, ré, mi fa, sol, la, si, do
私が死んだら
それから私を水に浮かべてくださいな
大河の
あるいは小川の水に
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド
Quand je serai morte
S´il vogue, vogue, mon piano
Viendront s´y poser les oiseaux
Do, ré, mi fa, sol, la, si, do
私が死んだら
私のピアノがもしも漂ったら、漂ったら
鳥たちが止まりに来るわ
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド

Viendront s´y poser les oiseaux
Viendront s´y poser les oiseaux
Quand je serai
Quand je serai
Quand je serai
Morte
鳥たちが止まりに来るわ
鳥たちが止まりに来るわ
私がもし
私がもし
私がもし
死んだら
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今回は、サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamoの「サン・トワ・マ・ミーSans toi ma mie」です。この曲は、恋が破綻しかかって、「あなたがいないとだめなんだ」と、相手の女性をなんとか引き留めようとする内容です。
元のタイトルがSans toi mamieと書かれていることが多いのですが、mamieという語は二つあり、一つは「おばあちゃん」の意味の語。もう一つはmon amieの古形であるma amie由来の「僕のいとしい女性」という意味の語でm’amieとも綴られます。またmieという語も二つあり、一つは「パンの耳」の意味。もう一つはamieと同義の話し言葉(m'amieの異分析すなわち誤ってma mieと切ったことから派生した語)。これにmaをつけるとma mieとなり、mamieを2語に分けたような形になります。アルバムのジャケットやWikipédiaのフランス語のページ等々を調べた結果、こちらを選ぶことにしました。邦題も「サン・トワ・マミー」ではなく、「サン・トワ・マ・ミー」とします。日本語の歌で、女性の立場の歌詞にこの言葉がそのまま使われているのは妙だとも思うところですが。
Sans toi ma mie サン・トワ・マ・ミー
Salvatore Adamo サルヴァトーレ・アダモ
Je sais tout est fini
J'ai perdu ta confiance
Néanmoins je te prie
De m'accorder ma chance
Si devant mon remords
Tu restes indifférente
On ne peut te donner tort
Mais sois donc indulgente 注1
すべてが終わったことは分かっている
僕は君の信頼を失ってしまった
それでも お願いだ
僕にチャンスを与えておくれ
もし僕の後悔を目のあたりに見ながら
君がそっけないままでいたって
ひとは君を非難できないよね
でもね許しておくれよ

Au nom des joies
Que nous avons vécues
Au nom de l'amour
Que nous croyons perdu
Sans toi, ma mie
Le temps est si lourd
Les heures et les jours
Sombrent sans espoir
Sans toi, ma mie
僕たちが生きてきた
楽しい生活の名にかけて
僕たちが失ってしまったと思っている
愛の名にかけて
僕のいとしい人、君がいないと
時はとても重苦しく
時間も日々も
希望のないまま暗澹として過ぎゆく
僕のいとしい人、君がいないと

{Instrumental}
Sans toi, ma mie
Je vogue sans but
Je vogue perdu
Sous un ciel tout noir
僕のいとしい人、君がいないと
僕はあてどもなくさまよう
僕は途方に暮れてさまよう
真っ黒な空のもと
Comprends que dans les rues 注2
Tant de filles nous tentent
Et leur air ingénu 注3
Nous poursuit et nous hante 注4
Aussi je viens vers toi
Pour te confier ma voile
Toi tu me guideras
Tu es ma bonne étoile
分かるかい、街では
何人もの娘たちが僕ら男を誘惑する
彼女らのおろかしい態度が
僕らを追いかけ僕らにつきまとうんだ
だから僕の帆を君にゆだねるため
僕は君へと向かう
君は僕を導いてくれるだろう
君は僕の幸運の星だ
Sans toi, ma mie
Le temps est si lourd
Les heures et les jours
Sombrent sans espoir
Sans toi, ma mie
僕のいとしい人、君がいないと
時の歩みはとても重苦しく
時間も日々も
希望のないまま暗澹として過ぎゆく
僕のいとしい人、君がいないと
[注]
1 soitとなっている歌詞が多いが、tuに対する命令形なので、soisに訂正した。indulgenteは「寛大な」で、「寛大であってくれ」ということになる。
2 comprendsはtuに対する命令形で、「(que以下のことがあるってことを)知ってくれ」という意味。
3 ingénuは肯定的な意味としては、「無邪気な」だが、ここは否定的な意味にとらえた。
4 たいていの歌詞ではtortureとなっているが、アダモの歌を聴いてpoursuitと訂正した。
Comment:5

今回は、ご存知、ティノ・ロッシTino Rossiの「小雨降る径Il pleut sur la route」です。ロッシは、ひたすら愛を語るようなシャンソン、すなわち「感傷的なシャンソンChanson de sentimental」を歌う歌手の代表ですが、彼は、前回のジャン・サブロンJean Sablonと同様にマイクを使って耳元でささやくような歌い方をしました。彼以来、そうしたシャンソンの歌い手は、甘い声で人を魅了するということで「魅惑の歌手Chanteur de charme」とよばれるようになりました。おまけにちょっとハンサムだったものですから、「女を口説くには、ロッシのレコードが一枚あればいい」などといわれたほど、1930年代の多くの女性たちは彼の歌にしびれ、彼にのぼせ上がった妻を夫が射殺するという事件まであったそうです。
ロッシはコルシカ島生まれ。二十歳前に、好きなシャンソンで身を立てようと本土に渡りました。1935年に映画「マリネラ」に出演し、テーマ曲の「マリネラMarinella」と「チチTchi-tchi」が大ヒットし、その後人気が大上昇。戦後、ナチ協力者として投獄されたこともありましたが、その後カムバックし、75歳で引退するまで、その人気は衰えませんでした。生涯に1014曲録音し、レコードの総売り上げがなんと3億枚とのこと。
タンゴ調のメロディーのこの曲は、「マリネラ」の1年前に録音され、日本語では何人かの歌手に歌われてよく知られています。本国ではすでに忘れられているようですが…。この動画は、雑音は目立ちますが音質はいいです。
Il pleut sur la route 小雨降る径
Tino Rossi ティノ・ロッシ
Il pleut sur la route... 注1
Le cœur en déroute 注2
Dans la nuit j'écoute 注3
Le bruit de tes pas...
径に雨は降り…
心は乱れ
夜の闇のなか耳を澄ませる
君の足音に…

Mais rien ne résonne
Et mon corps frissonne
L'espoir s'envole déjà
Ne viendrais-tu pas ?
だが何も聞こえず
身体はうち震え
望みはすでに消え去る
君は来てくれないのか?
Dehors... le vent, la pluie...
Pourtant, si tu m'aimes
Tu viendras quand même
Cette nuit
外では…風が、雨が…
だが、もし君が僕を愛してるのなら
それでも君は来るさ
今宵
Il pleut sur la route
Dans la nuit j'écoute
A chaque bruit mon cœur bat
Ne viendras-tu pas ?
径に雨は降り
夜の闇のなか耳を澄ませる
どんな物音にも胸が高鳴る
君は来ないのか?
L'orage est partout 注4
Dans un ciel de boue
Mais l'amour se rit de tout
Il a dit ce soir 注5
Pour la recevoir
Chez moi tout chante l'espoir... 注6
泥のように濁った空から
雷雨があちこちに降りそそぐ
だがわが愛は何も意に介さず
今宵だと言った
あの人を迎え入れるために
わが胸の裡に希望の歌が鳴り響く…

Dehors... le vent, la pluie...
Pourtant, si tu m'aimes
Tu viendras quand même
Cette nuit
外では…風が、雨が…
だが、もし君が僕を愛してるのなら
それでも君は来るさ
今宵
Il pleut sur la route
Dans la nuit j'écoute
A chaque bruit mon cœur bat
Ne viendras-tu pas ?
径に雨は降り
夜の闇のなか耳を澄ませる
どんな物音にも胸が高鳴る
君は来ないのか?
[注]
1 この行が曲名であり、「小雨降る径」という邦題は正確な訳語という訳ではない。
2 ここは名詞文。cœurのあとにestを補って解釈してもいい。
3 écouteは通常「聞く」と訳すが、次にMais rien ne résonneがあるように、「聞こえる」わけではなく、君の足音が聞こえないかと耳を澄ませるのである。「聞こえる」のはentendre。
4 orage「雷雨」は、雷の光も音も雨も含めた総体。
5 Ilは前行のl'amour、すなわち自分が彼女に向ける愛の心。
6 chez moi は家ではなく、自分自身のあり様、胸の裡。
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ジャン・サブロンJean Sablonは「去りゆく君Vous qui passez sans me voir」をすでに取り上げました。今回は、それと同じく1936年に彼が創唱した「夢をこわさないでIl ne faut pas briser un rêve」で、こちらも、つれない女性に思いを訴える内容です。作詞・作曲はジャン・ジャルJean Jal。
エヴァ・ブッシュEva Buschの1940年の歌唱。この人は知らなかったんですが、とてもいいです。
リュシエンヌ・ドリールLucienne Delyle、ミッシェル・トールMichèle Torrも歌っています。
Il ne faut pas briser un rêve 夢をこわさないで
Jean Sablon ジャン・サブロン
Depuis le jour où je vous aime,
Mon cœur est sans espoir...
Malgré votre sourire même,
Tout est las, triste et noir...
Pourtant un jour, dans un baiser...
Vous m’avez promis de m’aimer...
僕があなたを愛してこのかた、
僕の心は希望を失い…
あなたが微笑んでくれても、
すべてがやるせなく、侘しく暗い…
だがいつか、口づけをしながら…
あなたは僕を愛していると約束してくれた…

{Refrain:}
Il ne faut pas briser un rêve、
Même s’il vous semble un peu fou,
Tâchez donc que le mien s’achève,
Puisqu’il est plein de vous...
夢をこわさないで、
もしもその夢があなたにはちょっとおかしなものに思えても、
僕の夢がかなうようにしておくれ、
なぜならそれはあなたであふれているのだから…
Déjà,
En vous serrant dans mes bras,
Je sens,
Que votre étreinte me ment...
あなたを腕に抱きながら、
すでに僕は感じている、
あなたの抱擁はまやかしだと…

Il ne faut pas briser un rêve,
Même s’il vous semble un peu fou,
Tâchez donc que le mien s’achève,
Puisqu’il est plein de vous.(×2)
夢をこわさないで、
もしもその夢があなたにはちょっとおかしなものに思えても、
僕の夢がかなうようにしておくれ、
なぜならそれはあなたであふれているのだから。
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パトリシア・カースPatricia Kaasの「はかない愛だとしてもIl me dit que je suis belle」は、ジャン=ジャック・ゴールドマンJean-Jacques Goldmanがサム・ブリュースキーSam Brewskiのペンネームで書いた曲です。1993年のJe te dis vousというアルバムに収録されています。
原題のIl me dit que je suis belleは「彼は私を美しいと言ってくれる」という意味ですが、歌詞は、彼が実際にそう言ってくれるわけではなく、「架空の存在の彼氏が言ってくれることを想像する」という内容。ですから、「はかない愛だとしても」という邦題は、愛の存在を前提とした表現だとすると外れていますが、「想像上のはかない愛」ととらえるとまあいいかなということで、この邦題のままに。
Il me dit que je suis belle はかない愛だとしても
Patricia Kaas パトリシア・カース
Et quand le temps se lasse 注1
De n'être que tué
Plus une seconde passe,
Dans les vies d'uniformité
Quand de peine en méfiance, 注2
De larmes en plus jamais
Puis de dépit en défiance
On apprend à se résigner
Viennent les heures sombres 注3
Où tout peut enfin s'allumer
Ou quand les vies ne sont plus qu'ombres
Restent nos rêves à inventer
時間の方としちゃ つぶされてばかりで
うんざりしてる そんなときには
わずかな時間も過ぎて行かず、
単調な生活のなかで
苦しみからは不信感が
涙からはもう二度とイヤという気持ちが
そして恨みからは猜疑心が生まれ
人はあきらめることを学ぶ
暗い時間が訪れたとしても
すべて最後には燃えることができる
だから人生が影に過ぎなくなったときも
私達の夢は作られるべきなのよ

Il me dit que je suis belle
Et qu'il n'attendait que moi
Il me dit que je suis celle
Juste faite pour ses bras
Il parle comme on caresse
De mots qui n'existent pas 注4
De toujours et de tendresse 注5
Et je n'entends que sa voix
彼は私がキレイだと言う
そして私だけを待っていると
彼は言う 私が
その腕に抱きしめるために作られたものだと
彼は愛撫するようにささやく
内容のない
いつもの優しい言葉で
そして私は彼の声しか聞こえない
Eviter les regards, prendre cet air absent
Celui qu'ont les gens sur les boul'vards
Cet air qui les rend transparents
Apprendre à tourner les yeux
Devant les gens qui s'aiment
Eviter tous ceux qui marchent à deux
Ceux qui s'embrassent à perdre haleine 注6
Y a-t-il un soir, un moment
Où l'on se dit c'est plus pour moi 注7
Tous les mots doux, les coups de sang,
Mais dans mes rêves, j'y ai droit 注8
視線を避け、いない「振り」をする
通りにいる人々がするのと同じ
彼らを透明にしてくれるような「振り」を
目を逸らすことを覚える
愛し合う人たちの前で
二人で歩いている人たちをみんな避ける
息もつけないほどキスをしている人たちをみんな
そんな夜が そんな一瞬が来るのだろうか
すべての甘い言葉、血のたぎりが
自分には素晴らしすぎるとたがいに言い合う時が
でも夢の中では、私はその権利を持つ
Il me dit que je suis belle
Et qu'il n'attendait que moi
Il me dit que je suis celle
Juste faite pour ses bras
Des mensonges et des betises
Qu'un enfant ne croirait pas
Mais les nuits sont mes églises 注9
Et dans mes rêves j'y crois
彼は私がキレイだと言う
そして私だけを待っていたと
彼は言う 私が
その腕に抱きしめるために作られたものだと
子どもも信じないような
ウソ そして馬鹿げたこと
でも夜は私の拠り所
そして夢の中では私はそれを信じる

Il me dit que je suis belle...
Je le vois courir vers moi
Ses mains me frôlent et m'entraînent
C'est beau comme au cinéma
Plus de trahison, de peines
Mon scénario n'en veut pas
Il me dit que je suis reine
Et pauvre de moi, j'y crois
Pauvre de moi, j'y crois
彼は私をキレイだと言う…
私に向かって走ってくる彼が見える
彼の両手が私に触れ私を連れ去る
それは映画のようにステキ
裏切りも苦しみももうない
私のシナリオにそれは要らない
彼は私を女王だと言う
そして哀れな私は、それを信じる
哀れな私は、それを信じる
[注] 録音によって歌い方が若干異なるが、元の形と思われるものを選んだ。
1 se lasser「…に飽きる、疲れる」。le tempsを主語にした擬人的な表現。次行も、 tuer le temps「時間をつぶす」を受動態にした表現。
2 de…en…「…から…へ」
3 「ミラボー橋Le pont Mirabeau」の、Vienne la nuit sonne l'heureを思い起こさせるが、ここも、譲歩の意味合い。
4 de mots「言葉によって」(不定冠詞desが省略されている)、前行のcaresseを説明。qui n'existent pas 「無いに等しい、空疎な」といったところだろう。
5 de toujours「常に変わらぬ」。de tendresseとともに、前行のmotsを修飾。
6 à perdre haleine「息が切れるほど」。
7 ceの内容は次行のTous les mots doux, les coups de sang。plusを単独に用いて「身に余る」といった意味にしている。
8 avoir droit à qc.「…を受ける権利がある」。à qc.⇒y
9 égliseは「祈る場所」という意味かと思ったが、フランス人に聞くと、単に「常に足を運ぶ場所」の意味合いだろうという。
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この曲をマルティーヌ・クレマンソーMartine Clemenceauが、持ち前の美しい声でフランス語で歌っています。以前取り上げた「ただ愛に生きるだけUn jour l'amour」と同じアルバムに収録されています。その記事で彼女のご紹介もしています。ほかには、「ひとりっきりSolitaire」も取り上げています。
クレマンソーの歌はYouTubeになかったので、LPから取り込んで投稿しました。LPにも、作詞者・編曲者などのデータはありません。
レーモン・ルフェーヴル
Adajio cardinal 哀愁のアダージョ
Martine Clemenceau マルティーヌ・クレマンソー
Ah ! qu’il est doux,
De rester près de vous,
Car mon cœur ne bat plus que pour vous.
Ah ! qu’il est doux,
De marcher avec vous,
Par ici et par là, n’importe où.
Je n’ai jamais eu peur,
De montrer ce bonheur,
Et rien ne pourra m’en empêcher.
Je n’ai jamais eu peur,
De perdre ce bonheur,
Aide-moi à nous le préserver.
ああ!なんて甘美なの、
あなたのそばにいることは、
だって私の胸はもうあなたのためにしかときめかないから。
ああ!なんて甘美なの、
あちらへこちらへ、どこへでも、
あなたといっしょに歩くことは。
このしあわせを表すことを、
けっして恐れたことはないわ、
そして誰にもそれを邪魔することはできない。
けっして恐れたことはないわ、
このしあわせを失うことを、
私たちがそれを護れるよう力を貸してね。

Ah ! qu’il est doux,
De rêver avec vous,
Au soleil des tendres rendez-vous.
Ah ! qu’il est doux,
D’oublier avec vous,
Les instants solitaires, loins de nous.
ああ!なんて甘美なの、
あなたとともに夢を見るのは、
甘い逢引きの太陽のもとで。
ああ!なんて甘美なの、
私たちから遠いところに去った、孤独な時を、
あなたとともにいて、忘れることは。

Ah ! qu’il est doux,
De chercher avec vous,
La réponse à vos mots les plus doux.
Ah ! qu’il est doux,
De rester près de vous,
Que c’est doux! Que c’est doux! Que c’est doux!
ああ!なんて甘美なの、
あなたとともに探すことは、
この上なく甘いあなたの言葉への返事を。
ああ!なんて甘美なの、
あなたのそばにいることは、
なんて甘美なの!なんて甘美なの!なんて甘美なの!
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1967年のジャック・ドゥミJacques Demy監督のミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たちLes Demoiselles de Rochefort」は、ミッシェル・ルグランMichel Legrandが音楽を担当し、素敵な曲がいっぱいの映画です。カトリーヌ・ドヌーヴCatherine Deneuveが双子の姉妹のひとりのデルフィーヌの役柄を演じて歌った(いえ、実際は吹き替えでアンヌ・ジェルマンAnne Germainが歌った)「デルフィーヌの歌La chanson de Delphine」をご紹介しましょう。ミュージカル映画ですから、ジャック・ドゥミー監督が書いた台詞を歌にしているわけで、未知の恋人との出会いを待つ気持ちをあらわしています。
映画では会話のあとで歌が始まります。
フローリーヌFleurine。ブラッド・メルドーBrad Mehldauのピアノも聴きどころです。
マテ・アルテリーMathé Altéryも歌っています
女優の加藤紀子もフランス語で歌っていて、2005年に出たアルバム「レ・オワゾー・ブルー〜青い鳥〜Les oiseaux bleu」に収録されています。達者なフランスにはない新鮮な魅力のある歌です。アルバム・タイトルはレ・ゾワゾーとすべきでしょうが…。
La chanson de Delphine デルフィーヌの歌
Je ne sais rien de lui, et pourtant je le vois
Son nom m'est familier, et je connais sa voix
Souvent dans mon sommeil, je croise son visage
Son regard et l'amour ne font plus qu'une image
彼のことはなにも知らないわ、でもわたしは彼に会う
彼の名は私にはなじみ深く、私は彼の声を知っている
しばしばまどろみつつ、彼の顔立ちを思い浮かべる
彼の視線と愛はもう唯ひとつのイメージに結びつく
Il a cette beauté des hommes romantiques
Du divin Raphaële le talent imité
Une philosophie d'esprit démocratique
Et du poète enfin la rime illimitée
彼はロマンチックな男たちのもつ美しさを
崇高なラファエロを模した才能を
民主的精神の哲学を
とにかく詩人の限りない韻を持っているわ

Je pourrais te parler de ses yeux, de ses mains
Je pourrais te parler de lui jusqu'à demain
Son amour, c'est ma vie, mais à quoi bon rêver?
L'illusion de l'amour n'est pas l'amour trouvé
わたしはあなたに彼の目について、彼の手について話せるわ
彼のことを明日までずっと話せるわ
彼の愛、それは私のいのち、でも夢を見てなんになるの?
愛のまぼろしは見つけた愛とは違うのよ

Est-il près, est-il loin, est-il à Rochefort?
Je le rencontrerai car je sais qu'il existe
Bien plus que la raison, le cœur est le plus fort
A son ordre, à sa loi, personne ne résiste
Et je n'y résisterai pas
彼は近くにいるの? 遠くにいるの? ロシュフォールにいるの?
わたしは彼に出会うわ、なぜって彼がいることを知っているから
理性よりも、心はもっと強い
その秩序に、その法則に、誰も逆らえない
そしてわたしはそれに逆らわないわ
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コール・ポーターCole Porterが1932年に作詞・作曲した「夜も昼も(ナイト・アンド・ディ)Night and Day」は英語のスタンダード・ナンバーとして知られ、多くの歌手が歌っています。そして、ダミアDamiaはフランス語に翻案したTout le jour, toute la nuitを歌っています。後年、パトリック・ブリュエルPatrick Bruelも歌い、先にご紹介した「パリ、ジュテームParis, je t'aime d'amour」と同様、2002年に出されたアルバムEntre-deuxに収録されています。このアルバムのタイトルの意味する「二つの間」とは、二つの大戦の間のヒット曲ということであり、デュオで歌うということでもあります。この曲は日本人の女性歌手カヒミ・カリィKahimi Karieといっしょに歌っています。歌詞のあいだに挿入した画像は彼女です。
ダミア(歌は少し経ってから始まります。)
パトリック・ブリュエル&カヒミ・カリィ
エラ・フィッツジェラルドElla Fitzgeraldの歌う原曲
Tout le jour, toute la nuit 夜も昼も
Damia ダミア
Comme le tam-tam qui résonne
Dans la jungle sombre, au lion
Comme le tic-tac monotone
Qui le temps marque le point
Comme cette pluie obsédante
Qui s'acharne sur toit
Sans arrêt ce rêve fou
Me hante-toi, toi, toi 注1
暗いジャングルのなかで、ライオンに向かって
鳴り響く銅鑼のタムタム音のように
時を刻む
単調なチックタック音のように
屋根を叩くこのしつこい雨のように
この狂おしい夢は絶えず
私につきまとう、トワ、トワ、トワと

Tout le jour, toute la nuit
Rien que toi, toujours, toujours
J'en suis éblouie
Que tu sois au loin, qu'importe 注2
Puisqu'en moi tendrement
Je t'emporte
Oh, mon amour
Nuit et jour
Sans répit
Le jour la nuit
Le désir comme un démon
Me hante et me poursuit
Dans le tourbillon du monde
La solitude profonde
Je suis à toi, rien qu'a toi.
毎日、毎晩
あなただけに、いつも、いつも
私は魅せられる
あなたが遠くへ行っても、構わない
なぜならこころの裡にそっと
私はあなたを抱いているから
おお、愛しい人
夜も昼も
絶えず
昼夜
悪魔のような欲望が
私につきまとい私を追いかける
この世の渦のなかの
底なしの孤独
私はあなたのもの、ひたすらあなたのもの

Nuit et jour
Au plus profond de moi
Un feu brûle qui me consume
Et ne brûle que pour toi
Mon tourment ne finira
Que quand tu me permettras de t'aimer
De t'aimer toujours
Nuit et jour
夜も昼も
私の奥底で
燃える火が私を焦がす
その火はあなたのためだけに燃える
私の苦悩は終わらない
あなたを愛することをあなたが許してくれなければ
ずっとあなたを愛することを
夜も昼も
Nuit et jour.
夜も昼も。
[注]
1 toi, toi, toiは、tam-tam、tic-tacと同様にtで始まる語であり、トワ、トワ、トワという音として訳した。
2 qu'importe「どうでもいい、構わない」
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今回はティノ・ロッシTino Rossiの「夜のヴァイオリンUn violon dans la nuit」です。
原曲は、Cesare Andrea Bixioが作曲しBixio Cherubiniが作詞した「ジプシーのヴァイオリンViolino tzigano」(1935年)というイタリア語のタンゴ。
同年、 Henri VarnaとMarc-Cabがフランス語に翻案し、ティノ・ロッシが歌いました。
ミルヴァMilvaの歌う原曲
Un violon dans la nuit 夜のヴァイオリン
Tino Rossi ティノ・ロッシ
Dans la nuit un violon joue presqu´en sourdine 注1
Pour nous seuls, sa mélodie tendre et câline
Elle nous dit l´espoir d´aimer, la joie de vivre 注2
Tous les deux sous le ciel clair écoutons-la
Doucement elle nous prend et nous énivre
Viens ce soir la murmurer entre mes bras:
夜更けにヴァイオリンがほとんどかすかな音色で
僕たちだけのために、甘く麗しいメロディーを奏でる
そのメロディーは僕たちに恋する希望と、生きる喜びを語る
二人して澄み切った空のもとでそれを聴こう
それはそっと僕たちをとらえ僕たちを酔わせる
今宵、僕の腕のなかにそのメロディーをささやきにおいで

Chante, chante pour moi
Dans cette nuit de rêve 注3
Blottie tout près de toi 注4
La douceur de ta voix
Vient bercer mon émoi
Chante, chante pour moi
Quand ta chanson s´élève
Tout paraît à mes yeux
Plus beau, plus merveilleux
Dans cette nuit de rêve
歌って、私のために歌って
あなたの間近に身を寄せて
夢のような今宵
あなたの甘い声は
私の不安をやわらげてくれる
歌って、私のために歌って
あなたの歌が高まると
私の目にはすべてが
より美しく、より素晴らしく見える
この夢のような今宵
Tu partis et depuis lors, partout je traîne
Le fardeau de mon chagrin et de mes peines
Malgré tout, il faut toujours que je revienne
Retrouver les souvenirs des jours enfuis
Mais ce soir, comme un parfum des joies anciennes
Un violon rejoue cet air qui me poursuit:
君は去ってそれ以来、僕は
悲しみと苦痛の重荷をあちこち引きずっている
ともあれ、僕はつねに戻って来るしかない
過ぎ去った日々を思い出すために
だが今宵、いにしえの喜びの香りのように
一挺のヴァイオリンが僕につきまとうこの旋律を再び奏でる

Chante, chante pour moi
Dans cette nuit de rêve
La douceur d´une voix
Vient bercer mon émoi
Calmer mon désarroi
Chante, chante pour moi
Pendant ces heures brèves
Lentement dans mon cœur
Refleurit le bonheur
Dans cette nuit de rêve
Chante, chante pour moi
Pendant ces heures brèves
Lentement dans mon cœur
Refleurit le bonheur
Dans cette nuit de rêve
歌って、私のために歌って
夢のような今宵
甘い声が
私の不安をやわらげ
私の混乱を鎮める
歌って、私のために歌って
この短い時間のあいだ
私の心にゆっくりと
幸福が再び花開く
夢のような今宵
歌って、私のために歌って
この短い時間のあいだ
私の心にゆっくりと
幸福が再び花開く
夢のような今宵
[注] Chante, chanteで始める節は、ヴァイオリンが奏でる曲の内容。
1 sourdine「弱音器」。en sourdine「弱音器をつけて」すなわち「小さな音で」。
2 この節のこの行からあとのelleおよびlaは前行のsa mélodie。
3 de rêve「夢のような、非現実的な」
4 blotti「身を丸めた、身を寄せた」は女性形blottieになっているので、自分は女性の立場。
Comment:2
2015
02.19
オオカミと牝鹿と騎士(優しい歌)Le loup, la biche et le chevalier (Une chanson douce)
Category:
シャンソン歌詞・邦訳

アンリ・サルヴァドールHenri Salvadorの「オオカミと牝鹿と騎士Le loup, la biche et le chevalier」(作曲:アンリ・サルヴァドール、作詞:モーリス・ポンMaurice Pon)には「優しい歌Une chanson douce」という副題がついています。1950年に、アンリはジャクリーヌJacquelineに出会い、「あなたを32年間待っていたんだ」と言い、二人は結婚しました。この曲が発表されたのは1955年。僕の一生の終りまでこの「優しい歌」を君のために歌い続けると、愛する妻に捧げた歌です。しかし、1976年にジャクリーヌは亡くなります。アンリが亡くなったのは2008年ですから、「僕の一生の終り」は30年以上もあとのこと。彼にはのちにあらたな出会いもあり、僕の一生の終りまでというわけにはいかなかった(「冬の庭(温室) Jardin d'hiver」の記事参照)のですが、ペール・ラシェーズPère-Lachaiseのお墓で二人はいっしょに眠っています。
Le loup, la biche et le chevalier (Une chanson douce)
オオカミと牝鹿と騎士(優しい歌)
Henri Salvador アンリ・サルヴァドール
Une chanson douce
Que me chantait ma maman
En suçant mon pouce
J'écoutais en m'endormant
Cette chanson douce
Je veux la chanter pour toi
Car ta peau est douce
Comme la mousse des bois
ママが歌ってくれた
優しい歌
親指をしゃぶりつつ
眠りに落ちながら
この歌を聴いていたもんだよ
僕は君のためにこれを歌いたい
だって君の肌は
森の苔みたいに
滑らかだから
La petite biche est aux abois 注1
Dans le bois, se cache le loup
Ouh, ouh, ouh ouh !
Mais le brave chevalier passa
Il prit la biche dans ses bras
La, la, la, la
小さな牝鹿が猟犬に追いつめられ
森では、オオカミが身を潜めてるんだ
ウー、ウー、ウーウー!
でも勇敢な騎士が通りかかり
牝鹿を腕に抱きとったよ
ラ、ラ、ラ、ラ

La petite biche
Ce sera toi, si tu veux
Le loup, on s'en fiche 注2
Contre lui, nous serons deux
Une chanson douce
Que me chantait ma maman
Une chanson douce
Pour tous les petits enfants
小さな牝鹿
それは君だよ、お望みならね
オオカミなんてへいちゃらさ
僕らは二人で立ち向かうんだもの
ママが歌ってくれた
優しい歌
ちっちゃな子供みんなの
優しい歌

Ô le joli conte que voilà, 注3
La biche en femme se changea
La, la, la, la
Et dans les bras du beau chevalier
Belle princesse elle est restée
A tout jamais
おーこんなすてきな話なんだよ、
牝鹿は女性に姿を変えたんだ
ラ、ラ、ラ、ラ
そして美しい騎士の腕のなかに
美しい王女さまはとどまった
永遠に

La belle princesse
Avait tes jolis cheveux
La même caresse 注5
Se lit au fond de tes yeux
Cette chanson douce
Je veux la chanter aussi
Pour toi, ô ma douce
Jusqu'à la fin de ma vie
Jusqu'à la fin de ma vie.
美しい王女様は
君みたいなきれいな髪をしていた
同じ優しさが
きみの瞳の奥に読み取れる
この優しい歌を
僕も歌いたい
君のためにね、僕の優しい人
僕の一生の終りまで
僕の一生の終りまで。
[注]
1 biche「牝鹿」は、きれいな女性の代名詞ともされ、ma bicheと言うと「いとしい人、おまえ」の意味。aboiは「獲物を追いつめた猟犬の吠え声」で、aux abois「猟犬に追いつめられた、窮地に陥った」。
2 se ficher de qn/qc「…を馬鹿にする、無視する」
3 que voilà「次のような、そこにある」
4 à tout jamais「いつまでも、永遠に」
5 caresseは「愛撫、優しく触れること」だが、caresse de regard「まなざしの優しさ」といった表現にも用いられる。文脈から、「王女様と同じ(優しさ)」ということだろう。
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前回、ララ・ファビアンLara Fabianの曲を出したので(?)、今回は「ララのテーマLara's Theme」です。1965年のDavid Lean監督の映画「ドクトル・ジバゴDoctor Zhivago」の主題曲で、作曲はモーリス・ジャールMaurice Jarre。ララはジバゴの恋人、ジュリー・クリスティJulie Christieが演じました。
1966年にSomewhere My Loveというタイトルでフランシス・ウェブスターPaul Francis Websterが作詞し、レイ・ニコフ・シンガーズThe Ray Conniff Singers (12人の女声と13人の男声のコーラス)が歌って大ヒットしました。
そして、ユベール・イティエHubert IthierがLa chanson de Laraというタイトルでフランス語に翻案し、1967年にクロアチアの歌手テレザ・ケソヴィヤTereza Kesovijaが歌いました。テレザは1938年生まれで、1965年にフランスに移住。クロアチア語、フランス語、イタリア語、スロベニア語、ロシア語、英語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語の9言語を話し、数多くの音楽祭に参加。オランピア劇場で歌った唯一のクロアチア人歌手で、70代後半の現在も活動中。
シャンソンの友Les Compagnons de la Chansonも歌っています。彼らは1941年にリヨンで結成し1985年まで活動した9人組のグループで、エディット・ピアフÉdith Piafとともに渡米してコラボしたことで知られています。
歌詞はシャンソンの友の歌唱に即しました。テレザの歌詞は少々違っています。彼女の歌はすばらしいのですが、発音に少々癖があります。
La chanson de Lara ララのテーマ
Les Compagnons de la Chanson シャンソンの友
Un jour Lara
Quand le vent a tourné
Un jour Lara
Ton amour t´a quitté
Tes yeux Lara
Revoient toujours ce train
Ce dernier train
Partant vers le chagrin
ある日、ララ
風が向きを変えたとき
ある日、ララ
君の恋人は君のもとを去った
君の瞳に、ララ
あの列車がいつも映っている
あの最後の列車が
悲しみに向けて出て行くのが

Le ciel était couvert de neige
Au loin déjà l´horizon brûlait
空は雪におおわれていた
遠くでもう地平線が燃えていた
Cette chanson
Que chantaient les soldats
C´était si bon
Serré entre tes bras
Au bord des pleurs
Tu souriais Lara
Oubliant l´heure
La guerre, la peur, le froid
兵士たちが歌っていた
この歌は
とてもすてきだった
君の腕に抱きしめられて
泣きそうになった
君は微笑んでいた、ララ
時間を、
戦争を、恐怖を、寒さを忘れて

Le ciel était couvert de neige 注
Au loin déjà le canon tonnait
空は雪におおわれていた
遠くでもう大砲の音が鳴り響いていた
Un jour Lara
Quand tournera le vent
Un jour Lara
Ce sera comme avant
ある日、ララ
風が向きを変えたら
ある日、ララ
以前のようになるだろう
Alors cet air comme un manège
Pour toi sera
Ta chanson Lara.
その時
君にとってはメリーゴーラウンドのようなこの旋律は
君の歌になるだろう、ララ。
[注] シャンソンの友はcouvertと歌っているが、テレザはcouleurと歌っている。
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ララ・ファビアンLara Fabianは、1970年にベルギーで生まれたシンガー・ソングライターで、1996年にはカナダ国籍も取得。1986年から活動を開始し1991年にカナダで最初のアルバムを出し、現在までに世界中で1,200万枚のディスクが売れています。セルジュ・ラマSerge Lamaの「僕は病んでいる(灰色の途)Je suis malade」のほか、多くの歌手とのデュオや他の歌手の曲のカヴァーも積極的にこなしています。
「ジュテームJe t'aime」は1996年にリリースされた3枚目のアルバムPureに収録された曲。作詞:ファビアン自身、作曲:リック・アリソンRick Allison(当時の夫)。なにか禁断の恋といった状況をうかがわせるような歌詞です。
Je t'aime ジュテーム
Lara Fabian ララ・ファビアン
D'accord, il existait d'autres façons de se quitter
Quelques éclats de verres auraient peut-être pu nous aider
Dans ce slence amer, j'ai décidé de pardonner
Les erreurs qu'on peut faire à trop s'aimer
そうね、別れるのには別のやり方があった
いくつかのガラスの破片が私たちを助けてくれたかもしれない
この苦い沈黙のなかで、私は許すことにした
私たちがたがいに愛し過ぎるために冒すかもしれない過ちを

D'accord la petite fille en moi souvent te réclamait
Presque comme une mère, tu me bordais, me protégeais
Je t'ai volé ce sang qu'on aurait pas dû partager
A bout de mots, de rêves je vais crier 注1
そうね 私のなかの小さな女の子がよくあなたを求めた
まるで母親みたいに、あなたは私を夜具にくるみ、私を護ってくれていた
私たちが分け合ってはいけない血を私はあなたから盗んだ
言葉が尽き、夢が尽き私は叫ぼうとする
Je t'aime, je t'aime
Comme un fou comme un soldat
Comme une star de cinéma
Je t'aime, je t'aime
Comme un loup, comme un roi
Comme un homme que je ne suis pas 注2
Tu vois, je t'aime comme ça
愛してるわ、愛してるわ
きちがいみたいに兵士みたいに
映画スターみたいに
愛してるわ、愛してるわ
オオカミのように、王のように
女ながらも男のように
ほら、こんな風にあなたを愛してるのよ

D'accord je t'ai confié tous mes sourires, tous mes secrets
Même ceux, dont seul un frère est le gardien inavoué
Dans cette maison de pierre, Satan nous regardait danser
J'ai tant voulu la guerre de corps qui se faisaient la paix
そうね 私はあなたに私の微笑みをすべて私の秘密をすべて委ねた
ひとりの兄だけが内密の守護者であるような秘密さえも
この石造りの家で、私たちが踊るのをサタンが見ていた
平穏だった二人の身体がしのぎを削ることを私はとても欲した
Je t'aime, je t'aime
Comme un fou comme un soldat
Comme une star de cinéma
Je t'aime, je t'aime
Comme un loup, comme un roi
Comme un homme que je ne suis pas
Tu vois, je t'aime comme ça
愛してるわ、愛してるわ
きちがいみたいに兵士みたいに
映画スターみたいに
愛してるわ、愛してるわ
オオカミのように、王のように
女ながらも男のように
ほら、こんな風にあなたを愛してるのよ

Je t'aime, je t'aime
Comme un fou comme un soldat
Comme une star de cinéma
Je t'aime, je t'aime, je t'aime, je t'aime, je t'aime, je t'aime
Comme un loup, comme un roi
Comme un homme que je ne suis pas
Tu vois, je t'aime comme ça
Tu vois, je t'aime comme ça
愛してるわ、愛してるわ
きちがいみたいに兵士みたいに
映画スターみたいに
愛してるわ、愛してるわ、愛してるわ、愛してるわ、愛してるわ、愛してるわ
オオカミのように、王のように
女ながらも男のように
ほら、こんな風にあなたを愛してるのよ
ほら、こんな風にあなたを愛してるのよ
[注]
1 A bout de+無冠詞名詞「…が尽きた、の限界に来ている」
2 un homme que je ne suis pas直訳すると「私がそうではないところのun homme」ということだが、un hommeのみならずun loupとun roiも自分がそうでないものに含まれており、un hommeを「人間」とせず、「男」とすべきである。日本語にしにくいので意訳した。
Comment:2

ミッシェル・ポルナレフMichel Polnareffの3回目。「素朴なメロディーUne simple mélodie」という、彼自身の作詞・作曲の、たいへん美しい曲です。先にご紹介した2曲、「フランスへの手紙Lettre à France」と、「言いたいことはこんなにある(天使の遺言)J'ai tellement de choses à dire」と同じアルバム「美しきロマンの復活Coucou me revoilou」に収録されています。
この曲は、フランスに彼が戻った際に新たな録音でシングルカットされています。「愛のシンフォニー」という邦題がつけられていますが、気に入りませんので、このブログでは直訳の題名にいたします。
ピアノはもちろん、彼自身が弾いています。とても高い声なんですが、不思議なことにこの私が彼に合わせて歌えます。音域の高い男性の歌を女性が歌うとき、3度くらい下げないと歌えないと言われますが、「フランスへの手紙」にしろそのままで歌えるのはどうしてなんでしょう?彼の声が女性の声と同質だから?どなたか何か教えてください。
Une simple mélodie 素朴なメロディー
Michel Polnareff ミッシェル・ポルナレフ
Quand j'entend cette chanson
Je pense aux jours anciens
Où nos vies ne faisaient qu'une
Nos cœurs ne faisaient qu'un
この歌を聴くと
遠い日々のことを想う
僕たちの人生がひとつで
僕たちの心がひとつだった頃の
Toi tu mettais des mots d'amour
Sur cet air familier 注1
Et jamais depuis ce temps
Je n'ai pu l'oublier
君は愛の言葉を
このなじみ深い調べに乗せていた
そしてその時からずっと
僕はそれを忘れられなかった

Une simple mélodie la lala lalalala 注2
Où les dieses et les bémoles
Chantaient notre harmonie
素朴なメロディーで ラ ララ ララララ
シャープやフラットが
僕たちのハーモニーを奏でていた
Une simple mélodie la lala lalalala
Chaque fois que je l'entend
Le passé me sourit
素朴なメロディー ラ ララ ララララ
それを聴くたびに
過去が僕に微笑む
Mais un soir tu es partie pour une autre musique
Me laissant seul sur une note amere et nostalgique
Et si le temps a effacé tes traits dans ma mémoire
Elle est restée la chanson qui disait notre histoire 注3
だがある夜 君はほかの音楽に行ってしまった
僕をひとり 苦く淋しい音符のうえに残して
そして時が僕の記憶のなかの痕跡を消したとしても
僕たちの物語を語る歌は残っている

Une simple mélodie la lala lalalala
Me rappel quand je l'entend
L'amour qu'on nous a pris
素朴なメロディーは ラ ララ ララララ
僕たちをとらえた愛の声を
聴いたときのことを想い出させる
Une simple mélodie la lala lalalala
Où trois notes suffisaient
Pour faire une symphonie 注4
素朴なメロディーは ラ ララ ララララ
シンフォニーを奏でるのに
3つの音符でこと足りた
Une simple mélodie la lala lalalala
Où les dieses et les bémoles
Chantaient notre harmonie
素朴なメロディーで ラ ララ ララララ
シャープやフラットが
僕たちのハーモニーを奏でていた
Une simple mélodie la lala lalalala
Quand la musique est finie
L'amour s'arrête aussi.
素朴なメロディー ラ ララ ララララ
音楽が鳴りやんだとき
恋もまた終わる。
[注]
1 air「歌、歌曲」で、「空気」「様子」などではない。
2 simple は「単純な、素朴な、単一の」という意味があるが、 (名詞の前で)「単なる、ただの、何の変哲もない」と、unを強調するだけのような用い方もされる。この歌詞では後者のニュアンスだととれるが、題名でもあることから、訳語は「素朴な」を用いた。
3 qui disait notre histoire 直訳すると、「私たちの物語を物語る」。
4 trois notes 先に取り上げた、シルヴィー・ヴァルタンSylvie Vartanの「私はブルースを歌うJe chante le blues」、コラ・ヴォケールCora Vaucaireの「三つの小さな音符Trois petites notes de musique」と同様、trois notes「3つの音符」が登場する。ブルースも流行り歌もそしてシンフォニーまでもが最小限3つの音符でできるということのようだ。
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1967年にイギリスのエンゲルベルト・フンパーディンクEngelbert Humperdinckが歌って大ヒットした「ラスト・ワルツThe Last Waltz」(作曲:Barry Mason and Les Reed)を、同年、ユベール・イティエHubert Ithier がフランス語に翻案しミレイユ・マチュー Mireille Mathieu が歌いました。その曲「ラスト・ワルツLa dernière valse」は、Made in Franceというアルバムに収録されています。
エンゲルベルト・フンパーディンクの英語の原曲
ミレイユ・マチュー
ペチュラ・クラークPetula Clarkも同年歌いました。
La dernière valse ラスト・ワルツ
Mireille Mathieu ミレイユ・マチュー
Le bal allait bientôt se terminer
Devais-je m'en aller ou bien rester ? 注1
L'orchestre allait jouer le tout dernier morceau
Quand je t'ai vu passer près de moi...
ダンスパーティーはまもなく終わろうとしていた
去るべきかしらそれとも残るべきかしら?
オーケストラは一番最後の曲を演奏しようとしていた
そのときあなたが私のそばを通るのが見えた
C'était la dernière valse
Mon cœur n'était plus sans amour
Ensemble cette valse, 注1
Nous l'avons dansée pour toujours.
それは最後のワルツだった
私の心はもう愛をなくしてはいなかった
いっしょにこのワルツを、
私たちはずっと踊った。

On s'est aimé longtemps toujours plus fort 注2
Nos joies nos peines avaient le même accord
Et puis un jour j'ai vu changer tes yeux
Tu as brisé mon cœur en disant "adieu".
私たちは長いあいだもっと愛し合った
私たちの喜び私たちの苦しみは同調していた
そしてある日 あなたのまなざしが変わったのが見えた
あなたは「さようなら」と言って私の心を傷つけた。
C'était la dernière valse
Mon cœur restait seul sans amour
Et pourtant cette valse, aurait pu durer toujours 注3
Ainsi va la vie, tout est bien fini
Il me reste une valse et mes larmes...
それは最後のワルツだった
私の心はもう愛をなくしてひとりぼっちだった
だけどこのワルツは、ずっと続いていたかもしれなかった
こうして人生は過ぎ、すべては終わった
私に残されたのは一曲のワルツと涙…
La la la la la la la la la la
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ

C'était la dernière valse
Mon cœur restait seul sans amour
Et pourtant cette valse, aurait pu durer toujours
それは最後のワルツだった
私の心はもう愛をなくしてひとりぼっちだった
だけどこのワルツは、ずっと続いていたかもしれなかった
La la la la la la la la la la
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ
[注] 英語の原曲にかなり忠実な内容である。
1 このワルツとは二人の恋のことをいう。
2 dois-je…と、その時に考えた内容を、時制の一致により半過去形を用いて表している。
3 pouvoirは推測を示す。時制の一致で条件法過去形が用いられ、その時に話者が望んだ事態を示している。
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前回の「わたしはわたしよJe suis comme je suis」と同様、詩集「ことばParoles」(1946年)に収録されたジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩にジョゼフ・コズマJoseph Kosmaが曲をつけたシャンソンを取り上げましょう。イヴ・モンタンYves Montandの「僕の家でDans ma maison」です。1962年のアルバム「イヴ・モンタン、ジャック・プレヴェールを歌うYves Montand Chante Jacques Prévert」に収録されています。
少々チンプンカンプンな内容のようですが、第2次大戦が終わり、喪失や痛手から立ち直り新たな生を模索しようとする時代に作られたということは重要です。ひとが当たり前だと思っている既成の価値観を解体し、言葉でものを規定し判断することに異議を唱え、なまの感性に基づいた新しいものの見方を創造するという意図が込められた詩なのだと思います。
オランピアのステージ。これだけのパフォーマンスなら詩(歌詞)の意味が分かる必要もないですね。
Dans ma maison 僕の家で
Yves Montand イヴ・モンタン
Dans ma maison vous viendrez
D´ailleurs ce n´est pas ma maison
Je ne sais pas à qui elle est
Je suis entré comme ça un jour
Il n´y avait personne
Seulement des piments rouges accrochés au mur blanc
Je suis resté longtemps dans cette maison
Personne n´est venu
Mais tous les jours et tous les jours
Je vous ai attendue
僕の家にあなたは来るだろう
もっともこれは僕の家じゃない
これが誰のものなのか僕は知らない
僕はある日こんな風に入ってきたのさ
誰もいなかった
ただ赤唐辛子が白い壁にぶら下がってた
僕はながいあいだこの家にとどまった
誰もやって来なかった
だが毎日毎日
僕はあなたを待っていた

Je ne faisais rien
C´est à dire rien de sérieux
Quelquefois le matin
Je poussais des cris d´animaux
Je gueulais comme un âne
De toutes mes forces
Et cela me faisait plaisir
Et puis je jouais avec mes pieds
C´est très intelligent les pieds
Ils vous emmènent très loin 注1
Quand vous voulez aller très loin
Et puis quand vous ne voulez pas sortir
Ils restent là ils vous tiennent compagnie
僕は何もしなかった
まぁ重要なことは何もね
ときどき朝に
僕は動物の吠え声をだした
僕はロバのようにいなないた
おもいっきりね
それは楽しかった
それから僕は自分の足と遊んだ
足ってとても利口なんだ
彼らはとても遠くへ連れてってくれる
遠くへ行こうと望めばね
それから出て行きたくないときには
彼らはそこにいて付き添っていてくれる

Et quand il y a de la musique ils dansent
On ne peut pas danser sans eux
Faut être bête comme l´homme l´est si souvent
Pour dire des choses aussi bêtes
Que bête comme ses pieds gai comme un pinson 注2
Le pinson n´est pas gai
Il est seulement gai quand il est gai
Et triste quand il est triste ou ni gai ni triste
Est-ce qu´on sait ce que c´est un pinson
D´ailleurs il ne s´appelle pas réellement comme ça
C´est l´homme qui a appelé cet oiseau comme ça
Pinson pinson pinson pinson
そして音楽があれば彼らはダンスする
彼らなしじゃダンスできない
バカにちがいないよ、ひとはしばしばバカになる
自分の足のようにバカだとかアトリのように陽気だなんて
バカなことを言うなんて
アトリは陽気じゃないよ
彼は陽気なときに陽気なだけ
悲しいときには悲しいしまた陽気でも悲しくもなかったりもする
それがアトリだってどうして分かるんだ
だって彼はほんとうはこんな名前じゃないんだ
この鳥をこんな風に呼んだのは人間なんだ
アトリ、アトリ、アトリ、アトリと

Comme c´est curieux les noms
Martin Hugo Victor de son prénom 注3
Bonaparte Napoléon de son prénom
Pourquoi comme ça et pas comme ça
Un troupeau de bonapartes passe dans le désert
L´empereur s´appelle Dromadaire
Il a un cheval caisse et des tiroirs de course 注4
Au loin galope un homme qui n´a que trois prénoms
Il s´appelle Tim-Tam-Tom et n´a pas de grand nom
Un peu plus loin encore il y a n´importe qui
Beaucoup plus loin encore il y a n´importe quoi
Et puis qu´est-ce que ça peut faire tout ça
名前ってなんて変なんだろう
彼のファースト・ネームのマルタン・ユーゴー・ヴィクトール
彼のファースト・ネームのボナパルト・ナポレオン
どうしてそうなんだまたどうしてそうじゃないんだ
ボナパルトたちの群れが砂漠を行く
皇帝はヒトコブラクダという名前だ
彼は馬ケースといくつかの競走用引き出しを持っている
遠くを3つのファースト・ネームしか持たない男が駆けている
彼はティム・タム・トムといい、姓は持たない
さらにもう少し遠くにいるのは誰だってかまわない
さらにもう少し遠くにいるのは何だってかまわない
それでそうしたものぜんぶがどうだっていうんだ
Dans ma maison tu viendras 注5
Je pense à autre chose mais je ne pense qu´à ça
Et quand tu seras entrée dans ma maison
Tu enlèveras tous tes vêtements
Et tu resteras immobile nue debout avec ta bouche rouge
Comme les piments rouges pendus sur le mur blanc
Et puis tu te coucheras et je me coucherai près de toi
Voilà
Dans ma maison qui n´est pas ma maison tu viendras.
僕の家に君は来るだろう
僕はほかのことを考えるけどそのことしか考えない
そして君が僕の家に入ってきたとき
君は服をぜんぶ脱ぐだろう
君は裸で立ったままじっとしているだろう
白い壁にぶら下がっている赤唐辛子みたいな赤い唇をして
それから君は横たわり僕は君のそばに横たわるだろう
そうさ
僕の家じゃない僕の家に君は来るのさ。

[注]
1 第1節のvousは相手(の女性)だが、ここは、不特定な人、人間一般を指すので訳文には主語を入れなかった。
2 pinson「アトリ」とは小鳥の名。冬に公園や庭園に多い。gai comme un pinson「アトリのように陽気だ」とbête comme ses pieds「足のようにバカだ」はよく使われる表現。
3 Martin Hugo Victortとされているが、著名な作家ヴィクトル・ユーゴーはVictor Marie Hugo。HugoとVictortさえ分かれば通じるということであえてそうしたか。
4 本来はun cheval de course「競走馬」とdes tiroirs caisses「ケースの引き出し」となるところを入れ換えて表現している。その前に、ラクダをbonapartes「ボナパルトたち」と、皇帝をDromadaire「ラクダ」と呼んでいる延長である。
5 最初はvousと呼びかけていたが、ここからtuに変わり、心理的距離の変化をあらわしている。
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ジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩集「ことばParoles」(1946年)に収録された詩にジョゼフ・コズマJoseph Kosmaが曲をつけたシャンソンのひとつ、「わたしはわたしよJe suis comme je suis」を今回は取り上げましょう。「枯葉Les Feuilles mortes」と同年の1951年に作られました。
ジュリエット・グレコJuliette Grecoは、原詩にはない部分を加えた歌詞で歌っています。
オランダのウェンデ・スナイデルスWende Snijdersは、ちょっとエキセントリックな歌い方で、ほぼプレヴェールの原詩のとおりに歌っています。2004 年に出した彼女のセカンドアルバムQuand tu dorsに収録されています。
Je suis comme je suis わたしはわたしよ
Juliette Greco ジュリエット・グレコ
Je suis faite pour plaire
Et n’y puis rien changer
Mes lèvres sont trop rouges
Mes dents trop bien rangées
Mon teint beaucoup trop clair
Mes cheveux trop foncés
Et puis après? 注1
Qu’est-ce que ça peut vous faire? 注2
Je suis comme je suis
Je plais à qui je plais
わたしはもともと好かれるたちなの
それは変えようがないわ
わたしの唇はとても赤く
とても歯並びがよくて
肌はとてもとてもすきとおっていて
髪はとても濃いの
それがなんなの?
それがあなたにとってどうだというの?
わたしはわたし
わたしを好いてくれる人に好かれるわ

{Refrain:}
Je suis comme je suis
Je suis faite comme ça
Quand j’ai envie de rire
Oui, je ris aux éclats
J’aime celui qui m’aime
Est-ce ma faute à moi
Si ce n’est pas le même
Que j’aime chaque fois?
Je suis comme je suis
Je suis faite comme ça
Que voulez-vous de plus?
Que voulez-vous de moi?
わたしはわたし
わたしはもともとこうなのよ
笑いたくなったら
ええ、思いっきり笑うわ
わたしを愛してくれる男を愛すわ
そのつどわたしが愛す相手が
違うとしたら
それはわたしのせいかしら?
わたしはわたし
わたしはもともとこうなのよ
これ以上どうしろというの?
わたしにどうしろというの?
Je suis faite pour plaire 注3
Et n’y puis rien changer
Mes talons sont trop hauts
Ma taille trop cambrée
Mes seins beaucoup trop durs
Et mes yeux trop cernés
Et puis après?
Qu’est-ce que ça peut vous faire?
Je suis comme je suis
Je plais à qui je plais
Je suis comme je suis
Je suis faite comme ça
わたしはもともと好かれるたちなの
それは変えようがないわ
ヒールはとても高くて
腰がよく反っていて
お乳はすごくひきしまっていて
目は隈が目立つ
それがなんなの?
それがあなたにとってどうだというの?
わたしはわたし
わたしを好いてくれる人に好かれるわ
わたしはわたし
わたしはもともとこうなのよ

Qu’est-ce que ça peut vous faire
Ce qui m’est arrivé?
Oui, j’ai aimé quelqu’un
Et quelqu’un m’a aimée
Comme les enfants qui s’aiment
Simplement savent aimer
Aimer, aimer
Pourquoi me questionner?
Je suis là pour vous plaire
Et n’y puis rien changer
わたしに起こったことが
あなたにとってどうだというの?
ええ、わたしは誰かを愛したわ
ええ、誰かがわたしを愛したわ
愛し合う子どもたちが
ただ愛することができるだけなのと同じよ
愛することが、愛することが
なぜわたしに訊くの?
わたしはあなたに好かれるためにいるのよ
それは変えようがないわ
{au Refrain}
[注] 第1節は原詩になくてグレコが歌っているということで色分けした。 もちろん、原詩にはRefrainはない。
1 puisはpouvoirの直現1単の文語的な形。ne rien changer à…「…を何ひとつ変えない」のà…がyとなる。
2 Et puis après?「それで、それがどうしたんだ」
3 Qu’est-ce que ça peut faire?「それがどうだというのだ、どうってことはない」にvous「あなたにとって」が入っている。
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今回はシャンソンの古典ともいうべき「青色のジャヴァLa java bleue」(作詞:ヴァンサンスコットVincent Scotto、作曲:ジェオ・コジェとノエル・ルナールGéo Koger & Noël Renard) 。1938年に作られ、今も世界中で歌われています。
これを歌ったフレエルFréhelは1891年にパリで生まれ、二つの大戦の間の時代に現実派シャンソンの中心的存在として活動しました。映画「ゲンズブールと女たちGainsbourg, vie héroïque」に、フレエルが出てきましたが、実際に、ゲンズブールが子供の頃に、フレエルに会ってカフェでおごってもらったというエピソードがあるそうです。彼女は15歳のとき、化粧品の訪問販売をしていて、大物歌手ラ・ベル・オテロ(高級娼婦だったともいわれます)にその大胆な態度と独特の声を認められて「つるにちそうPervenche」という名前で歌手としてデヴューしました。1907年に、ミュージック・ホールのスターで歌の教師だった男と結婚し子供が生まれますが、その子が幼くして亡くなり、男はダミアDamiaのもとに走ります。二人は1910年に離婚。そのあと、彼女は新進歌手のモーリス・シュヴァリエMaurice Chevalierと短いあいだ関係を持ちますが、彼は大物スターのミスタンゲットMistinguettを選んでしまいます。その苦しみから、まだ19歳だった彼女は自殺を図りますが果たせず、革命前夜のロシア、ブルガリア、オーストリア、トルコなどを放浪します。
1923年に、アルコールとコカインでぼろぼろになり、やたら肥満した姿でパリに戻ってきます。そして、フレエルFréhel と名前を変えて再出発を試み、1924年にオランピアで「忘れられない、忘れられていないフレエルInoubliable et inoubliée Fréhel」と題したカムバック公演をおこないます。みごと復帰を果たしたフレエルは、歌手としての活動を展開しながら、1930年代には、映画にもたびたび出演します。しかし、1935年の再婚も長続きせず、アルコールとコカインの中毒が克服されていないフレエルは、しだいに泥酔した姿を人前にさらすことも多くなり、友人の情けにすがって生きるようになりました。そして1951年、パリ市内のホテルで、ひとり孤独にその生涯を閉じました。
出演した映画「望郷Pépé le Moko」では、フレエルは、忘れられ落ちぶれた歌手タニアを演じています。かつての自分の曲を蓄音機で聴いているシーンがありますが、その曲はフレエル自身が1927年にレコーディングした「モンマルトルの挽歌Où est-il donc?」。タニアはフレエル自身の姿そのものです。
パトリック・ブリュエルPatrick Bruelは、二つの大戦の間、そして二人で歌うという二重の意味を込めた題名の「二つの間Entre deux」というアルバムを出していて、この曲もそれに収録されています。お勧めのアルバムです。
La java bleue 青色のジャヴァ
Fréhel フレエル
{Refrain:}
C'est la java bleue, 注1
La java la plus belle,
Celle qui ensorcelle
Et que l'on danse les yeux dans les yeux
Au rythme joyeux,
Quand les corps se confondent
Comme elle au monde
Il n'y en a pas deux,
C'est la java bleue.
これが青いジャヴァ、
もっとも美しいジャヴァ、
楽しいリズムに乗って
見つめ合って踊るとき
ひとを魔法にかける
そのとき二人の身体は一つになる
こんなものは世界に
二つとないわ、
これが青いジャヴァよ。

Il est au bal musette 注2
Un air rempli de douceur
Qui fait tourner les têtes,
Qui fait chavirer les cœurs.
Tandis qu'on glisse à petits pas, 注3
Serrant celle qu'on aime dans ses bras,
Tout bas l'on dit dans un frisson,
En écoutant jouer l'accordéon.
ミュゼットのダンス・ホールには
優しさに満ちたメロディーが流れ
それは頭をくらくらさせ、
心を揺さぶる。
愛しいひとを腕に抱いて
細かくステップを踏んで踊っているあいだ、
アコーディオンが歌うのを聴きながら、
震える声で彼女にささやく。
Chérie, sous mon étreinte
Je veux te serrer plus fort
Pour mieux garder l'empreinte
Et la chaleur de ton corps.
Que de promesses, que de serments
On se fait dans la folie d'un moment,
Mais ses serments remplis d'amour
On sait qu'on ne les tiendra pas toujours.
「愛しい人、僕の腕のなかに
君をもっと強く抱きしめたい
君の身体の跡形と
熱気をも少しとどめ置くために。」
一時の熱情のため、
どれほどの約束、どれほどの誓いを
人は交わすのだろう、
でもその愛に満ちた誓いを
いつまでも保てはしないことをひとは知っている。

{au Refrain}
Comme elle au monde
Il n'y en a pas deux,
C'est la java bleue.
こんなものは世界に
二つとないわ、
これが青いジャヴァよ。
[注]
1 javaは、20世紀初頭に流行した3拍子の大衆的なダンス、またそのダンス音楽。具体的には、男が女のお尻に手を回し、体を密着させて踊る一種のチーク・ダンス。 bleueは「美しい」というニュアンスで用いられているようだ。
2 Il est=Il y a
musetteは元来、オーヴェルニュ地方で使われていたバグパイプ、キャブレに与えられていた名前。のちにはアコーディオンがそれにかわるが、この歌詞でも、2節目の最後に、アコーディオンの演奏とある。ミュゼットやアコーディオンで演奏される3拍子の音楽もミュゼットと呼ばれ、それにポーランドのマズルカが融合して生まれたのがジャヴァだという。
le bal musette「ミュゼット伴奏で踊るダンス・ホール」。オーベルニュ地方からパリに出稼ぎに来ていた労働者達が、週末にミュゼット伴奏でのダンスパーティーを催したのが、バル・ミュゼットの始まりだといわれる。
3 à petits pas「小さな歩幅で」。身体を密着させて踊るので、ステップの歩幅が小さくなる。
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シャルル・アズナヴールCharles Aznavourの「ラ・マンマLa mamma」(1963年、作詞:ロベール・ギャルRobert Gall、作曲:アズナヴール)は、もっぱら恋や青春の懐古をうたうアズナヴールとしては珍しい内容で、母親の臨終の場をテーマとしています。でも曲調はけっしてしんみりとしたものではなく、ラテン調でダイナミックです。
ダリダDalida
La mamma ラ・マンマ
Charles Aznavour シャルル・アズナヴール
Ils sont venus
Ils sont tous là
Dès qu'ils ont entendu ce cri
Elle va mourir, la mamma
Ils sont venus
Ils sont tous là
Même ceux du sud de l'Italie
Y a même Giorgio, le fils maudit
Avec des présents plein les bras
Tous les enfants jouent en silence
Autour du lit ou sur le carreau
Mais leurs jeux n'ont pas d'importance
C'est un peu leurs derniers cadeaux
À la mamma {x2}
彼らはやって来た
彼らはみなそこに集まった
この叫び声を聞いて
死にかかっているんだ、かあさんが
彼らはやって来た
彼らはみなそこに集まった
イタリアの南部の者たちも
ろくでなしの息子のジョルジオも
両腕にみやげをいっぱい抱えてきた
子どもたちはみなおとなしく遊んでいた
ベッドの周りやタイル張りの床の上で
だが彼らの遊びは重要じゃなかった
それは彼らの最後の贈り物みたいなものだった
かあさんへの

On la réchauffe de baisers
On lui remonte ses oreillers
Elle va mourir, la mamma
Sainte Marie pleine de grâces 注1
Dont la statue est sur la place
Bien sûr vous lui tendez les bras
En lui chantant Ave Maria
みなは母にキスして元気づけた
みなは母の枕を高くした
死にかかっているんだ、かあさんが
聖寵みちみてるマリア聖母マリア
その像が置かれている
もちろん、ひとはマリアに救いの手を求める
アヴェ・マリアを歌いながら

{Refrain:}
Ave Maria
Y'a tant d'amour, de souvenirs
Autour de toi, toi la mamma
Y'a tant de larmes et de sourires
À travers toi, toi la mamma
アヴェ・マリア
たくさんの愛と、想い出がある
かあさん、あなたの周りには
たくさんの涙と微笑みがある
かあさん、あなたを通して
Et tous les hommes ont eu si chaud
Sur les chemins de grand soleil
Elle va mourir, la mamma
Qu'ils boivent frais le vin nouveau
Le bon vin de la bonne treille
Tandis que s'entassent pêle-mêle 注2
Sur les bancs, foulards et chapeaux
C'est drôle, on ne se sent pas triste
Près du grand lit et de l'affection
Y a même un oncle guitariste
Qui joue en faisant attention
À la mamma {x2}
男たちはみなとても暑い思いをした
太陽の照りつける道で
死にかかっているんだ、かあさんが
彼らは新酒のワインを冷やして飲んだ
いいブドウのいいワインだ
その間、スカーフや帽子は腰掛の上に乱雑に積まれていた
おかしなことに、悲しくは感じなかった
大きなベッドの傍らで愛に接して
ギタリストの叔父もいた
かあさんに注意を向けながら
ギターを弾いた

Et les femmes se souvenant
Des chansons tristes des veillées
Elle va mourir, la mamma
Tout doucement, les yeux fermés
Chantent comme on berce un enfant
Après une bonne journée
Pour qu'il sourie en s'endormant
女たちは思い出しながら
通夜の悲しい歌を
死にかかっているんだ、かあさんが
とても優しく、目を閉じて
子どもをあやすように歌う
いい一日の終りに
その子が寝入りながら微笑むようにと
{au Refrain}
Que jamais, jamais, jamais
Tu ne nous quitteras
けっして、けっして、けっして
僕たちから去らないで

[注]
1 Je vous salue, Marie pleine de grâce.めでたし聖寵みちみてるマリア:天使祝詞(アヴェ・マリア)の冒頭の句。
2 entasser qc. pêle-mêle「…を乱雑に積み上げる」。ここでは代名動詞でs’entasser。その主語は次行のfoulards et chapeaux。
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今回は、カミーユCamilleの「空のおうちLa demeure d'un ciel」です。
カミーユは1978年パリ生まれ。パリ政治学院在学中に作成したテープがアンリ・サルヴァドールHenri Salvadorの目に留まり、2002年にデビュー・アルバム「パリジェンヌと猫とハンドバッグLe Sac des Filles」(直訳すると「女の子たちのバッグ」)を出しました。このアルバムが学校の企業研修の単位として認められて卒業。この曲はそのなかの1曲です。「カミーユのワンダーランド」という邦題がつけられていますが、アルバムの邦題にも増して気に入りませんので無視して直訳に近い題名をつけました。
La demeure d'un ciel 空のおうち
Camille カミーユ
On s'est connu
En bas des marches
Du palais
Tout en bas de l'escalier de glace
Tes pieds dansaient
nus sur la neige
Et tu chantais cet air plein de malice et de grâce
私たちは知り会った
宮殿の
階段の下で
氷の階段の真下で
あなたの足は踊っていた
はだしで雪の上で
そしてあなたは茶目っ気と優美さにあふれるこの歌を歌っていた

Ôte maintenant
Tes souliers
Et chausse à ton pied
Quelques pelotes de nuées 注1
Car ici désormais
Est la demeure d'un ciel 注2
La demeure d'un ciel
今は退けておいて
あなたの靴を
そしてあなたの足に
一玉の雲を履かせて
なぜならこれからはここが
空のおうち
空のおうちだから

On a monté
Toutes les marches
Du palais
Jusqu'en haut de l'escalier de glace
Un ingénu 注3
Nous attendait
Et nous a mariés
Parmi les oiseaux sauvages
私たちは登った
宮殿の
すべての階段を
氷の階段の上まで
ひとりの無垢な人が
私たちを待っていて
私たちを結婚させた
野生の鳥たちのあいだで

Ôte maintenant
Tes souliers
Et chausse à ton pied
Quelques pelotes de nuées
Car ici désormais
Est la demeure d'un ciel
La demeure d'un ciel
今は退けておいて
あなたの靴を
そしてあなたの足に
一玉の雲を履かせて
なぜならこれからはここが
空のおうちだから
[注]
1 peloteは「(糸や毛糸などの)玉」。nuéeは文章に用いられる語で「大きな雲」を表す。刺繍などを表すnuéという語とのイメージ的なつながりも裏にあるようだ。
2 demeure d'un cielはdemeure céleste「天国」と同義ともとれるが、文脈のニュアンスから「空のおうち」とした。
3 ingénuは男性名詞としては「無邪気な人、天真爛漫な人」の意味で、具体的には「神様」あるいは「天使」ということになろう。
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1978年にクロード・ヌガロClaude Nougaroが歌った「君は見るだろうTu verras」はとてもカッコいい曲。ブラジルのシコ・ブアルキChico Buarqueがブルーノ・バレットBruno Barretoの1976年の映画「未亡人ドナ・フロールの理想的再婚生活Dona Flor et ses deux maris」(原作:ホルヘ・アマドJorge Amado「フロル婦人と二人の夫」1966年)のために作成し歌ったO que seráという曲が原曲です。リンクさせてもらっているブログ「新春シャンソンショー」にお願いしてポルトガル語の原曲を訳していただきましたので参照ください。⇒「O que será どうなるの」
ヌガロよりさきに、ニコル・クロワジルNicole Croisilleが、Quand nous n'aurons que la tendresseというタイトルでフランス語で歌いました(仏語歌詞: ジャン=ピエール・ラングJean-Pierre Lang)。歌詞内容は原曲とは無関係で、メロディーもかなり異なり、同じ曲とは思えないほどです。⇒動画
ヌガロの歌は彼自身が仏語の歌詞を作りました。こちらも歌詞内容は原曲とは無関係ですが、原曲のメロディーがよく活かされています。
「君は見るだろう」という直訳の邦題にしましたが、原題のTu verrasは歌詞中でも擬音語のように繰り返され、その響きが身上なので、仮名書きの「チュヴェラ」を副題としましょう。
でも、Tu verras分かるだろうと言われてもJe ne vois guère私にはよく分かりません。相当苦労しましたが、正直言って歌詞はすっきりとは理解しにくいです。「君とめぐり合ったことで僕は変わった。これから君とともに生きる僕は自分の持てるものを思いっきり燃焼させる。いいことも悪いこともすべてやるだろう。そんな僕を見ていてくれ」…といったことなのでしょう。
Tu verras 君は見るだろう(チュヴェラ)
Claude Nougaro クロード・ヌガロ
Ah, tu verras, tu verras
Tout recommencera, tu verras, tu verras
L´amour c´est fait pour ça, tu verras, tu verras
Je ferai plus le con, j´apprendrai ma leçon
Sur le bout de tes doigts, tu verras, tu verras 注1
Tu l´auras, ta maison avec des tuiles bleues
Des croisées d´hortensias, des palmiers plein les cieux
Des hivers crépitants, près du chat angora
Et je m´endormirai, tu verras, tu verras
Le devoir accompli, couché tout contre toi
Avec dans mes greniers, mes caves et mes toits
Tous les rêves du monde
ああ、君は見るだろう、見るだろう
すべてがまた始まるだろう、君は見るだろう、見るだろう
愛はこのために作られた、君は見るだろう、見るだろう
僕はもうバカなことをしない、僕は学ぶだろう
君はとてもはっきりと、見るだろう、見るだろう
君は手に入れるだろう、君の家を、その家には青い瓦と
紫陽花のガラス窓と、空いっぱいの椰子の木があって
冬にはパチパチと火が燃える、アンゴラ猫のそばで
僕は眠るだろう、君は見るだろう、見るだろう
仕事を終え、君のすぐそばに横たわって
僕の屋根裏部屋、僕の地下室、僕の屋根の上でいっしょに
この世の夢すべてを

Ah, tu verras, tu verras
Tout recommencera, tu verras, tu verras
La vie, c´est fait pour ça, tu verras, tu verras
Tu verras mon stylo emplumé de soleil 注2
Neiger sur le papier l´archange du réveil
Je me réveillerai, tu verras, tu verras
Tout rayé de soleil, ah, le joli forçat! 注3
Et j´irai réveiller le bonheur dans ses draps 注4
Je crèv´rai son sommeil, tu verras, tu verras
Je crèv´rai le sommier, tu verras, tu verras
En t´inventant l´amour dans le cœur de mes bras 注5
Jusqu´au matin du monde
ああ、君は見るだろう、見るだろう
すべてがまた始まるよ、君は見るだろう、見るだろう
人生は、そのために作られた、君は見るだろう、見るだろう
君は見るだろう、太陽に羽を生やされたぼくのペンが
紙の上に降り立つのを、目覚めの大天使のように
ぼくは目を覚ますだろう、君は見るだろう、見るだろう
太陽に縞模様を付けられた、ああ、美しい囚人!
ぼくはシーツの中の幸福を起こしに行く
僕はその眠りを破る、君は見るだろう、見るだろう
僕はベッドのマットレスをぶち破る、君は見るだろう、見るだろう
ぼくは君のために両腕のなかで愛を創り出す
世界の夜明けまで

Ah, tu verras, tu verras
Tout recommencera, tu verras, tu verras
Le diable est fait pour ça, tu verras, tu verras
Je ferai le voyou, tu verras, tu verras
Je boirai comme un trou et qui vivra mourra 注6
Tu me ramasseras dans tes yeux de rosée
Et je t´insulterai dans du verre brisé 注7
Je serai fou furieux, tu verras, tu verras
Contre toi, contre tous, et surtout contre moi
La porte de mon cœur grondera, sautera
Car la poudre et la foudre, c´est fait pour que les rats 注8
Envahissent le monde
ああ、君は見るだろう、見るだろう
すべてがまた始まるよ、君は見るだろう、見るだろう
悪魔はそのために作られた、君は見るだろう、見るだろう
ぼくは不良のようにふるまう、君は見るだろう、見るだろう
底なしに飲むだろう 死ぬほどに
君はそのバラ色の瞳のなかに僕を捕えるだろう
そして僕は壊れたメガネのなかで君をあざけるだろう
僕は怒り狂うだろう、君は見るだろう、見るだろう
君に対して、みんなに対して、何より自分に対して
ぼくの心の扉ははちきれ、吹っ飛ぶだろう
なぜなら火薬と稲妻、それは小さなネズミたちが
世界を侵略するために作られたものだから

Ah, tu verras, tu verras
Tout recommencera, tu verras, tu verras
Mozart est fait pour ça, tu verras, entendras
Tu verras notre enfant étoilé de sueur 注9
S´endormir gentiment à l´ombre de ses sœurs
Et revenir vers nous scintillant de vigueur
Tu verras mon ami dans les os de mes bras 注10
Craquer du fin bonheur de se sentir aidé 注11
Tu me verras, chérie, allumer des clartés
Et tu verras tous ceux qu´on croyait décédés
Reprendre souffle et vie dans la chair de ma voix
Jusqu´à la fin des mondes 注12
ああ、君は見るだろう、見るだろう
すべてが再び始まるだろう、君は見るだろう、見るだろう
モーツアルトはそのために作られた 君は見るだろう、聞くだろう
君は見るだろう 汗で光る僕たちの子供が
姉妹たちの陰で穏やかに眠るのを
それから生気に輝いて僕たちの方に戻ってくるのを
君は見るだろう 僕の友だちが ぼくの腕に支えられ
助けられたと感じた特別の幸福のなかでくずおれるのを
君は見るだろう、いとしい人、僕が灯をともすのを
君は見るだろう、僕たちが死んだと思っていた人たちがみな
ぼくの肉声で息といのちを取り戻すのを
この世が終わるまで
Ah, tu verras, tu verras
ああ、君は見るだろう、見るだろう
[注]
1 connaitre(ou savoir) sur le bout de doigts「…を熟知している」から派生した表現。tu verras sur le bout de tes doigts「君ははっきりと見るだろう」。
2 mon stylo emplumé de soleil「太陽によって羽を生やされた僕のペン」を次行のl´archange du réveil「目覚めの大天使」に言い換えている。neigerは「雪が降る」が本義だが、広くは「天から降って来ること」であり、(sur le papier「紙の上」に)ペンが書き始めることを「大天使が降臨する」と表現している。
3 rayé de soleil:太陽の光がブラインド越しに入って来たのだろう、体のうえの縞模様の影をforçat「徒刑囚、囚人」の服と表現しているようだ。(jalousie「ブラインド」という語は用いられてはいないが、この語は、jalousie「嫉妬心」から女性を他人の目から遮る、ということから生まれたという。)
4 ses draps=draps du bonheurその幸福(すなわち君)がかぶっているシーツ
5 cœurは「心」ではなく「中心」。
6 boire comme un trou「底なしに呑む、大酒呑みである」。qui vivra mourraは、Qui vivra verra.「時がたてば分かることだ」をもじって、「分かる」かわりに「死ぬ」と、呑み方のひどさを表現しているようだ。
7 du(=de le)は部分冠詞で類別を示す。
8 rat「ネズミ」は「小さな者、弱者」のことだろう。
9 病気で発熱して汗をかいているのだと思われる。
10 dans les os de mes brasは4行あとの dans la chair de ma voixと合わせた表現で、dans mes bras だけでも同じ意味。
11 craquerは、(助けられて安心して力尽きて)倒れるといった状況だろう。
12 mondeは、意図的に複数形を用いて表現を強めている。
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今回は、サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamoの「風の色La couleur du vent」です。「風の色」を googleで検索すると、映画の題名、歌の題名、お店の名前などがヒットします。たしかに、青葉を吹く初夏の風を「緑風」と呼びますが、ほかの色の風はあるんでしょうか?想像をかきたてるタイトルです。
歌詞では、風はかつて「冒険」だったり「栄光」だったりしたけれど、「風の色」というのは、僕は知ることはないだろう、と最初は言います。そしてla forme de l'eau「水の形」とl'âge du temps「時の年齢」という言葉も出てきます。まるで禅問答のようですが、風、水、時は、つかみどころのないもの、流れていくもの。恋人との巡り合いによって、それらが色を持ち形を持ちいのちを持つようになったと言いたいのではないでしょうか。
2007年のアルバム:La part de l'angeに収録されています。
La couleur du vent 風の色
Salvatore Adamo サルヴァトーレ・アダモ
J'ai couru toute une vie derrière les mirages
Qui me promettaient l'or de mes rêves d'enfant
Me voici arrivé sur cette étrange plage
Où en cris déchirants meurent des goélands
Je ne saurai jamais la couleur du vent
僕はずっと走ってきた 幻影を追いかけて
それは僕の子どもの頃からの夢である富を約束してくれていた
僕は着いた この見知らぬ浜辺に
ここでは悲痛な叫び声を上げてかもめたちが死んでいく
僕は知ることはないだろう 風の色を
Quand le vent m'a parlé il était l'aventure
Il s'est appelé gloire et plus tard illusion
Et bientôt solitude, douce-amère blessure
Car personne n'a pu répondre à ma question
Je ne saurai jamais la couleur du vent
La couleur du vent, la forme de l'eau et l'âge du temps
風が僕に話しかけたとき 風は冒険だった
風は栄光と名乗った そしてのちには幻覚に
そしてやがては孤独が、優しく苦い傷が
なぜなら誰も僕の問いに答えられなかったから
僕は知ることはないだろう 風の色を
風の色、水の形と時の齢を

Et je me suis retourné sur les traces de mes pas
Au dernier souvenir je les perdais déjà
Alors je me suis assis, fourbu sur un rocher
J'étais prisonnier entre la mer et mon passé
Je ne saurai jamais la couleur du vent
La couleur du vent, la forme de l'eau et l'âge du temps
そして僕は再び辿った 自分の足跡を
最後の記憶まで、もう僕は失っていた
くたびれ果てて、僕は岩の上に座った
僕は囚われていた 海と自分の過去との狭間で
僕は知ることはないだろう 風の色を
風の色、水の形と時の齢を
Et je te trouve là dans la fleur de ton âge 注1
Auréolée d'azur et d'amour, qui m'attend 注2
Puis-je tenir ta main? J'ai fini mon voyage
J'ai bien vu que tes yeux ont la couleur du vent
J'ai bien vu que tes yeux ont la couleur du vent
そしてそこで僕は若々しい美しさにあふれた君を見つけた
青色のそして愛の輝きに包まれて、君は僕を待っていた
君の手を取ってもいいかい?僕は旅を終えた
君の目が風の色を湛えているのがはっきりと見えた
君の目が風の色を湛えているのがはっきりと見えた

La couleur du vent, la forme de l'eau et l'âge du temps
La couleur du vent, la forme de l'eau et l'âge du temps...
風の色、水の形と時の齢
風の色、水の形と時の齢…
[注]
1 être dans la fleur de sa jeunesse「若い盛りである」と、être de son âge「年齢にふさわしい」とを組み合わせた表現として理解できる。
2 auréolé(e) de…「…が後光のように包んだ」と、2行前のteを形容している。azur「紺碧、群青」といった深い青色で、「蒼天、蒼海」といった詩語としても用いられる。azurと次行のamourが後光となって君を包んでいる。quiの先行詞はte。
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1939年9月のドイツ軍によるポーランド侵攻の後、1940年5月のドイツ軍のフランス侵攻までのあいだ、ドイツとフランス・イギリスは戦争状態にあったにもかかわらず、陸上戦闘が皆無に近い状態であったので、イギリスでは「まやかし戦争Phoney War」、ドイツでは「座り込み戦争Sitzkrieg」、フランスでは「奇妙な戦争Drôle de guerre」などと呼ばれていました。ちょうどこの時期、1939年11月に作られたモーリス・シュヴァリエMaurice Chevalierの「パリはパリParis sera toujours Paris」は、占領時を予測したパリの人々の心境をリアルに語っています。
モーリス・シュヴァリエ
ザズZazが歌い、昨年2014年のアルバムParisに収録されました。これはとても楽しい動画です。
Paris sera toujours Paris パリはパリ
Maurice Chevalier モーリス・シュヴァリエ
Par précaution on a beau mettre 注1
Des croisillons à nos fenêtres
Passer au bleu nos devantures 注2
Et jusqu´aux pneus de nos voitures
Désentoiler tous nos musées
Chambouler les Champs Elysées
Emmailloter de terre battue
Toutes les beautés de nos statues
Voiler le soir les réverbères
Plonger dans le noir la ville lumière 注3
人々は用心のためにと、無駄なことに
窓に桟を取り付けたり
陳列窓や
車のタイヤまでも隠したり
全部の美術館のキャンバスを外したり
シャンゼリゼ通りを引っかきまわしたり
彫像の美しさを固めた土で覆い隠したり
夜に街灯を覆ったり
光の都を闇に沈めたりするが

{Refrain:}
Paris sera toujours Paris!
La plus belle ville du monde
Malgré l´obscurité profonde
Son éclat ne peut être assombri
Paris sera toujours Paris!
Plus on réduit son éclairage 注4
Plus on voit briller son courage
Plus on voit briller son esprit
Paris sera toujours Paris!
パリはずっとパリのままだろうさ!
世界で一番美しい街は
深い闇に閉ざされても
その輝きが曇らされることはない
パリはずっとパリのままだろうさ!
照明が暗くなればなるほど
自分の勇気が輝いてくるのがわかる
自分の心が輝いてくるのがわかる
パリはずっとパリのままだろうさ!
Pour qu´à ce bruit chacun s´entraîne
On peut la nuit jouer d´la sirène
Nous contraindre à faire le zouave 注5
En pyjama dans notre cave
On aura beau par des ukases 注6
Nous couper l´veau et même le jazz
Nous imposer le masque à gaz
Des mots croisés à quatre cases 注7
Nous obliger dans nos demeures
A nous coucher tous à onze heures
みんながこの音に慣れるために
僕たちは夜にサイレンを演奏して
おどけてみたっていい
地下室でパジャマ姿で
無駄なことになるさ、政令でもって
子牛の肉もジャズも止め
ガスを覆い隠せと強い
NAZIの4文字で
僕たちを家で
11時に床につかせたってね

{Refrain:}
Paris sera toujours Paris!
La plus belle ville du monde
Et quand les restrictions abondent
Gentiment il en prend son parti 注8
Paris sera toujours Paris!
On a beau réduire son essence
On n´réduira pas sa confiance
Sa bonne humeur et son esprit
Paris sera toujours Paris!
パリはずっとパリのままだろうさ!
世界で一番美しい街
そして取締りがもっと強まったなら
穏やかにそれを受け入れる
パリはずっとパリのままだろうさ!
燃料を減らしたって無駄だ
自信や
元気や精神を減らすことにはならない
パリはずっとパリのままだろうさ!
Bien que ma foi, depuis octobre 注9
Les robes soient beaucoup plus sobres
Qu´il y ait moins d´fleurs et moins d´aigrettes
Que les couleurs soient plus discrètes
Bien qu´aux galas on élimine
Les chinchillas et les hermines
Que les bijoux pleins de décence
Brillent surtout par leur absence
Que la beauté soit moins voyante
Moins effrontée moins provocante...
たしかに、10月以来、
ドレスがとっても質素に
花も羽飾りも少なく
色合いももっとおとなしくなり
夜会では人々は
チンチラや毛皮をやめ
品位に富んだ宝石類が
なかんずくそれが無いことでもって輝き
美はより地味に
より控えめによりおとなしくなっているけど

{Refrain:}
Paris sera toujours Paris!
La plus belle ville du monde
Même quand au loin le canon gronde
Sa tenue est encore plus jolie...
Paris sera toujours Paris!
On peut limiter ses dépenses,
Sa distinction son élégance
N´en ont alors que plus de prix 注10
Paris sera toujours Paris!
パリはずっとパリのままだろうさ!
世界で一番美しい街
遠くで大砲が轟いていても
その佇まいはますます美しい…
パリはずっとパリのままだろうさ!
人々は消費を減らし、
優美さのランクを落とすかもしれない
そのときそれらは換金できない価値のみを持つ
パリはずっとパリのままだろうさ!
[注]
1 par précaution「用心のために、慎重を期して」。avoir beau+inf.「たとえいくら…しても(無駄である)」。
2 passer au bleu「消え去る」「もみ消す、ごまかす」
3 la ville lumière「光の都」はパリの別名。
4 plus..., plus...「…が多ければ多いほどなお…が多い」
5 zouaveは「アルジェリア人を中心に編成されたフランス歩兵連隊」。faire le zouaveは「からいばりする、おどける」の意味。
6 ukase「ロシア皇帝の勅令」→「至上命令」。
7 des mots croisés à quatre cases「4マスのクロスワード・パズル」というのは、croiséの語が「鉤十字Hakenkreuz」を暗に示し、NAZIの4文字を意味する。
8 prendre son parti de qc.「…を避けがたいものとして受け入れる、甘受する」
9 ma foi「むろん、確かに」。この節はすべて、bien que+接続法「…であるのに、…にもかかわらず」という状況提示(queもbien queの代用)であり、次節で、Paris sera toujours Paris!以下の結論が示される。
10 n’avoir pas de prix「値がつけられないほどの価値がある」の延長としての表現。
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今回取り上げる「あなたがいなくてSans toi」は、1970 年にアニエス・ヴァルダAgnès Vardaが製作した映画「5時から7時までのクレオCléo de 5 à 7」(→解説)に用いられた曲です。作詞:アニエス・ヴァルダAgnès Varda、作曲:ミッシェル・ルグランMichel Legrand。この映画にはルグラン自身もピアニスト役で出ています。
ルグランの曲は聴いてすぐ分かります、独特のルグラン節で。これもすてきな曲、歌いたい曲です。
主人公のクレオCléoを演じたコリーヌ・マルシャンCorinne Marchandの歌
私の大好きなミッシェル・アルノーMichèle Arnaudも歌っています。
Sans toi あなたがいなくて
Corinne Marchand コリーヌ・マルシャン
Toutes portes ouvertes
En plein courant d'air 注1
Je suis une maison vide
Sans toi, sans toi
扉はすべて開かれ
大気の流れにさらされ
私は空き家のよう
あなたがいなくて、あなたがいなくて

Comme une île déserte
Que recouvre la mer
Mes plages se dévident 注2
Sans toi, sans toi
海に覆い隠された
無人島のよう
私の浜辺は巻き取られる
あなたがいなくて、あなたがいなくて
Belle en pure perte 注3
Nue au cœur de l'hiver 注4
Je suis un corps avide
Sans toi, sans toi
役立たずの女
冬のさなかの裸身
私は飢えた身体
あなたがいなくて、あなたがいなくて

Rongée par le cafard
Morte au cercueil de verre
Je me couvre de rides
Sans toi, sans toi
憂鬱に蝕まれ
死んでガラスの棺に入り
私は皺に覆われる
あなたがいなくて、あなたがいなくて
Et si tu viens trop tard
On m'aura mise en terre
Seule, laide et livide
Sans toi, sans toi
Sans toi
そしてもしあなたが来るのが遅すぎたら
ひとは私を土に埋める
ひとりぼっちで、醜く蒼ざめて
あなたがいなくて、あなたがいなくて
あなたがいなくて

[注]
1 en plein+n.「…のただなかで、真ん中に」
2 vaguesとしている歌詞が多いが二人はplagesと歌っている。déviderは「糸を繰る、巻き取る、ほどく」といった意味だが、ここでは、自分の状態を、浜辺が波に巻き取られ海に浸食される島だと言っている。「立つ瀬がない」という日本語の表現とどこか通じる気もする。
3 名詞のbelleは「美女、美人」「愛人、恋人」などの意味だが、単に「女」とした。en pure perte「何の益もなく、無駄に」
4 au cœur de…「…の真ん中で」
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アミカル・ド・シャンソンのプティ・コンセール第7回目は、《アダモ&ヴァルタンを歌う》です。サルヴァトール・アダモSalvatore Adamoとシルヴィ・ヴァルタンSylvie Vartanの曲をすべてフランス語で歌います。今月21日(土)、原宿の「アコスタディオ」で14時15分開演。
出演者は、上村良子、大木明、笹環来、寺島寧環、野村幸子、橋本裕子、松尾千鶴、Sublime、Kazan、Nonnie の10人。ピアノ伴奏はアニエス晶子さんです。
全席自由2500円、当日券あります。ぜひいらしてください!
曲目をご紹介しましょう。ほとんど、共同主宰者の宇藤カザンのブログ《アミカル・ド・シャンソン》および私の新旧のブログで取り上げています。題名をクリックするとページが開きます。
[アダモの曲]
En blue jeans et blouson d'cuir ブルージーンと革ジャンパー
Marie la mer 海のマリー
Mes mains sur tes hanches 夢の中に君がいる
L'amour te ressemble 愛は君のよう
C'est ma vie わが人生
Tombe la neige 雪が降る
Le mauvais garçon ろくでなし
Sans toi mamie サン・トワ・マ・ミー
La couleur du vent 風の色
Les filles du bord de mer海辺の少女たち (Youtube動画のみ)
[ヴァルタンの曲]
En écoutant la pluie 悲しき雨音
La plus belle pour danser 踊りに行くために一番きれいに(アイドルを探せ)
Qui saura ケ・サラ
Mon père 父
L'amour c'est comme une cigarette 恋はジタンの香り
La Maritza 思い出のマリッツァ
Je chante le blues 私はブルースを歌う
L'un part,l'autre reste ひとりは去り、ひとりは残る
Le kid ル・キッド
Comme un garçon 男の子のように
Deux minutes Trente cinq de bonheurしあわせの2分35秒 (Youtube動画のみ)
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