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2018
10.21

愛と戦争L'amour et la guerre

Charles Aznavour Je mvoyais déjà


前回、反戦歌の古典として「ルノー王Le roi Renaud」を取り上げましたが、シャルル・アズナヴールCharles Aznavourの急逝の余韻が冷めやらぬ今、彼の歌った反戦歌を取り上げたいと思います。そう、歌っていたんです!「愛と戦争L'amour et la guerre」です。作詞:ベルナール・ディメイBernard Dimey、作曲:アズナヴール自身。1960年のアルバム:Je m'voyais déjàに収録されています。この曲は、クロード・オータン=ララClaude Autant-Lara監督の1961年のフランス・ユーゴスラヴィア・リヒテンシュタイン合作映画:Tu ne turas point(英題:Thou Shalt Not Kill なんじ殺すなかれ)、の主題歌。メル・ギブソンMel Gibsonの2016年の同名の映画とは別です。主演のスザンヌ・フロンSuzanne Flonが1961年のベネチア映画祭で主演女優賞を得ましたが、1963年にフランスで上映されただけであまり評判にならず、アズナヴールのこの曲もあまり注目されませんでした…。
この映画にはL'objecteur(兵役忌避者)という別名がありますが、アズナヴール自身、第2次世界大戦のとき、パリのアパルトマンに身を隠し、兵役にはつかなかったようです。




L'amour et la guerre 愛と戦争
Charles Aznavour  シャルル・アズナヴール


Pourquoi donc irais-je encore à la guerre
Après ce que j'ai vu, avec ce que je sais ?
Où sont-ils à présent les héros de naguère ? 注1
Ils sont allés trop loin chercher la vérité

 いったいどうして僕がまた戦争に行くというんだ
 自分がすでに目にしたのちに、自分がもう知っている事柄とともに?
 近年のヒーローたちは今どこにいるのか?
 彼らは真実を求めてあまりにも遠くに行ってしまった

Lamour et la guerre2


Quel que soit le printemps, les cigognes reviennent 注2
Que de fois, le cœur gros, je les ai vues passer
Elles berçaient pour moi des rêveries anciennes 注3
Illusions d'un enfant dont il n'est rien resté

 いつだって春になれば、コウノトリたちはまたやって来る
 幾たび、辛い思いで、僕は彼らを見送ったことか
 彼らは僕のために古い夢をはぐくんでくれた
 幼時の幻想はもう何も残っていない

Toutes les fleurs sont mortes aux fusils de nos pères
Bleuets, coquelicots, d'un jardin dévasté
J'ai compris maintenant ce qu'il me reste à faire
Ne comptez pas sur moi, si vous recommencez

 花々はすべてオヤジたちの銃のもとで死に絶えた
 荒れた庭の、ヤグルマギク、ヒナゲシ
 僕は今、自分に残された仕事を理解している
 僕を当てにしないでくれ、あんたがたがまたおっ始めるのなら

Lamour et la guerre1


Tout ce que l'on apprend dans le regard des femmes
Ni le feu, ni le fer n'y pourront jamais rien 注4
Car l'amour - et lui seul - survit parmi les flammes
Je ferai ce qu'il faut pour défendre le mien

 すべて女たちのまなざしのなかで伝えられるものには
 火だって鉄だって何の手出しもできやしない
 なぜって愛は、愛だけが、炎のなかで生き延びる
 僕はわが愛を守るためにやるべきことをやるんだ

Pourquoi donc irais-je offrir ma jeunesse
Alors que le bonheur est peut-être à deux pas ?
Je suis là pour t'aimer, je veux t'aimer sans cesse
Afin que le soleil se lève sur nos pas

 いったいどうして僕が自分の青春を捧げに行くというんだ
 幸せがすぐそこにあるってときに?
 僕は君を愛するためにここにいる、僕は君をたえず愛したい
 太陽が僕たちの足元から昇るために

Aznavour1.jpg

[注]
1 naguère=Il n’y a guère (de temps)「最近、少し前」
2 cigogneはコウノトリ科の鳥の総称。ヨーロッパには生息するのは、ドイツの民話で、赤ちゃんを運んでくるといわれるシュバシコウで、東洋に生息するコウノトリとは異なるが「コウノトリ」と訳した。
3 ellesは前行のlesとともに前々行のles cigognes(女性名詞)であるが、あえて「彼ら」と訳した。
4 feu「火」は「砲火、戦火…」fer「鉄」は「剣、鉄砲…」で、ともに戦争における武力や脅威を表す。n'y pouvoir rien「手の施しようが無い」 




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2018
10.15

ルノー王Le roi Renaud

Pierre Bensusan Le roi Renaud


竹村淳さんの著書「反戦歌 戦争に立ち向かった歌たち」(2018年。アルファベータブックス)を読みました。世界中の反戦歌を詳細な解説と反戦への熱いメッセージを込めて紹介するすばらしい本です。1番目に取り上げられているのは、13世紀頃に原型が作られたとても古い歌、「ルノー王の哀歌La complainte du Roi Renaud」。反戦歌の古典ともいうべき名曲です。歌詞の冒頭そのままの「ルノー王が戦争から帰還したLe roi Renaud de guerre revint」というタイトルでも呼ばれます。

Wikisourceにこの曲の解説がありますので引用いたします。
notes: Ceci n'est qu'une des très nombreuses versions (environ 60) de cette chanson. Son origine est assez complexe. Elle est issue de la greffe d'une chanson du XIII ème siècle qui raconte le retour du comte Renaud sur une chanson du XVIème (le comte Redor) issue d'une légende scandinave qui a fait fureur en Europe et engendré de nombreux textes dans divers pays.
これは約60ものヴァージョンのひとつにすぎない。その起源はかなり複雑だ。この曲は、ルノー伯爵の帰還を語る13世紀の歌を、「ルドール伯爵」というスカンジナビアの伝説によって作られた16世紀の歌に移植して作られた。この歌はヨーロッパで人気を博し、さまざまな国で数多くのテキストを生み出している。
(そしてあるサイトでは、それらのうちのブルターニュのテキストがこの曲の元になったのだろうと付け加えています。)

この曲をご自分の訳詞で歌っていらっしゃる別府葉子さんによると、イヴェット・ギルベールYvette Guilbertが採譜したことによって音楽史に登場したそうです。ちなみに竹村さん別府さんともに来る11月10日(土)の《大阪ヴォーカルコンクール》の審査員。
近年では、イヴェット・ギルベールYvette Guilbertのほか、コラ・ヴォケールCora Vaucaire、エディット・ピアフとシャンソンの友 Edith Piaf et les compagnons de la chanson、イヴ・モンタンYves Montant、フォークソング・グループのマリコムMalicorneなどが歌っています。それぞれに歌詞がかなり違います。

この記事では、もっと若い世代の歌手、ピエール・ベンスーザンPierre Bensusanを選びました。アルジェリア系フランス人のギタリストで、 スペインからアルジェリアへ移民してきたユダヤ人の一家に生まれ、後にアルジェリア独立戦争の騒乱から逃れフランスのパリで育つ。 とウィキペディアで紹介されている人です。1957年生まれで現役です。彼を選んだわけはフォークソング的な歌い方に好感を持ったことと、歌詞の最後のほうで、ヴォケールもモンタンも、妃は生まれた王子を共連れにしたという歌詞ですが、ベンスーザンの歌詞では、王子を人に託して妃ひとりが王のあとを追った、という私としては納得できる顛末だからです。タイトルはシンプルに「ルノー王Le roi Renaud」です。

コラ・ヴォケール



イヴ・モンタン

<


ピエール・ベンスーザン



Le roi Renaud   ルノー王
Pierre Bensusan  ピエール・ベンスーザン


Le roi Renaud de guerre revint
tenant ses tripes dans ses mains.
Sa mère était sur le créneau
qui vit venir son fils Renaud.

 ルノー王が戦争から帰った
 手にはらわたを持って。
 母君は胸壁上にいて
 息子ルノーがやってくるのを見た。

Roi Renaud3


– Renaud, Renaud, réjouis-toi!
Ta femme est accouché d’un roi! 注1
– Ni de ma femme ni de mon fils
je ne saurais me réjouir.

 「ルノー、ルノー、喜びなさい!
 あなたの妃が世継ぎをさずかりましたよ!」
 「妃も王子も
 私は喜ぶことができない。」

Allez ma mère, partez devant,
faites-moi faire un beau lit blanc.
Guère de temps n’y resterai:
à la minuit trépasserai.

 さあ母上、まず取り掛かってください、
 私にきれいな白い床を用意してください。
 時間はあまり残っていないでしょう、
 真夜中に私は身罷るでしょう。

Mais faites-le moi faire ici-bas
que l’accouchée n’entende pas.
Et quand ce vint sur la minuit, 注2
le roi Renaud rendit l’esprit..

 だが私のためここに作ってください
 産婦に聞かれないように。
 そして真夜中ごろになり、
 ルノー王は息を引き取った…

Roi Renaud4


Il ne fut pas le matin jour
que les valets pleuraient tous.
Il ne fut temps de déjeuner
que les servantes ont pleuré.

 従僕たちがみな泣いていたのは
 朝早くのことではなかった。
 召使たちが泣いたのは
 朝食の時間になってからのこと。

– Mais dites-moi, mère, m’amie, 注3
que pleurent nos valets ici ?
– Ma fille, en baignant nos chevaux 注4
ont laissé noyer le plus beau.

 「ねえ教えてください、いとしいお母様、
 従僕たちはなぜ泣いているんでしょう?」
 「娘や、馬に水浴びさせて
 一番美しい馬を溺れさせてしまったのよ。」

– Mais pourquoi, mère m’amie,
pour un cheval pleurer ainsi ?
Quand Renaud reviendra,
plus beau cheval ramènera.

 「でもなぜ、いとしいお母様、
 馬一頭のためあんなに泣いているのでしょう?
 ルノーが戻って来るときには、
 もっと美しい馬を連れて来ますわ。」

Et dites-moi, mère m’amie,
que pleurent nos servantes ici ?
– Ma fille , en lavant nos linceuls
ont laissé aller le plus neuf.

 「そしてまた、いとしいお母様、
 召使たちはなぜ泣いているのでしょう?」
 「娘や、敷布を洗っていて
 一番新しい敷布を流してしまったのよ。」

Mais pourquoi, mère m’amie,
pour un linceul pleurer ainsi ?
Quand Renaud reviendra,
plus beau linceul on brodera.

 「でもなぜ、いとしいお母様、
 敷布一枚のためあんなに泣いているんでしょう?
 ルノーが戻って来るときには、
 もっと美しい敷布を刺繍して用意しますわ。」

Roi Reraud7


Mais, dites-moi, mère m’amie,
que chantent les prêtres ici ?
– Ma fille c’est la procession
qui fait le tour de la maison.

 「でも、教えてください、いとしいお母様、
 神父たちはここでなぜ歌っているのですか?
 「娘や、あれは行列なの
 城を巡っているのよ。」

Or, quand ce fut pour relever,
à la messe elle voulut aller,
et quand arriva le midi,
elle voulut mettre ses habits.

 さて、床上げのときとなり、
 彼女はミサに行きたいと思った、
 正午になって、
 彼女は衣服を着けたいと思った。

– Mais dites-moi, mère m’amie,
quel habit prendrai-je aujourd’hui ?
– Prenez le vert, prenez le gris,
prenez le noir pour mieux choisir.

 「でも、教えてください、いとしいお母様、
 私は今日どんな服を着たらいいんでしょう?」
 「緑になさい、灰色になさい、
 黒になさいそれが一番いいわ。」

– Mais dites-moi, mère m’amie,
qu’est-ce que ce noir-là signifie
– Femme qui relève d’enfant,
le noir lui est bien plus séant.

 「でも教えてください、いとしいお母様、
 この黒はなにを意味するんでしょう?」
 「子どもを産んだ女には
 黒がとても似合うのよ。」

Quand elle fut dans l’église entrée,
un cierge on lui a présenté.
Aperçut en s’agenouillant
la terre fraîche sous son banc.

 彼女が教会に入ったとき、
 彼女に1本のろうそくが差し出された。
 ひざまずきながら気づいた
 ベンチの下の土が新しいことに。

Roi Renaud2


– Mais dites-moi, mère m’amie,
pourquoi la terre est rafraîchie?
– Ma fille, ne puis plus vous le cacher,
Renaud est mort et enterré.

 「でも、教えてください、いとしいお母様、
 なぜ土が新しくなっているの?」
 「娘や、もうこれ以上あなたに隠しておけないわ、
 ルノーは死んで埋められました。」

– Renaud, Renaud, mon réconfort,
te voilà donc au rang des morts!
Divin Renaud , mon réconfort,
te voilà donc au rang des morts!

 「ルノー、ルノー、わたしのよすが、
 あなたは死者の列に加わられたのね!
 すばらしいルノー、私のよすが、
 あなたは死者の列に加わられたのね!」

Puisque le roi Renaud est mort,
voici les clefs de mon trésor.
Prenez mes bagues et mes joyaux, 注5
prenez bien soin du fils Renaud.

 ルノー王が亡くなられたんですもの、
 これは私の財宝の鍵ですわ。
 私の指輪や宝石をお取りになって、
 ルノーの息子をよく看てやってください。

Terre, ouvre-toi, terre fends-toi,
que j’aille avec Renaud, mon roi!
Terre s’ouvrit, terre fendit,
et ci fut la belle englouti

 大地よ、開け、裂けよ、
 われもわが王ルノーとともに行かん!
 大地は開き、大地は裂け、
 ここに美しい女は飲み込まれた。

Roi Renaud5-1


[注]
1 accoucherは自動詞で「出産する」だが、ここでは他動詞「出産させる」の受動態となっている。意訳した。
2古語法ではceがêtre以外の動詞の主語にもされる。
3 m’amieはmon amieの古形ma amieで、「私のいとしい女」という意味。男が恋人を呼ぶ場合がもっぱらだが、ここでは女性同士で用いられている。この語に関しては、サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamoの「サン・トワ・マ・ミーSans toi ma mie」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-211.htmlの記事を参照のこと。
4 ma filleは若い娘への呼びかけで、ここでは息子(王)の嫁(妃)に呼びかけている。
5 joyauはbijouに比して王侯などがつけるきわめて豪華な宝飾品をいう。



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2018
09.23

魅惑の歌手Chanteur de charme

Gérard Lenorman Chanteur de charme


前回の「私はギターを聞くJ’écoute la guitare」の解説で、ティノ・ロッシTino Rossiの代名詞とされる「魅惑の歌手Chanteur de charme」についてちょっと触れましたが、ジェラール・ルノルマンGérard Lenormanが「魅惑の歌手Chanteur de charme」というタイトルの曲を歌っていますのでご紹介しましょう。ルノルマン自身がディディエ・バルブリヴィアンDidier Barbelivienの協力を得て作詞・作曲。1988年のユーロヴィジョンコンクールで10位になり、同年、アルバム:Heureux qui communiqueに収録されシングル盤も出ました。
Chanteur de charmeは英語では「クルーナーcrooner」と呼ばれ、ゆっくりしたテンポのバラードなどを、croonすなわち甘い声でささやくように優しく歌う歌手、主に男性歌手を言い、アメリカではビング・クロスビーBing Crosbyがその代表とされます。マイクロフォンが用いられることにより生まれた歌唱法です。フランスで、ステージで初めてマイクロフォンを使った歌手はジャン・サブロンJean Sablonで、1935年のことでした。



Chanteur de charme 魅惑の歌手
Gérard Lenorman   ジェラール・ルノルマン


Besoin d'entendre
Des chansons tendres
Comme des romances d'écolier
Des mots qui dansent sur du papier
Besoin de croire
Toutes ces histoires
Tous ces refrains de trois fois rien 注1
Qui riment mal, qui font du bien  注2

 聴かなきゃ
 小学生の恋歌のような
 優しい歌を
 紙の上で踊る言葉を
 信じなきゃ
 これらの物語をすべて
 韻の踏み方はまずく、役には立つ
 安っぽいこれらのリフレインをすべて

Chanteur de charme1


Rien n'a jamais empêché
Qu'on les mette en musique
Ces sentiments légers
Rabâchés, romantiques
Comme des cartes postales, des clichés nostalgiques
Ces parfums qui reviennent avec des mots magiques

 絵葉書やノスタルジックな印刷物のような
 こうした薄っぺらで
 くどくどしくて、ロマンチックな感情を
 音楽にすることを
 何もけっして妨げなかった
 魔法の言葉に乗ってこれらの香りはやって来る

Chanteur de charme
C'est beau, c'est grand, c'est merveilleux
Chanteur de charme
Qui fait s'aimer les amoureux

 魅惑の歌手
 それは美しい、偉大だ、素晴らしい
 魅惑の歌手は
 恋人たちを愛し合わせる

Dans le vacarme
De nos cités je rêve un peu
Chanteur de charme
Chanteur de charme

 わが街の喧騒のなかで
 私はちょっと夢見る
 魅惑の歌手を
 魅惑の歌手を

Chemin d'automne
Cœur qui frissonne
Passion d'été
Couleur du temps
Soleil d'hiver
Pluie du printemps

 秋の小径
 震える心
 夏の熱情
 季節の色
 冬の太陽
 春の雨

Chanteur de charme2


L'histoire des hommes
De tous les hommes
Les rois, les fous, les conquérants
Cherchaient la belle au bois dormant

 男たちの物語
 すべての男たちの
 王たち、気違いたち、征服者たちは
 眠れる森に美女を求める

Tiens, y a du nouveau dans l'air
Quelque part, quelque chose
Des pianos limonaires  注3
Qui jouent la vie en rose
Des petits mots au clair de lune  注4
Qui se baladent en rose
Et mon cœur à la une
Qui bêtement se propose 注5

 ほら、旋律に新しさがあるよ
 どこかに、なにか
 「バラ色の人生」を弾く
 自動ピアノに
 バラ色の気分でぶらつく
 「月明かりに」のちょっとした言葉に
 そして私の心は
 おろかにも応じてくれた
 一人の女性のものだ

Chanteur de charme
C'est beau, c'est grand, c'est merveilleux
Chanteur de charme
Qui fait pleurer les amoureux

 魅惑の歌手
 それは美しい、偉大だ、素晴らしい
 魅惑の歌手は
 恋人たちを泣かせる

Chanteur de charme3


Dans le vacarme
De nos cités je fais un vœu
Chanteur de charme
Chanteur de charme

 わが街の喧騒のなかで
 私はもとめる
 魅惑の歌手を
 魅惑の歌手を

Chanteur de charme
Chanteur de charme

 魅惑の歌手を
 魅惑の歌手を

[注]
1 trois fois rien「値段が安い」。「あなたへの手紙Au fur et à musure」の注に解説
2 faire du bien「(物が)有益である、(人が)善行をおこなう」
3 piano limonaire:Limonaire「リモネール」は自動オルガンを製作した会社の名前。ここでは自動演奏できるピアノを言う。
4 au clair de lune「月明かりに」は、前行のla vie en rose 「バラ色の人生」と同様に曲名だが、フランスの古い童謡。バルバラ&ジョルジュ・ムスタキの「Barbara & Georges Moustaki」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-760.htmlの記事の後半に動画と歌詞を紹介した。
5 se proposer「申し出る、志願する」の意味で、つまりは女性の方から「プロポーズする」ということになるが、抑えた訳語にした。




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2018
09.19

私はギターを聞くJ'écoute la guitare

Jean Lumière Jécoute la guitare


夏のあいだ、伊豆高原駅の駅員さんたちは、いろとりどりのアロハ・シャツを着ていました。つい「素敵ですね!」と声をかけたくなりました。夏が終わり駅員さんたちは制服姿に戻ってしまいましたが、今回は、駅員さんたちのアロハ・シャツを思い出しながらハワイに関連した曲をご紹介いたしましょう。ジャン・リュミエールJean Lumière(1895-1979)の「私はギターを聞くJ'écoute la guitare」です。1932年。作詞:Charlys et Rick、作曲:Charlys。ジャン・リュミエールはティノ・ロッシTino Rossi1907-1983よりひと回りほど年上で、「魅惑の歌手Chanteur de charme」の先駆けと言ってもいい歌手ですが、歌の先生でもあり、マルセル・アモンMarcel Amont、グロリア・ラッソGloria Lasso、コラ・ヴォケール Cora Vaucaire、ミレイユ・マチューMireille Mathieuなども指導を受けたそうです。
クレール・エルジエールClaire Elzièreのカヴァーが、アルバム「パリ、愛の歌 第2楽章~永遠のシャンソン名曲集~」(2009年)に収録されていて、私はそれを聴いてこの曲を知りました。
夜に聞こえてくるギターの音色に、ハワイを思い出し、ハワイの女性を思い出すという内容で、ハワイアン・ミュージック的なメロディーです。「カイマナヒラKaimanahila」と「ブルー・ハワイBlue Hawaii」くらいしか急には出てこないのですが、ハワイアン・ミュージックでは、ギターがよく用いられます。ウィキペディアによると、メキシコ人が持ち込んだギターやポルトガル人が伝えた楽器からハワイ原住民が発展させたウクレレが融合され、1890年代にハワイ独特の楽器としてスティール・ギターやスラックキー・ギターが生み出され、1920年ごろまでにこうした弦楽器を弾きながらソロ・ボーカルやコーラスを楽しむ、いわゆるハワイアン・ミュージックの標準的なスタイルが確立されたそうです。日本では「バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ」がハワイアン・ミュージックを広めてくれましたね。



J'écoute la guitare 私はギターを聞く
Jean Lumière    ジャン・リュミエール


Dans la nuit troublante
Au bord des flots mystérieux
La guitare chante
Un doux refrain mélodieux
Et la nostalgie
De son accent triste et berceur
Met du rêve dans mon cœur

 物憂い夜に
 神秘的な流れの傍らで
 ギターが歌っている
 美しいメロディーの甘い歌を
 そしてその悲しく心癒す調子の
 郷愁は
 私の心にとある夢をもたらす

Jécoute la guitare1


Cette voix si tendre
Éveille en moi tous les désirs
Et je crois entendre
Au loin chanter mes souvenirs
Musique jolie
Qui plus d'un soir m'a retenu
Sous le ciel d'Honolulu

 このとてもやさしい音色は
 私の胸裏にあらゆる望みを呼び起こし
 遠くで自分の記憶が
 美しい音楽を歌っているのが
 聴こえた気がする
 ホノルルの空のもとで
 ひと夜ならず私をとらえた音楽を

{Refrain:}
J'écoute la guitare
Plaintive dans la nuit
Dont le rythme bizarre
Éveille un chant plus joli
Plus rien ne me sépare
De cet heureux pays
Et mon rêve s'égare
Jusque aux îles d'Hawaï

 うめくようなギターが
 夜に聞こえる
 その不思議なリズムは
 もっと美しい歌を呼び起こす
 あのしあわせな国から
 もう何も私を引き離せない
 そして私の夢は旅立つ
 ハワイの島々へと

Jécoute la guitare3


À l'heure du rêve
À l'heure grise où tout s'endort
Une voix s'élève
Une guitare aux doux accords
Et la mélopée
De sa musique au rythme lent
Fait vibrer mon cœur ardent

 夢の時間に
 もの皆眠る灰色の時間に
 ある音色が湧き起こる
 甘い和音のギターは
 そしてそのゆっくりしたリズムの音楽の
 旋律は
 私の熱い心を震わせる

Sa chanson lointaine
Évoque en moi quand vient le soir
La belle indigène 
Au rire clair, aux grands yeux noirs
Les nuits parfumées
Par ses plus doux baisers d'amour
Je m'en souviendrai toujours

 遠くのその歌は
 夕べになるとわが胸裏に
 晴れやかな笑顔と大きな黒い瞳の
 美しいハワイの女を想起させる
 彼女のとても甘い愛のくちづけがもたらした
 かぐわしい夜
 私はそれをいつも思い出すことだろう

{au Refrain}

Jécoute la guitare2


[注]
この節には女性ヴァージョンがある。異なる部分を下記に示す。
La belle indigène「原住民の美女」。すなわちポリネシア系であり「美しいハワイの女」と意訳した。→Le ciel indigène「現地の空」。
Au rire clair, aux grands yeux noirs→Où j'ai connu des mots d'espoir「そこで私は希望の言葉を知った」
Par ses plus doux baisers d'amour→Par les plus doux baiser d'amour(sesがlesに変わり、)「二人の」という意味合いになる。
Je m'en souviendrai toujours→Dont je me souviens toujoursさほど意味は変わらない。



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2018
09.07

鏡の向こう側Là-bas

Barbara La Louve


バルバラBarbara「鏡の向こう側Là-bas」は、ちょうど、ルイス・キャロルLewis Carrollの「鏡のなかのアリスThrough the Looking-Glass, and What Alice Found There」(1872年)のように、鏡の向こう側に異世界があるというお話。そこはアリスが行った不思議な世界というよりもひとつのユートピアで、そこへ行きたいというのです。以前取り上げた「マリエンバードMarienbad」と同様、1973年のアルバム:La Louveに収録されています。このアルバムの曲はすべて、フランソワ・ウェルテメールFrançois Wertheimerが作詞し、バルバラ自身が作曲しています。ウェルテメール( ドイツ語読みはウェルトハイマー)は当時バルバラの恋人だったシンガーソングライターですが、このアルバムの翌年1974年にバルバラが歌った「赤い服の男L'homme en habit rouge」のモデルは彼のこと。その記事も参照ください。



ピアニストのアレクサンドル・タローAlexandre Tharaudの2017年のアルバム:Barbaraはバルバラの曲を編曲し、さまざまな歌手を招いて作ったトリビュート盤。この曲はジェーン・バーキンJane Birkinが歌っています。



Là-bas  鏡の向こう側
Barbara バルバラ


Là-bas rien n'est comme ici
Là-bas tout est différent
Pourtant les chats aussi sont gris
Et les lilas blancs sont blancs
Mais l'amour, s'il est l'amour
N'a ni de pourquoi ni de comment
Et les fleurs des jardins tout autour
Chantent doucement aux enfants.

 あちらでは何もここみたいじゃない
 あちらではすべてが違っている
 だけど猫たちはやっぱり灰色で
 白いリラの花々は白い
 けど恋は、それが恋だとしたら
 「なぜ」もなければ「どのように」もない
 そして庭一面に咲く花々は
 子どもたちに優しく歌う。

{Refrain :}
Là-bas, là-bas
De l'autre côté du miroir
Là-bas, là-bas,
De l'autre côté du miroir

 鏡の向こう側の
 あちら、あちら
 鏡の向こう側の
 あちら、あちら

Là-bas1


Là-bas rien n'est comme ici
Là-bas tout est autre chose
Pourtant un lit aussi est un lit
Et une rose une rose
La beauté qui est beauté
N'a ni de faux semblant ni de fard 注1
Et les douces brises embaumées
Accompagnent l'oiseau qui part.

 あちらでは何もここみたいじゃない
 あちらではすべてが別物
 だけど、ベッドは、やはりベッドで
 バラは、バラで
 美は美たるもので
 偽りの見せかけも虚飾も持たない
 そして優しい薫風が
 飛び立つ小鳥について行く。

{Refrain}

Là-bas rien n'est comme ici
Là-bas tout est autrement
Pourtant la vie aussi est la vie
Et le vent aussi le vent
La mort, si elle est la mort 注2
Mais la mort n'existe plus
Car depuis longtemps déjà elle dort
Seule, paisible, au fond d'un bois.

 あちらでは何もここみたいじゃない
 あちらではすべてが別な風
 だけど人生は、それまた人生で
 そして風も、それまた風
 死は、もしそれが死だとしたら
 いえ死はもう存在しない
 なぜなら、もうずっと前から、死は眠っているから
 ひとり、安らかに、森の奥で。

{Refrain}

J'aimerais tant qu'on y porte 注3
Qu'on s'y voit, que l'on y passe
Oh, oh que je voudrais que l'on y porte
Avant que quelqu'un ne le casse.

 どうしてもあちらに行きたい
 あちらで会いたいの、あちらで暮らしたい
 おー、おー、あちらに行きたいのよ
 誰かが壊してしまう前に。

{Refrain}

Là-bas4


J'aimerais tant qu'on y porte
J'aimerais tant qu'on y passe
Là-bas, là-bas
Là-bas, là-bas
Là-bas, là-bas...

 どうしてもあちらに行きたい
 どうしてもあちらで暮らしたい
 あちら、あちら
 あちら、あちら
 あちら、あちら…

[注] ルフランはLà-bas, là-bas De l'autre côté du miroirが2回繰り返される形だが、ネット上の歌詞では、1回目を前の節の最後に付け、後半を次の節の頭に付けて、ルフランとはしていない。下記1・2・3とも、バルバラの歌を聴いてネット上の歌詞を訂正した。バーキンはバルバラと異なるところがある。
1 ネット上の歌詞はfort「強さ」、2行あとの最後の語をdort「眠る」とし、バーキンもそう歌っているが、バルバラの歌を聴き、fardとpartとした。意味的にもこの方が自然だ。
2 ネット上の歌詞はsi elle est là-basとしているが、バルバラとバーキンを聴き、si elle est la mortと訂正した。
3 ネット上の歌詞はqu'on m'y porte「誰かが私をそこに運ぶ」とし、バーキンもそう歌っているが、バルバラの歌を聴き、この表現をすべてqu'on y porteあるいはque l'on y porteとした。porterは他動詞の「運ぶ」以外に自動詞で「向かう、達する」の意味がある。次行のqu'on s'y voitのse voireが「互いに見る、出会う」とすればonはnous「私たち」だが、「私」として「自身を見出す」という捉え方も可能。この節と最後の節のonとl'onは「私」でも「私たち」でもいいが第1人称の代用。qu'on y porteをqu'on m'y porteとすればこのonだけが第3者となり不自然であろう。



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2018
09.01

ある微笑Un certain sourire

Henri Salvador Un certain sourire


前回は小説家のフランソワーズ・サガンFrançoise Saganに捧げられた曲「シニェ・サガンSigné Sagan」でしたので、今回はサガンの小説を元にした映画の主題曲をもうひとつ取り上げましょう。1956年の小説「ある微笑Un certain sourire」は、1958年にアメリカでJean Negulesco監督により映画化されました。ジョニー・マティスJohnny Mathisが歌った主題曲:A Certain Smile(作詞:Paul Francis Webster、作曲: Sammy Fain)をHubert IthierとAndré Salvetがフランス語に翻案し、アンリ・サルヴァドールHenri Salvadorが歌って1959年の同名のアルバムに収録されています。

映画のなかのジョニー・マティスの歌



アンリ・サルヴァドールのYouTube動画はすべて見られないので、ジョン・ウィリアムJohn Williamを。



Un certain sourire ある微笑
Henri Salvador  アンリ・サルヴァドール

Quand la radio
Joue cet air-là
Je me souviens d'avoir aimé
Un certain sourire
Qu'est-il resté
Des jours merveilleux de printemps
De l'amour des cœurs adolescents

 ラジオが
 この曲を流すとき
 私がかつて愛した
 ある微笑を思い出す
 若き心と心が恋をした
 春の素晴らしい日々に
 残された微笑を

Un certain sourire3


Les yeux mi-clos
Je la revois
J'étais jaloux du doux secret
D'un certain sourire
Je l'aimais tant
Que je suis toujours prêt à vivre ou à mourir
Oui, même à mourir pour un certain sourire

 なかば閉じた僕の目に
 彼女がまた映る
 その微笑の
 甘い秘密に僕は嫉妬していた
 僕はあまりにも愛していた
 いつだって生きることができるし死ぬことができるほどに
 そう、その微笑のために死ぬことさえ

Au casino
Entre mes bras
Abandonnée elle gardait
Ce certain sourire
Longtemps après mon cœur a compris
Que jamais, non jamais
Son cœur ne m'aimerait

 カジノで
 僕の腕に身をあずけ
 彼女はずっと浮かべていた
 その微笑を
 ずっと後に僕の心は悟った
 けっして、いいやけっして
 彼女の心は僕を愛すはずはなかったんだと

Un certain sourire2


Quand la radio
Joue cet air-là
J'ai toujours mal d'avoir aimé
Un certain sourire
Je l'aimais tant
Que je suis toujours prêt à vivre ou `à mourir
Oui, même à mourir pour un certain sourire

 ラジオが
 この曲を流すとき
 いつもつらい気持ちになる
 ある微笑を愛したことが
 僕はあまりにも愛していた
 いつだって生きることができるし死ぬことができるほどに
 そう、その微笑のために死ぬことさえ



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2018
08.23

シニェ・サガンSigné Sagan

Sylvie Vartan Toutes Peines Confondues


シルヴィ・ヴァルタンSylvie Vartanの「シニェ・サガンSigné Sagan」は、小説家のフランソワーズ・サガンFrançoise Saganに捧げられた曲。作詞・作曲:ディディエ・バルブリヴイアンDidier Barbelivien。2009年のアルバム:Toutes Peines Confonduesに収録されています。
サガンは多くの小説を書き、べストセラーとなった何冊かは映画化されました。先に取り上げた、「悲しみよこんにちはBonjour tristesse」や「ブラームスはお好きQuand tu dors près de moi」は、サガンの小説を元にした映画の主題曲でした。また、サガンが作詞し、グレコが歌っている「愛すことなくSans vous aimer」も取り上げていますので、ご覧ください。彼女は脚本家としても活動し、ロジェ・バディムRoger Vadim監督の「スエーデンの城Château en Suède」(1962年)など、戯曲や映画の脚本も書いています。私生活面では、アルコールや薬物に溺れ、過度の浪費癖やギャンブル癖のため、数百億円も稼いだのに晩年には生活が困窮しました。バイセクシャルであったことも知られています。2004年、心臓疾患のため69歳で亡くなりました。
サガンは私が学生の頃によく読んでいた作家のうちのひとりです。京大北門前の進々堂で彼と「すばらしい雲Les merveilleux nuages」の原書を勉強したことを思い出します。半世紀も昔のこと…。



Signé Sagan  シニェ・サガン
Sylvie Vartan シルヴィ・ヴァルタン


Un geste, un frisson de septembre 注1
Cette voix que je crois entendre
Comme un murmure désenchanté
Du Mozart en accéléré 注2

 あるしぐさ、ある9月のおののき
 聴こえた気がするこの声
 落胆のつぶやきのような
 アッチェレランドのモーツアルトの曲

Les épaules penchées sur un livre 注3
La prison des gens vraiment libres
Combien de nuits à ses romans
Mieux qu'une amie, mieux qu'un amant

 本の上に傾けられた肩
 本当に自由な人たちが囚われるところ
 彼女の小説にどれだけの夜が
 女友達以上の人、恋人以上の人

Françoise Sagan1


"Un certain sourire" peut-être
L'envie d'être ou ne pas être
Quelques mots écrits sur le vent
Mais d'une plume signée Sagan

 『ある微笑』はたぶん
 そうありたい、もしくはそうありたくないという欲求
 風に乗って書かれた幾つかの言葉
 だがペンでサガンとサインされている

Un verre de whisky, pour quoi faire ?
Sous le soleil des tapis verts
Cette façon de tenir ses gants
Cette élégance, éperdument

 一杯のウィスキー、何のため?
 太陽の下の緑の絨毯
 その手袋の持ち方
 この優美さ、まったく

Dans la fumée des cigarettes
Brûle la vie des marionnettes
Cette impatience au bout du temps
La politesse des insolents

 タバコの煙のなかで
 操り人形の命が燃える
 時を経た後のいらだち
 横柄な人たちの丁重さ

"Aimez-vous Brahms ?" nous dit-elle 注4
Et cette musique infidèle
Quelques phrases écrites en passant
Mais d'une plume signée Sagan

 『ブラームスはお好き?』と彼女は私たちに言う
 そしてこの浮ついた音楽
 ついでに書かれた幾つかのフレーズ
 だがペンでサガンとサインされている

Françoise Sagan2


Vivre sa vie à toute allure
Une gifle à la littérature
Des prix comme des bons points d'enfant
Souliers d'or et soucis d'argent

 あらゆる流儀で自分の人生を生きること
 文学へのしっぺ返し
 子どもの良い点数のような賞
 金の靴あるいは銀の靴

Où vont "Les merveilleux nuages" 注5
Au bout du compte, au bout de l'âge
Mourir n'est pas si important
L'hiver n'arrête pas le printemps

 『すばらしい雲』はどこに行ったの
 結局のところ、人生の終わりに
 死ぬということはさほど重大じゃない
 冬は春を阻みはしない

Et "De guerre lasse", on s'apprête 注6
A quitter les bruits de la fête
Ecrire le mot fin, simplement
Mais d'une plume signée Sagan
D'une plume signée Sagan

 そして『夏に抱かれて』では、
 祭りの喧騒を去ろうとしている
 ただ、最後の言葉を書くこと
 だがペンでサガンとサインされている
 ペンでサガンとサインされている

[注]
1 サガンが9月に亡くなったことを言うのか。
2 du Mozart 作品を示す場合は部分冠詞が用いられる。「ある微笑Un certain sourire」(1956年)に、「孤独な下宿先でモーツアルトの音楽に耳を傾ける。」という表現がある。
3 「ある微笑Un certain sourire」に「私たちは同じ頁の上にかがみこみ、頬と頬をくっつけ間もなく唇と唇を合わした。」という表現がある。だがこの節は、サガンの小説を読みふける人々のことを言っている。
4「ブラームスはお好きUn certain sourire」(1985年)の映画の邦題は「さよならをもう一度」。
5「すばらしい雲Les merveilleux nuages」1961年
6「夏に抱かれてDe guerre lasse」1985年。原題は「戦いに疲れて」が本義だが、成句として「仕方なく、やむなく」の意味で用いられる




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2018
08.11

バラの記憶De mémoire de rose

Julos Beaucarne De mémoire de rose


ジュロ・ボーカルヌJulos Beaucarneの「バラの記憶De mémoire de rose」です。1974年のアルバム:Chandeleur septante cinqに収録されています。ボーカルヌは「私は弱かったJ'étais fragile」を先に取り上げています。
“de mémoire de rose”というフレーズは、フランスの著述家ベルナール・フォントネルBernard le Bouyer de Fontenelleの、多宇宙論の啓蒙書「世界の複数性についての対話Entretiens sur la pluralité des mondes」(1686年)の第5夜→Wikisource [132]にあります。
これは、フォントネルが、ある侯爵夫人に天文学などについて語り合うという筋立ての科学啓蒙書で、自分たちの惑星や太陽が宇宙から見るとほんのひとかけらでしかなく、天空は不変ではなく、太陽が消えたり、また新たな星が生まれたりすることもあることを、分かりやすいたとえを用いて説明します。ここでは、個々の人間を1日しか咲かないバラに、宇宙を庭師に例え、私たちが宇宙を永遠で不変のものと見ている視点を説明しています。逆に言うと、長い宇宙の歴史から見ると人の一生はほんの一瞬だということです。後年のドゥニ・ディドロDenis Diderotの「ダランベールの夢Le rêve d’Alembert」(1769年)にも同様のフレーズが見られます。
けれど、ボーカルヌはマダムにそして失恋した娘に何を言いたいのでしょう。現在の自分の視点が絶対的なものではないのだからそれから自由になれということでしょうか。あるいは、一瞬一瞬が永遠だと…。いえ、皆さんそれぞれでお考えください。



De mémoire de rose バラの記憶
Julos Beaucarne  ジュロ・ボーカルヌ


{Refrain:}
De mémoire de rose
On n'a vu mourir un jardinier
Si rien qu'une pause 注1
Ne peut vous suffire
Madame, laissez
Le temps s'étirer
Et sans le maudire, patientez,
Laissez-vous glisser dans le vent léger
Patience, patientez.

 バラの記憶には
 庭師が死んだことなど映りはしなかった
 ひと時の休止にすぎないものは
 あなたを苦しませることはできないのだから
 マダム、そのまま
 時が続いていくままになさい
 そして呪ったりしないで、じっと待つんだ、
 そよ風に身を委ね
 辛抱だ、じっと待つんだ。

rose21.jpg


Si l'amour s'envole
Ne t'en prends qu'à toi 注2
Tu as fui l'école
Pour le lit d'un roi
Si sa voile blanche
N'est plus que brouillard
Te pends pas à la branche
Dès qu'il fera noir
Te pends pas à la branche
Dès qu'il fera noir, car

 もしも恋が消え去ったら
 自分だけを責めるんじゃない
 君は学校を逃げ出して
 王様のベッドに向かった
 もしも王様の白いヴェールが
 霧にすぎなくとも
 日が暮れるやいなや
 枝に身を吊るすんじゃない
 日が暮れるやいなや
 枝に身を吊るすんじゃない、なぜなら

{au Refrain}
De mémoire de rose...
 
 バラの記憶には…

Garde tout au fond,
Tout au fond de toi
Un vide, un endroit
Derrière les fêtes
Où poser la tête
Dans le vent du soir
Bercer ces vieux rêves
Même s'il fait noir
Bercer ces vieux rêves
Même s'il fait noir, car

 保つんだ奥底に、
 君の奥底に
 一つの空間を、一つの場所を
 お祭り騒ぎの背後に
 そこで頭を休めるんだ
 夕べの風のなかで
 その古い夢どもをなだめるんだ
 日が暮れても
 その古い夢どもをなだめるんだ
 日が暮れても、なぜなら

julos_beaucarne172x171.jpg


{au Refrain}
De mémoire de rose...
 
 バラの記憶には…

[注]
1 si「…だから」
2 s'en prendre à「…を非難する、責める」



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2018
08.05

マルジョレーヌMarjolaine

Francis Lemarque L’air de Paris


今回は、フランシス・ルマルクFrancis Lemarqueの「マルジョレーヌMarjolaine」です。1957年に、先にご紹介した「パリの唄L’air de Paris」といっしょに収録されました。その5年前の1952年に作った「兵隊が戦争に行くときQuand un soldat」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-332.html は、戦争に行く兵隊のことを歌った曲でしたが、こちらは戦争から帰ってきた兵隊を歌っています。ドイツ語の「リリー・マルレーンLily Marlene」(1939年)と似た雰囲気の曲です。こちらは戦争に行っているあいだ恋人を思う内容です。
Marjolaineとはフランスの一般的な女性名ですが、17~18 世紀から存在する古いマーチ「ディジョン街道でSur la route de Dijon」に、兵隊たちが出会った女性の名前として出てきますので、ルマルクはそれを意識して用いたのかもしれません。あるいは(Lily) Marleneを置き換えたのかも。

Marjolaineはハーブのマジョラムのことでもあり、お菓子の名前にも用いられています。そう、NHKの朝の連続ドラマ「まれ」に登場した「マルジョレーヌMarjolaine」です。これ、すなわち「ガトー・マルジョレーヌGâteau Marjolaine」はもともと、フランスのRhône-Alpes地方圏のIsère県のヴィエンヌVienneの町にある「レストラン・ドゥ・ラ・ピラミッドRestaurant de la Pyamide」で作られていたデザート菓子。



ダリダDalidaも歌っています。聴くと歌いたくなりますね。




Marjolaine     マルジョレーヌ
Francis Lemarque フランシス・ルマルク


Un inconnu et sa guitare
Dans une rue pleine de brouillard
Chantait, chantait une chanson
Que répétaient deux autres compagnons

 見知らぬ人がギターを抱え
 霧の立ち込めた通りで
 歌っていた、歌を歌っていた
 二人の連れが繰り返していた

Marjolaine, toi si jolie
Marjolaine, le printemps fleurit
Marjolaine, j'étais soldat
Mais aujourd'hui
Je reviens près de toi

 マルジョレーヌ、君はとてもきれいだ
 マルジョレーヌ、春爛漫だ
 マルジョレーヌ、僕は兵隊だ
 だが今日
 僕は君のもとに帰る

Marjolaine1.jpg


Tu m'avais dit: "Je t'attendrai"
Je t'avais dit: "Je reviendrai"
J'étais parti encore enfant
Suis revenu un homme maintenant

 君は僕に言った「あなたを待つわ」と
 僕は君に言った「僕は帰って来るよ」と
 まだ子どものまま僕は出発した
 今はひとりの男として戻って来た

Marjolaine, toi si jolie
Marjolaine, je n'ai pas menti
Marjolaine, j'étais soldat
Mais aujourd'hui
Je reviens près de toi

 マルジョレーヌ、君はとてもきれいだ
 マルジョレーヌ、僕は嘘をつかなかった
 マルジョレーヌ、僕は兵隊だった
 だが今日
 僕は君のもとに帰る

J'étais parti pour dix années
Mais dix années ont tout changé
Rien n'est pareil et dans ta rue
A part le ciel, je n'ai rien reconnu

 僕は10年のあいだ不在だった
 だが10年の月日はすべてを変えた
 なにも元のままじゃないし君の通りじゃ
 空のほかは、なにも見覚えがない

Marjolaine2.jpg


Marjolaine, toi si jolie
Marjolaine, le printemps s'enfuit
Marjolaine, je sais trop bien
Qu'amour perdu
Plus jamais ne revient

 マルジョレーヌ、君はとてもきれいだ
 マルジョレーヌ、春は去った
 マルジョレーヌ、僕にはよく分かる
 恋は失われ
 もうけっして戻っては来ないと

Un inconnu et sa guitare
Ont disparu dans le brouillard
Et avec lui ses compagnons
Sont repartis, emportant leur chanson

 見知らぬ人がギターを抱え
 霧のなかに消えた
 そして彼とともに連れたちも
 戻って行った、歌をたずさえながら

Marjolaine, toi si jolie
Marjolaine, le printemps fleurit
Marjolaine, j'étais soldat

 マルジョレーヌ、君はとてもきれいだ
 マルジョレーヌ、春爛漫だ
 マルジョレーヌ、僕は兵隊だった

[注] 1人称で語られる部分と、3人称で語られる部分とがある。1人称の部分は歌っていた歌の歌詞だろう。



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2018
07.25

白い天国Le paradis blanc

Michel Berger Ça ne tient pas debout


ミッシェル・ベルジェMichel Bergerの「白い天国Le paradis blanc」は1990年のアルバム:Ça ne tient pas deboutに収録されている曲。
鯨(正確にはシャチ)の鳴き声で始まります。Le paradis blanc(白い天国)とは、白い大陸すなわち南極大陸のことのようで、汚れた文明社会を離れて清らかな別天地に向かうのです。それは「新生」なのですがparadis(天国)というからには、「死」という概念も重なっていて、その2年後1992年のベルジェの突然の死を予告していたように感じられます。



フランス・ギャルFrance Gall



ヴェロニク・サンソンVéronique Samson



Le paradis blanc 白い天国
Michel Berger  ミッシェル・ベルジェ


Il y a tant de vagues et de fumée
Qu'on arrive plus à distinguer
Le blanc du noir
Et l'énergie du désespoir
Le téléphone pourra sonner
Il n'y aura plus d'abonné 注1
Et plus d'idée
Que le silence pour respirer
Recommencer là où le monde a commencé 注2

 たくさんの波と煙が立ち
 もう見分けがつかないほどだ
 暗闇の白
 そして絶望のエネルギー
 電話が鳴るかもしれないが
 電話を取る人はいないだろう
 そして一息つくための静寂が
 世界が始まったところでまた始まるという
 ことしかもう考えられないだろう

Le paradis blanc1


Je m'en irai dormir dans le paradis blanc
Où les nuits sont si longues qu'on en oublie le temps
Tout seul avec le vent
Comme dans mes rêves d'enfant
Je m'en irai courir dans le paradis blanc
Loin des regards de haine
Et des combats de sang
Retrouver les baleines
Parler aux poissons d'argent
Comme, comme, comme avant 注3

 僕は白い天国に眠りに行く
 そこでは夜は時を忘れるほど長い
 風とともにたった一人で
 子どもの頃に夢に見たように
 僕は白い天国に走りに行く
 憎悪の視線からも
 そして血肉の争いからも遠く離れて
 鯨たちにまた会い
 銀色の魚たちに話しかけに
 まるで、まるで、まるで以前のように

Y a tant de vagues, et tant d'idées
Qu'on arrive plus à décider
Le faux du vrai
Et qui aimer ou condamner
Le jour où j'aurai tout donné
Que mes claviers seront usés
D'avoir osé
Toujours vouloir tout essayer
Et recommencer là où le monde a commencé

 たくさんの波、そしてたくさんの考えが起こり
 もう決められない
 真実の虚偽を
 そして愛してくれるあるいは非難する人
 僕がすべてを捧げ終える日
 僕のピアノが使いつぶされる日
 すべてをやってみようと
 あえて常に望んだせいで
 世界が始まったその場所でまたやり始めよう

Le paradis blanc5


Je m'en irai dormir dans le paradis blanc
Où les manchots s'amusent dès le soleil levant
Et jouent en nous montrant
Ce que c'est d'être vivant
Je m'en irai dormir dans le paradis blanc
Où l'air reste si pur
Qu'on se baigne dedans
A jouer avec le vent
Comme dans mes rêves d'enfant
Comme, comme, comme avant
Parler aux poissons d'argent
Et jouer avec le vent
Comme dans mes rêves d'enfant

Comme avant

 僕は白い天国に眠りに行く
 そこではペンギンたちが日の出とともに遊びまわり
 僕たちにいのちに溢れたものを
 見せつつ戯れる
 僕は白い天国に眠りに行く
 そこでは空気はいまだ澄み渡り
 僕たちはそこのなかにひたる
 風と戯れつ
 子どもの頃に夢に見たように
 まるで、まるで、まるで以前のように
 銀色の魚たちに話しかける
 まるで、まるで、まるで以前のように
 そして風と戯れる
 子どもの頃に夢に見たように
 まるで以前のように

 まるで以前のように

Le paradis blanc4


[注]
1 abonné「電話の加入者、ガス電気などの使用者など定期契約の顧客」。ミッシェル・ジョナスMichel Jonaszの「君を待っているJe voulais te dire que je t'attends」にも出てきた言葉。
2 où le monde a commencé「世界が始まったところ」という表現は、南極大陸の長い歴史を物語っている。カンブリア紀(約5億4200万年前~約4億8830万年前)、南極大陸は超大陸ゴンドワナの一部であった。現在の西南極に相当する地域は北半球に位置し,東南極に相当する地域は赤道上にあった。1億8000万年前頃からゴンドワナは徐々に分裂し、南極大陸の現在の形は約2500万年前に形成された。2億6000万年以上前の木の化石が発見されているが、南極に氷がなかった最後の時代は紀元前4000年頃とされる。また、グーグルアースで古代遺跡かと思われる最大直径170mほどの造形が発見されて話題になっている(下の画像)。
3 comme avantというフレーズは、バルバラBarbaraの「黒いワシL'aigle noir」のなかで繰り返されていた。ミッシェル・ベルジェはそれを意識しているように思える。


Nankyoku1.png



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