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2019
12.07

ひとり取り残されてMe voilà seul

Charles Aznavour Idiote je taime


シャルル・アズナヴールCharles Aznavour の「ひとり取り残されてMe voilà seul」1972年のアルバム:Idiote je t'aime...に収録されています。「時代遅れの楽しみ(昔気質の恋)Les plaisirs demodes」と同様、1972年にアズナブール自身が作詞し、アズナブールの義兄であるジョルジュ・ガルヴァランツGeorges Garvarentzが作曲。彼女に去られた男が、自省し悔やんでいる内容。既存の邦題「ひとり取り残されて」を借用しました。ちょっと違う気がしつつもほかにピッタリ来るものが思いつかず…。




Me voilà seul    ひとり取り残されて
Charles Aznavour シャルル・アズナヴール


Me voilà seul, Seul tout à coup
Fallait bien qu'un jour ça s'décide 注1
Je n'ai pas su combler le vide
Qui s'était creusé entre nous

 僕はひとりだ、突然ひとりになった
 いつかそうなるはずだった
 僕たちのあいだに穿たれた隙間を
 僕は埋めることができなかった

Me voilà seul, c'était écrit
Je n'étais pas facile à vivre 注2
Bien que marié, je m'aimais libre
Alors bien sûr elle est partie

 僕はひとりだ、もう決まったことだ
 僕は人とうまく付け合えなかった
 結婚していても、自由でありたかった
 そして当然のこと彼女は出て行った

Je m'sens tout bête et tout penaud
Planté au milieu de ma chambre
Ne sachant que faire de mes membres
Comme un enfant qu'a le cœur gros

 自分がまったく愚かだと感じ落ち込んでいる
 塞いだ気持ちの子供のように
 手足で何かをしようともせず
 部屋の真ん中に突っ立って

Me voilà seul2


Ma voilà seul, je l'ai cherché
Avec mon fichu caractère
Je m'demand' bien ce que j'vais faire
A présent que j'ai tout gâché

 僕はひとりだ、みずから招いたんだ
 ねじ曲がった性格ゆえに
 すべてをふいにした今
 何をやるか自分に問いかける

Les femm's, ça ne nous comprend pas
J'buvais un peu, oh ! pas des tas
Mais même un peu elle n'aimait pas

 女たちってのは、僕らを理解しない
 僕はちょっぴり呑んだ、ああ!たくさんじゃないさ
 だがちょっぴりでも彼女は好まない

Puis j'avais tous mes vieux copains
C'est vrai ils sont pas toujours fins
Mais mes copains 注3
Mais j'les voyais, ell' n'y t'nait pas

 そして僕には昔からの仲間がいる
 むろん彼らはいつも気が利くって訳じゃない
 だが僕の仲間たちなんだ
 だが僕は彼らに会っていて、彼女は加わらなかった

Me voilà seul, dans ce décor
Où partout où mes yeux se posent
Y a des souv'nirs qui se proposent 注4
Comm' pour mieux m'déchirer encore

 僕はひとりだ、この場所で
 ここで僕はいたる所に目を止める
 僕をもっと苦しめてやろうとする
 いくつもの想い出があるんだ

Me voilà seul, bien fait pour moi 注5
Le bonheur au fond ça s'mérite 注6
Quand on l'ignore il fait faillite 注7
C'est alors qu'on se mord les doigts 注8

 僕はひとりだ、僕にとって当然の報いだ
 幸せは実際に価値のあるもの
 それをないがしろにすればしくじる
 その時、ひとは臍を噛む

Me voilà seul1


J'ai des défauts, qui n'en a pas
Changer c'est pas toujours facile
On s'conduit comme un imbécile
On s'croit très fort et puis, voilà

 僕はいくつかの欠点があり、それを
 変えなかった、それは常にたやすいわけじゃない
 ひとはバカみたいに振舞い
 ひとは自分がとても強いと信じ、その結果

Me voilà seul, j'ai tout fait pour 注9
Aussi j'pense pas qu'ell' revienne
Je crois qu'j'aurai beaucoup de peine
Car j'ai le cœur crevé d'amour

 僕はひとりだ、あらゆる手を尽くした
 彼女が戻るとは思えないながらも、そのために
 僕はずいぶん苦しむことだろう
 なぜなら心が愛で張り裂けそうだから

J'ai des défauts, qui n'en a pas
Changer c'est pas toujours facile
Me voilà seul
Seul

 僕はいくつかの欠点があり、それを
 変えなかった、それは常にたやすいわけじゃないんだ
 僕はひとりだ
 ひとりだ

[注] タイトルのMe voilà seulは「ひとり」とし歌詞中では「僕はひとりだ」と訳したが、voiciおよびvoilàはvoir「見る」の命令形古形副詞ici「ここ」およびlà「あれ」の合成語で、動詞と指示詞の働きを兼ねる。遠近の対立をvoici(近)、voilà(遠)で表すが、単独の場合はvoilàが多く用いられる。先行する代名詞(me)は直接目的語の性質を帯びる。
1 Il faut (bien) que +subj.「…に違いない。」のilを省略。s'décider話し言葉で「(機械などが作動を)始める」
2「協調的だ。人付き合いがよい。」
3 多くのサイトの歌詞ではMes mesとなっていたが、独断でMais mesに訂正した。
4 se proposer de+inf.で「(…する)つもりである」。またse proposer commeには通常、名詞が続き「(…になろうと)申し出る、志願する」の意味。ここでは目的を示すpour+inf.が続く。
5 bien fait pour qn.「…にとって
6 au fond「結局のところ」
7 faire faillite「破産する、挫折(失敗)する」。il=on
8 se mordre les doigts直訳すると「自分の指を噛む」だが「後悔する、臍を噛む」の意味。
9 pourおよびaussi j'pense pasともにqu'ell' revienneがつながる。



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2019
11.23

蛾Papillons de nuit

Claude Nougaro Ami Chemin


フランス語でpapillon de nuit「夜の蝶」とは、バー・キャバレーなどで接客する女性のことではなく、「蛾」のこと。今回は、クロード・ヌガロClaude Nougaroの「蛾Papillons de nuit」をご紹介いたしましょう。ジャズバラードのような雰囲気の曲。歌詞内容をあまり具体的に解釈するより、イメージ的にとらえるだけでいいと、私は思います。作詞:クロード・ヌガロClaude Nougaro自身、作曲:アルド・ロマーノAldo Romano。1983年のアルバム:Ami Cheminに収録されています。



Papillons de nuit 蛾
Claude Nougaro クロード・ヌガロ


Dans l'dortoir de trois papillons de nuit 注1
Le premier s'endort, le deuxième s'ennuie
Le troisième s'envole dans des corridors
En route vers sa lampe d'or 注2
Dans le noir velours de l'épaisse nuit
Le papillon vole, tout autour de lui
Quel sombre royaume
Mais voici qu'un jaune rayonnement luit

 三匹の蛾のねぐらで
 一匹目は眠り、二匹目は退屈し
 三匹目は廊下に飛び立つ
 彼女の金色のランプに向かって
 濃い夜闇の漆黒のビロードのなかを
 蛾は飛ぶ、彼のまわりすべては
 なんという闇の王国か
 だがそこに一つ黄色い光が輝く

Papillons de nuit1


Une fenêtre est entrouverte
Il y pénètre tout ébloui
Cercle solaire, la lampe éclaire
Le corps de Claire, belle endormie
Battant des ailes sur l'abat jour 注3
Il se révèle joyeux tambour
Claire se dresse épouvantée
Par la caresse d’un vol heurté

 一つの窓がわずかに開いている
 蛾は目が眩みつつ侵入する
 日輪のごとく、ランプが輝く
 クレールの身体、眠れる美女
 ランプシェードに羽を打ちつけて
 蛾は楽しい太鼓を打ち鳴らす
 粗っぽい飛翔の愛の表現に
 クレールは怯えて身を起こす

Papillons de nuit2


Dans l'dortoir de trois papillons de nuit
Le premier fait un rêve il voit son ami
Soudain qui s’affole et se cogne aux murs
Poursuivi par des coups durs

 三匹の蛾のねぐらで
 一匹目が夢で仲間を見る
 そいつは突然取り乱して壁にぶつかる
 鈍い音があとに続く

La lampe s’eteint
Revient le matin
Qui brille aujourd’hui
Dans l’dortoir de deux papillons de nuit.

 ランプが消える
 またやって来た朝が
 今、輝いている
 二匹の蛾のねぐらで。

[注]
1 dortoirはセルジュ・ラマSerge Lamaの「恋に病んでJe suis malade」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-98.htmlに出てきた語で、「(修道院、寄宿舎、兵舎などの)大寝室」を意味するが、蛾たちの共同寝室ということで「ねぐら」とした。成虫の蝶や蛾は正しくは一頭二頭と数えるが、歌詞中では違和感があるので一匹二匹とした。
2 sa lampeのsaはle troisième「三匹目の(蛾)」のではなく、後に出てくるClaire「クレール」という女性の。
3 abat jour(=abat-jour)「(ランプなどの)傘、シェード」「庇」「ブラインド」「天窓」など。



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2019
11.10

11月のバラードBallade en novembre

Anne Vanderlove Ballade en novembre2


先日、電車の中で或る小説を読んでいました。作者が私と同じ朝倉という名前だという理由でふと選んだものですが、読み始めると今までになく引き込まれました。半分くらい読んで乗り換えた後は満員電車で立っていたので続きは読めず、駅を降りて買い物をしバスに乗って帰り、家に着いたら、カートのポケットに入れておいたはずの本が無くなっていました。買い物をしたスーパーやバス会社などに問い合わせましたが見つからず、どこでどうしてなくなったのかさっぱり分かりません。でも、どうしても続きを読みたくて、ヤフオクで新たに購入し、昨夜、読み終えました。「平場の月」という小説で、「平場」と表現されるインテリやブルジョワとは縁のない生活環境に生きる二人の、切ないながらも暖かいつながりを今風の言葉遣いでとても自然に描いていて、大家の名作以上に心に沁みました。
その余韻のなか、今朝、YouTubeで「11月のバラードBallade en novembre」という曲を見つけ、歌詞内容がまるでその小説のなかの女性の言葉のように感じられ、すぐに訳し始めました。とても美しいメロディーですし、この季節にピッタリですしね。
作者であり歌い手であるアンヌ・ヴァンデルローヴAnne Vanderloveは、1943年生まれのオランダ出身のシンガー・ソングライター。20歳で彼女はパリで哲学を学んで教師になりましたが、1965年から方向転換し、ギターの弾き語りで歌い始めました。そして1967年に「11月のバラードBallade en novembre」で二つのグランプリを得、この曲は同年、同名のアルバムに収録されました。そして翌1968年の5月革命以来、彼女は「フランス版ジョーン・バエズla Joan Baez française」と呼ばれるようになりました。その後の活動に関してははしょらせていただきますが、今年の6月に癌で亡くなりました。

1965年


2011年


Ballade en novembre 11月のバラード
Anne Vanderlove   アンヌ・ヴァンデルローヴ


Qu'on me laisse à mes souvenirs,
Qu'on me laisse à mes amours mortes, 注1
Il est temps de fermer la porte,
Il se fait temps d'aller dormir

 私を想い出にとどめておいて、
 私を失くした恋にとどめておいて、
 ドアを閉める時間よ、
 眠りにつく時間になるわ

Je n'étais pas toujours bien mise 注2
J'avais les cheveux dans les yeux
Mais c'est ainsi qu'il m'avait prise,
Je crois bien qu'il m'aimait un peu

 私はいつも身だしなみがいいわけじゃなかった
 目のなかに髪の毛が入っていた
 でもそんなだから彼は私を選んでくれた、
 きっと彼は私をちょっぴり愛してくれていたんだわ

{Refrain:}
Il pleut
Sur le jardin, sur le rivage
Et si j'ai de l'eau dans les yeux
C'est qu'il me pleut
Sur le visage.

 雨が降る
 庭のうえに、川のうえに
 そして私が目に水を溜めていたなら
 それは私に雨が降るから
 顔のうえに。

Ballade en novembre1


Le vent du Nord qui s'amoncelle
S'amuse seul dans mes cheveux
Je n'étais pas toujours bien belle,
Mais je crois qu'il m'aimait un peu

 集まった北風は
 私の髪のなかでひとり戯れる
 私はいつもきれいなわけじゃなかった、
 でも、きっと彼は私をちょっぴり愛してくれていたんだわ

Ma robe a toujours ses reprises 注3
Et j'ai toujours les cheveux fous
Mais c'est ainsi qu'il m'avait prise,
Je crois que je l'aimais beaucoup

 私の服はいつも同じ
 そしていつもみだれた髪をしている
 でもそんなだから彼は私を選んでくれた、
 きっと彼は私をとても愛してくれていたんだわ

{Refrain}

Anne Vanderlove


Si j'ai fondu tant de chandelles
Depuis le temps qu'on ne s'est vus
Et si je lui reste fidèle,
À quoi me sert tant de vertu ?
Qu'on me laisse à mes amours mortes !
Qu'on me laisse à mes souvenirs
Mais avant de fermer la porte,
Qu'on me laisse le temps d'en rire 注4
Le temps d'essayer d'en sourire...

 もし私がたくさんのロウソクを
 私たちが逢わなくなってから燃やしてしまったなら
 そしてもし私が彼に貞淑なままなら、
 たくさんの美徳が私にとって何になるというの?
 私を失くした恋にとどめておいて!
 私を想い出にとどめておいて
 でもドアを閉じる前に、
 私に与えてよ、笑い飛ばす時間を
 微笑んでみる時間を…

{Refrain}

[注]
1 amourは男性名詞だが、複数形で女性名詞扱いされることがある。
2 être bien mis(e)「身なりの良い」
3 reprise「繰り返し」。「私の衣装」の繰り返しということは、おなじ服を繰り返し着ていたということ。
4 Qu'on me laisse à qc.のmeは直接目的語で「私を」だったが、ここのmeは間接目的語で「私に」。en rireと次行のen sourireのenはde cela「それを」であり、「それ」とは彼との恋の想い出、失くした恋、いえ私の現状のすべて。



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2019
11.07

小さなフーガLa petite fugue

Maxime Le Forestier La petite fugue


「小さなフーガLa petite fugue」というステキな曲は、前回の「孤独の歳月Années de solitude」の作詞者であるシンガー・ソングライターのマキシム・ル・フォレスティエMaxime Le Forestierが姉のカトリーヌ・マリー・ル・フォレスティエCatherine Marie Le Forestierとイスラエルの作曲家のNachum Heimanとともに作った曲。1969年に彼の最初のスタジオアルバム:Deux 45 toursに収録されました。
フーガ(遁走曲)は対位法を主体とした楽曲形式の一種で、曲の途中から前に出た主題や旋律が次々と追いかけるように出る曲。歌詞にはジャン=セバスチャンとありますので、バッハのフーガでしょう。また、三人で演奏していたとあり、ピアノ、ヴァイオリンが出てきます。僕が演奏していたのはチェロかなと最初思ったのですが、最後にヴァイオリンが複数形で出てくるので僕もヴァイオリンだったんですね。



姉のカトリーヌCatherineとのデュオ



La petite fugue   小さなフーガ
Maxime Le Forestier マキシム・ル・フォレスティエ


{Refrain :}
C'était toujours la même mais on l'aimait quand même
La fugue d'autrefois qu'on jouait tous les trois.
On était malhabiles, elle était difficile
La fugue d'autrefois qu'on jouait tous les trois.

 それはいつも同じだったけど、僕たちは大好きだった
 三人で演奏していた昔のフーガ。
 僕たちはへたくそで、そのフーガは難しかった
 三人で演奏していた昔のフーガ

Eléonore attaquait le thème au piano, on trouvait ça tellement beau
Qu'on en arrêtait de jouer pour l'écouter.
Elle s'arrêtait brusquement et nous regardait du haut de son tabouret
Et disait "reprenez", mi fa mi fa mi ré.

 エレオノールがピアノでテーマを弾いた、それがとっても美しかったから
 僕たちは演奏をやめて聞き入った。
 彼女は急に弾くのをやめてピアノの椅子から僕らを見下ろした
 そして「続けてよ」と言って、ミ・ファ・ミ・ファ・ミ・レと弾いた。

La petite fugue2


{Refrain}

Souviens-toi qu'un violon fut jeté sur le sol car c'était toujours le sol 
Qui gênait Nicolas, quand il était bémol.
Quand les voisins commençaient à manifester, c'était l'heure du goûter.
Salut Jean-Sébastien et à jeudi prochain.

 思い出してよ、床に投げ出されたバイオリンを、
 だってフラットのとき、ニコラを困らせたのはいつもソ(床)だったから。
 人々が現れ始めたら、それは食事の時間。
 さよならジャン=セバスチャン(=バッハ)、また次の木曜日にね。

{Refrain}

Un jour, Eléonore a quitté la maison, emportant le diapason.
Depuis ce jour, nous n'accordons plus nos violons.
L'un après l'autre, nous nous sommes dispersés, la fugue seule est restée
Et chaque fois que je l'entends, c'est le printemps.

 ある日、エレオノールが館を出た、音叉を持って。
 その日以来、僕らはもうヴァイオリンの音を合わせられなかった。
 ひとり、またひとりと、僕らは散って行き、フーガだけが残った
 そして僕があのフーガを聴くのは、いつも春なんだ。

La petite fugue1


{Refrain}

[注] ヴァイオリン奏法には疎いので、調べ得た限りの情報を記す。solは「床」の意味と「ソの音」の意味をかけているようだ。バイオリンの弦は下からソ-レ-ラ-ミで張ってあり、この4つの開放弦を基音とした調、あるいは開放弦を多く含む調が、弦楽器は最も鳴りやすく、演奏しやすい。また、弦楽器は弦を押さえて音程を作るので、フラット系よりシャープ系で書かれた楽譜の方が演奏しやすい。弦楽器演奏で弓の弾力性による跳躍を利用する1弓連続のスピッカートを意味するjeté「ジュテ」も引っ掛けているのかもしれない。


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2019
10.29

孤独の歳月Années de solitude

Milva&Piazzolla Joublie(Oblivion)


Milva&Astor Piazzollaと題された、1984年のパリ公演および1988年の東京公演で、ミルヴァがピアソラの伴奏で歌った曲のなかでフランス語歌詞の曲は、「忘却J'oublie(Oblivion)」「チェ・タンゴ・チェChe tango che」「ブレヒトとブレルの間でEntre Brecht et Brel」はすでに取り上げましたが、あと1曲残っていました。「孤独の歳月Années de solitude」です。作曲:アストル・ピアソラAstor Piazzolla、作詞はフランスのシンガー・ソングライター:マキシム・ル・フォレスティエMaxime Le Forestier。
ミルヴァ自身がピアソラのことを歌っているような歌詞内容ですが、タイトルは、コロンビアのガブリエル ガルシア=マルケスGabriel Garcia Marquezの小説「百年の孤独Cien Años de Soledad」(1967年。スペイン語。1982年にノーベル文学賞を受賞)を、南米の地というつながりでもじっているらしく、cent années de solitude(百年の孤独)という言葉自体が歌詞中に組み込まれています。



Années de solitude 孤独の歳月
Milva          ミルヴァ


Pas d’autre chance n’est donnée
chantait l’américain du sud
Aux fils des lignées condamneées
A cent années de solitude

 二度とはない機会に
 その南米の男は歌った
 百年の孤独の刑を
 宣告された血筋の子孫たちに

Quand il pleurait ses tangos dans les bars
Et que j’avais si soif
Décrépitude
Une taffe 注1
Et un qualude 注2
Une bière
Et va dormir
Chez mes souv’nirs
Tout l’monde se sauve
J’enterre
Tout c’que je sais, sauf

 彼が酒場で自作のタンゴを泣くように歌うとき
 そして私が、喉が渇ききって
 老いさらばえているとき
 タバコを一吹き
 睡眠薬を一錠
 ビールを一杯
 それで眠り込むわ
 想い出に包まれて
 世界はすべて姿を消し
 知るかぎりのものを
 私は葬り去り、残すのはただ

Années de solitude3


Un bandonéon qui m’attend
Entre la mort et l’inquétude
Et me dit qui vivra cent ans
Vivra cent ans de solitude

 バンドネオンだけ、それは私を待っているわ
 死と不安のあいだで
 そして私に問うの、誰が百年を生きるだろうか
 孤独の百年を生きるだろうかと

Longues les nuits
Sans les bras autour
Longue la vie
Sans amour
Longue est l’année qui passe
Sans passer par le cœur

 夜は長い
 抱いてくれる腕が無ければ
 人生は長い
 愛が無ければ
 過ぎゆく歳月は長い
 心を通り過ぎてゆかなければ

Longs les jours
Sans tendress à faire
Plutôt que manger la terre
Tourner autour

 日々は長い
 施す優しさが無ければ
 大地を味わうというよりむしろ
 その周りを回っているだけよ

Années de solitude2


Au premier chien de mer 注3
Que je trouve en partance
Qu’il m’emmène à Buenos-Aires
Un soir de danse

 出航時に最初に出会う
 サメに願うわ
 ブエノスアイレスに私を連れてって
 ダンスの夜にと

Là je retrouverai
L’américain du sud
Pour un tango j’oublierai
Cent ans de solitude

 そこで私は
 その南米の男と再会するでしょう
 1曲のタンゴで
 私は百年の孤独を忘れるでしょう

Années de solitude1


[注]
1 taffe=bouffée de cigarette「タバコの一吹き」
2 qualude「クオルード」メタカロンMethaqualone、マンドレックスMandraxなどの商品名で売られている鎮痛・催眠剤。
3 chien de mer「海の犬」という意味だが鮫の一種の別称。1979年にピアソラは、ヴァイオリン奏者フェルナンデス・スアレス・パスFernando Suarez Pazのために「鮫Escualo」という曲を書いている。また、映画「ピアソラ 永遠のリベルタンゴPiazzolla, los anos del tiburon」で、ピアソラは、1979年からの3年間の休業期間を「サメの時代」と呼び、サメ釣りを趣味としていたことを述べている。



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2019
10.18

幼年期の傷Blessures d'enfance

Yves Duteil Blessures denfance


今回はイヴ・デュテイユYves Duteilの「幼年期の傷Blessures d'enfance」。デュテイユ自身の作詞・作曲で1990年の同名のアルバムに収録されています。彼は子供たちを守るためのメッセージや子供たちへの愛をテーマとした曲を多く歌っていますが、これは彼自身が子供だった頃から思春期に至るまでの体験を元にしていると思われる内容。でも、子供たちへの愛がテーマであることには変わりありません。そうとう歌詞を練ったのだろうことは語句の選び方で分かる気がします。その分、邦訳は少々たいへんでしたが、その声のように優しい心が彼の歌から伝わってきて訳し甲斐が有ります。



Blessures d'enfance 幼年期の傷
Yves Duteil      イヴ・デュテイユ


On ne sait pas toujours à quel point les enfants 注1
Gardent de leurs blessures le souvenir longtemps 注2
Ni comme on a raison d'aider à s'épanouir
Cette fleur dans leur âme qui commence à s'ouvrir

ひとは常に理解している訳ではない
子供たちがどれほど自分の傷の記憶を長いあいだ留めているかを
彼らの魂のなかで開き始めたこの花が咲くのを
手助けするのがどれほど当然なことなのかも

Moi qui rêvais d'amour de musique et d'espoir
Je m'endormais cerné de frayeurs dans le noir
Certain que tous les rêves étaient sans lendemain
Je m'éveillais toujours le vide entre les mains

 愛や音楽や希望を夢見ていた僕は
 暗闇のなかで恐怖に取り囲まれて眠っていた
 たしかに、すべての夢は明日の無いもので
 僕はいつも両手が空のまま目覚めた

Chacun vivait pour lui dans sa tête en silence 注3
Et je chantais mon âme en pleine indifférence
Encombré de mes joies troublé de mes envies
Faisant semblant de rien pour que l'on m'aime aussi 注4

 それぞれが自分の内側で黙々と自身のために生きていた
 そして僕はまったくどこ吹く風で自分の心を歌っていた
 喜びに満ち欲望で乱されつ
 ひとが僕を愛してくれるよう、なんでもないふりをしながら

L'été on m'envoyait sur le bord de la mer
Ou au fond du Jura profiter du grand air 注5
Écrire à mes parents que je m'amusais bien
Et m'endormir tout seul blotti dans mon chagrin

 夏には、僕は海辺に連れて行かれた
 さもなきゃジュラの山奥で大気を満喫し
 両親に僕はとても楽しんでいると手紙を書き
 ひとりぼっちで悲しみのなかで背を丸めて眠ったことだろう

Blessures denfance2


J'essayais de grandir, de m'envoler peut-être 注6
Pour cueillir des étoiles à ceux qui m'ont vu naître 注7
J'ai longtemps attendu ce geste ou ce regard
Qui n'est jamais venu, ou qui viendra trop tard

 僕は成長しようと、飛び立とうと試みた
 両親らの点数を稼ぎたくて
 僕は長い間、そんな身振りあるいはそんなまなざしを待っていたが
 それはけっしてやって来なかった、あるいはやって来ても遅すぎる

Puis mon frère est parti pour un lycée banal
En pension pour trois ans parce qu'on s'entendait mal 注8
J'avais cherché sans cesse à croiser son chemin 注9
Sans jamais parvenir à rencontrer sa main 注10

 そして僕の兄はごく普通の高校に入り
 3年のあいだ寄宿舎にいた、お互いよく理解し得ず
 僕は彼と接点を持とうと常に試みたが、
 けっして彼の手を握るには至らなかった

Tous mes élans d'amour brisés dans la coquille
J'essayais de renaître en regardant les filles
Aimer c'était malsain pervers ou malséant
Pourtant c'était si doux si tendre et si troublant

 僕の愛のほとばしりはすべて自分の殻のなかで壊れ
 女の子たちを眺めながら立ち直ろうとしていた
 愛すること、それは不健康な、よこしまな、あるいは不作法なものだった
 だが、それはとても甘くとても優しくそしてとても悩ましいものだった

Aujourd'hui j'ai grandi mais le silence est là
Menaçant, qui revient, qui tourne autour de moi
Je sais que mon destin, c'est d'être heureux ailleurs
Et c'est vers l'avenir, que j'ai ouvert mon cœur

 今、僕は成長した、だが静寂は残る
 おびやかしつ、やって来て、僕を取り囲む
 僕の運命、それはほかで幸せになることだと分かっている
 そして、それはのちのことだ、僕が心を開いたのは

Blessures denfance4


Mais j'ai toujours gardé de ces années perdues
Le sentiment profond de n'avoir pas vécu
L'impression de sentir mon cœur battre à l'envers 注11
Et la peur brusquement d'aimer à découvert 注12

 だが僕は常に持ち続けた、この失われた歳月の
 生きることが能わなかったという内奥の感情を
 心臓がでたらめに鼓動しているような感覚を
 そして率直に愛を表すことに対する突然の恐れを

On ne sait pas toujours à quel point les enfants
Gardent de leurs blessures un souvenir cuisant
Ni le temps qu'il faudra pour apprendre à guérir
Alors qu'il suffisait peut-être d'un sourire 注13

 ひとは常に理解している訳ではない
 子供たちがどれほど自分の傷の、ひりひりするような記憶を留めているかを
 癒えることを学ぶためにかかる時間も
 きっとひとつの微笑みで充分だったのに

Moi qui rêvais d'amour de musique et d'espoir
J'ai attendu en vain ce geste ou ce regard
Mais quand un enfant pleure ou qu'il a du chagrin
Je crois savoir un peu ce dont il a besoin

 愛や音楽や希望を夢見ていた僕は
 そんな身振りあるいはそんなまなざしをむなしく待っていた
 だが、ひとりの子供が泣いているとき、あるいは悲しみを抱いているとき
 彼が欲しているものを少しは分かると信じている

[注]
1 否定文ではtoujoursの位置がpasの前か後かで意味が異なる。à quel point「どれほど」
2 gardent le souvenir de leurs blessuresと語順を変えると理解できる。
3「頭の中で」なら通常dans la têteであり、sa têteとしているのは、「頭」のみならず「心、身体、生命」までも含んだ意味合い。en silence「黙々と」。
4 ne faire semblant de rien「そしらぬふりをする、何食わぬ顔をする」。neがないが意味は同じ。
5 ouのあとの不定詞profiter écrire m'endormirは、実現されなかった行動を示す。
6 peut-êtreは文末に付加された場合は「たぶん、恐らく」とは訳し得ないニュアンスがあり、「…と思う」と訳した。
7 étoileレストランやホテルの等級を表す「星印」に準じて「評価」の意味。voir naître qn.「…が生まれた時に生きていた、…が生まれたのを知っている」つまり、両親や年上の身内。
8 s'entendre「互いに理解し合う」s'entendre mal
9 croiser le chemin de qn.は「…の行く手を遮る、邪魔をする」の意味もあるが、ここは「すれ違う、出会う」ことで、それも物理的な意味ではなく精神的な意味。
10 rencontrer sa main「彼の手に出会う」はすなわち「彼に出会って握手する」。
11 cœurは「心」ではなく、「心臓」。à l'envers本来は、「(上下、左右、前後、裏表を)逆に」の意味だが「間違って、乱雑に」の意味にも用いられる。
12 à découvert「あらわに、あからさまに」
13 alors qu...「…なのに」



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2019
10.12

イゼールの夜哨La garde de nuit à l'Yser

Damia La garde de nuit à lYser


大型台風ハギビス襲来!雨風の音を不安な気持ちで聞きながら訳します。

「イゼールの夜哨La garde de nuit à l'Yser」は、第一次世界大戦の始まった1914年に、エルネスト・ジャンヴァルErnest Genvalが書いた詩にリュシアン・ボワイエLucien Boyerが曲を付け、大戦終了直後にダミアDamiaがオランピア劇場で創唱した曲です。
l'Yser「イゼール川」は北フランスの砂岸丘陵地からベルギー西部を経て北海に流入する小海岸河川で、全長77kmのうちベルギー領内の約50kmは運河化されています。第1次世界大戦中の1914年10月17日から31日にかけての15日間、その流域のイゼール平原において、イギリスの海岸を目標にフランスの港湾都市ダンケルク、カレーに進軍しようとしたドイツ軍と,これを阻止しようとするベルギーとフランスの連合軍の間で激しい戦闘が繰り広げられました。イゼール平原の地形は平坦で、海抜も低いことから、ベルギー政府は意図的に運河の堤防を決壊させて洪水作戦を敢行し、連合軍が左岸を確保しドイツ軍の前進は阻止されました。しかし、一帯の風景は変貌しノーマンズランドと化しました。
Yser4.jpg
当時の戦いは塹壕戦が主であったため、冬を迎えるなかで、両軍の兵士は想像を絶する劣悪な環境に置かれたそうです。塹壕と言っても、イゼール平原は湿地であるため塹壕を掘る代わりに、連合軍は土手を築き数万の土の袋を積み上げました。この歌詞は、その激戦地イゼールYserの塹壕戦において、ひとりの夜哨の見聞きした情景を絵画、いいえ映画のように描いており、ヴィクトル・ユーゴーVictor Hugoの詩「魔神Les Djinns」(1829 年の詩集:Les Orientalesに収録)を思わせます。
作詞者のジャンバルはベルギー人で、戦争の初期に負傷したのち、戦争を題材にした歌詞を作り、「軍のシャンソニエchansonnier de l'armée」と呼ばれるようになった人で、その作品のなかで、この曲がもっとも有名です。彼は1925年からはコンゴでいくつかの映画を作り、映画監督としても知られています。第2次大戦ではレジスタンス運動に加わり、ゲシュタポに捕えられ1945年にチフスで亡くなりました。

録音は1933年



La garde de nuit à l'Yser イゼールの夜哨
Damia            ダミア


Un rien de lumière 注1
Lueur éphémère
Rampe encore sur terre
Au long des boyaux
La nuit tombe, tombe
Apprêtant la tombe
Et la mort en trombe 注2
Pour bien des héros
C'est l'heure indicible
Où l'humaine cible
Frissonne impassible
Au fond de son cœur
Et c'est l'heure obscure
Où sous notre armure
S'insinue, sûre
La main de la peur

 わずかな光が
 つかの間の薄明かりが
 塹壕に沿い
 まだ地を這っている
 夜のとばりが降りる、降りる
 英雄たちのために
 墓穴を
 そして劇的な死を用意しつつ
 それは言葉で表せない時間で
 人身の標的が
 平然としつつおののいている
 心の奥底で
 また、それは暗い時間で
 我々の甲冑の内側に
 滑り込むのだ、たしかに
 恐怖の手が

Bah, léger mécompte
L'angoisse se dompte
Et le sang remonte
Orgueilleux et vif
Doigt sur la gâchette
Le soldat furète
Et par la nuit guette
D'un œil attentif
Les canons rugissent...
Les balles ratissent...
Les abris gémissent...
Sous les coups du fer
Et plus cela barde 注3
Et plus l'on bombarde
Plus belle est la garde 注4
Au bord de l'Yser

 ふぅ、ちょっとした見込み違いだ
 不安は治まり
 血はまた巡る
 堂々と、はつらつと
 引き金に指をかけて
 兵士は獲物を探す
 そして、闇のなか
 耳を澄まして窺う
 大砲が轟く…
 一斉の掃射…
 鉄弾の雨のもと
 塹壕も揺れる…
 それが激しさを増すほど
 爆撃が激しさを増すほど
 イゼールの
 夜哨は美しい

Yser1.jpg


Clarté fulgurante
Fleur éblouissante
Traînée sanglante
Dans le ciel tout noir...
C'est une fusée
Qui monte... irisée
De l'enfer lâchée...
Comme un feu d'espoir...
Alors tout se fige
Alors, ô prodige
Par le seul prestige
De cet œil ouvert
Tous les nerfs se tendent
Les âmes se bandent
Et les cœurs attendent
L'holocauste offert...

 まばゆい閃光
 まぶしい火花
 赤い軌跡が
 真っ暗な空に…
 それはロケット弾だ
 昇って来る…虹色に輝いて
 地獄から放たれて…
 まるで希望の火のように…
 その時、すべてが凍り付く
 その時、おお驚くべきことだ
 この見開かれた片眼の
 眼力だけにより
 全神経が伸び
 精神は張りつめ
 心は待ち構える
 差し出された生贄を…

Mais le vent se lève
Là-bas vers la grève
Il assaille et crève
Le manteau des cieux
Les nues s'affaissent
Fuient... se dépècent
Des étoiles naissent
En clignant des yeux
Et soudain, près d'elles
De lugubres ailes 注5
Des ailes mortelles
Passent en vrombissant
Quelque gothas passe 注6
Il passe... vorace
Jalonnant sa trace 注7
De flaques de sang...

 だが風が起こる
 あちらの砂地のほうに
 風は襲いかかって
 空のマントを引きちぎる
 雲は崩れて
 遠ざかり…雲散する...
 星が出現する
 またたきながら
 すると突然、そのかたわらに
 陰鬱な翼が
 死をもたらす翼が
 ブルンブルンと音を立てながら通り過ぎる
 何機かのゴタ(ドイツの爆撃機)が通り過ぎる
 通り過ぎる…貪欲なやつ
 血だまりの航跡を
 点々と残しながら

Yser2.jpg


Et le temps s'enroule
Et la mort se saoûle
Du sang qui s'écoule
En flots monstrueux
Grisée de tumulte
La Camarde exulte 注8
Et son geste insulte
Aux plus valeureux
Elle arrive lente...
Lâche... patiente
Immonde... démente
Implacable - Hélas
Et sa main fantasque
Dédaignant le casque
Glisse sous le masque
Le poison des gaz..

 そして時は巡り
 大量に横溢し
 流れ出す血に
 死は酔いしれる
 ざわめきに酔い
 死神は歓喜し
 その身ぶりは
 最も勇敢な者たちをあざ笑う
 死神はやってくる、ゆっくりと…
 卑怯で…執拗で
 下劣で…気違いじみて
 冷酷な奴、ああ
 そしてその気まぐれな手は
 鉄兜を侮り
 ガスマスクの下まで
 滑り込む。

Enfin l'accalmie... !
Une voix amie
Une voix bénie
S'élève soudain
Le gnasse taciturne 注9
Sent dans l'air nocturne
Le clocher de Furnes 注10
Qui s'émeut... lointain
Il s'émeut et chante
La chanson vivante,
L’heure de détente
Du prochain éveil 注11
La nuit se lézarde
L'aube naît... blafarde...
Finie est la garde
Voici le soleil !

 やっと小康状態に...!
 味方の声が
 祝福の声が
 突如、沸きあがる
 無口な男は
 夜の空気のなかに感じ取る
 フールネの町の鐘の音を...
 それは遠くで…鳴っている
 鳴り響き、そして、歌っている
 生命あふれる歌を、
 間近の目覚めの
 一息つく時間を
 夜が裂けて
 暁が生まれる…青白い暁が…
 夜哨は終わりだ
 朝日が昇る !

Yser3.jpg


[注]
1 un rien de…「ほんの少しの」
2 trombe「竜巻」。en trombe「すさまじい勢いで」
3 barder「(状況などが)険しくなる」
4 garde(女性名詞)「歩哨、見張り」およびgarde de nuit「夜哨、夜警」は勤務内容で、その人自身を指すものではない。
5 複数名詞の前に形容詞がつくとdesはdeに変わる。
6 gotha 第1次大戦でドイツが用いた爆撃機。Gotha「ゴタ」はドイツの都市。
7 jalonner「点々と並べる」爆撃機
8 camarde本義は「ししっ鼻」だが、「死」をも意味する。頭が大文字なので「死神」と訳した。
9 gnasse俗語で「人、男」。yass「ヤス」としている歌詞が多いが、これはスイスのトランプゲームのことで採用できない。
10 Furnes「フールネ」ベルギーのウエストフランダース州にある都市。
11 朝は、夜間に続いていた戦闘が収まる時間。



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2019
09.23

カーブVirages

Yves Duteil Lécritoire


今回は、イヴ・デュテイユYves Duteilの1974年のアルバム:L'écritoireに収録されている「カーブVirages」という曲です。デュテイユのほかの曲とはちょっと違ったアップテンポのリズム感のある曲です。車を運転している話ですが、聴いた印象ほどハラハラドキドキする歌詞内容ではありません。



Virages   カーブ
Yves Duteil イヴ・デュテイユ


Mes paupières s’alourdissent un peu
Mais dans un kilomètre ou deux
Après le virage, au village, dans un petit bar
Il y a du feu
Toi tu dors depuis l’autoroute
Fatiguée, énervée sans doute
Plus qu’un kilomètre, peut-être, et puis du café 注1
Auprès du feu
Je regarde un instant vers toi
Tu es presque appuyée sur moi
Un virage à droite, un peu sec, qui te plaque à moi 注2
Je voudrais que ce virage n’en finisse pas
Je redresse, doucement, sans à-coups 注3
Ton visage sur mon cou...

 まぶたがちょっと重くなる
 だけど1キロか2キロで
 カーブの先に、村に、小さなバーには
 火がある
 君は高速道路からあと眠っている
 疲れて、たぶんいらだって
 1キロあまり、たぶん、その向こうにカフェ
 火のそば
 僕は一瞬、君のほうを向く
 君は僕にほとんど寄りかかっている
 ちょっと急な右へのカーブが、君を僕に押し付ける
 このカーブが終わらないでほしい
 僕は直進に戻す、そっと滑らかに
 君の顔が僕の首に…

Virage1.jpg


{Refrain :}
Passeront les jours et les semaines et les années
Tant que je t’aurai à mes côtés
Dans chacun des gestes de la vie
Je t’aimerai aussi...(×2)

 何日も、何週も、何年も過ぎるだろう
 君を僕の傍らにとどめるあいだ
 人生の一つ一つのふるまいのなかで
 僕はなおも君を愛するだろう…

Virage3.jpg


Dans une heure on y verra mieux 注4
Le brouillard se dissipe un peu
L’essuie-glace passe et repasse en laissant des traces
Devant mes yeux
Des lumières au travers des phares
Le village et là-bas le bar
Retenant ta tête, je m’arrête sur le bas-côté
Près du café
Et dans un bruissement d’abeilles
Le silence peu à peu t’éveille
Je me sens vidé, fatigué mais si près de toi
Je voudrais que ce voyage n’en finisse pas
Tu souris, brusquement, sans un mot
Ta main glisse dans mon dos...

 1時間のうちに視界が良くなるだろう
 霧はすこし薄れる
 水滴の跡を残しつワイパーが往復する
 目前に
 ヘッドライトの先に光が
 村がそしてあそこにバーが
 君の頭を支えつ、道端に停車する
 カフェの近くで
 そして蜂の羽音のなかで
 静寂が少しずつ君を目覚めさせる
 僕はぼうっとして、くたびれていたが君のすぐそばにいるんだ
 この旅が終わらないでほしい
 君は微笑み、急に、言葉もなく
 君の手が僕の背中を滑る…

[Refrain] (×3)

Virage4.jpg


[注]
1 2行目~4行目の内容の言い換えで、心の中の予測および願望をあらわした断片的な表現。barとcaféはあとでも入れ代わっており、どちらでも同じのようだ。
2 sec形容詞としての本義は「乾いた」だが、形容動詞としてdémarrer sec「急発進する」freiner sec「急ブレーキをかける」などの表現で用いられる。ここでは形容詞ながらそうした意味合いを含む。右に曲がる場合、車体は外側に振られ、眠っている彼女は左で運転している彼のほうに傾く。
3 redresser「立て直す」。他動詞だが、車の向きを「まっすぐに戻す」意味では目的語無しでも用いられる。à-coups「不規則な動き」。sans à-coups「滑らかに、円滑に」
4 y voire「目が見える」




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2019
09.17

アマポーラAmapola

Tino Rossi Amapola


「アマポーラAmapola」は1923年にホセ・ラカジェJoseph Lacalleが作曲した、もともとはインストルメンタルの曲で、1924年にルイス・ロルダンLuis Roldánがスペイン語の歌詞を作り、ミゲル・フレタMiguel Fletaが、映画:The Lecuona Cuban Boys(1925年)で最初に歌いました。その後、世界中でいろんな言語で歌われるポピュラーソングになって行ったわけですが、1935年にはロベール・シャンフルーリRobert Champfleuryとルイ・ソーヴァLouis Sauvatがフランス語に翻案し、ティノ・ロッシTino Rossiが歌っています。 シェラック盤:Vogue mon cœurに収録。ヒナゲシを意味するスペイン語のAmapolaをそのまま用いていますが、スペイン語の単純な歌詞とは異なり、ちょっと大仰な愛の歌となっています。ヒナゲシは、フランス語ではコクリコcoquelicot。それを歌ったシャンソンとしてはムルージMouloudjiの「小さなひなげしのようにComme un p'tit coquelicot」が知られています。ついでにご覧になってください。



ナナ・ムスクーリNana Mouskouri はスペイン語で歌っています。



Amapola  アマポーラ
Tino Rossi ティノ・ロッシ


Amapola
L'oiseau léger qui passe
La rose et le lilas chantent ta grâce
Amapola
L'onde où les cieux se mirent
N'a pas autant d'éclats que ton sourire
Le vent même t'apportant le poème
Que je lui ai confié ce soir pour toi
Amapola
Amapola
Dans sa chanson te dira
Je t'aime

 アマポーラ
 飛び去っていく身軽な鳥が
 バラやリラが君の優美さを讃えて歌う
 アマポーラ
 み空がその姿を映す波は
 君の微笑みほどの輝きを持たない
 僕が君へと託した詩を
 風は君に届けて
 アマポーラ
 アマポーラ
 風の歌のなかで君に告げてくれるだろう
 ジュテームと

D'où vient le pouvoir que tu possèdes
Ton charme impérieux qui m'obsède
D'où vient que je vois tout resplendir
Et tout refleurir au gré de ton sourire

 どこから来るのか、君の持つ支配力は
 僕をさいなむ君の絶大な魅力は
 どこから来るのか、君の微笑みにつれて
 とっても輝いて見えるものは、とっても華やいで見えるものは

Amapola 2


Amapola
L'oiseau léger qui passe
La rose et le lilas chantent ta grâce
Amapola
L'onde où les cieux se mirent
N'a pas autant d'éclats que ton sourire
Le vent même t'apportant le poème
Que je lui ai confié ce soir pour toi
Amapola
Amapola
Dans sa chanson te dira
Je t'aime

 アマポーラ
 飛び去っていく身軽な鳥が
 バラやリラが君の優美さを讃えて歌う
 アマポーラ
 み空がその姿を映す波は
 君の微笑みほどの輝きを持たない
 僕が君へと託した詩を
 風は君に届けて
 アマポーラ
 アマポーラ
 風の歌のなかで君に告げてくれるだろう
 ジュテームと

Amapola 3


Le vent même t'apportant le poème
Que je lui ai confié ce soir pour toi
Amapola
Amapola
Dans sa chanson te dira
Je t'aime

 僕が君へと託した詩を
 風は君に届けて
 アマポーラ
 アマポーラ
 風の歌のなかで君に告げてくれるだろう
 ジュテームと



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2019
09.17

異国の人L'étranger

Damia Létranger


「異国の人L'étranger」は、1935年に、ジャーナリストのロベール・マルロンRobert Malleronが作詞し、マルグリット・モノーMarguerite Monnotがアコーディオニストのロベール・ジュエルRobert Juelとともに作曲し、ダミアDamiaが創唱した曲で、同年、アネット・ラジョンAnnette Lajonが歌ってシャルル・クロのディスク大賞Grand Prix de l'Académie Charles Crosを獲得し、マルグリット・モノーの出世作となりました。そして1936年に、エディット・ピアフEdith Piafが歌いました。モノーとピアフのコンビはこの曲から始まったわけで、ピアフの曲として取り上げられることも多いのですが、元々はダミアの曲。ダミアは港の娼婦の歌が多く、ピアフは街の娼婦の歌が多いようです。

アルベール・カミュAlbert Camusの同名の小説(1942年刊)は「異邦人」という邦題が付けられていますね。étrangerは外国人に限らず、ほかの地から来た者を意味する語で、歌詞中では1箇所だけ用いられていますが、文脈上、邦題の「異国の人」ではなく、「よそ者」と訳しました。 je ne sais où「どこかから」やってきて「どこかへ」去ってしまった船乗りを想う娼婦の心を歌った切ない歌です。

ダミア



アネット・ラジョン



エディット・ピアフ



L'étranger  異国の人
Damia     ダミア


Il avait un air très doux
Des yeux rêveurs un peu fous
Aux lueurs étranges
Comme bien des gars du Nord
Dans ses cheveux un peu d'or
Un sourire d'ange
J'allais passer sans le voir
Mais quand il m'a dit“bonsoir !”
D'une voix chantante
J'ai compris que ce soir-là
Malgré la pluie et le froid
Je serais contente
Il avait un regard très doux
Il venait de je ne sais où

 彼はとても優しげだった
 夢見るような瞳はいくらか変で
 妙な光を放っていた
 北方の若者たちによくある
 ちょっと金色がかった髪をして
 天使のように微笑んだ
 私は彼に目を向けずに通り過ぎるところだったが
 彼が私に、「今晩は!」と
 歌うような声で言ったとき
 私には分かったわ、その夜は
 雨が降っていたし寒かったけど
 私はしあわせな気分になれると
 彼のまなざしはとても優しかった
 彼はやって来た、どこからか

Létranger1


“D'où viens-tu ? Quel est ton nom ?”
“Le navire est ma maison
La mer mon village
Mon nom, nul ne le saura
Je suis simplement un gars
Ardent à l'ouvrage
Ici, j'ai le cœur trop lourd
Vends-moi donc un peu d'amour
J’ai soif de caresses”
Et moi, fille au cœur blasé
J'ai connu sous ses baisers
Une folle ivresse
Il avait un regard très doux
Il venait de je ne sais où

 「どこから来たの?あんたの名は?」
 「船が俺の家
 海が俺の村
 俺の名前、それは誰も知りやしない
 俺はただの男
 仕事熱心な男さ
 今、俺はとても辛い気持ちなんだ
 愛をちょっと分けてくれ
 優しく抱かれたいんだ」
 そして私ったら、荒んだ心の女ながら
 彼に接吻されているうちに
 狂おしい陶酔を味わった
 彼のまなざしはとても優しかった
 彼はやって来た、どこからか

Simplement, sans boniments
J'aimais mon nouvel amant
Mon époux d'une heure ;
Comme tout les malheureux
Il croyait voir en mes yeux
La femme qu'on pleure
Et follement j'espérais
Qu'un matin il me dirait :
“Suis-moi je t'emmène”
J'aurais dit“oui”, je le sens
Mais il a fui me laissant
Rivée à ma chaîne
Il avait un regard très doux
Il s'en allait je ne sais où

 あっけなく、口説きの言葉もなく
 私は、この新しい恋人を
 ひとときだけの夫を愛した
 不幸な男たちによくあるように
 彼も私の目のなかに
 ひとに憐れまれる女を読み取った
 そして愚かにも私は望んでしまった
 朝になって、彼が私に言ってくれると
 「ついて来い、連れてってやる」と
 私は「ええ」と言ったことだろう、そう思うわ
 でも彼は消えた、私を
 鎖につながれたまま残して
 彼のまなざしはとても優しかった
 彼は行ってしまった、どこかへ

Létranger2


J'ai rêvé de l'étranger
Et, le cœur tout dérangé
Par les cigarettes
Par l'alcool et le cafard
Son souvenir chaque soir
M'a tourné la tête
Mais on dit que, près du port
On a repêché le corps
D'un gars de marine
Qui, par l'amour délaissé
Ne trouva pour le bercer
Que la mer câline
Il avait un regard très doux
Il est parti je ne sais où

 私はあのよそ者を夢に見た
 そして、心は乱れきった
 煙草や
 お酒や憂鬱で
 夜ごと彼の思い出が
 私の頭をくらくらさせた
 けれどうわさでは、港の近くで
 若い船乗りの
 死体が上がったという
 その男は、恋に破れ
 彼を揺すって慰めてくれるものは
 優しい海だけだったと
 彼のまなざしはとても優しかった
 彼は去ってしまった、どこかへ

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