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2020
03.21

季節館La saisonneraie

Barbara La Fleur damour


今回はバルバラBarbaraのLa saisonneraie。1972年のアルバム:La fleur d'amourに収録されています。作詞はバルバラ自身、作曲はバルバラとフレデリック・ボトンFrédéric Botton 。彼は、バルバラの「アブサンL' absinthe」のほか、ベティ・マルスBetty Marsの「私のロシアン・カフェMon café russe」やシャルロット・ゲンズブールCharlotte Gainsbourgの「一人は去り、一人は残るL'un part l’autre reste」などなどのすてきな曲を作曲しているシンガー・ソングライターです。
タイトルのsaisonneraieという語は辞書にはなく、もともとは季節saisonを元にした造語なのでしょうが、La Saisonneraieという名前のホテルが、フランスのサン=ジョルジュ・ド・リュザンソンSaint-Georges de LuzençonとベルギーのファラエンFalaënに実際にあります。そして後者のB&B La Saisonneraie はこの曲にふさわしい雰囲気の建物です(歌詞中にその外観と室内の写真を挿入)。バルバラは1950年以後、何度かベルギーに行っており、1971年にはジャック・ブレルJacques Brelが監督しベルギーで撮影した映画「フランツFranz」に出演しており、このベルギーのホテルを想定してこの曲を作ったのかもしれません。でも、タイトルはLa saisonneraie で、現今営業中のホテル名La Saisonneraieではなくて、不思議な愛の神秘を持つ、恋人たちの「愛の館La maison des amours」なのです。邦題は、「季節館」としておきましょう。



La saisonneraie  季節館
Barbara       バルバラ


La saisonneraie
Où l'on s'abritait
Pour y vivre ensemble
La plus folle passion
La saisonneraie
Que tu as quittée
Restera pour moi
La plus belle maison

 私たちが身を寄せた
 季節館
 この上なく狂おしい熱情を
 ともに生きようと
 あなたがあとにした
 季節館は
 私にとってはこれからも
 この上なく美しい館のままでしょう

Si belle en Mai
Lorsque refleurissaient
Les roses si lourdes
Si lourdes, si lourdes
Si belle en Juillet
Lorsqu'on s'endormait
Près des roses rouges
Si rouges, si rouges

 とても美しいわ
 こんなにいっぱいの、こんなにいっぱいの
 こんなにいっぱいのバラが
 咲き乱れる5月には
 とても美しいわ
 こんなに真赤な、こんなに真赤な
 こんなに真赤なバラの傍らで
 うたた寝する7月には

La saisonnerai1


Et je sais, tu voudrais
Pouvoir oublier
Comme tu l'aimais
La maison des amours
Mais, où que tu sois
Tu y reviendras
La saisonneraie
Tu ne l'oublieras pas

 知っているわ、あなたは
 忘れたいのでしょうが
 あなたがどれほど愛していたかを
 愛の館を
 でも、あなたはどこにいようと
 戻って来るわ
 季節館を
 あなたは忘れないでしょう

Si belle à l'automne
Tant que l'on s'étonne
De l'automne rousse
Là-haut dans ma chambre
Si chaude en Décembre
Quand tu me fais douce
Si douce, si douce,

 とても美しいわ秋には
 赤褐色の秋に
 驚かされているあいだ
 上の私の部屋では
 12月でもとても暑いわ
 あなたが優しく
 とても優しく、とても優しくしてくれるとき

La saisonnerai3


Tu sais, avant toi
Bien d'autres que toi
Ont quitté un jour
La maison des amours
Mais jamais déserte
Et la porte ouverte
Elle est devenue
La maison des amours

 ねぇ、あなたより前に
 あなたのほかに
 去った人たちが居たのよ
 愛の館を
 でもけっして人影は絶えることなく
 門は開かれて
 愛の館になったわ

On m'a raconté
Que, par le passé
Quelque charme étrange
L'avait envoûtée
On m'a raconté
Qu'elle a le secret
Des amours étranges
Etranges, étranges

 ある人が私に語った
 昔のこと
 不思議な魔力が
 館に取り付いたのだと
 ある人が私に語った
 館は不思議な
 不思議な、不思議な
 愛の神秘を持つんだと

La saisonnerai2


La saisonneraie
Je t'y attendrai
Tranquille
Je sais que tu m'y reviendras
Car nul ne peut rien
Contre le secret
De tous ceux qui s'aiment
À la saisonneraie
Tu m'y reviendras
Car j'ai le secret
De tous ceux qui s'aiment
À la saisonneraie...

 季節館
 私はそこであなたを待つわ
 静かにね
 あなたがそこに私のもとに戻って来るって分かるの
 だって誰にもできないから
 季節館で
 愛い合う人たちの
 神秘に逆らうなんて
 あなたはそこに私のもとに戻って来るわ
 だって私は持っているから
 季節館で
 愛い合う人たちみんなの神秘を…

La saisonnerai4



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2020
03.18

悲しみよさようならAdieu tristesse

Zazie Adieu tristesse


今回はザジZazieの「悲しみよさようならAdieu tristesse」です。作詞:ザジ自身、作曲:フィル・バロンPhil Baron。2015年のアルバム:Encore heureuxに収録されています。
映画「悲しみよこんにちはBonjour tristesse」の同名の主題曲ジュリエット・グレコJuliette Grécoが歌っている「悲しみよこんにちはBonjour tristesse」とティノ・ロッシTino Rossiの歌っている「悲しみよこんにちはBonjour tristesse」は、「悲しみtristesse」を、離れがたい女友達として擬人化していますが、ザジのこの曲は、その女友達と別れるという内容。以前取り上げた同名の曲「悲しみよさようならAdieu tristesse」は、映画「黒いオルフェOrfeu negro」のなかの1曲で、カーニヴァルの夜のあいだだけのつかの間の「さようなら」でしたが、こちらは永遠の「さようなら」です。



Adieu tristesse 悲しみよさようなら
Zazie       ザジ


Je vais m'en aller, aller, mon amie 注1
Je vais m'en aller vivre ma vie
De l'autre côté, je vais semer le doute 注2
Et reprendre ma route, et reprendre ma route

 私は出て行くわ、出て行くわ、友よ
 私は自分の人生を生きるために出て行くわ
 別場所での人生を、惑いを振り払うわ 
 そして自分の道を再び辿る、そして自分の道を再び辿る

Je t'ai tant aimée, aimée, mon amie
Je t'ai tant aimée que dans ma vie
Tu as fait ton nid, je m'envole quand même
Adieu tristesse, il faut que je te laisse

 私はあなたをとても愛した、愛したわ、友よ
 私はあなたをとても愛したから私の生活のなかに
 あなたは巣を作った、だけど私は飛び立つわ
 悲しみよさようなら、あなたを置いていかなきゃならないの

J'ai laissé autant de larmes, larmes, couler
Que j'ai laissé le navire chavirer, blessée 注3
Et par la vague, vague, emportée
Oui, j'ai laissé mes rires se noyer

 いっぱいの涙を涙を流れるままにした
 船を転覆させたくらいに、傷ついて
 波に、波に、運ばれた
 そう、私は笑いを溺れさせたの

Adieu tristesse3


Je m'en vais, je vais mes larmes, larmes, sécher
Oui je m'en vais loin de toi, ma peine 注4
Si je m'en vais, c'est que l'orage, orage, est passé
C'est que je sais qu'être heureux vaut la peine 注5

 私は去る、私は涙を、涙を、乾かすの
 ええ私はあなたから遠くに去る、私の苦しみよ
 私が去るとしたら、それは雷雨が、雷雨が、過ぎ去ったから
 幸せになることは価値があると知ったから、

Je vais m'en aller, ma belle ennemie
Je vais m'en aller vivre ma vie
De l'autre côté, tu as semé le doute
Et j'ai fait fausse route, et j'ai fait fausse route

 私は出て行くわ、私の美しい敵よ
 私は自分の人生を生きるために出て行くわ
 別場所での人生を、あなたは疑念を撒いた
 そして私は間違った道を辿った、そして私は間違った道を辿った

Je t'ai tant donné, donné ma peine
Tant et tant d'années que je me traîne
A toi condamnée, je m'évade quand même
Adieu tristesse, il faut que je te laisse

 私はあなたにたくさん委ねた、委ねた
 何年も何年も私が引きずってきた苦しみを
 咎あるあなたに、だけど私は逃げ出す
 悲しみよさようなら、あなたを置いていかなきゃならないの

J'ai laissé autant de rêves, rêves, passer
Je t'ai laissé me faire tout ce mal
Et le vent glacé, et les hivers, hivers, ont passé
Puis déchiré le tissu de ma voile

 私はたくさんの夢を、夢を、逃した
 あなたが私にこうした悪さをすべて為すのを許した
 そして凍りついた風が、そして何度もの冬が、冬が、通り過ぎ
 それで私の帆布はズタズタにされた

Adieu tristesse1


Je m'en vais, je vais quitter, quitter le port
Oui je m'en vais loin de toi, ma peine
Si je m'en vais c'est que le rêve rêve encore 注6
C'est que je sais qu'être heureux vaut la peine

 私は去る、離れるわ、港を離れる
 ええ私はあなたから遠くに去る、私の苦しみよ
 私が去るとしたら、それは夢がまだ夢を見ているから
 幸せになることは価値があると知っているから

Je vais m'en aller, aller, mon amie
Je vais m'en aller vivre ma vie
Le vent a tourné, il a semé la haine
On oublie que l'on s'aime
On oublie que l'on s'aime

 私は出て行く、出て行くわ、友よ
 私は自分の人生を生きるために出て行くわ
 風は向きを変えた、風は憎しみを吹き飛ばした
 私たちは愛し合っていることを忘れる
 私たちは愛し合っていることを忘れる

Je m'en vais semer, semer ma peine
Aux quatre vents, semer tant qu'il est temps
L'envie de s'aimer à l'enfant que je laisse
Adieu tristesse, il faut que tu nous laisses

 私は吹き飛ばす、私の苦しみを吹き飛ばすわ
 四方に、時間がある限り吹き飛ばすわ
 置き去りにする子供への愛し合いたい欲求を
 悲しみよさようなら、あなたを置いていかなきゃならないの

Adieu tristesse2


Laisse-moi au moins le temps, le temps d'essayer
Oui laisse-moi encore une chance
Oh oui laisse-moi au moins le temps, le temps de trouver
Le peu de moi qui me sauvera

 私にせめて時間を残しておいて、試す時間を
 ええひとつのチャンスをまだ残しておいて
 ええそうよせめて時間を残しておいて、見いだす時間を
 私を救うなけなしの私を

Je m'en vais, je mets les voiles, voiles, encore
Oui je m'en vais loin de toi, ma peine
Et du vent mauvais, des vents froids et des vents forts 注7
Tant je sais qu'être heureux vaut la peine

 私は去る、私は帆を張る、帆を、再び
 ええ私はあなたから遠くに去る、私の苦しみよ
 そして「いやな風」から、冷たい風からも強い風からも遠くに
 幸せになることは価値があるとよく知っているから

Oui je pars, je veux le calme, calme, trouver
Oui, loin de toi, je serai sereine
Et je suis le phare et je n'ai qu'à me laisser guider
Il faut croire qu'être heureux vaut la peine

 私は出発する、私は静けさを、静けさを見つけたい
 ええ、あなたから遠く離れて、私は人魚になるわ
 そして私は灯台になり自らにガイドをさせるだけ
 幸せになることは価値があると信じなければならないの

Oui je pars, et le calme, calme trouver
Oui, loin de toi, je serai sereine
Et serai le phare et n'aurai qu'à me laisser guider
Il faut croire qu'être heureux vaut la peine

 私は出発する、私は静けさを、静けさを見つけたい
 ええ、あなたから遠く離れて、私は人魚になるわ
 そして私は灯台になるわ、自らにガイドをさせるだけでいいわ
 幸せになることは価値があると信じなければならないのよ

Adieu tristesse4


[注]
1 toi「あなた」すなわちmon amie「私の女友達」とは女性名詞であるtristesse「悲しみ」。
2 l'autre côtéは「あの世」の意味があるが、ここでは単に「向こう側」すなわちここではない別の場所で、de l'autre côtéは前行のla vieを修飾すると解釈。semerは、「(種を)撒く」「まき散らす」など、生産をもたらしたり広めるたりする意味合いの語だが、手元には残らなくなるので、「まいて捨てる」「振り払う」といった否定的な意味にもなる。歌詞中に何度も出てくるが、文脈により訳語を変えた。
3 blessée「傷ついた」 とemportée「運ばれた」は私を形容している。
4 ここではtoiをma peine「私の苦しみ」と呼んでいる。
5 valoir la peine「値打ちがある」
6 最初のrêveは名詞で主語。2番目のrêveは動詞rêver「夢見る」の3人称単数形。
7 vent mauvais「いやな風」は、ポール・ヴェルレーヌPaul Verlaineの「秋の歌Chanson d'automn」の一節Et je m'en vais au vent mauvaisを念頭に置いた表現であろう。セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgの「君に別れを告げに来た(手ぎれ) Je suis venu te dire que je m'en vais」 の歌詞にも用いられている。



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2020
03.14

そうさC'est dit

Calogero Lembellie


カロジェロCalogeroを初めて取り上げます。カロジェロは1971年生まれで16歳でデヴューしたポップ・ロック系のシンガー・ソングライター。ギター、ベース、ピアノ、ハーモニカなど複数の楽器をこなし、兄のジョアッキーノGioacchinoほか何人もの歌手とコラボし、数多くの賞を獲得しています。
曲はC'est ditというタイトル。ロワイヤル中辞典では「よし、話はきまった」と訳されていますが、歌詞の内容から、「そうさ」といたしました。2009年。作詞:Jean-Jacques Goldman、作曲:カロジェロ自身。アルバム:L'embellieに収録。カロジェロはギターを弾きながら歌っています。友情がテーマです!



C'est dit そうさ
Calogero カロジェロ


Des chansons, des filles
Beaucoup de verres et de nuits
Telles étaient nos heures
Telles étaient nos vies
Futiles adolescents, tout nous était permis
Rois de pacotille, princes démunis
On n'est riche que de ses amis
C'est dit

 歌、女の子たち
 たくさんの酒と夜
 僕らの時間はこんなだった
 僕らの人生はこんなだった
 無意味な青春、僕らにはすべてが許されていた
 無能な王たち、無一文の王子たちだ
 僕らは友だちにだけは恵まれている
 そうさ

Cest dis3


Le temps des tempêtes arrive
Avant qu'on l'ait prédit
Amours impossibles
Défaites, ironies
Quand tout s'abîme
Quand même nos rêves fuient
Il ne reste qu'une île, un port, un parti
On n'est riche que de ses amis
C'est dit, c'est dit

 嵐の季節がやって来る
 予告もなく
 不可能な恋
 失敗、皮肉
 すべてがダメになって
 僕らの夢が逃げ去って
 ひとつの島、ひとつの港、ひとつの出発しか残らなくても
 僕らは友だちにだけは恵まれている
 そうさ、そうさ

Mais quand tout s'allume
Quand tout, enfin, nous sourit
Gloire, fête, symphonie
Bravos, bijoux, frénésie
Quand on me saoule d'imposture ou d'amnésie
Honneur et fortune
Qu'en sais-je aujourd'hui ?
Je ne suis riche que de mes amis
C'est dit

 だがすべてが発火するとき
 すべてが、ついに、僕らに笑みかけるとき
 栄光、祭り、シンフォニー
 喝采、宝石、熱狂
 ひとが僕をペテンか健忘で酔わせるとき
 栄誉と幸運
 それについて今日僕は何を知っているのか?
 僕は友だちにだけは恵まれている
 そうさ、そうさ

Cest dit1


Honneur et fortune
Qu'en sais-je aujourd'hui ?
Je ne suis riche que de mes amis
Mes amis
C'est dit

 栄誉と幸運
 それについて今日僕は何を知っているのか?
 僕は友だちにだけは恵まれている
 僕の友だち
 そうさ、そうさ


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2020
02.20

あなたの目よりも青いものなんてPlus bleu que tes yeux

Edith Piaf Plus bleu que tes yeux


久しぶりにエディット・ピアフEdith Piafを。1951年に、当時ピアフお抱えの便利屋兼秘書兼運転手兼相談相手だったシャルル・アズナヴールCharles Aznavourが作詞・作曲したPlus bleu que tes yeuxです。
「あなたの目よりも青く」という邦題がつけられていますが、ちょっと意味不明じゃありませんか?原題は「あなたの目よりも青いもの」という意味であり、「そんなものは無いんだ」と言いたいわけですから「あなたの目よりも青いものなんて」といたしましょう。ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisほかが歌う「小さな花Petite fleur」も恋人の青い瞳をテーマにした曲。また、クリストフChristopheの「青い言葉Les mots bleus」は、自分の青い目で彼女に語りかけたいという、逆の内容です。



アズナヴールがピアフの亡霊(?)とDuoで

 

Plus bleu que tes yeux あなたの目よりも青いものなんて
Edith Piaf              エディット・ピアフ


Lorsque je lève les yeux,
Je rencontre le ciel
Et je me dis : "Mon Dieu,
Mais c'est sensationnel,
Tant de bleu."
Lorsque je lève les yeux,
Je rencontre tes yeux
Et je me dis : "Mon Dieu,
C'est vraiment merveilleux,
Tant de bleu."

 見上げれば、
 空に出会う
 すると私は思う「おお、
 まあこれってすごいわ、
 いっぱいの青よ。」
 見上げれば、
 あなたの目に出会う
 すると私は思う「おお
 これって本当にすばらしいわ、
 いっぱいの青よ。」

Plus bleu que le bleu de tes yeux,
Je ne vois rien de mieux,
Même le bleu des cieux.
Plus blond que tes cheveux dorés
Ne peut s'imaginer,
Même le blond des blés.
Plus pur que ton souffle si doux,
Le vent, même au mois d'août,
Ne peut être plus doux.
Plus fort que mon amour pour toi,
La mer, même en furie,
Ne s'en approche pas.
Plus bleu que le bleu de tes yeux,
Je ne vois rien de mieux,
Même le bleu des cieux.

 あなたの目の青さより青いものなんて、
 それにまさるものは私には何も見えない、
 空の青さですら。
 あなたの金髪より黄金色なものなんて、
 想像できない、
 麦の黄金色ですら。
 とても優しいあなたの息より清らかなものなんて、
 風だって、8月の風ですら、
 それより優しくなれないわ。
 あなたを愛する私の心より強いものなんて
 海ですら、荒れ狂っていたって、
 とても敵いやしない。
 あなたの目よりも青いものなんて、
 それにまさるものは私には何も見えない、
 空の青さですら。

yeux bleus4


Si un jour tu devais t'en aller
Et me quitter,
Mon destin changerait tout-à-coup
Du tout au tout.

 ある日あなたが去って
 私と離れなきゃならなくなったら、
 私の運命はとたんに
 何から何まで変わってしまうでしょう

Plus gris que le gris de ma vie,
Rien ne serait plus gris,
Pas même un ciel de pluie.
Plus noir que le noir de mon cœur,
La terre en profondeur
N'aurait pas sa noirceur.
Plus vide que mes jours sans toi,
Aucun gouffre sans fond
Ne s'en approchera.
Plus long que mon chagrin d'amour,
Même l'éternité
Près de lui serait court. 
Plus gris que le gris de ma vie,
Rien ne serait plus gris,
Pas même un ciel de pluie.

 私の人生の灰色よりも灰色のものなんて、
 何もそれより灰色じゃないわ。
 雨空ですら。
 私の心の暗さよりも暗いものなんて、
 地の奥底ですら
 これほどの暗さはないでしょう。
 あなたのいない私の日々よりも空虚なものなんて、
 どんな底なしの淵ですら
 およびはしないわ。
 私の愛の悲しみよりも長いものなんて、
 永遠ですら
 それに比べりゃ短いものでしょう
 私の人生の灰色よりも灰色のものなんて、
 何もこれより灰色じゃないわ。
 雨空ですら。

yeux bleus5


On a tort de penser, je sais bien,
Aux lendemains.
A quoi bon se compliquer la vie
Puisqu'aujourd'hui...

 考えるのは無駄よね、よく分かっているわ、
 先のことなんて。
 人生をややこしくして何になるの
 だって現に…

Plus bleu que le bleu de tes yeux,
Je ne vois rien de mieux,
Même le bleu des cieux.
Plus blond que tes cheveux dorés
Ne peut s'imaginer,
Même le blond des blés.
Plus pur que ton souffle si doux,
Le vent, même au mois d'août,
Ne peut être plus doux.
Plus fort que mon amour pour toi
La mer, même en furie,
Ne s'en approche pas.
Plus bleu que le bleu de tes yeux,
Je ne vois que les rêves
Que m'apportent tes yeux...

 あなたの目の青さより青いものなんて、
 それにまさるものは私には何も見えない、
 空の青さですら。
 あなたの金髪より黄金色なものなんて、
 想像できない、
 麦の黄金色ですら。
 とても優しいあなたの息より清らかなものなんて、
 風だって、8月の風ですら、
 それより優しくなれないわ。
 あなたを愛する私の心より強いものなんて
 海だって、荒れ狂っていたって、
 とても敵いやしない。
 あなたの目よりも青いものなんて、
 私には見えない
 あなたの目を私に届けてくれる夢しか…

yeux bleus3


[注] près de …「…に比して」。luiは人ではなく、前々行のmon chagrin d'amour。



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2020
02.18

パリParis

Bernard Lavilliers Champs du possible


「パリParis」と題された曲はすでに5つ取り上げました。カミーユCamilleエディット・ピアフÉdith Piaf、エロディー・フレジェElodie Frégé、マルク・ラヴォワンヌ&スーアド・マッシMarc Lavoine & Saoud Massiオリヴィア・ルイズOlivia Ruizです。
今回は6つ目で、ベルナール・ラヴィリエBernard Lavilliersの「パリParis」です。この曲、2014年の12月に訳してして、出すのを忘れていました。実は、Windows7のままにしていたデスクトップパソコンが、トラブルが多発し余命が危ぶまれる状態になり、急きょノートパソコンをあらたに購入し、元のパソコンのデータを整理してから新しいパソコンに移そうとしていて見つかった次第です。

ラヴィリエは1946年生まれの現役シンガー・ソングライターそして俳優。ロックやレゲーという分野にもまたがる音楽活動をおこなっています。父親が大戦中のレジスタンス運動の活動家であり、彼自身も共産党に入党するなど政治的志向を持ちます。20歳でブラジルに渡ったのち帰国してパリ左岸で音楽活動を始めました。1967年に初めて出した45回転のレコードのLa Frimeという曲で、スイスのモントルーでRose d'or賞を獲得。翌68年に初めてのアルバム:Chanson pour ma mieをリリース。79年に船を買って、ジャマイカやニューヨーク、ブラジルに行き、帰国後の翌80年に出したアルバム:O gringoが彼の代表作。
自作の曲のみならず、シャルル・ボードレールCharles Baudelaire、ルイ・アラゴンLouis Aragon、ギヨーム・アポリネールGuillaume Apollinaire、アルチュール・ランボーArthur Rimbaud、ポール・ヴェルレーヌPaul Verlaineなどの詩をもとにした曲やボリス・ヴィアンBoris Vianの曲なども歌い、2009年にはLavilliers chante Ferré(ラヴィリエ、フェレを歌う)というアルバムを出しています。

作詞は、ラヴィリエ自身で、作曲はパスカル・アロヨPascal Arroyo。1994年にリリースしたアルバム:Champs du possibleに収録。このアルバムではアロヨはベーシストとして演奏に加わっています。



Paris         パリ
Bernard Lavilliers ベルナール・ラヴィリエ


J'adore le ciel de Paris
J'adore cette fille de bandit 注1
Qui se balade en guêpière 注2
Quand je retourne en enfer

 僕はパリの空に焦がれる
 コルセットをつけてうろつく
 この悪女に焦がれる
 僕が地獄に舞い戻ったとき

Mon capital de bas noirs 注3
Tu changes de fille tous les soirs 注4
Et dans les bulles de cristal
Me balances les fleurs du mal 注5

 黒いストッキングの僕の首都
 君は毎晩別の女になり代わる
 そしてクリスタルの泡のなかで
 僕に悪の華を投げつける

Lavilliers Paris2


{Refrein:}
Tu me manques terriblement
Tu me manques passionnément
Tu me manques, c'est fascinant
Paris, t'es si belle encore
Paris, tu changes de décor
Paris, tu ressembles à personne 注6

 僕は君が無性に恋しい
 僕は君が熱烈に恋しい
 僕は君が恋しい、魅力的だ
 パリ、君は今なおとても美しい
 パリ、君は様変わりした
 パリ、君は誰にも似ていない

Ma capitale de douleur
Vienne la nuit, sonne l'heure 注7
Un rouge baiser, un miroir
Tout redevient provisoire

 僕の苦悩の首都
 夜よ来い、鐘よ時を告げるがいい
 赤き唇の口づけ、1枚の鏡
 すべてかりそめのものに戻る

Paris, t'as des yeux gris-bleus
T'es plutôt brune à mes yeux
Entre Desnos et Prévert 注8
Tu choisis Apollinaire

 パリ、君はブルーグレーの目をしている
 君は僕の目にはむしろ褐色の髪だ
 デスノスとプレヴェールのあいだで
 君はアポリネールを選んだ

{Refrein}

Je t'aime, ma fille de faubourg
Avec tes chansons d'amour
Je t'aime, vipère du trottoir 注9
Plumant le micheton dans le noir 注10

 君が好きだ、僕の下町娘
 君の恋の歌とともに
 君が好きだ、舗道の毒蛇は
 暗がりでカモから金を巻き上げる

Lavilliers Paris1


Mon ange exterminateur 注11
T'es dure avec le malheur 注12
Tu fais de cadeaux à personne 注13
Et là, Paris, tu déconnes

 僕の滅びの天使
 君は不幸な者に冷酷で
 君は誰にも甘い顔を見せない
 そしてそこで、パリ、君はバカなことをやらかす

{Refrein}

Paris, j'veux pas qu'on t'épouse
Reste infidèle et jalouse
Paris, tu ressembles à personne

 パリ、僕は誰かが君を娶ることなど望まない
 不実で嫉妬深いままでいてくれ
 パリ、君は誰にも似ていない

[注]
1 bandit「強盗、山賊」が本義だが、「ろくでなし、悪い奴」等の意味でも用いられる。deは連結語として同格の意味。
2 guêpière「ゲピエール」ウエストニッパーに似た、胴を細く整える女性下着。
3 capital「首都」と「元金、資本、財産」の両義を兼ねた表現であろう。2節あとのMa capitale de douleurも同様。
4 changer de qc.「…を取り替える」。例文:Cette classe a changé de professeur「このクラスは担任が替った」。ここでは、パリがいろんな娘に変わることを言っている。
5 balancer「揺り動かす、振る、秤にかける」等が本義だが、ここでは「ほうり投げる」の意味。fleurs du malはシャルル・ピエール・ボードレールCharles-Pierre Baudelaireの詩集「悪の華Les Fleurs du mal」(初版:1857年)をもじっている。
6 à personne「誰にも」neを省いているが否定的な意味。
7 Vienne la nuit, sonne l'heure「夜よ来い、鐘よ時を告げるがいい」はギヨーム・アポリネールGuillaume Apollinaireの詩「ミラボー橋Le pont Mirabeau」の1節。画家マリー・ローランサンとの恋とその終焉を綴った詩で、ポピュラーなシャンソンとして広く歌われている。
8 vipère du trottoir「舗道の毒蛇」は「娼婦」を意味するが、1922年にジョルジェルGeorgelが創唱し、1956年にジョルジェット・プラーナGeorgette Plana が歌ったシャンソン: La vipère du trottoir (作詞:ジャン・ロドールJean Rodor、作曲:ヴァンサン・スコットVincent Scotto)のタイトルを踏まえているのであろう。
9 ロベール・デスノスRobert Desnos(1900 - 1945):シュールレアリスム運動に参加し、言葉遊びを多用した平易な詩を書いた詩人。ジャック・プレヴェールJacque Prévert(1900 - 1977):分かり易い言葉で心に響く詩を書き、広く愛された詩人。シャンソンとして歌われている詩も多い。ギヨーム・アポリネールGuillaume Apollinaire(1880 - 1918):キュビスム運動に参加し実験的な詩や散文を多く書いた。代表作は注4に示した「ミラボー橋Le pont Mirabeau」。
10 micheton「(売春婦の)客、カモ、だまされやすい人」
11 ange exterminateur「滅びの天使」旧約聖書におけるユダヤ民族を苦しめたエジプト人に罰を与えるため、エジプトの初子を皆殺しにする天使。
12 être dure avec qn.「…に対して無情な、厳しい」le malheur「不幸] は「不幸な人たち」の意味合い。
13 ne pas faire de cadeaux à qn.「…に甘い態度を見せない、わずかなことでも容赦しない」。




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2020
01.31

君の手紙を読み返してEn relisant ta lettre

Serge Gainsbourg En relisant ta lettre


セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourg「君の手紙を読み返してEn relisant ta lettre」という訳しにくい曲をあえて訳してみます。恋人からの手紙の綴りの間違いを直しているという歌詞内容。そしてまた、ゲンズブール流の言葉遊び・音遊びです。1961年のアルバム:L' étonnant Serge Gainsbourgに収録されています。



なんと、バルバラBarbaraも歌っています。



En relisant ta lettre 君の手紙を読み返して
Serge Gainsbourg  セルジュ・ゲンズブール


En relisant ta lettre je m'aperçois que l' orthographe et toi, ça fait deux. 注1

 君の手紙を読み返して、綴りと君、それは別の物だと気づいた。 

C'est toi que j' aimme(→aime)
 Ne prend qu'un M
Par-dessus tout(+.)
Ne me dis point
 Il en manque un

 あなたよ、私が愛す(ジェム)のは
  一つだけだよM(エム)は
 ともかく
 言わないでね何も(ポアン)
  句点(ポアン)が足りないよ一つ(アン)

Que tu t'en fous
Je t'en supplie
 Point sur le i
Fais-moi confiance

 あなたがうっちゃっておくことを
 お願い(シュプリィ)よ
  点を(supplieの)iの上に(シュル ル イ)
 私にまかせて

En relisant ta lettre1


Je suis l' èsclave(→esclave)
 Sans accent grave
Des apparences
c'est(→C'est) ridicule
 C majuscule

 私は外観に
 とらわれる(エスクラーヴ)の
  要らないよアクサン・グラーヴ
 それは滑稽(リディキュル)ね
  Cは大文字(マジュスキュル)

C'était si bien
Tout ça m'affecte
 Ça c'est correct
Au plus haut point 注2

 とてもステキだったわ
 すべて私に響く(アフェクト)わ
  これは正しい(コレェクト)
 この上なくね

Si tu reunonces(→renonces)
 Comme ça s'prononce
À m'écouter
Avec la vie 注3
 Comme ça s'écrit

 もしもあなたがやめ(ルノンス)たら
  発音される(プロノンス)とおりだよ
 私に耳を傾けるのを
 いのち(ヴ)賭けて
  こう書く(セクリ)んだよ

En relisant ta lettre2


J'en finirai
Pour me gardder(→garder)
 Ne prends qu'un D
Tant de rancune

 私はおしまいには
 持つ(ギャル)ことになるわ
  一つだけだよD()は 
 恨みをいっぱいね

T'as pas de cœur
Y a pas d'ereur(→erreur)
 Là y'en a une
J'en mourirai(→mourrai)
 N'est pas français

あなたには情(クァール)がない
過ち(エルァール)がない
 (過ちは)ここに一つある
私、死にそうよ
 フランス語じゃないね

N'comprends-tu pas ?
Ça s'ra ta faute
Ça s'ra ta faute
 Là y'en a pas

 分からないの?
 あなたの間違いよ
 あなたの間違いよ
  ここには(間違いが)ない

En relisant ta lettre4


Moi j'te signale
Que gardénal 注4
Ne prend pas d'E 注5

 私、あなたに言っておく(シニャル)わ
 睡眠薬(ガルデナル)は
 Eを(ドゥ)飲んじゃダメよ

Mais n'en prend qu'un
Cachet au moins 注6
N'en prend pas deux

 1錠だけよ
 少なくとも
 2錠(ドゥ)飲んじゃダメよ

Ça t'calmera
Et tu verras
Tout r'tombe à l'eau 注7

 それはあなたを落ち着かせる(カルム)わ
 するとご覧なさい(ヴェ)
 すべてがまた水()に流されるわ

L'cafard , les pleurs
Les peines de cœur
OE dans l'O. 注8

 憂鬱、涙(プルァール)
 心(クァール)の痛み
 涙と心(œ=pleurs cœur)が水(o=eau)に。

En relisant ta lettre3


[注] 元の手紙の綴りの間違いをそのまま表記し、右に正しい綴りを括弧に入れて加えた。フランス語の発音は正確には仮名書きできないが、韻を踏んでいる部分および語呂合わせしている部分を、まがりなりに表記してみた。
1 ça fait deux「それは二つのものだ、別物だ」
2 au plus haut point「この上なく、極めて」
3 avec la vie 大袈裟に言えば「いのちを賭けて」だが、「真剣に」くらいの意味。
4 gardénal「鎮痛・睡眠薬のフェノバルビタールの通称」
5 d'E=deux
6 cachet「(オブラートに包んだ)薬包、(薬の)1錠
7 tomber à l'eau「(計画などが)放棄される、お流れになる」
8 OEはpleursとcœurの母音部分の発音記号œをoとeに開いて大文字にしている。l'O=l'eau



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2020
01.25

人生の途上でSur le chemin de la vie

Gerard Lenorman Caroline


今回はアコースティックギターの伴奏の優しい曲で、「風のマドレーヌ」「幸せへの道」などの邦題で呼ばれているジェラール・ルノルマンGerard LenormanのSur le chemin de la vieです。「人生の途上で」という直訳の邦題をあらたにつけました。作詞;ソフィー・マックノーSophie Makhno、作曲;コリン・ヴェルディエColin Verdier 1974年に、シングル盤(Lenorman 1975)でリリースされ、翌1975年にアルバム:Caroline に収録されています。



Sur le chemin de la vie  人生の途上で
Gerard Lenorman     ジェラール・ルノルマン


Sur le chemin de l'école,
Nous avions douze ou treize ans,
Cheveux blond et têtes folles,
Nous parlions comme des grands.
Nous avions la tête pleine
De jolis projets
Moi j'avais pour Madeleine
Un tendre secret.

 通学の途上、
 僕たちは12歳か13歳、
 金髪で浮かれた頭で、
 僕たちは大人みたいにしゃべっていた。
 僕たちは楽しい計画で
 頭がいっぱいだった
 僕はマドレーヌに対して
 ステキな秘密を持っていた。

chemin1.jpg


{Refrain :}
Dites-moi ce qui m'entraîne,
Dites-moi d'où vient le vent,
Où s'en vont ceux que l'on aime,
Dites-moi ce qui m'attend,
Où s'en vont ceux que l'on aime,
Dites-moi ce qui m'attend.

 ねえ僕を誘うものを教えて、
 ねえ風はどこから来るの、
 愛していた人たちはどこに行ってしまうの、
 僕を待っているものを教えて、
 愛していた人たちはどこに行ってしまうの、
 僕を待っているものを教えて。

Sur le chemin de la vie
Nous nous sommes séparés,
Chacun son jeu, sa partie,
J'ai dépensé sans compter 
Les amis, l'argent, les filles
Et puis mes vingt ans,
Je n'ai pour toute famille
Qu'un petit enfant.

 人生の途上で
 僕たちは別れた、
 各々、自分の遊びに、自分の楽しみにと、
 僕は惜しみなく費やした
 友だちや、お金や、女の子たち
 そしてわが青春を、
 僕の家族はただひとり
 小さな子どもだけ。

{Refrain}

Sur le chemin de l'école,
Quand j'irai t'accompagner,
Je t'en donne ma parole,
Je saurai te protéger,
Je t'offrirai des voyages,
Une jolie maison,
Je t'apprendrai le langage
Des quatre saisons.

 通学の途上、
 君に付き添っていくあいだ、
 僕は君に声をかけ、
 君を護れるだろう、
 君に旅をさせ、
 きれいな家を与えるだろう、
 君に言葉を教えるだろう
 四季を通じて。

{Refrain}

chemin3.jpg


[注] dépenser sans compter本来は「金に糸目をつけない、浪費する」の意味。対象はles amis, l'argent, les filles, mes vingt ans「友だちや、お金や、女の子たち、青春」。「お金」を文字通り浪費し、「友だちや女の子たち」を遍歴し、「青春」を駆け抜けたわけである。



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2020
01.17

別れの挨拶Ma révérence

Véronique Sanson 7ème


Veronique Sansonの「別れの挨拶Ma révérence」は、ヴェロニク・サンソン自身が作詞・作曲し、シングル・リリースされた後、1979年の7枚目のアルバム:7èmeに収録されています。ヴェロニクは当時、夫のスティーヴン・スティルスStephen Stillsと1976年に離婚し、その後10年くらいものあいだ、アメリカの裁判所で息子の親権をめぐって厳しい法廷闘争を続けていました。当時まだ30歳くらいで書いたのに人生がもう終わってしまったかのようなこの曲の歌詞にはそうした背景があるわけですが、歌詞内容が分からなくても、メロディーやヴェロニクの歌唱の魅力でこの曲が好きになる人が多いようです。 実は私、このタイトルの適切な訳語が見つからず、既成の邦題も見当たらず、しばらくアップできないでいました。révérenceは、英語でcurtsy (curtsey, courtesy)と言われる 「片膝を折って身を屈めておこなうお辞儀や挨拶」を意味し、歌詞中ではtire sa révérence (à qn.)という熟語の形で用いられています。これは「(…に)大仰な挨拶をする」という意味ながら逆説的に「(…と)そそくさと別れる」と意味でも用いられます。いずれにせよ、去りゆくものといさぎよく訣別するという自らの態度を示しているのです。セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgの
Je suis venu te dire que je m'en vaisの邦題が「手ぎれ」なら、こちらはもうちょっと上品に「袂別」(べいべつ:袂を別つこと)としたかったのですが、分かりにくいかなと思い、より直訳的で平明な「別れの挨拶」といたしました。



Ma révérence    別れの挨拶
Veronique Sanson ヴェロニク・サンソン


Quand je n’aurai plus le temps
De trouver tout le temps du courage
Quand j’aurai mis vingt ans
À voir que tout était mirage
Je tire ma révérence
Ma révérence

 常に勇気を見出せる
 時間がもう私に無くなった時
 すべてが幻想だったと知るのに
 わが青春を費やした時
 私は別れの挨拶をする
 別れの挨拶を

Quand mon fils sera grand
Qu’il n’aura plus besoin de moi
Quand les gens qui m’aimaient
Seront emportés loin de moi
Je leur tire ma révérence
Ma révérence

 私の息子が大きくなり
 もう私を必要としなくなる時
 私を愛していた人たちが
 私から遠くに
 去ってしまう時には
 私は彼らに別れの挨拶をする
 別れの挨拶を

Véronique Sanson2


Et ma vie
Endormie
Doucement
Et mon cœur sera froid
Ne saura même plus s’affoler
Il ne deviendra qu’une pauvre horloge à réparer
Il n’aura plus de flamme
Il n’aura plus de flamme
Il n’y aura plus de femme

 そして私の人生は
 静かに
 まどろみ
 私の心は冷えて
 取り乱しもしなくなるだろう
 心は哀れな壊れた時計にしかならないだろう
 心はもう情熱の炎を持たず
 心はもう情熱の炎を持たず
 もう女たる性もなくなるだろう

Et mes amis fidèles
Auront disparu un par un
Trouvant que j’étais belle
Que j’aurai bien fait mon chemin 注1
Alors j’aurai honte de mes mains 注2
J’aurai honte de mes mains

 そして私の忠実な友たちは
 ひとりまたひとりと去るだろう
 私がかつては美しかったと
 花道を行ったと認めつつ
 そのとき私はみずからの所業を恥じる
 私はみずからの所業を恥じる

Véronique Sanson1


Quand je n’aurai plus le temps
De trouver tout le temps du courage
Quand j’aurai mis vingt ans
À voir que tout était mirage
Alors j’entends au fond de moi
Une petite voix
Qui sourd et gronde 注3
Que je suis seule au monde

 常に勇気を見出せる
 時間が私にもう無くなった時
 すべてが幻想だったと知るために
 わが青春を費やした時
 その時、心の奥から
 小さな声が聴こえる
 それは湧きあがりとどろく
 私がこの世でひとりぼっちなんだと

[注]
1 faire son chemin「出世街道を行く。進展する」
2 avoir honte de qc.「…が恥ずかしい」。mains「手」とは、自らのおこなった事柄を意味する。
3 sourdは形容詞の「耳の聞こえない」ではなく、動詞のsourdre「湧き出る、漏れ出る」の三人称単数現在形。



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2020
01.12

シンプルな言葉Ces mots simples

Vanessa Paradis Les sources


正月早々、暗い曲を続けてしまいましたので、今回は優しい暖かい曲を。ヴァネッサ・パラディVanessa Paradisの「シンプルな言葉Ces mots simples」です。2018年に7枚目のアルバム:Les sourcesの先行シングルとしてリリース。作詞・作曲は、夫で映画監督のサミュエル・ベンシェトリSamuel Benchetritとされますが、彼女の下書きを手直ししたという情報もあります。
ces mots simplesとは具体的に何なのかは、歌詞の最後に示されます。Je t'aime.「あなたを愛してる。」という言葉。ジュテームと仮名書きしても充分通じますね。乱発されたりもするし、なかなか言えなかったりもする…。バルバラBarbaraの「愛していると言えなくてJe ne sais pas dire」は、それが言えないからピアノで言うわ、という内容でしたね。原題はただ「言えない」という意味なのに、「愛していると」を加えた邦題はちょっとヤボかな?



Ces mots simples  シンプルな言葉
Vanessa Paradis  ヴァネッサ・パラディ


J'ai quelques mots à te dire
Des mots simples à te dire
On les entend souvent
Dans les films chez les gens
J'ai déjà dit ces mots simples
On y croyant ou en feinte
La première fois enfant
À moi-même de temps en temps

 あなたに言いたい言葉があるの
 あなたに言いたいシンプルな言葉が
 映画のなかや人々の家で
 よく耳にするし
 私も言ったことがあって
 ひとは信じたり信じる振りをしたり
 最初は子供のころ
 時々は自分に

Ummmm hummmm ummm
Ummm hummmm ummmm

Vanessa Paradis 2


Ces mots simples
Pour te les dire
Je voudrais que tout soupir
Disparaisse dans ce vent
Que l'hiver soit aux amants
Je voudrais pour dire ces mots
Avoir inventé ces mots
Qu'on me les dise chaque fois
En ne pensant qu'à toi

 このシンプルな言葉を
 あなたに伝えるために
 ため息がぜんぶ
 この風に乗って消え去って
 冬が恋人たちのためのものになるといいな
 この言葉を言うために
 この言葉を作り出してくれて
 ひとがいつも私に教えてくれるといいな
 あなたのことだけを思っているけれど

Ummmm hummmm ummm
Ummm hummmm ummmm

Vanessa Paradis3


Tout simplement dire ces mots
Il faut renaître de sa peau
Oublier qu'on fut avant
Pour d'autres un peu tremblants
Ces mots simples qui font frémir
Et certains autres mourir
Je te les donne à présent
C'est mon cœur, c'est mon sang

 この言葉をずばりシンプルに言うわ
 殻を破って生まれ変わらなきゃ
 私たちの過去を忘れなきゃ
 びくびくしてるほかの人たちにとって
 このシンプルな言葉は身震いさせるし
 ほかのひとたちを死なせたりする
 今、あなたに捧げるわ
 これは私の心、これは私の血よ

Ummm hummmm ummmm
Ummm hummmm ummmm

Je t'aime.

 ジュテーム


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2020
01.06

雨のランデヴーRendez-vous sous la pluie

Jean Sablon Vous qui passez sans me voir


「雨の日に、来ない女性を待つシャンソン」と言ったらまず思い浮かぶのはティノ・ロッシTino Rossiの「小雨降る径Il pleut sur la route」(1934年)ですが、ジャン・サブロンJean Sablonの「雨のランデヴーRendez-vous sous la pluie」もしかり。日本語の「ランデヴー」は実際に会うというニュアンスですが、原語のRendez-vousはただ「会う約束」だけの意味。デートの約束をしたのに彼女はやって来なくて雨の中で待ち呆けて風邪を引いてしまうという、家で待っているティノ・ロッシよりももっと気の毒なお話です。サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamoの「雪が降るTombe la neige」だって、窓の外の雪を見ている分にはこれほど寒くないでしょう。代表曲「去りゆく君Vous qui passez sans me voir」と同様、1936年に彼のためにシャルル・トレネCharles Trenetが作詞した曲で、作曲はジョニー・ヘスJohnny Hess。同じアルバム:Vous qui passez sans me voirに収録されました。




ジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardtと



Rendez-vous sous la pluie 雨のランデヴー
Jean Sablon          ジャン・サブロン


{Refrain :}
Pourquoi m'avoir donné rendez-vous sous la pluie, 注1
Petite aux yeux si doux, trésor que j'aime ?
Tout seul comme un idiot, j'attends et je m'ennuie
Et je me pose aussi quelques problèmes.
Pourtant on s'est connu par une claire nuit.
Le ciel était si pur, la mer si belle !...
Oui mais soudain voilà, tout est sombre aujourd'hui,
Pourquoi m'avoir donné rendez-vous sous la pluie

 なぜ僕に雨降りのランデヴーを約束したの
 とっても優しい目をしたかわいい人、僕の愛するだいじな人?
 バカみたいにひとりぼっちで、僕は待っていてうんざりして
 分からないことをいろいろ自問したりする。
 けど僕たちはある晴れた夜に知り合ったよね。
 空はとても澄み渡り、海はとても美しかったよね!…
 そう、でも突然こんなことに、今ではすべてが陰鬱だ、
 なぜ僕に雨降りのランデヴーを約束したの

Rendez-vous sous la pluie1


J'ai mes chaussettes
Qui font trempette. 注2
J'ai des frissons.
De la tête aux talons
Et, dans la brume,
J'attrape un rhume.
Combien d'garçons sont-ils morts de cett' façon ?
Mais pourquoi ?...
Mais pourquoi ?...
Ninon ? 注3

 履いた靴下に
 雨水が浸みてくる
 がたがた震える。
 頭からつま先まで
 そして、霧のなかで、
 風邪を引いた。
 どれだけの男がこんな風にして死ぬんだろう?
 でもなぜ?…
 でもなぜ?…
 ニノンちゃん?

{Refrain}

[注]
1 冒頭に書いたようにRendez-vousは「会う約束」の意味だが、「デートする」という意味で「ランデヴー」という訳語を用いた。
2 trempetteは「スープなどに浸して食べる薄く細長いパン切れ」のことで、faire trempetteは「(パンをスープなどに)浸す」ことだが、
quiの先行詞はmes chaussettes「僕の靴下」であり、靴下が雨水に浸されて濡れることを言っている。
3 Ninon「ニノン」はAnne「アンヌ」などの愛称。




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